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JSCE Magazine,“Civil Engineering”

土木学会誌

■土木学会誌2008年12月号モニター回答


■ 表紙

私の土木史にも雪祭りが登場します。今から二十数年前会社の同僚と雪像造りをしたことがあります。我が社では当時有志が雪像造りをするのが恒例行事になっていました。造った雪像は、当時明石家さんまのテレビで人気があった「何ですかマン?」だったと記憶しています。雪像は、多くの一般の方々が長い期間見られるので、関係者の方々は安全管理には非常に神経を使っておられます。我々の雪像は、片側が大きく片持ち梁になっていたので現場から調達した鉄筋で内部を補強していたのですが、主催者からそれでも危険なので台座から直接荷重を受けるような構造に変更する様に言われたのを鮮明に覚えています。当時は土木屋としてのプライドを傷つけられた様に思ったのですが、良く考えてみると鉄筋を固定している雪自体が外気温の影響や自重で変形すること考えるとあの判断は正しかったと思い返されます。
(所属:前田建設 氏名:林 克彦)

■ PHOTO REPORT (3)首都高速5号池袋線タンクローリー火災事故に伴う構造物の被災状況 菅原 聡

この事故については、異常なほどの構造物の損傷が印象的で良く覚えています。職場の同僚とも補修方法や損害賠償について話あったものです。実際補修にどの位の費用がかかったか知りませんが、考えただけでも空恐ろしい金額だろうと想像できます。一般の物損事故の場合には、任意保険から保険契約に応じた費用が出るのだと思うのですが、今回の事故では補修費用は誰が出したのでしょうか。運良く対物無制限の保険に入っていれば問題なかったのだと思うのですが。同じような事故に電力会社の送電線切断事故があると思います。実際自衛隊機が送電線を切断したりクレーン船が送電線を切断したりしています。一体補修費用は何処から出ているのでしょうか。結局は、何処にも請求できずに首都高速道路(株)や電力会社が費用負担していると言われる人もおられますが。そんなリスクを考えると対物も無制限の時代でしょうか。
(所属:前田建設 氏名:林 克彦)

この事故については、一般市民として普通にテレビニュースを見ていましたが、記事を読んであらためて被害の甚大さを痛感させられました。鋼主桁の変形状況など、私が現場でこの光景を突きつけられたら、正直どのような対応ができていたかわかりません。夜を徹して復旧作業に取り組んだ関係者の皆さまに頭が下がる思いです。私は鉄道事業者として常にリスクを想定した訓練や準備をしておりますが、今回の復旧対応を見習い、列車が長期間止まるような事態でも冷静、迅速に対応できるよう更なる準備を行う必要があると感じました。
(所属:東京急行電鉄株式会社 氏名:小里 好臣)

■ この人に聞く 農民作家 山下 惣一さんに伺いました [聞き手]田中 幹士、古木岳美

今の日本は殆どが、外国からの輸入に頼っているという現状。輸入に頼りながらも、偽装物や農薬等には敏感な日本人。国産で無農薬の食物は非常に高いため、このような状況が続けば国産品離れが加速すると思います。農業についても、いつまでたっても「農業=野良仕事」というイメージを覆さないと就業人口は増えないと思います。私たちひとりひとりが、日本の食生活や農業のあり方について考えなくてはならない時期に来たのだと痛感しました。これを機会に、一日一品は国産品を食べようと思います。土木とは関連がないような人に見えて、何気に「土木人」なところに興味をもてました。今後もシリーズを継続し、様々な話題を提供いただきたいものです。
(所属:日本シビックコンサルタント(株)氏名:田島久美)

各界でご活躍されている方々へのインタビュー記事は、その方の物の考え方がわかるため非常に勉強になります。今回の記事でも、山下さんの、食料自給率向上に対する考え方が非常に興味深かったです。また、記事の最後の方にありました「食料というのは生きるか死ぬかの問題」という言葉は、食料には困っていない 現在の日本人が忘れている非常に重要な言葉であると思います。将来世代が食料に困らないよう、われわれがこの言葉を再認識し、食料について再度真剣に考えるべきなのではないかと思います。
(所属:東京大学大学院 氏名:真田 圭太郎)

私の住む地方では多くの田畑が広がっている。我が家も祖父母が仕事の傍ら、自分たちで消費するための米や野菜を作っていた。今では年老いた祖父母に変わって父母がそれを受け継いでいる。そんな地方でも若者の農業離れが著しく、高齢者が大変な思いをしながら細々と続けているのが現状であると聞く。丹誠込めて作られた野菜や米は味も良く、何より新鮮で安全だ。しかしながら、わざわざ作らなくともスーパーに行けば野菜も米もすぐに手に入る時代。海外からの輸入品の方が安いこともある。便利な世の中になったと感じることは多い。 しかし、何かの理由で流通経路が寸断されたり、物資が足りなくなったりしたらどうなるだろう、普段の生活では想像できない苦しい生活になることは間違いない。生きる上で食料は必要不可欠である。新しい道路、便利な乗り物、快適な建物。近代的な技術ばかりがズームアップされる世の中で、農業の衰退には非常に危機感を感じる。 自分たちで食べるものは自分たちで作る、今一度食べることを見つめ直し、近代技術の発展と農業の充実が共存した社会を築き上げる必要があると強く感じる。
(所属:株式会社豊和開発 氏名:冨田直人)

■ 特 集 食料問題と土木 ―食の安定確保に向けた地域づくり―  企画趣旨 田中 幹士

そもそも土木技術とは何のためにあるか考えてみれば,田畑を作ったり水路を作ったりと,食料の生産のためがおおもとだったはずと考えると,今回の特集は的を得ていますね。折りしも,食糧自給率低下への関心が高まり,農水省もようやく動き始めつつありますが,これまで何冊か著書を読んだことのある山下惣一氏の「地べたの自給率を高め,その結果国の自給率を挙げることが国としての社会的責任」という考えに共感します。これは世界に対する,そして次世代に対する責任だと思います。こうしたなかで土木技術がどう位置づけられ,どう活用されるかが,重要だと思います。
(所属:東京大学 氏名:尾崎宏和)

■ 2.建設帰農が拓く地平 米田 雅子

記事を読み、初めて「建設帰農」という言葉を知りました。社運をかけて、地域の中小建設業が農業に参入、とあります。ということはUターンというより、Iターン?いや、もともと地域の中で仕事をしてきた建設業だからこそ出来る活動であるから、やはり回帰というべきか。 企業が農業を行う、と聞くと営利に特化したものを想像しがちですが、紹介されている事例を見ると、むしろ過疎地域の活性化や農業再生という営利以外の効果が大きいことを感じさせられます。12月号の他の記事に「築土構木」というキーワードも登場しましたが、「建設帰農」は、土を豊かにして山林を活性化するという、建設業として土木の原点に立ち帰った行動といえるなあと思いました。
(所属:共和化工株式会社 氏名:岡田阿礼)

農業振興に対して様々な施策が打ち立てられてはいるが、長期にわたる農業の低迷に対しては「焼け石に水」という感が否めない。農業振興で最も難しい問題の一つが「担い手不足」である。政府がいくら素晴らしい施策をひねり出しても農業をやる人がいないのだから、農業の振興は見込めない。掲載記事の「建設帰農」は「政府がダメなら自分たちで」という新しい発想での農業経営を紹介していた。兼業農家を会社組織にしてしまったような経営方法であるが、ここまで農業が低迷してしまうとこのように全く新しい発想で日本の食糧自給率を支えていく必要であろう。 現にレストランが経営する農場も出てきている。ただしその場合、これまで継承されてきた屋敷林、鎮守の森、夏祭りなど・・・農村機能・文化の伝承は諦めなくてはならないのだろうか。少々寂しい気もする。
(所属:(株)栄設計 氏名:木村了)

■ COLUMN―3 都市近郊農業の現状・将来 村上 洋子

私が暮らす町の大規模造成地では、多くの人達が、自宅の庭で野菜作りをされています。それに満足できない人は、近所の農家から休耕地を借りて野菜作りに励んでいます。確か市民農園をクラインガルテンと言ったでしょうか。地方都市の活性化提案で昔クラインガルテンの提案をしたことを思い出しました。こんな小さな活動でも農業再生には大きな力になりそうです。建設会社が行う活動と上手く相乗作用を起こせれば、日本の農業の復活も夢では無い様に思います。結局は国民皆の思いを一つにすることが重要なのだと感じます。
(所属:前田建設 氏名:林 克彦)

■ 3. 持続可能な地域づくりと都市農業の役割 武内 和彦

近年、中国産の冷凍食品で世間は大騒ぎとなったが、依然として、日本の自給自足率は低い傾向にある。それにも拘らず、日本には耕作放置地が多く、自給自足回復の兆候が見られないことが非常に残念である。外国産食料のメリットは、国産のものに比べて安く手に入ることが挙げられる。しかしながら、それと引き換えに日本の農業に関する価値の更なる低下や環境問題が懸念される。今後の日本における農業改革を変えていくためにも、土木分野がどのように役に立ち、貢献できるかが大きな課題になると考えられる。
(所属:金沢工業大学 氏名:高柳 大輔)

市町村合併に伴い,必然的に合併後の自治体は都市部と農村部のすべてを視野に入れた行政を余儀なくされるという指摘はなるほどと思い,なかなか痛快でした。また,『地産地消』のほかに『旬産旬消』という言葉も聞いたことがあります。
(所属:東京大学 氏名:尾崎宏和)

人口減少による都市の縮退を都市農業に繋げていこうという提案であるが、都市の縮退はそう遠い時点での出来事ではないであろう。地域志願循環の構想も以前から取り上げられているが、用地の問題等からなかなか実現に至っていない。筆者の言う通り、都市縮退は新しい都市農業・地域資源循環を実現する良いチャンスだと思う。さらに分食料不足も数年間の内に現実になると予測されている。多分、勤勉な日本人は終戦直後のように庭に野菜・カボチャを植え使える土地は全て農園にするであろう。その時点で大切なのは筆者の言うような「地域をどの様に利用してゆくか・・・」という予めの準備が必要だと考える。
(所属:(株)栄設計 氏名:木村了)

■ 土木屋の海外生活 技術者編  第7回 近くて違う国、中国 水野 忠雄

「われわれはこの活動が正しいと信じている。だからあらゆる困難も解決できるのだ。」こんな気持ち、ずいぶん前に忘れてしまった気がします。そういえば血気盛んな高校生の頃、「環境」というものに対して今より遙かに真剣な関心を寄せていたなぁと思い出します。「環境問題」が内包する社会・経済的側面は、個々の人間が求めるユーティリティというミクロ的な切り口から国と国との力関係というマクロ的な切り口まであまりに多元・多様で複雑です。解決できるという見込みのもとに取り組めるレベルの問題ではない以上、まず、「やってみる」。うーん、忘れているのはフットワークの軽さかな?
(所属:共和化工株式会社 氏名:岡田阿礼)

偶然にも最近京都へ引っ越したので、タイトルを見ただけですぐに目にとまった。京都は土木遺産や歴史的遺産がとても多い。その中でも王子橋は地味な方ではなかろうか。それでも地元の人々に愛されて大切にされているようだ。現代の土木施工工事の中でこのように地元の人々から支援され、大事にされている現場はあるだろうか?何より現場で働く人々にそういった意識はあるのだろうか。自分の仕事が地図に残るのだという高い意識を持って仕事に取り組んでもらいたいと思う。
(所属:   氏名:天王 嘉乃)

■ 論説委員会の頁 第17回論説(2008年10月版)「年功序列」社会と「能力主義」社会 魚本 健人

私はこれまで、「年功序列」社会を排除し、「能力主義」社会に変貌させることが今の日本に必要なことだと感じていました。一方、最近では、過去の「年功序列」社会が作り上げてきた技術伝承のスタイルがあることを理解し始め、一体どっちが良いのだろう?と頭を悩ませるようになりました。現在の風潮は、残業はしない、時間外に会社の行事は行わない、社内旅行は控える、などベテランと若手がコミュニケーションを取る機会が少なくなってきていると思います。昔は先輩と後輩が朝から晩まで一緒に行動し、先輩の仕事 のやり方、考え方を肌で感じて学ぶ機会が多かったのではないかと感じます。この記事にありますように「技術の伝承など良い面は残しつつ、新しい能力主義社会を作りあげる」ことができれば、技術者としては理想の社会になり得ると思います。私自身、それが具体的にイメージできてはおりませんが、今後、そういう観点で身の回りの改善に取り組んで行きたいと思います。
(所属:東京急行電鉄株式会社 氏名:小里 好臣 )

■ 土木に見る数字 第4回 1・41 芝 和彦

数字にこだわりを持つのは技術屋(と、いうより男?)らしい発想だが、私自身もそういう話が大好きである。写真を少しかじっているので「黄金比」は非常によく目にする言葉である。「白銀比」は、内容はよく聞くが言葉は知りませんでした。金尺が丸太から正方形を切り出す寸法だったと知って感動したが、どうやって目盛りをふっているのか気になるところです。どっちが美しいの?で、締めくくっているが、今の土木技術者に大きく欠けているは、土木現場を美しく見る「目」ではないだろうか?「質実剛健」という言葉があるが、土木構造物(もちろん土工も含めて)はまさに正しく合理的に設計・施工が成されれば、必然的に美しくなる物だと思う。それを美しいと思うか、思わないかは、個人の美的感覚の違いだと言う人もいるでしょうが、私はそうは思いません。ここで言う美しさとは、まさにこの「黄金比」であり「白銀比」であるからです。どちらが美しいかではなく、人の内にそれらを美しいと感じる感性が存在するのであり、本能と言っても過言ではないはず。美しさと力学が共存関係にあるなんて、なんてドラマティックな話でしょう!花に水をやるように、土木現場に目配せすることで、美しく=より長持ちする土木構造物の創造に努めてきたいものです。
(所属:北海道開発局網走開発建設部 氏名:泉澤 大樹)

■ どぼく自由自題 第7回 土木の「意味」を考える 藤井 聡

この記事を読み,私が学生時代に「土木の起源が築土構木という語である」ことを知るきっかけとなった本のことを思い出しました。「土を築き木を構えて−私の土木史」(日野幹雄 著・森北出版)という本で,幸い,まだ手元に残っていたので,少し読み返しました。 大学の学科名から「土木」が消える中で,「土木の意味」を学生や一般市民に伝えていく方法について,何かヒントが得られる内容があればさらに良い,と感じました。このコーナーのタイトルが「どぼく自由自題」となっていますが,「土木の意味」と考えるのであれば,「どぼく」は「土木」の方が良いと思いました。
(所属:九州大学 氏名:佐川康貴)

「土木」というと世間的にはよくないイメージを持たれていて、最近は大学の学科の名称からも「土木」が消えつつあるようですが、この記事を読んで、「土木」という行為に誇りを持ち、「土木」という言葉を大切にしたいと思いました。
(所属:大林組 氏名:佐々木一成)

■ 学会誌全般・編集委員会へのご意見・要望

土木学会誌の定価ですが、少し高い気がします。この価格設定は妥当なのでしょうか。 確かに内容が内容なだけに判りますけど・・・。もう少し安価に設定できれば、一般の読者が増えるのではないのでしょうか。
(所属:日本シビックコンサルタント(株)氏名:田島久美)

■ その他自由記載

今月号で半年間の学会誌モニター最後となりました。最初モニター依頼の話を聞かされた時は、このような敷居の高そうな誌のモニターになっていいのか不安でした。この半年間、学会誌を読むようになって「土木=硬い」というイメージが、少し抜けたような気がしました。最近の学会誌は読みやすく、土木というジャンルに、親しみが湧きましたし、近づけたと思います。半年間ありがとうございました。
(所属:日本シビックコンサルタント(株)氏名:田島久美)

9ヶ月間、モニターという立場で学会誌に触れてきました。モニターとしてちょっとした感想を書くだけのことですら億劫に感じることがあったのですが、学会誌を作る立場である話題提供者の方々、編集委員の方々は比にならないほど大変苦労されていることと思います。会員が協力しあって学会誌を盛り上げていかなければならないと感じました。
(所属:大林組 氏名:佐々木一成)

© Japan Society of Civil Engineers 土木学会誌編集委員会