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JSCE Magazine,“Civil Engineering”

土木学会誌

■土木学会誌2009年4月号モニター回答


■ 巻頭言 21世紀の公共空間創造を指し示す灯台としての土木学会 岡田 憲夫

百年に一度という形容に伴なわれながら、その実態がよくわからない危機に対応するため、十五兆円という巨額の対策が、そのフレームもよくわからないまま示されようとしている。従来の土木学会が従来の対応で、灯台となれるかどうかは、議論の分かれるところであろう。土木学会は、自己検証システム作りの一環として公益法人化を進めているという。土木学会誌の範囲を超えて、日本民族の人口特殊出生率など、わが国の、あり方の基本を議論する場所が必要なのでは、ないだろうか。 
(氏名:斉藤恒孝)

■ 開通! 阪神なんば線 鈴鹿 隆英

阪神なんば線の開通は、長年の懸案であった大阪南部と神戸を短絡する意味で、画期的な出来事だと思う。三宮・奈良間の直通運転の向うに、姫路と、伊勢志摩、賢島が乗り換え無しで結ばれる大きな夢がある。各社にまたがる車両規格、信号、安全装置、等解決すべき技術上の問題は山積しているが、これは企業の枠を超えた、日本再生の次の一手だと思う。(中略) 昭和30年代国鉄が蒸気機関車による姫路、鳥羽間の快速列車を運行していたのを思い出す。第二第三の阪神なんば線を見つけなくてはいけない。
(所属:(株)明和プラテック 氏名:鉤 真幸)

■ 首都高速10号晴海線豊洲出入口誕生 相川 智彦

私は開通前の高速道路を一般の方々に開放するイベントのスタッフでした。6,200人のお客様に参加いただきまして、スタッフとしても非常にやりがいがありました。お客様に声をかけていただいたり、「すごいですね〜」と言われたりして、多くの方々に期待されているのだなあ感じました。土木屋冥利に尽きるなと思いました。これを糧に益々仕事に励みたいと思います。
(所属:首都高速道路(株) 氏名:石原 陽介)

■ この人に聞く 第53回 日本女子大学教授 北村 暁夫さんに伺いました [聞き手]北野 利一

北村教授が訳本の著者は『環境問題ではいろいろな意見があり・・議論をつくし・・対策をとり・・再考しながら・・問題解決にあたることが大切である』と考えていると述べていますが、まったく同感である。本文の中でも示唆されているが、日本の地球温暖化問題に対しての行政、マスメディア、一部の学者の見解・行動には納得できないところがある。 (中略) はたして真実は・・・国民の多くが騙されているという、武田邦彦氏の著書にうなずけます。20年前には遠浅できれいな渚であった阿字ヶ浦海岸は、子供達を安心して遊ばせられたため良く利用していました。昔の思い出をたぐりながら、久々にその海岸に立ち寄りました。目にしたのは無惨にも荒れ狂う海岸線、遠浅の渚はどこに行ってしまったのでしょうか、自動車の輸出拠点として建設された常陸那珂港が海水の流れを変えたのでしょう。北村教授の話を聞き、土木学会の『環境問題に対する立ち位置』は本当に今のままでよいのかと思います。日本の将来像を見据えて、環境に長期的に取組む姿勢を示していく必要があると思う。
(所属:(株)てすとぴあ 氏名:坂本 和雄)

■ 企画趣旨 井上 博士

これからの防災、減災はハード面とソフト面が両輪になって進めてくことが基本的方策となっています。例えば緊急地震速報は、住民を速やかに避難させるための有効なソフト面の施策の一つだと思います。しかし、避難経路や、避難先、情報の発信元や伝達設備は、災害時において十分に機能することが求められ、また、家屋や公共施設などにいる住民の安全確保も必要です。ソフト面を充実するといえどもハード面の担保なくしてはソフト面の施策は機能しないものになります。災害に対して直接的に防護するハード面の施策とともに、ソフト面の施策の機能を生かすハード面の整備を早急に行う必要があると思いました。
(所属:中電技術コンサルタント(株) 氏名:北出圭介)

■ 4 住民避難から見た津波防災 片田 敏孝

心理学的な解釈が平明かつ面白く、興味深く読むことができました。「空振り容認の姿勢」へ住民の意識や行動を変容させるには大きなエネルギーが必要だろうと思います。防災教育に携わる方々の熱意に敬服します。
(氏名:秀島 雄二朗)

津波の避難と言えば、地震が発生した際に必ず警報・注意報、または『津波の心配はありません』という報道を耳にしますが、結局のところたいていの場合避難が空振りに終わることが多いため「オオカミ少年」的要素が多いというのがうなずけます。まれに出る大きな被害を繰り返しテレビで報道されても、「まさか自分のところに」と思ってしまうこともあるでしょう。ただ、津波の被害が1つの地域にそう頻繁に訪れるものではなく、年配の人でも経験がないという場合が非常に多いのではないかと思います。津波の怖さを耳学問で受け継いでいく困難さがここにあるのだろうと思います。
(所属:西日本高速道路(株) 氏名:西川悟史)

■ 博物館で土木を学ぶ 第4回 狭山池博物館 喜多 直之

狭山池の歴史を初めて知って興味深かった。古代の技術に感銘を受けた。しかも、世界的に有名な安藤忠雄の設計による博物館ということで、機会を作って是非訪ねてみたいものである。
(所属:岡山県 氏名:難波明代)

■ トピックス 学生は問う 土木工学科よどこへ行く? 企画趣旨 田邊 晋、葛西 誠 [メンバー]香月 亜記範、近藤 由美、杉江 裕実、関根 正之 [司会]田邊 晋

将来土木分野を担ってくれるであろう学生さん達の考え方や要望を生の声として知ることができ元気を取り戻した想い。近年3K、公共事業無駄遣い等のマイナスイメ−ジで視られるような世相に乗せられてしまい学官産共にいささか意気消沈気味となってしまい、じっとやせ我慢の呈で耐えていたが、ここで登場したような若者達が新鮮な感覚で温故知新を踏まえた現時代に相応しい土木分野を再構築して、発展させて、そのようないい加減な世相を跳ね飛ばしてくれるに違いないとの期待と自信を膨らますことができた。「土木」、「土木工学」の名称のままで良いではないか。市民・住民に密着して、共に自然になじみ生態系を守りながら安全に安心して住んでいただこうと為す分野に誇りを持とう。一般社会にも広く再認識を図ろう。
(氏名:福冨幹男)

土木という言葉が学科名から排除されていることは、私自身の出身学科全てから土木の名がなくなっている事実からも感じていた。慣れ親しんだ土木の響きがなくなることは寂しいと共に、学校毎に命名法が異なっていることも問題であると感じる。社会に出るための進路を見極める高校生へのアピールが、却って混乱を引き起こしているのではと考える。高校生の時に自分が土木の分野を目指そうとしたのは、大学のガイダンスで、都市生活を営む上でライフラインを守ることが如何に大切なことかを図や模型、プロジェクターを駆使して、丁寧に分かり易く説明してくれた講師のおかげだった。次回は、土木の色に染まっていない高校生にとっての土木に対する印象を聞いてみたい。
(所属:戸田市 氏名:諸井敬嘉)

■ 座談会 PART1 これまでの学生生活を振り返って

本記事での学生諸君同士の対談は、かなりの部分で土木の本質を捉えているように感じた。特に意識の高い学生ゆえに編集委員になっている点も忘れてはならないが。授業をつくる教授陣は、謙虚に学生の要望や要求を理解する必要がある。また、大学院生は、学部生と教授との橋渡し役、目付け役としての機能をしていただきたいと思う。名称はどうであれ、21世紀の土木系学科が魅力あるものに、そして繁栄することを期待する。
(所属:西武建設(株) 氏名:三村 卓)

■ 座談会 PART2 土木工学科への要望

座談会の中で触れられている、海外留学生との交流によるモチベーションの向上、またある人が述べられていた将来への希望としてのアジアの水問題への関心、等は土木の今後の方向性を大いに示していると思う。製造業の海外移転、海外での商業活動等は大いに進んでいると思われるが、土木、農業、部門の進出は遅れているのではないだろうか。島国、単一民族、単一文化、からアジア共同体、地球規模に視野を広め、他部門と協力のもと、世界に大きく羽ばたく事が、これからの土木工学の進む道だと思う。
(所属:(株)明和プラテック 氏名:鉤 真幸)

■ COLUMN 「土木工学科」の名称は? 何が良い?

私は、土木系学科の名前の変更、特に「土木」という名称が外されることに 少し悲しく思っています。大学に入る前、土木の名前を聞いたとき、華やかな デザインを持つ建築ではなく、灰色のコンクリートが太陽の光を反射し、真っ白になったイメージがすぐ頭に浮かんできたことを今まで覚えています。それは「土木」の一番素朴なところでしょう。今の時代では、大学の土木系の名前がそれの発展とともに、現代潮流に乗って変わっていく中、「土木」の本来のイメージを学生に伝えられないことが本当にいいのでしょうかと私はよく考えています。
(所属:神戸大学大学院 氏名:彭 豊)

いくつかの学校でいろいろな理由で土木工学という名称が変わっていく中、土木工学科を卒業した私は、やはり「土木工学」という名称に愛着とこだわりを持っています。これからいくつかの時代を経ても、その原点である「土木工学科」を忘れないようにしたいと思いました。
(氏名:斉藤 実)

同じ学生として大変興味深いテーマでした。ただ、内容についてはもう少し深い提言を期待しました。手元にあった2005年7月号でほぼ同じ内容の特集記事が組まれており、その内容を用いてもよかったのではないかと思います。コラムにあった土木工学科の名称についてですが、私自身はぜひ土木という名称を学科名に使っていただきたいと思っています。都市や環境といった言葉が土木工学科の改組によって使われてきたようですが、それが逆に土木というものを分かりにくくしているのではないでしょうか。学生自身が土木とは何かを考えるきっかけを与えるという意味でも、名称を残す価値があると思います。
(所属:京都大学大学院 氏名:木村優介)

■ トピックスを終えて… 田邊 晋、葛西 誠

この記事を読んで、学生の方々の高い志と熱意に感銘しました。更に、とても分かりやすく土木の魅力なり、現状を捉えているように思います。この記事に、今後の土木業界の大きなヒントがあるように感じました。
(所属:(株)大林組 氏名:中村泰)

■ 土木学会の動きからピックアップ 土木学会主催『黒部の太陽』(石原裕次郎主演作) 特別上映会 報告 社会コミュニケーション委員会・土木技術映像委員会

建設関係を取り上げた映画が少ないことは、非常に残念です。大型プロジェクトの減少や、撮影セットなどの大変さなども、原因としてあるでしょう。「黒部の太陽」は、最近ドラマでも放映され、土木に対する理解の一助になったと思います。
(氏名:平田 貴久美)

「黒部の太陽」特別上映会の成功を祝します。今後このような土木分野に関係した映画を公開する機会を定期的に設けて一般社会とのコミュニケ−ションを図るという構想は実に素晴らしい企画で、効果的だと思います。
今後は、土木学会関係者も然ることながら、一般社会、特に自分の将来に夢を描く義務教育の小・中学生、受験コ−スを模索する高校生、資格取得をめざすJABEEコ−ス志望学生、そして教育熱心な親等々を対象にした土木関係の映画上映を企画し、感動と喜びを共有して頂くのが良策ではないでしょうか。
国づくり・地域づくり、一次産業、社会生活、環境、防災、資源・エネルギ−、観光等における土木分野の社会貢献の内容を正しく認識していただく手段として、映画上映、特に茶の間(テレビ番組)での放映は有効ではないかと思います。
(氏名:福冨幹男)

■ 異分野で注目される地盤環境工学 福田 誠、木村 智博

土木の現場で危険と言えば,転落や飛来物など,物理的なダメージを伴う現象を直感的にイメージすることが多いが,本稿で指摘される通り,化学的な危険も多く存在することを改めて認識させられた.現場の安全教育では,もちろん両方の危険性を指導するが,受講者側としては,どうしてもイメージしやすい物理的な危険が印象に残りやすく,化学的な危険は,頭に残っても,実際その場に遭遇すると,対処に戸惑う場合が多いのではないかと危惧する.管理された状態で危険を体感できる安全教育の手法を確立,汎用化する必要があるのかもしれない.
(所属:東洋建設株式会社 氏名:小竹康夫)

自分に関して言えば、土木を学びだしてからはもっぱら物理系の知識習得に偏り、化学の知識は20年ほど前に高校で学んだ以来、減りこそすれ増えてはいない。しかし、現実には化学に関する知識を要する仕事に直面することも多々ある(例えば、重金属に起因する土壌汚染問題等)。その際、化学の基礎知識なくして仕事上の判断を下すことは不可能であろう。土木のカバーする範囲の広さに改めて気づくとともに、今後は様々な分野に興味を持ち、加えて知識を習得する、もしくは筆者も言っているように各専門職との連携が必要だとの認識を新たにした。
(所属:富山県 氏名:山中久生)

■ 土木学会誌編集委員会からのお知らせ 土木学会の現状と土木学会誌の今後の行方 第1回 厳しい現状 日比野 直彦

私も四国支部の商議委員として学会の経済的な厳しい現実,生々しい数値を目の当たりにしている。各種の改善策が真摯に議論され,いくつかが実行に移されていることも知った。しかしながら,建設業コストダウン,大学教授の定年退職と同時に退会されるという現実がありながら,これに積極的に歯止めをかけることができるのだろうか。従来の区分や概念を払拭し,年会費ワンコインのサポーター会員,小中高校生を対象とした土木学会検定に認証など,広く市民の目線で土木への関心を持っていただく施策が必要だろう。折しも法人化移行で原則,ほぼすべてのイベントが市民向けに解放されている。基幹産業である建設分野の可能性は,まだまだ大きい。
(所属:高松工業高等専門学校 氏名:向谷光彦)

本記事によって土木学会の現状が厳しい状況にあることがよく理解出来ました。歴史を誇る土木学会がこのような状況にあることは、日本の技術の衰退にもつながる重大な危機であると感じました。今後の日本の土木技術を担う学生会員が学会発表を主な目的に会員となり、その必要がなくなると脱会していくことは重要な課題であると言わざるをえません。以前にも学生会員の増加を目指すべきとのご意見が多数あったと思いますが、今回の記事を読む限りにおいて、私は学生会員をターゲットとした紙面づくりが重要なのではなく、学生会員が正会員になっても継続購読できるような学会誌作りを行うことが重要ではないかと考えます。
(所属:大日コンサルタント 氏名:船場俊秀)

土木学会の現状の厳しさをあらためて感じました。最も気になる点は、学生会員が増加傾向であるにも関わらず全体の会員数が減少傾向にある点です。学生が卒業と同時に退会してしまうのはとても残念なことだと感じました。理工系大学院の役割は専攻分野の基礎研究を行い、そこから国際的に通用するような優れた学者、研究者、技術者を養成する機関であると思います。学会誌を通じて1人でも多くの学生さんが「土木」に興味を持ち将来性を感じて欲しいと思います。一読者としては、「研究・技術論文」、「技術者・研究者の話題」、「プロジェクト紹介」などの紙面がより充実することを期待しています。
(所属:株式会社オリエンタルコンサルタンツ 氏名:橋元 健二)

© Japan Society of Civil Engineers 土木学会誌編集委員会