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JSCE Magazine,“Civil Engineering”

土木学会誌

■土木学会誌2010年12月号モニター回答


■ 持続する出版事業を目指して 藤森 伸一

記録のもつ威力はすごいと思う.行動の記録を残す習慣をつけると,余計なことを記憶する必要がなくなり,脳の負担が減って発想の自由度が高まる気がする.記録の代表といえば図書だが,土木学会の出版物の売上げが減少しているという.取り扱っているテーマが学術的で硬い内容になる傾向にあることや,出版業界を取り巻く最近の諸事情を勘案すれば,止むを得ない部分も多々あると思われる.しかし,その一方で,読者の要望に十分応えているか,様々な観点から吟味することも必要である.徹底的なリサーチにより読者のニーズをつかみ,売上げを伸ばしている雑誌も世の中にはある.要は内容とその伝え方次第だといっては,言い過ぎだろうか?
(所属:鹿島道路 氏名:金井利浩)

■ 第73回  NPO法人アサザ基金 代表理事飯島 博さんに伺いました [聞き手]菅沼 祐一、波津久 毅彦

ある問題が起きたとする.その解決にあたっては悪いところを矯正するのが一般的だ.しかし,飯島氏は,「それでは抜本的な解決にはならず,もっと創造的な行為が必要だ」とおっしゃる.創造的な行為は常に前向きであり,そうしようとすれば自ずと顔を上げねばならない.サッカーでもルックアップは基本中の基本だ.前をみて事態の好転をイメージし,次にどの方向に進むかを判断する.ほとんどの攻撃は無駄に終わり得点には結びつかないが,諦めずに繰り返しているうちにやがてゴールが決まる.土木事業が「はずれ」にならないよう,関係市民とともに成功のシナリオを描きながら事業を進めることの大切さを改めて思い起こした次第である.
(所属:鹿島道路 氏名:金井利浩)

いつも”この人に聞く”の記事を興味深く読ませていただいています。 土木には直接関わりのない人の意見から、改めて土木の可能性、魅力を感じることができるからです。 今回の記事はアサザプロジェクトの成功した要因に、ものをつくりたいという人間の本性に働きかけている、と挙げられているところが非常に面白いと感じました。今回の記事を読み、ものつくりに携われる仕事に就いていることを嬉しく思うと共に、改めてこれからもつくる喜びを忘れずに仕事に向かっていこうと思いました。
(所属:五洋建設 氏名:井瀬 肇)

水質汚染で悪名高くなってしまった霞ヶ浦の再生事業に取り組んできたアサザ基金代表へのインタビューということで近所に住むものとして興味深く読んだ。プロジェクトのきっかけや広がり、今後の活動などの一部を知ることができたが、世間には「アサザプロジェクト」を知らない方もまだまだ多いと思う。インタビューのほかに、プロジェクトの概要や経緯を是非つけてほしかった。
(氏名:高橋麻理)

現代社会のトレンドが、自分個人に責任のかからない言動に重点を置くというに方向に流れ、社会および人々の関係が知らず知らずのうちにそれを基点として左右されているように感じていた。如何に自分が責任を取らないで済むか。そういった気配を感じながら、さてどうしたら良いのかと思っているところに、この記事を読んだ。一人ひとりの物語をつくりあげることは、現代において渇望されていることのように思う。積極的に社会に参画しつつ、流れにほだされることなく、個人が社会の重心となって、未来に向かって何かをつくりあげていくには、従来の発想の転換、と同時に人々に共有される場はとても大事だ。飯島氏の「みんなの意見をまとめて平均化することからは、大胆な発想を実現することはできません」の言葉は印象に残った。
(氏名:横田美行)

■ 企画趣旨 永持 理

土木分野で再三議論されている、高度成長期に急速に整備された社会資本の劣化に対する問題意識と、医師不足や待機児童の問題とはどちらが優先度が高いのか?世論の大半は後者を指示するであろう。しかし、それは世論の大半が社会資本の劣化の実態を認知した上で、社会資本の機能停止による生活への影響を理解した上でそう判断しているのか?世論に間違った判断をさせないためにも、今、社会資本に何が起きているのかを正しく伝える責務が、我々技術者には強く求められていると感じた。
(所属:首都高速道路株式会社 氏名:小林 雅彦)

今月号は特集やCEリポートにて、アセットマネジメント・維持管理・保守点検に関する記事が多く、非常に勉強になりました。マルコフ連鎖モデルなどのような統計的劣化予測で概ねアセットマネジメントは達成されるのだろうと思います。しかし、近年では異常豪雨によって盛土が崩壊するような事もあり,従来では想定されないような外力が構造物へ作用していると思います。こうした場合にはやはり実験や数値解析のような力学的手法も劣化予測として用いるべきかと思います。
(所属:東洋建設(株) 氏名:澤田豊)

とてもタイムリーな特集だった。社会基盤の劣化は、国民財産の目減りだ。劣化を防止する技術は、新設技術よりも高度なのだろう。テレビ番組「ビフォー・アフター」では、「建築の匠」が活躍する。そろそろ「土木の匠」が求められる時代が到来している。
(所属:東日本高速道路(株) 氏名:伊勢田敏)

高度経済成長期(昭和30年〜40年)に建設された多数の土木構造物が老朽化し、補修や改修の時期を迎えている。この時期に予防保全型維持管理の特集を企画したのは大変時機を得ていると思う。土木構造物を運用し管理している各企業体が精力的に維持管理に取組んでいる姿は利用者にとって頼もしく、市民生活に安心をもたらしている。土木構造物の老朽化や劣化は防ぎようがないが効率よく補修して、寿命を長くする事が大切である。補修に際し、損傷の程度や原因を調査するがそのデータをその後の構造物の計画や設計にフィードバックする事もアセットマネジメントの重要な役割と考える。
(所属:NPO法人シビルまちづくりステーション 氏名:比奈地 信雄)

維持管理の時代を迎えて予防保全の重要性が高まっているのは言うまでもない。しかし、維持管理の現場では、発注者の意向により計画が変化することが多く統一した維持管理補修の方向性が見出せない。発注者は2,3年で転勤になり業務の担当が替わる。すると今までやってきた調査や検討などが引き継がれずに方針が変わりまた、新たな担当者の元で調査や検討が行われるということが少なくない。調査の結果、補修や補強で対処するのか、補強の方法は何か、更新するのかといった判断や方向性が変化してしまうこともある。新設構造物と違い既設構造物では、竣工時の図面や計算書が失われていたりその後の補修や補強の資料がなかったりと維持管理に必要なデータが乏しいことがほとんどだ。このために調査や点検が繰り返し行われることもある。データの確保と整理や補強順位のつけ方、補修補強方法の選定など構造物の維持管理全体の向かうべき道筋を明確にして担当者が変わっても業務の方向性には変化がないようにしなければならないと考える。
(氏名:高橋麻理)

■ PART1 予防保全型管理の重要性 小林 潔司

予防保全型管理を行うには現場の状況を把握する必要があることは十分承知している.しかし,大量のインフラストックを前にネットワークレベルでどのように対応すればよいのか?との問いに明確な答えを持ち合わせていなかった.そのような中,本記事の「劣化予測とベンチマーキング」はとても参考になった.具体的には,膨大なデータからベンチマーキングを見つけ出しマネージメントの基準とすればよいこと,ベンチマークとの劣化速度の比較により長寿命化対策の必要箇所を抽出できること等々である.道路舗装の予防保全に向けたデータの収集や既往の蓄積データの見直しを行う際,これらの知識を活かしていきたいと考えている.
(所属:鹿島道路 氏名:金井利浩)

補修時期を分散させる予防安全型維持管理の重要性が今後非常に重要になってくることが良く理解できた。構造物の維持管理者は、財源ありきの分散化ではなく、安全性を確保できる範囲を見極めた上での分散化が重要で、そのための予算はしっかり確保していく必要がある。補修が必要な構造物が、優先順位により後回しとなり、事故が起こるということだけはないようにしなければならない。
(所属:運輸政策研究所 氏名:梶谷 俊夫)

日本の土木施工技術は高度経済成長以降の社会インフラ整備により大きく進歩を遂げてきた。社会インフラが整い、新設から保守へと視点が向けれられている近年ではライフサイクルコストを意識したメンテンナンスフリー構造物に関する技術が注目され、そして、高度経済成長期に整備された構造物が老朽化してきている現在においてはそれら設備の予防保全型維持管理に関する技術が特に注目されてきている。インフラ設備を保有する各自治体や民間会社は、収入増を見込めない社会・経済状況においては全ての設備を新しいものへと更新する財政力を有しておらず、いかに現在の設備を効率よく、維持・補修していくかが大きな課題であり、予防保全の技術が今後の日本社会にとっていかに重要であるかを改めて認識させられた。
(所属:東日本旅客鉄道(株) 氏名:伊東寛)

■ 2-1 東京都における社会資本ストックの効率的なマネジメント 雄

自治体における社会基盤の整備は、都市部においては高度経済成長期に集中して建設されたストックの維持管理が重要なものとなっている。下水、水道は日々の生活に直結する非常に重要なものであるとともに、道路直下に埋設されていることから、メンテナンスの難しさや住民生活に与える影響も小さくない。特に東京という住宅、商業の密集度が高い地域ではなおさらであると感じる。その中で、計画的な調査、補修を行う体制をとり、社会基盤の維持と性能向上を行っていくことは、非常に大切なことであり、その推進にあたってのアピールがこれからの行政にとっては、重要であると再確認できた。
(所属:戸田市役所 氏名:諸井 敬嘉)

記事には、20年後には道路橋の約半数が建設後50年以上経過した構造物となるとある。当然ながら、道路橋の高齢化に伴い、補修が必要となる橋梁の割合が増加する傾向が確認されており、対処が遅れると最悪のケースでは米国ミシシッピ橋梁のような崩壊に至ってしまう。予防保全型維持管理の導入が遅れた分だけ、 対象となる橋梁数は増加していく。これらは橋梁に限ったことではない。総プロとして、点検・監視技術の開発が実施されるとのことであるが、精力的な研究開発の基、早急に制度化されることを望む。
(所属:清水建設 氏名:近江健吾)

■ 4-2 鋼構造物中の "がん" を見つけて延命化!坂野 昌弘

構造物の検査を人体の検査と対比して考えると、問診や触診の時代からようやく非破壊検査の初歩に辿り着いた、というレベルかもしれない。今後は、臨床検査技師のように、様ざまな計器を駆使して構造物を診断する技術者が必要となるかもしれない。検査機器については、土木の発想を転換し、電気・電子・物性・化学やナノ技術も広く取り入れることが必要だろう。
(所属:首都高速道路株式会社 氏名:小林 雅彦)

■ 4-3 羽田空港D滑走路の維持管理計画 野口 孝俊

羽田空港は今回の拡張により24時間稼働の空港となり、利便性は飛躍的に向上したが、維持管理の面では逆に制約が大きくなってしまった。特に埋立/桟橋接続部等、海上空港ならではの維持管理上のポイントがあり、設計段階から合理的な維持管理計画が検討されていることが分かった。その成果として、各所に点検通路や床版点検孔が適切に配置されており、また、効率的な調査・モニタリング手法が計画されている。ただ、点検・調査に関する記述に留まっており、劣化が進行し補修が必要となったとき、どのような体制・技術を用いて補修工事を行うのかが気になった。おそらく既に検討されているのであろうが、24時間稼働を前提としている中、経済的損失を最小限に抑える補修工事計画はどのようなものか、興味がある。
(所属:清水建設 氏名:河田雅也)

■ PART5 予防保全管理のための点検・検査技術の開発に向けた今後の取組み 大石 龍太郎

わが国の社会資本劣化の現状およびそれに対する点検・検査技術の話がわかりやすく書かれてあり、勉強になった。しかしこの問題に関しては、技術的な問題のほかに、管理者である国や地方公共団体の財源の問題もあると聞く。管理者側に財源がなく、検査、補修をすることができないというのである。どんなに素晴らしい技術が開発されても、使う場がなければ意味がないように感じる。この財源の問題に関する取組みもされていると思うので、それについても説明がほしかった。
(所属:前田建設工業(株) 氏名:奥田文)

■ 第77回 小樽港斜路式ケーソン製作ヤード 土井 祥子

陸上でつくったケーソンを海に進水するという方法がこの時代に世界で初めて実施された事を知り驚きました.それ以前より軍艦などには適用されていたようですが、構造物を陸から滑り落とす方法は当時としてはかなり斬新だっただろうと思います.伊藤長右衛門の独創性と勇気は本当に素晴らしいと思います.
(所属:東洋建設(株) 氏名:澤田豊)

ケーソンを陸上の斜路上でつくり、海中に滑り落とすという進水方式は、言葉にすると簡単であるが、それを実現させるためには、計り知れない苦労があったに違いない。新技術を採用する際の判断基準の一つは、実績があるかということであるが、このように基準類も整備されていない中、文字通り世界初の試みを行う ときの心境はどのようなものであっただろうか。当時空前の大事業と言われた小樽築港工事は、その後の近代日本の発展に多大な貢献をしたが、当時から100年以上経過した現在においても、技術的に学ぶべきものが多いことに驚かされる。
(所属:清水建設 氏名:河田雅也)

■ 連載を終えて 伊藤 悟郎

郡上八幡のことを初めて知りましたが、水がめぐる町の様子が目に浮かぶようでした。生活の中にとけ込む目に見える独特の知恵、地域の状況にあわせて進化した独自の形というものにとても惹かれます。機会があったらいずれ足を伸ばしてみたいなと思いました。1年間続いた本連載・地方の常識には本号のような独自のカタチが紹介され、いずれも興味深く拝読しました。我々が扱う土木構造物は、対象とする地域の風土・人々の風習・気候・地盤条件など様々なものに配慮して、かの地にあった固有のものとして計画する必要があります。地域にあわせた配慮、そしてアイディアを詰め込めば詰め込むほど、似て異なる地域独自のものになるのではないか、そのようなことに思いをめぐらしました。
(所属:日本工営株式会社 氏名:野末 康博)

■ 技術者教育認定制度に何を求めるか? 〜教育の質と大学人、そして産業界 家田 仁

家田先生ご指摘のとおり、JABEEや土木の学科名の省略は、学生の人気取りに終始していないか。大学に入学する学生は、ゆとり教育、体力低下、時にはモンスターペアレンツといった近年特有の環境の中で育ってきている。一方、企業は、低調な経済の中で人材育成の余裕代が無くなり、優秀な学生を求めるという外部依存にシフトしている。こうした中で、大学は、現代の若者を優秀な社会人につくり変える「変換装置」となることが求められている、そうした気概を持った大学経営が重要だとのエールと読み取れた。
(所属:首都高速道路株式会社 氏名:小林 雅彦)

■ 実践的アセットマネジメントのフロンティア 貝戸 清之

アセットマネジメントの実践には、目視検査データーが重要だとのご意見に共感を覚えました。検査・診断技術によるデーターも重要ですが、幅広い土木構造物の時系列情報を長期間、分析するためには、目視検査データーが必要です。また、これらのデーターの分析には、長年、先輩技術者の暗黙知に基づき、分析、活用されてきましたが、形式知として若手技術者に対し、周知していくシステムの構築が必要不可欠だと思います。
(所属:清田軌道工業 氏名:原 繁男)

■ 通信用地下埋設物の探査技術とGISの活用 福井 豊一、永井 友康

土木工事には地下埋設物との調整が必要だ。私は以前から思っているのだが、GISがこれだけ活用できるようになって来たのだから、そろそろ、通信管路だけでなく、水道、電力、電話、ガスなどの社会生活に必要なライフラインデータを一括して参照できるデータをぜひとも造ってもらいたい。これに地質調査のデータを加えられれば、施工の資料にすることもでき公共サービスの向上や資源や時間の省力化につながると考える。それぞれの管理者から別々の資料をもらいそれらを統合するのは時間も手間もかかり、また、間違いの発生も懸念される。地下データの統合を実現するためには管理省庁の横のつながりが不可欠である。縦割り社会を乗り越えてデータベースの構築を図ることが将来の維持管理作業の省力化につながると考える。
(氏名:高橋麻理)

■ 卒業継続割引制度のご案内

お知らせのコーナーにさりげなく、卒業継続割引制度のご案内が掲載してあるのに気付きました。私の周りにも、学生会員だったが卒業したら退会した方がたくさんいるのですが、何故退会したかを聞くと、やはり年会費が高いとの意見が大半を占めておりました。本制度は初年度のみの会費を半額とするとのことで、1年間は学生会員会費と同額で継続できるともあり近年減少傾向の若手会員の流出を食い止める手段になるのではないかと期待しております。
(所属:首都高速道路 氏名:石原 陽介)

■ 土木系学生によるコンクリートカヌー大会

今年も、無事にコンクリートカヌー大会が開催されたことで、良かったと感じると同時に、近年の目覚しい製作技術と漕艇技術の進歩を感じました。私が学生の頃は、優勝タイムが3分台でしたが、それでも優勝チームのスピードは速かったと記憶しております。また、参加チーム数も37チームと、私が参加した10年前に比るとべ約3倍に増えていることからこの大会の盛り上がりも感じることができました。特に高校からの参加が多く、若手に「つくる」楽しみをおぼえていただく良い機会だと思いました。今後益々大会が発展することを祈念しております。
(所属:首都高速道路 氏名:石原 陽介)

■ その他・意見

1年間モニターをさせていただき今月がおそらく最後になるかと思いますが、全体的な意見としましては、文章の中で図の説明をもう少し詳しくしていただければ読みやすいのではないかと思います。
(所属:東洋建設(株) 氏名:澤田豊)

JABEEをめぐる各論説委員の意見の対比が興味深かった。読み手としては、こういった一つのテーマに対し、様々な方々の意見を聞かせていただけるのは非常に考えさせられるところがあり、良い編集企画だと思う。
(氏名:横田美行)

© Japan Society of Civil Engineers 土木学会誌編集委員会