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土木学会誌

■土木学会誌2011年8月号モニター回答


■ 第14回 土木改革に向けて(1) 山本 卓朗

「土木の原点を見つめる市民工学への回帰を」という考えに大賛成です。道路や鉄道、上下水道施設等、土木構造物は市民のために建設され、市民生活に多大な恩恵を提供していると考えている土木技術者は私一人ではないと思います。このように市民に密着した施設が身近に沢山あるにも拘らず、一般の市民は土木技術に関する知識がほとんどないのが現状です。会長が述べられるように社会の理解を深めることが重要です。それには市民に身近な施設を建設する事業を担当する地方自治体等が行う事業説明会等での判りやすい説明が有効と思われます。後の記事で末永聡さんが述べられている「知識通訳」を土木技術者が積極的に取り組むのも一つの手段と考えます。
(所属:NPO法人シビルまちづくりステーション 氏名:比奈地 信雄)

■ 4-1 関西広域連合へのインタビュー  [語り手]芳本 竜一氏、水谷 経輔氏、堺 広範氏 [聞き手]坂井 康人

報道によると,八月現在,全国の市町村の実に約八十%の自治体が既に被災地に職員を派遣しているということであった。東北地方へは決して交通の便が良い訳ではなく,例えば四国や九州の山間部の市町村では現地へ赴くだけでも一苦労だと思うが,このようなところに日本人の気質を垣間見たと思う。今後重要なの は,継続して支援・協力していくということではないだろうか。このような時こそ,横のつながりを大切にした行政であってもらいたいと切に願う。
(所属:京都大学 氏名:高井敦史)

■ 記事5 インタビュー 釜石市内における津波防災教育
  [語り手]片田 敏孝氏 [聞き手]坂井 康人、岩波 綾

非常に大きな衝撃、感銘を受けたと同時に、今までの自分の考えの浅さを反省しています。この記事を読んで、防災は、ハード面だけでも、ソフト面だけでも不足であり、その両柱に加え、そこに日頃の訓練と地道な教育が必要であることを教えてもらいました。今回の東日本大震災でよく出てくる、”想定外“は、必ず何かで担保しておかなければ、”人の命“は救えないものだと思いました。本文の終わりに書かれています“行政の防災対策について”の考え方は、もっともで重要なことであると理解いたしました。
(氏名:金原義夫)

災害文化として定着することを目指し、釜石市で8年前にはじまった津波防災教育が、多くの子どもたち、町の人々を救った事実に感動したと同時に、他の地域でも同様の教育が行われていたならと思うと残念でならない。そこで教えられてきた津波避難三原則は、(1)想定にとらわれるな、(2)その状況下で最善をつくせ、(3)率先避難者たれ。これらの言葉は津波に限ったことではなく、災害大国日本においては誰もが常に肝に銘ずべきと感じた。「想定外」であっても、自らの判断と力で生き延びるための教育、文化の重要性をあらためて認識した。
(所属:(株)建設技術研究所 氏名:上原 励)

「津波てんでんこ」という言葉は、子供の頃に見たテレビで知っていました。そして、津波があれば、すぐに思い出す言葉でした。幼い私にとって、津波災害というインパクトの大きさと言葉のリズムから、津波といえば「津波てんでんこ」と連想するようになっていました。今回、この記事を読んで、この言葉の本当の意味、そしてその背景にある親子の絆、それもお互いを信じるという絆が重要であることを思い知りました。そして、ふいに涙が出ました。子供が親に、「僕は必ず逃げるから、お母さんも逃げてね」と言っている姿を想像すると、なんとも言えない感情になりました。それぞれがバラバラで逃げるというのは、本当に勇気がいる行動であり、家族が「てんでんこ」する深い絆が必要なのだと思いました。
(所属:日特建設株式会社 氏名:田中 尚)

釜石市が日常的に津波に対する防災教育を実施しており、この取組みにより今回の津波から多くの方の命を守り、住民の津波に対する警戒意識が確実に根付いているということがわかりました。また今回の津波で防波堤等の施設物が破壊され「想定を超えたから想定を上げよう」との短絡的な発想が多くあるとの記載がありましたが、私も同意見を持っております。基準を見直し、全てを強固にすることで高いコストがかかりますが、あくまでもその基準は人が考えた想定範囲内であります。コストと安全を考えることは非常に難しい課題ですが、施設に依存しすぎないためにも、この取組みのように国民の災害に対する意識付けの継続的な活動が重要になるものと考えます。
(所属:東京急行電鉄(株) 氏名:杉山 圭大)

記事冒頭で紹介されていた2003年の地震発生時の避難率の低さと、津波防災教育を受けた子供たちの避難状況から、この教育により多くの生命が救われたことが分かります。津波対策として、ハード面の整備と共に、ソフトによる対策も重要であると感じました。また、今回紹介されていた津波防災教育では、子供たちに問いかけ、親に問いかけ、自ら津波について考えるよう促すというのが、特徴であると思いました。住んでいる地域において実際の津波を想定し、地震が発生した時にどのように行動すれば良いかを予め自ら考えていたため、実際に避難できたのだと、記事を通じて感じました。
(所属:大林組 氏名:住永哲史)

津波被害と言うのがどれだけ膨大な被害を生むかが映像で繰返し流され、津波対策の必要性が叫ばれている。ハード対策で防波堤や、河川整備を行うのも大事である。しかし、それをいとも簡単に乗り越えてくる津波があるということを考えなくてはいけない。そういった対策を教育面からも取り入れ、多くの子供達の命を救った釜石市の事例は、非常に興味深い。自然災害に対する心構えをハード対策のみでなくソフト面からも被害を防ぐと言う方法は、行政への過度の依存と情報、設備への過信を防ぐ為にも、もっと広がってほしい事例であると感じた。災害対策には限界があるということを、偏見なしに伝えることも必要であるとも感じた例であった。
(所属:中野区役所 氏名:諸井 敬嘉)

■ 第81回 農業者大学校 教育指導専門職 末永 聡さんに伺いました

知識通訳という要素は普段の仕事においても何気なく使っており、自分の持っている知識をうまく活用してプロジェクトを推進していくうえでは、技術者において必要不可欠な要素だと改めて思った。近年では地域計画等においても地域住民との合意形成化が図られてきており、会社の業務においても会議や上司への説明の中で専門知識が宝の持ち腐れにならないよう、如何に相手方に伝わり、理解・納得してもらうかが重要だと感じる。自分自身も相手方の持つレベル感をいち早く察知して柔軟に切替え、意識をもって知識の通訳ができるように心がけたい。
(所属:東京急行電鉄 氏名:鶴池 康介)

筆者のおっしゃる「知識通訳」は土木技術者が市民等に対する説明を行う場合に非常に有効である。一方、特に専門分野が細分化された今日、同じ技術者同士でも大切であると考える。技術者であるから当然この知識は有しているだろうと決めつけて、専門用語を乱発して説明するのではなく、わかりやすい丁寧な説明を心がけ、誤解が生じぬようコミュニケーションをはかっていくべきと考えている。
(所属:(財)阪神高速道路管理技術センター 氏名:志村 敦)

■ 第7回  出雲の偉人、大梶七兵衛! 河村 倫太郎、渡辺 香奈

コンクリート技術がなかった江戸時代に川の開削を行うことは大変だっただろう。それを11.4kmという距離を行うにはとてつもない労力や苦労があったのだろう。今回の記事ではその完成にかかった月日などの記述がなかったのが少し残念でしたが、毎回、このコーナーを読むと昔から自然を相手に戦い、なんとか生活に組み込んでいった先人の苦労・工夫と同時に土木技術の偉大さを感じることができる。
(所属:首都高速道路(株) 氏名:飯島 雄一)

■ 2-2 ISO規格の現状と日本の技術基準の活用 上田 多門

言語の壁もあって国際規格とはかけ離れているとばかり思い込んでいた日本の技術基準が国際的に活用されている例を拝見し、海外進出について明るい話題の少ない日本の土木業界に一筋の光明を見た感がある。ただ自分達の技術が進んでいると「孤高」の地位にとどまるのではなく、海外で広く使われている基準と自らの歩み寄りや、海外基準へ影響を与えて主導権を握る、という戦略は非常に有効であると感じた。
(所属:アクセンチュア株式会社 氏名:宅間 朗)

■ 4-1 建設契約のリスク分担と紛争解決 大本 俊彦

FIDIC契約約款の国内での試行が検討されている中、学会からこういった情報をより広く発信してもらえるのは非常に意義があると思う。できればシリーズ化して、キーとなる条文について原文と対訳を解説付きで載せるような試みがあっても面白いと思う。
(所属:アクセンチュア株式会社 氏名:宅間 朗)

■ 4-2 建設技術に関する国際的な特許出願動向と標準化特許戦略 小畑 芳春

この記事で建設業界における日本の特許数があまり多くないことを知った。これまで情報が流出されることを避け、国内のみで賄ってきた事業実績からすると、当然の結果といえるかもしれないが、今後日本の建設部門が強みを持って海外へ進出していくためには、各特許を積極的に押さえていくことが重要だと思う。今回取り上げられた「特許プール」では、日本の海外進出戦略として海外に目を向け、一体となった体制を敷いていくために有効だと感じた。自分たちの特許をうまく国際標準化に繋げられるように特許戦略をうまく構築していければ成功に近づけると思った。
(所属:東京急行電鉄 氏名:鶴池 康介)

国内需要が縮小する中、日本企業の海外進出は喫緊の課題であり、さらに、その国の特許を取得することはグローバルな戦略を推進していく上では不可避だと思います。今回、特許プールシステムというものを初めて知りましたが、このシステムをもっと活用し、日本の高い技術の国際標準化を進めていくべきだと感じました。しかし、日本は諸外国と比較して、国際標準化に重要な官民一体となった取組みが遅れているようです。一方、中国は政府の強力なバックアップのもと、官民が密に連携した取組みにより近年の驚くべき成長を遂げており、日本も見習うべき部分があるのではないかと感じました。
(所属:新日本製鐵 氏名:久積和正)

■ PART6-1 インドのインフラへの投資機会 Arun Goyal

インドの投資機会について、分野別に良くまとまっていて理解がしやすかった。今後は、さらに実際の発注機関の方の意見も聞いてみたい。また、この記事及び次の記事に原文も掲載した点は非常に良かったと思う。是非今後も、海外の方の視点を原文とともに(もしくは原文のみでも)掲載する試みを続けて欲しい。
(所属:アクセンチュア株式会社 氏名:宅間 朗)

■ 理数科離れに対する土木分野からの視点道奥 康治

土木分野を目指す人材が減少しているということに関して非常に悲しく感じた。確かに建設事業の評判は決して良くはないと感じるが、土木分野は日常生活に密接に関係しており、欠かすことが出来ないと考えているからである。記事を読んで、自分も土木に関わる者として、現場の面白さを伝えていくことで理数系離れに歯止めをかける存在となっていければならないと考えさせられた。また、現在では、「工場見学」がブームということで、予約が埋まってしまうということを耳にするが、土木に関しても、「現場見学」といったことを活かし、興味を持ってもらうことで、少しでも土木分野の人材減少に歯止めをかけられるのではないかと思う。
(所属:首都高速道路 氏名:浅野 靖)

理工系出身の教員が少なく,なかなか実装された理数科授業を行うことは確かに難しいことであると思う。教育の場で理工系出身者を増やすためには,もう少し間口を広く採用するなど,現状の免許制度も見直す必要が少なからずあるのではないか。日本は幸か不幸か自然災害も多い。またインフラ整備も進んでいる。そ う言った点では授業と実現象を結び付ける素材は他国より多いと思う。実現象を教材にし,少しでも多くの子どもたちが理数科をより身近なものとして捉え,興味を抱いてくれることを強く望む。
(所属:京都大学 氏名:高井敦史)

ゆとり教育にどっぷり浸った若者がそろそろ大学から社会へ出ていく頃だと推察する。その年代の若者が、土木工学科をはじめとする学部や大学院、その先の会社、官庁などに進み、その結果、どのような実態にあるか、については、寡聞にして存じ上げない。「近頃の若いものは・・・」といった年長者のボヤキは今に始まったことではないが、最新の動向について把握しておきたいと考える。その上で、問題があるとすれば、その問題にいかに対応していくかについて経験と方策について関係者で共有することは意味があることだと思う。
(所属:国土交通省 氏名:佃 誠太郎)

最近の土木分野を志す人材の減少、その根底にある理数科離れについては様々な場面で話題になっている。理数科離れについては本論説にもあるように、教育現場の課題、専門性が高まることにより日常生活から遠くとっつきにくく感じられること、等が主要因であろう。日本の科学技術の発展には、新たな技術者の育成が欠かせない。これまでは、技術者の育成という観点では、土木技術者としての技術継承等を主に認識してきたが、それに加え、科学技術の中では日常生活に比較的近い「土木分野」を通じて若者に理数科の魅力を伝えていくという視点の重要性を認識した。
(所属:JR東日本 氏名:山田 拓也)

■ その他意見等

私にとって今号は特に興味深い記事が多く、カラーページの配分も適切で非常に読み応えがありました。
(所属:アクセンチュア株式会社 氏名:宅間 朗)

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