■編集委員会から■


編集の多様性

羽藤 英二 学会誌編集委員長

土木学会誌の編集では、編集の多様性を心掛けている。心掛けていると言っても、委員長としてできることはそれほどあるわけではないから、せいぜい、書評で取り上げる本で女性や外国人の方の書いた本の比率を意識するとか、座談会を男性だけでしないとか、女性委員の比率を高くするとか、その程度のことである。要するに、ホモソーシャルな編集をしないということだ。
私たちの社会は、電車の中で周囲を見渡してみれば分かると思うのだけれど、異なる人々で成り立っている。お弁当は男性だけがつくるものではないし、残業は女性だけがするものでもない。身体の不自由な人が使える公共空間が街の中にあることが素晴らしいことも知っている。けれども、日常の8割は自動化された慣習で成り立っているから、そこに重大な問題があったとしても、なかなか改善することはない。しかも歴史に立ち返れば漸次的なコミュニティーの運営は一時的に維持できる。しかし、無意識の慣習に支配されたままでは、激変する社会に対応することは難しい。そんな時どうすればいいか。
私の分野では、米国の大学の例で言えば、従前のように論文の本数で評価することを改めて、自分の研究キャリアを代表する3本〜5本の論文で評価するような動きが始まっている。ライフタイムイベントを抱える女性研究者の評価と、専業主婦のパートナーに家事を全部任せて研究だけに専念している男性研究者を同列で評価している限り、ホモソーシャルな学術分野が縮小再生産されることへの危機感がある。大学研究者の異動が多いのも、ホモソーシャルが形成されやすい原因になっているから、女性のトップ研究者を採用する際、パートナーの職を同じ大学の中で見つけるといったインセンティブを用意することもある。(企業でも転勤を前提にした業務形態の見直しが始まっていると聞くが)学生たちはどんな人から教わりたいだろうか。予算が潤沢な米国の大学ならではだけれども、暗黙の慣習を超えるために、さまざまな手だてが講じられようとしている。
土木学会誌の書評や座談会で何を取り上げるか、誰が登壇するかは、その業界の価値観を体現する、ある種政治的な場と言っていい。交通行動モデルや3Dプリンティングのコンクリート施工そのものは、純粋な現象論であり、技術論であっても、一方で何が重要かという価値論には、誰が論じているかが作用するのも事実だ。属人的で同質性の高い人たちのみで議論が展開されていれば、ヘテロな人は土木から去っていく。
4月号の編集会議では、トンネルの工事現場見学で女子学生だけが入れなかった時、同じ教室で学んできた男子学生はどうしたか、女子学生はどういう気持ちでいたかという議論から始まった。ヘテロであることを前提に、寄り添うこと、後押ししようとすること、そんな仲間=Allyを増やすことを土木の新たな目標に掲げ、会員の皆さんに向けてアンケートを行い、土木の多様を実現するための新たな活動を、中村ゆかり委員、山田菊子委員、段下剛志委員、小林里瑳委員、植野弘子委員が提案しようとしている。ホモからヘテロへ、新たな土木学会誌に期待してもらいたい。
© Japan Society of Civil Engineers 土木学会誌編集委員会