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JSCE Magazine,“Civil Engineering”

土木学会誌

■土木学会誌2012年11月号モニター回答


■ 表紙・裏表紙

毎号表紙を飾る構造物を楽しみにしています。初めて知る構造物が多いのですが、裏表紙の紹介を参考に検索し、建設の経緯や他の写真、類似の建造物を調べることもしばしばあります。しかし、見開きにしないと全貌が見れないレイアウトを少し残念に感じているのは私だけでしょうか。一見で全貌が伝わる表紙づくりにご一考いただければと思います。
(所属:東京急行電鉄 氏名:藤田 貴文)

■ 第93回 命と安全を守る歩車分離信号普及全国連絡会会長 長谷 智喜さんに伺いました

歩車分離式の信号機というと、大都市の歩行者が多い交差点のみかと思っていましたが、よく見ると、家の近くの交差点も最近、この歩車分離式の交差点に変っていました。人と車が交差する現行信号システムの欠陥を指摘されると、なるほどと思いましたし、そのきっかけに悲しい事故があったことは、残念でなりません。人と車が共有しあわねばならない道路は、人の安全を第1に考えることが重要です。同じような事例が、他の現行の土木施設、システム等にないか、昔ながらの効率中心の考えに留まっていないか、人の安全という基本に戻って、今1度、再チェックする必要があるように思います。
(所属:小柳建設 氏名:金原義夫)

歩車分離信号は、交差点内の巻き込み事故を防ぐ方法として安心できる方法というのは、その信号を渡ったことのある方なら分かるものと言えるだろう。後方からくる車に気づかず、死角部分に入ってしまうなど運が悪いと起きてしまうから仕方ないではすまされない。本来なら、歩車分離信号は、繁華街など人の流れの多いところでは効果を発揮するものと考える。一方で、信号サイクルを数秒変えるだけで渋滞長が劇的に変化することや、短い信号の設置間隔や網の目状に絡むネットワークから、ひとたび交差点の信号サイクルを変えようとなると影響範囲が大きくなるということもある。しかし、都市の基盤である道路を安心安全に利用できるようにするためには、歩車分離信号が当たり前となるような環境作りが重要である。最愛の息子の死というような悲劇を二度と繰り返さないためにも、地道でありながらも、より安全なものに変えていくことが、社会貢献になるのではないか。
(所属:中野区 氏名:諸井 敬嘉)

社会インフラの目的は、やはり安全・安心であることを再認識させられた。時代は、コストや効率を求めているように近年感じているが、地道な活動で原点を追求し続けることで、さらなる安全性が確保された本事例を忘れてはならないと思う。
(所属:東京急行電鉄 氏名:鶴長輝久)

■ 企画趣旨 江本 智一、関 聡史

特集「社会資本整備を考える」では,歴史や, PPPといったスキームについて,読者にとって理解しやすく解説していただいています。今回は‘スキーム’というテーマでしたが,記事の中にある整備の「理念」についても,特集を組んでいただければと我侭な感想を持ちました。それは,震災を契機として,国づくり,国のあり方が問われている今だからこそ,経済成長のための社会資本整備だけでなく,広く理念が必要と感じているからです。社会資本整備≒公共事業と,現在の仕組みの中で荒っぽく括るならば,資源配分,所得再分配,経済活動の安定化,将来世代への配慮という公共事業の機能(「公共事業の正しい考え方」,井堀利宏)に加えて,次世代の国民の生活に関する新たな理念が求められているように感じています。
(所属:東電設計(株)  氏名:恒國 光義)

■ 記事1 社会資本の整備の歴史と展望  ─戦後社会資本整備史─  大石 久和

社会資本の整備理念の再構築のためには、筆者の考える「大震災を踏まえた将来展望」を世間にアピールしていく必要性を感じました。特に重要な社会資本インフラの機能分散、それに伴うネットワーク機能作りを国土整備のキーワードとして定着させることは重要です。私は、国民の公共事業の理解を深めるため、これらの考えを国民の目線に立った分かりやすい用語で再発信することを土木学会に期待します。
(所属:高山運輸建設(株) 氏名:高澤 謙二)

■ 記事2 デマゴギーとしての「社会資本整備の財源不足論」 藤井 聡

この種の論説は土木業界の一員にとっては非常に心強い。でも、冷静に読んでみると、もっと突っ込んだ議論が必要なのではないかと感じた。たとえば、一つ目の論説の図5では、日本の社会資本整備が急激に低下している様子が見て取れるが、GDP比をみると、普通の国並みになったと理解することも可能である。また、「世界水準から劣後していっている」との記述があるが、具体的事例とか具体的数値とかを示すことができれば図5の理解がより深まると思える。二つ目の論説では、まだまだ借金が可能だから、社会資本整備の財源には問題がないとのことを主張している。日本の税収が、「過剰なバブル経済」のときでも60兆円であったことを考えると、借金を減らす(国の話だから借金をなくす必要はないのかもしれないが)ための方策も含めて議論を展開する必要があるのではないだろうか。ページ数の関係で語りつくせていない、といった感じが伝わってくる。財源の問題は非常に大切なテーマなので、今後も取り組んでほしい。
(所属:東亜建設工業 氏名:鈴木 耕司)

昨今の日本を取り巻く状況は、増え続ける社会保障費、格差の拡大、景気の低迷など、将来を悲観するような話題に事欠かないが、藤井先生の主張は暗闇の中にある一筋の光明ともいえる内容である。かつて公共事業が景気回復に大きな役割を果たした時代は遠のき、市場主義が席巻したものの、日本経済は一向に浮上する気配が無い。政府は次の一手を考える時期にきていると感じるが、藤井先生の主張はその一手のひとつとなりうるものであり、広く知ってもらう必要があるのではないか。土木学会誌には、日本の発展のために土木が貢献できることを多方面に情報発信する役割を担ってほしいと感じた。
(所属:福島県 氏名:小林元彦)

景気をよくするための方策のひとつとして公共投資を拡大することは、中学校の社会科でも学ぶことであり、本来は国民に理解されやすいはずである。しかし今後の社会保障費の増大等による財源問題や、公共事業の無駄遣いが社会に明るみにされ、公共投資拡大論はなんとなく禁句となっている気がする。こうした状況でも、筆者が述べる「デフレ下では公共投資が求められる」という主張を展開していくためには、まずは、土木技術者が国民や政治家に今後の国土づくりの方向性、ビジョンをしっかりと示し、「公共投資=悪、無駄」というイメージを社会から払拭する必要があると思った。
(所属:JR東日本 氏名:齋藤 功次)

■ 記事3 社会資本整備における民間資金の活用 宮本 和明

PPPやPFIという言葉は近年では一種のブームのようになっており、今回の特集のように公共サービスを整備するにあたっての創意工夫について言及される際には、目にしないことは無いといってもよいような状態です。しかし、多くの場合ではその本質について掘り下げられることは少なく、PPP・PFIは”民間のノウハウを活用”できるその他の手法よりも無条件に優れたものであったり、それこそ記事中で指摘されているように”民間資金があたかも新たな財源がごとく考えられている”ように見受けられるものもあります。個人的にそんな状況に違和感を感じていましたが、記事中ではPPP・PFIの本質を理解し、正しく運用しなければその効力を発揮することは難しいと述べられており、興味深く読ませていただきました。今後機会がありましたら、実施済み・実施中の実際のPPP・PFI案件についての評価についても読ませていただければと思います。
(所属:大林組 氏名:海老塚裕明)

■ 事例1 大阪市における複合的インフラの整備について 寺尾 豊

戦後から近年までにおいて、日本の経済成長を支えるために様々な社会資本整備が行われ、その中で都市部における複合的インフラ整備事業では、地上から地下までの鉛直方向の有効利用が盛んに行われました。現在はどの都心部においても高層ビルが立ち並び、広大な地下街が広がっています。先の大震災以降、様々な想定被害が見直され、それに向けた防災対策を見直す必要性が出ています。高層ビルでは地震による倒壊被害、地下街では津波による浸水被害が十分に想定されますので、これからの複合的インフラ整備は、災害対応力を重視し、災害に強い都市としての整備が必要だと思います。また、災害対策情報においては、自分の住む地域での情報は把握していても、一時的に人が集まる都心部の情報は積極的に収集しなければ把握できない部分もあるので、地下街での避難経路や津波避難ビル等の情報を街中に多数明示し、自然に情報を集めることができるような整備がされると良いと思いました。
(所属:東洋建設株式会社 氏名:山野 貴司)

■ 事例3 ネーミングライツ導入を通じた 横浜市へのPPP導入について 野村 宜彦

横浜市がネーミングライツを導入することで、年間2億6千万円の収入を得ているとのことです。市税収入7,000億円の中に組み込まれてしまうと薄まってしまいそうな額ですが、官民協働の工夫の成果であることを高く評価したいと思います。また、対価を役務とした公衆トイレのネーミングライツの事例は興味深く、提案募集型が生きたケースで歳出削減にも貢献していると思います。今後とも、ネーミングライツ導入を推進されるようですが、ネーミングが単なる広告塔ではなく、地域に根差し、住民が愛着を持つようなものとして広がることを望んでいます。
(所属:メタウォーター(株) 氏名:楠本光秀)

本記事の中でも、とりわけ公衆トイレの事例が印象に残っています。ネーミングライツというと、私の中でも日産スタジアムを初めとする大規模施設と結びつける認識できあがっていました。スポンサー会社が対価として「設備改修と清掃・維持管理業務」の役務を提案したことについては、民間企業としての実益を含めたユニークな発想であるとともに、公衆トイレの事例は、小規模施設に対する「提案募集型」ネーミングライツの拡大だけでなく、民間活力の活性化にも繋がっていくのではないかと感じました。一方で、ネーミングライツ制度における対価の大小や公共施設への企業名称利用に対する抵抗感等の課題があることも事実ですが、これからも行政としての説明責任や誠実な対応も含め、一つずつ課題をクリアしていかれるとともに、ネーミングライツ制度の認知度も一層広げて欲しいと思います。
(所属:一般財団法人 日本水土総合研究所 氏名:橋 直樹)

■ 欠陥構造物をなくすには 石橋 忠良

過去につくられた各構造物や部材には、その時代背景に沿った利点や弱点があり、各構造物等の診断・補修等を行うには、その時代特有の弱点を補う必要がある。記事のなかでは、信頼性の高い工法、検査等がリーズナブルな価格であれば、積極的に取り入れていくことを推奨しているが、リーズナブルでない場合の方が対応に苦慮するため、リーズナブルでない場合の対応方まで踏み込んで記載していただければ、より参考となる記事であったと思う。
(所属:東京急行電鉄(株) 氏名:勇 龍一)

■ 本当に維持管理の時代なのか? 村尾 公一

この先、土木業界が維持管理の時代となることに私は疑問などなかった。将来の国内のインフラ建設の減少は動かせない事実として捉えてもいた。本論説を通して、何も考えていない自分を反省した。維持管理が今後重要となる事は間違いのない事実である。しかし、維持管理だけに取り組んでも国土が格段に豊かになることはないのである。土木の本来の意義に立ち返り、大きな視点で述べられた本論説は非常に明快であった。
(所属:電源開発(株) 氏名:小林憂三)

今まで整備してきたインフラ設備の維持管理が必要になることは、以前よりわかっていたことであり、また、その中で、過去の需要・計画をもとに巨額の設備投資がなされてきていたこともあると考える。記事の中では、空港の3港を中核とした交通のインフラ整備の提言がなされているが、インフラ整備が東京・愛知・大阪に集約されるということは、地方都市の衰退化も促進されることが懸念される。インフラ整備についても、選択と集約の時代が迫っていると思うが、都市部だけに特化した計画でなく、地方都市が取り残されることのないような計画が望ましいと思う。
(所属:東京急行電鉄(株) 氏名:勇 龍一)

■ 高性能コンクリートの歴史 ─超高強度繊維補強コンクリートへの期待─ 石関 嘉一、吉田 浩一郎

本稿では古代コンクリートから超高強度繊維補強コンクリートまでのコンクリート技術の変遷が、分かり易くとりまとめられている。コンクリート技術は、その起源を遡ると約9,000年前という非常に古くから存在するものであるが、至近60年間におけるコンクリート技術の進歩は飛躍的であるといえる。その間、我が国は高度経済成長を迎え、大量のコンクリート構造物が建設されている。維持管理の時代を迎え、様々な建設世代の既設コンクリート構造物を対象に今後の社会資本を整備していく必要がある。長期供用が必要となる社会インフラについては、過去の技術についても正確に記録に残し、何時でもその情報が手に入ることが望ましい。理想を言えば非接触ICタグ等を用い、構造物毎の各種トレーサビリティーを残すことがより良いと考える。
(所属:開発設計コンサルタント 氏名:野嶋 潤一郎)

■ 絶滅危惧種クロツラヘラサギの保全に配慮した新幹線事業 ─九州新幹線 氷川橋りょう─ 奥村 誠治、鈴木 成信

「絶滅危惧種」,「保全」。建設業界に停滞感が漂う中,明るいテーマを求めるあまり,一見,避けて通りたくなるようなキーワードかもしれません。しかし,レポートを拝読すると,クロツラヘラサギの非滞在期での河川内工事,休息地(中州)の拡大,デコイなど,現場の苦労を察するとともに,良好な結果に対する何か清々しさ,嬉しさにも似た感じを持ちました。このような配慮,地道な努力は,あえて一般の方々,あるいは新幹線の利用者に知らしめる必要もないと思いますが,技術者の中でこれからも大切にしなければならないと思います。「CEリポート」の面白さを感じた次第です。
(所属:東電設計(株) 氏名:恒國 光義)

近年、工作物や建造物は、その工事中を含め、環境及び生態系に配慮することが必然になりました。人の営みが、環境や生態系に多かれ少なかれインパクトを与えることは避けられませんが、人と多様な種が共存するために折り合いをつける「里山」的発想が求められるのだと思っています。本レポートの根底にそのことを感じますし、全ての事業の底流になるべきものだと思っています。
(所属:メタウォーター(株) 氏名:楠本光秀)

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