平成30年度土木学会全国大会

実行委員長挨拶


挨拶 平成30年度土木学会全国大会を迎えて
「社会システムのイノベーション創出のために ~未来に向けて土木が担うもの~」
Role of Civil Engineering in Developing Social Innovations


自治会長の写真

和泉 晶裕 IZUMI Akihiro
平成30年度土木学会全国大会実行委員長
国土交通省北海道開発局長

平成30年度土木学会全国大会を、8月29日(水)~31日(金)の3日間、北海道大学を中心に開催いたします。北海道での全国大会開催は、平成22(2010)年以来8年振りであり、翌年3月の東日本大震災の後、全国を一巡することになります。この間も、一昨年の熊本の震災をはじめ、豪雨、暴風雪など、全国で大規模な災害が続発しています。

北海道においても、一昨年の8月から9月にかけて、4つの台風が勢力を保ったまま相次いで来襲し、洪水や土砂崩れ等による広域かつ甚大な被害が生じました。この際には、被災箇所の応急復旧を、長年の経験から地域をよく知る地元の土木技術者の皆様が迅速に対応し、被害の最小化、物流・人流の早期確保に尽力したうえ、産学官の連携のもと土木学会においても被害状況を調査・分析し、新たな知見を活かした復旧工事に繋げています。特に被害が集中した日勝峠においては、10年ほど前に開通した道東自動車道を早期に交通確保し、国道の代替路としても機能させるとともに、標高の高い国道の66ヶ所の被災については、厳冬期を含む厳しい気象、多数の工事の輻輳等の条件の下で、関係者間の綿密な情報共有・連携により工期を短縮し、約1年2ヶ月の期間を経て通行止を解除した一連の取組が、土木学会技術賞を受賞したところです。

このような取組は、全国の被災地で進められており、地道な積み重ねによって土木に対する世の中の見方、評価が変わってきた8年間だったのではないかとも思われます。

一方、国全体の人口減少、少子高齢化による担い手不足があらゆる分野で進み、特に地方の土木分野では、技術を継承する担い手がいないという課題が深刻化しています。

担い手不足は、災害時の応急復旧、復興の遅れはもちろん、平時においても老朽化に起因する事故の発生や適時の補修ができないことによる維持管理コスト、更新コストの増大が懸念されます。これを未然に防ぐためには、生産性の高い新技術の導入や、その担い手の確保・育成が急務です。ICTの普及、女性の社会進出、国際化の進展など社会の変化も進むなかで、今こそイノベーションを創出し、社会実装を進めることにより、地域の課題を克服し、新たな社会を創造していく必要があります。

ところで、今年は「明治150年」の節目の年ですが、実は「北海道」が、松浦武四郎が提案した候補をもとに命名されてから150年目でもあります。当時、北海道にはアイヌが約2万人、和人が約10万人暮らしていたといわれていますが、その後の開拓政策により、全国各地からの移住者が次々と道内各地に入植しました。

これにあわせて、国内外で経験を積んできた土木技術者や、札幌農学校で土木を学んだ学生らが、積雪寒冷地という厳しい条件の下でインフラの整備を進めました。石炭を内地に産出するための鉄道や港の整備、広く分布する泥炭地で農業を行うための土地改良や治水対策、豊富な資源を活用するための電力開発などが各地で進められました。この過程では、小樽港において、我が国初のコンクリート製外洋防波堤を建設した廣井勇や、その教え子の一人で石狩川の治水計画立案や護岸ブロック開発を行った岡崎文吉、また琵琶湖疎水の完成後に来道し、旭川への鉄道トンネルの難工事を指揮した田辺朔郎など、土木史をつくってきた数多くの先輩方も活躍し、新たな技術が開発されました。

その経験や技術は、さらに改良が加えられて国内外の土木インフラの整備に応用され、人々の生活を改善し、産業を発展させてきました。

北海道の人口は、今では500万人を超えており、食料生産で日本全体を支えるとともに、来道観光客数は、国内から年間約600万人、外国人も約200万人を迎えるまでになりました。しかし、人口減少、少子高齢化が全国より10年早く進むなかで、生産空間をどう維持し、担い手を支えていくか、が問われています。

今回の全国大会では、150年の歴史を振り返りつつ、現在のさまざまな課題解決に向けたイノベーション創出のため、未来に、また世界に向けて土木が担うべき役割を参加者みんなで考え、その思いを全国各地に持ち帰り、世界に展開していただきたいと考えています。

パネル展示や見学会、映画会では、土木遺産に見る150年とそこで使われた技術の紹介を通じて、大会に参加する研究者、技術者だけでなく、広く学生、市民の皆様にも興味をもって見ていただけることと思います。札幌市街地にも土木遺産がありますし、近年、道内各地の土木遺産を活用した取組も始まっていますので、大会の合間や前後に、ぜひ本物も見て先人の技術とチャレンジ精神を感じていただきたいと思います。

本大会は、土木学会の7つの研究部門が一堂に会する唯一の機会であり、最大かつ最重要行事です。例年より早い8月末の開催ですが、北海道では過ごしやすい時期に入りますので、全国から一人でも多くの学会員に参加いただき、学術・技術の研鑽を積んでいただくとともに会員相互の交流、情報交換を通じて、実り多い大会になりますことを祈念し、挨拶といたします。