2026年8月号 新会長インタビュー
グッドプラクティスを実践できる土木学会を築く
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第114代 土木学会 会長
小澤 一雅
[聞き手]入江 政安 土木学会誌 編集委員長
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グッドプラクティス実践のための制度設計や人材育成に尽力
―ご就任おめでとうございます。まずは小澤会長のご経歴や土木学会との関わり、現在のご専門に進まれた背景からお聞かせください。
小澤―最初の約10年が「コンクリート」、その後の約30年が「建設マネジメント」です。博士課程入学時に、恩師である岡村甫先生から「締固めをしなくてもいいコンクリートを開発できたら博士号をあげよう」と言われたことが、大学での研究生活の始まりです。
骨材の動きが見える実験装置を作り、自己充填のメカニズムを解析。特殊な材料を開発しなくても既存の材料の組合せで、締固め不要の「自己充填コンクリート」プロトタイプ開発に成功しました。ところが、これがなかなか現場に普及しない。当時の制度では、コンクリートの仕様は「スランプ8p」と発注時に決まっており、施工者が現場で使いたくても、仕様変更のための費用が自己負担になるなど、新技術導入が難しい状況だったのです。
優れた技術があっても、それを受け入れる仕組みがなければ現場は良くならない―。この現実を痛感したことが、建設マネジメントの研究へ向かうきっかけとなりました。その後、国土交通省(当時建設省)土木研究所での勤務を経て、以来一貫して現場でグッドプラクティスを実践するための制度設計や人材育成に携わってきました。
土木学会では、コンクリート委員会や建設マネジメント委員会での活動のほか、技術者資格委員会や副会長時代には「JSCE2 0 2 0」の策定などを通じ、学会の将来像を描く議論にも関わりました。
―会長に就任された現在の率直な心境はいかがでしょうか。
小澤―第1 1 4代という歴史の重みにプレッシャーも感じますが、それ以上に感謝の念が強いです。私はこれまで学会のさまざまな委員会で、多様な現場や数多くの人々と繋がることにより、多くの経験と学びを得ました。その恩返しとして、学会が次世代にとっても魅力的な活動の場であり続けられるよう、これまでの経験を還元したいと考えています。
| 2026年3月24日(火) 土木学会にて |
学会を自律的に進化できる組織に
―土木学会が取組むべき重点課題や、進むべき方向性についてのお考えをお聞かせください。
小澤―昨年5月の理事会において今後5年間で土木学会が取組むべき活動の方向性として「JSCE2 0 2 5」が示されました。ここでは、当該期間における土木学会の組織運営および活動の指針が示されるとともに、「持続可能」な土木学会であり続けるために運営のあり方の見直しが示されています。例えば、組織が肥大化し、各部門が「サイロ化」して横の連携が見えにくくなっているという指摘もされています。
私は、現場や委員会で汗をかいている人たちが、その努力を成果に繋げられるような土壌を整えたい。それには、既存の活動をただ踏襲するのではなく、適切にリソースを重点化する必要があります。これまでのやり方を見直して余白≠生み出すことで、若い世代が新しいことにチャレンジできる隙間を作っていく。自律的にそうした進化を実現できる組織を目指しています。
―会長自身が主導される特別プロジェクトは、どのようなものになりますか。
小澤―「JSCE2 0 2 5対応特別委員会」を立ち上げました。私が委員長を務め、各部門の主査理事の方々にメンバーとなっていただき、学会運営のあり方を横断的に議論する場です。
ここでは、ICTやDXを道具としてどう活用するかも重要なテーマです。事務局の業務負担を軽減し、本部と支部が一体となった運営が可能となるよう情報システムをどう刷新すべきか。これからの時代に相応しい土木技術者の役割やその育成方法は、どうあるべきか。学会内や他分野との連携の機会を増やし、新しい価値を創造するためには、どのような仕組みが必要かを考えたい。これらの活動を通して、次世代に繋げられる「進化の土台」を具体的な形にしていきたいと思います。
AI時代に期待される信頼と共感のプラットフォーム
―土木学会誌に対する期待や、今後のあり方についてはどのようにお考えですか。
小澤―学会誌は、会員を繋ぐ情報の中心です。1 1 0年以上の歴史もある。AIによってあらゆる知識や情報がすばやく容易に獲得できるようになった今、学会誌が提供すべき価値は「信頼」と「共感」であると考えます。
事象や事物の検索スピードではAIに敵いません。しかし、学会という組織が責任を持って発信するメッセージや、同じ分野で働く仲間が抱
く「共感」は、読者が前向きに仕事に取組むための大きな原動力になるはずです。多岐にわたる専門分野を持つ会員同士が、お互いの活動や異分野の価値を知り、刺激を受け合えるような場であってほしい。
―最後に、今後の抱負をお願いします。
小澤―私の役割は、「学会という組織が時代や社会の変化に適応し、自律的に改善し続けられる仕組みを整えること」です。それは一朝一夕に成し遂げられるものではありませんが、情報システムの刷新や運営体制の見直しを着実に進めることで、会員が主体的に活動できる環境を支えていきたい。
土木学会が、実務に携わる多様な技術者が集い、互いに研鑽し合い、グッドプラクティスを実践できる場として持続していくこと。そのための具体的な改善策を一つずつ積み重ねていくつもりです。会員の皆様のご協力をお願い申し上げます。

