JSCE

JSCE Magazine,“Civil Engineering”

土木学会誌

その他の募集

19.公益信託 下水道振興基金 平成22年度 研究助成要項


1.助成の趣旨

公益信託下水道振興基金は、社団法人日本下水道協会の30周年記念事業として将来の下水道事業の振興を図るため、みずほ信託銀行を受託者として設定されました。この基金は、下水道に関する研究を行う研究者及び研究団体に対して助成を行い、もって環境保全に資する調査研究や学術交流が促進されることを目的としています。

2.助成対象研究領

(1) 水域の総合的な水管理システムの一環として、「雨天時に雨水とともに流出・排出する汚濁負荷の挙動」を明らかにする研究(詳しくは4ページ「助成対象研究テーマの基本的な考え方」をご覧ください)。
(2) 都市の水循環改善を目的に下水処理水または下水道施設を活用した環境改善のための研究(詳しくは5ページ「助成対象研究テーマの基本的な考え方」をご覧ください)。
(3) その他助成の趣旨に沿った研究
※ 過去の助成研究内容については、社団法人日本下水道協会ホームページの「お知らせ」の報告欄の「公益信託 下水道振興基金に基づく研究助成」の「研究内容ガイド」をご覧ください。

3.応募資格者

研究者が個人及び研究グループの場合には、応募者の所属や資格は問いませんが、本人の所属する機関の承諾が得られている人とします。
研究者が法人の場合には、社団法人日本下水道協会の法人会員は資格がありません。
研究代表者は、当該研究組織を代表し、その中心となって研究のとりまとめを行い、研究助成金の管理および報告事務等を含めて、研究計画の推進に責任を持ちうる人とします(共同研究者からは、申請に先立ち必ず当該研究への参加の承諾を得ておいてください)。

4.助成金の金額と期間

(1) 研究助成金総額    1,000万円程度とします。
(平成21年度は、4件について、100万円から200万円の助成をしました。)
(2) 助成期間は、原則として助成金給付日より1年間とします。
(3) ただし、継続助成を希望される方は、毎年申請書の研究内容欄に前年度までの研究進捗状況も記入のうえ、申請書を提出していただき、そのつど審査の対象とします。なお、その継続研究に対する助成期間は最長3年を限度とします。

5.助成金の使途

研究に関係した費用であれば、機材費、会場費、消耗品費、旅費、謝礼金等を含め、その内容を問いません。ただし、人件費は認めません。

6.助成金の返戻

申請研究が中止または継続不能となった場合は、助成金の全部または残りを返戻していただきます。

7.報告の義務

助成金を受けた研究者または研究団体は、助成期間終了後、3ヶ月以内に研究報告書及び研究結果概要並びに会計報告書を提出していただきます。なお、当該研究報告書及び研究結果概要については、下水道協会誌等において公開いたしますので、あらかじめご了承下さい。

8.選考方法及び通知

学識経験者からなる運営委員会において厳正に審査・選定いたします。 また、その結果は、文書でご通知いたします。

9.選考に当たっての勘案事項

(1) 本基金が助成するにふさわしい研究
本基金の設立目的である「望ましい水環境と循環型社会の創造」に貢献し、下水道の振興に寄与し得る研究であること。
(2) 社会的・学術的要請度の高い研究
時代や社会の要請度・緊急度が高く、研究成果の社会的・学術的意義が大きい研究であること。
(3) 先駆的・発展的な研究
これまでに行われた研究を踏まえたうえでの、先駆的・発展的な研究であること。
(4) 資料・知見の蓄積
研究により得られた資料・知見が、当該分野・当該地域において、さらには各分野各地域においても相互に連鎖的に今後の調査研究に寄与していくものであること。
(5) 研究遂行能力
研究目的に照らして研究計画・研究体制がしっかりしていて、かつ研究者の意欲・能力も高く、高水準の研究成果が期待できること。
(6) 経費の合理性
研究目的並びに研究計画に照らして、経費の見積が合理的かつ適正であること。

10.応募方法

(1) 所定の申請書に必要事項を記入し、捺印の上、事務局宛て書留でお送り下さい。なお、提出された申請書は、返却いたしません。
(2) 申請書提出にあたっての留意事項
申請書は、助成対象の選定に当たっての審査資料となりますので、研究計画の作成にあたっては、変更の生じることのないよう十分検討の上、作成願います。

11.応募締切日

平成22年5月末日

12.助成金交付

平成22年7月〜8月を目途

13.申請書の請求先及び送付先

〒103-8670 東京都中央区八重洲1−2−1
みずほ信託銀行 法人営業部 加藤敦子
電話:03-3274-9177
FAX :03-3274-9302

14.問 合 先

・研究課題に関すること
〒100-0004 東京都千代田区大手町2−6−2(日本ビル1階私書箱74号)
社団法人 日本下水道協会 総務課 古俣治雄
電話:03-5200-0811
FAX :03-5200-0839
・申請一般及び助成金の使途に関すること
〒103-8670 東京都中央区八重洲1−2−1
みずほ信託銀行 法人営業部 加藤敦子
電話:03-3274-9177
FAX :03-3274-9302

別添資料
助成対象研究テーマの基本的な考え方

1.雨天時に雨水とともに流出・排出する汚濁負荷の挙動

我が国の下水道事業の現況(平成20年度末現在)は、処理人口普及率72.7%となっている。このうち、人口30万人以上の都市の処理人口普及率は89.6%である。一方、人口5万人未満の中小市町村における人口普及率は43.8%にとどまっている。このようなことから、今後の下水道事業の一つの柱は人口5万人未満の中小市町村における整備の促進にあることはいうまでもない。
一方、下水道の整備が進んだ地域では、行財政改革、公共事業の見直しが進むなか、景気の一層の冷え込みも相まって、下水道の建設はもうよいのではないか、といった見方もされてきている。下水道の整備によって、公共用水域の水質は一頃の危機的な状況を脱してかなり良好な様相を示してきている。しかしながら、いまだに環境基準を達成していないところが残っており、利水環境・親水環境ともに満足する水準には達していないといわざるを得ない。このことは依然として何らかの汚濁源・汚染源が水域に排出されていることを示している。
このような汚濁源は、下水道のような排水処理システムの計画区域以外にあるもの、いずれ区域内に取り込まれるもの、取り込まれているもののシステムの特性上水域に排出されてしまうもの(合流式越流水、分流式雨水とともに排出したり、処理場での除去対象に現在なっていないもの…)などである。その多くは排水システムを構成する施設の内外に晴天時に蓄積し、雨天時流出雨水とともに水域に集中的に排出され、ショック的な負荷を与えるとともに年間を通じて相当の負荷総量となり、その影響度は排水処理システムの整備が進むほど相対的に大きくなっている。このような汚濁負荷を水域に出さないようにしない限り、水環境を清浄に保つことはできない。このことは下水道未整備の地域についても、将来必ず対処しなければならない課題である。
この問題については、これまでも非点源対策、市街地雨水流出汚濁対策など調査・研究が行われ、また合流式下水道の改善などが一部進められてきたが、下水道事業の点源対策が現況の段階に至ったこの時こそ、一つの流域における総合的な汚濁のメカニズムを把握し、清浄化のための効果的な対応システムを明らかにして、いよいよ本格的に事業に取り組む方向を確立すべき時期であるといえよう。雨水・用水・排水が、上流から下流、水源から河川・湖沼・海へと流れる間に、汚濁物質が移送される様相を、水と物質の収支としてとらえ、そこから流域の地形・地勢・土地利用・植生・生態環境などの地域特性に応じた汚濁負荷削減の手法を提示していかなければならない。特に現段階では、雨天時に雨水とともに流出する汚濁負荷の挙動を明らかにすることが、効果的な施策を打ち出し、その必要性について社会的な認知を得ていくためには欠くことのできない課題である。
このような観点から、水域の水管理のあり方を「雨天時汚濁流出」をキーワードとして下記のような分野を対象とした研究に対して助成を行う。
○降雨(レーダー雨量データを含む)及び水文・水理データの収集・解析
○降雨のパターン化(雨水域の移動を含む)
○雨水流出のモデル化(浸透・滞留・貯留などの効果を考慮)
○雨水流出現象のシミュレーション
○経時変化降雨データに即応する、雨水施設の運用・制御
○雨水流出量の制御(施設の再構築、再編成、施設群の統合管理を含む)
○汚濁物質の流出・蓄積に関するデータの収集・解析
○雨水流出に伴う汚濁物質の流送のモデル化
○雨天時汚濁物質流出のシミュレーション
○排水施設からの雨天時流出負荷の削減方法
○非点源(面源)汚濁負荷の削減方法

2.都市の水循環改善を目的に下水処理水または下水道施設を活用した環境改善のための研究

都市の水・緑環境を向上させるためには、下水道の普及拡大はもとより汚水処理の高度化などを進めるとともに、下水道が有する水路などの施設を効果的に活用することが重要である。このうち、下水処理水と下水道施設の活用について以下に述べる。
(1) 下水処理水を活用した良好な環境づくり
下水道普及が進んだ地域においては、合流式下水道の雨天時の未処理下水対策や水質環境基準を満足させるための下水処理の高度化(高度処理)など、下水道の質的向上を図る必要性があり、計画的な機能向上を進めることにより、良好な水環境づくりに努めることが求められる。下水道は環境における汚濁負荷除去システムの中核的な存在であり、地域や社会の要請に応じ、処理水を水資源として積極的に活用すべきである。具体的には水洗便所用水等の雑用水や防災用水等の利用等を更に進めるとともに、河川維持用水の確保を目的とした下水処理水の上流還元等も行うべきである。また今後は施策としての環境リスクの総合管理や環境ホルモンの対応等も考えていかなければならない。
下水処理の高度化にあたっては、流域的視点をもちつつ費用負担のバランスを考えながら、関連自治体が着実に事業を推進するための事業制度の検討が必要である。
また、地下水の涵養、あるいはヒートアイランド防止(地球温暖化防止)の観点からも、雨水の浸透を計画的に推進することも重要である。
(2)下水道施設を活用した環境づくり
都市の環境づくりでは、水と緑の環境整備を基本として、その中での下水道の役割を明確にし、施策に反映していく必要がある。下水道は都市のライフラインとして環境改善に資するものであるが、オープンな雨水渠など「目に見える」下水道ネットワーク等を活用することで水と緑あふれる都市環境の創出に貢献すべきである。
都市における水と緑のマスタープランづくり、関連自治体との連携や他部門との協調事業の採用、市民・NPOとの連帯による計画段階から維持管理段階までの共同作業などを進める必要がある。
具体的には、水と緑のネットワーク形成のためのせせらぎの復活、環境学習の場の提供等、あるいは処理場上部空間の緑化や光ファイバーの管きょ内収容、温冷熱エネルギーの有効活用等も考えなければならない。
このような観点から、都市の健全な水循環を回復するために、広く都市環境に関連する各分野の知見、知識を集め、地域の水環境改善のための研究や運動が促進され都市の望ましい水環境が実現されることを期待し、下記のような研究に対して助成を行う。
○ヒートアイランド現象、都市型集中豪雨の発生メカニズムの調査、研究
○下水処理水または下水道施設を活用した環境改善についての調査、研究
○都市の水循環改善の評価手法の研究
© Japan Society of Civil Engineers 土木学会誌編集委員会