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JSCE Magazine,“Civil Engineering”

土木学会誌

■土木学会誌2012年10月号モニター回答


■ 第20回 逞しい想像力、積極的な発信、そして実行 小野 武彦

工事の安全管理の例で、計画どおり行うことには「うるさがれたり、時には嫌われたり」することがあるというような記述があるが、まさにそのとおりだと思われる。建設会社の現場にとってみれば、安全もさることながら、適切に進捗管理して工事を進めることも(こそ)重要なミッションであり、安全管理をどこまで徹底できるかというのは、ともすると、進捗管理とのバランスの中でさぐられかねない。そうであるならば、進捗管理とは無縁の外部の方(外部組織)の目を招き入れて、建設会社とは切り離された視点でチェックを受けるような仕組みが有効と考えられるし、またそうした外部の方の視点にも、記事の指摘するような、技術力に裏打ちされた想像性が求められよう。
(所属:国交省 氏名:鈴木高)

■ 東京駅丸の内駅舎復原工事 川口大敏

首都圏直下型地震がそう遠くない未来に生じると考えられる中、この駅舎の免震耐震補強・復元工事が関係者の不断の努力により完成し、東京のシンボルとしての役割を果して行くことに、 今後大いに期待が持てると感じた。
(所属:高山運輸建設(株) 氏名:高澤 謙二)

■  第92回 早稲田大学名誉教授 吉村 作治さんに伺いました

一見土木と関係がなさそうな専門家の方による語りが特徴である「この人に聞く」は、土木関係者では思いもつかないような土木の可能性を伺うことができるので、毎号どんな人が登場するのか、どんな話が展開されるのかちょっとした楽しみになっています。今回の記事もとても有名な方が登場されておりましたが、ピラミットと公共事業の関連性は大変驚くところがありました。ピラミッドは歴史的にみても無駄な公共事業の最たるものだったかもしれませんが、今ではエジプトを支える重要な観光資源の一つとなっています。公共事業は無駄が多いと批判されることが多い今日ですが、多くの分野に興味を持ち広い視野をもって公共事業と向き合うべきだと改めて感じました。
(所属:福島県 氏名:小林元彦)

記事の内容は、非常に興味深く読ませて頂いたが、質問の内容と回答がいまいち噛み合っていない印象を受けた。回答を誘導しすぎた質問になっていたのではないでしょうか?
(所属:東京急行電鉄 氏名:鶴長 輝久)

■ 第18回  宮本 善和さん サンゴ礁を守る 多田 直人

本業で得られるノウハウなどを活かして本業以外で社会に役に立つ活動をする、というもの。趣味というよりは、専門をいかしたボランティア、あるいは最近は「プロボノ」とも呼ばれることがある。社会にとってはそのようなノウハウある方々のプロボノは歓迎すべきものであろうし、また本業に対しても、長い目でみればそうしたプロボノでの経験がよい効果をもたらすだろう。よって、こうしたプロボノがもっと一般的に行われるようになってほしい。ご本人のご家族の理解に加えて、ある程度は本業を行っている企業の理解も不可欠と理解するが、そうした、社会の側において、各人のプロボノを支えるような雰囲気づくり(あるいは制度づくり)が進むことを、心より期待したい。
(所属:国交省 氏名:鈴木高)

■ 企画趣旨 三浦 良平

「IFM・世界銀行年次総会」が日本で開催されました。講和条約から東京オリンピックの頃までは,日本は世界銀行からの借入国であり,その融資の中には,黒部第四水力発電,東海道新幹線,東名高速道路,首都高速道路等,土木と馴染み深い事業があることを知りました。年次総会が経済ニュースとして伝えられる裏で,奇跡の復興への土木の貢献を考えさせられました。さて,終戦から借入国卒業までが概ね25年,高度経済成長からバブル崩壊まで約20年,その後の失われた20年,様相が変化する中,震災を契機とした次の20年?の目指す「羅針盤」を拝読すると,ダムや道路といった分かり易い貢献ではないだけに,難しい時代を思います。
(所属:東電設計(株) 氏名:恒國光義)

■ 記事1 インタビュー 地域が抱える難問を解決する [語り手]石川 金治 氏 [聞き手]三浦 良平、南 浩輔

特集「羅針盤」では,「市民」が一つのキーワードのように思います。しかし,これまでの土木が決して(「官」に対する)「民」に開かれていなかった訳ではないのは確かです。適切な例ではないかもしれませんが,‘これまでに経験したことのない’大きさの最近の台風での死者の数は,復興期までの伊勢湾台風等よりも概して2桁少なく,市民の安全へ貢献してきたことは確かです。一方,高度経済成長期には,官の主導する経済,工業に重きがあるように市民の目には映ったかもしれません。それが,今回の震災を契機として,経済・効率よりも生活・安全が,再び,求められようになり,記事1や2,あるいは論説は,まさに「民」への回帰を述べたものではないでしょうか。昔との違いは,市民に軸足を置いた活動の中で「行政の参加」(山崎亮『コミュニティデザインの時代』)を求めていこうとすることのように思います。
(所属:東電設計(株) 氏名:恒國光義)

一国民としての私の感想であるが、公共事業に対して2つの悩ましい思いがある。1つ目は、国民の要望が公共事業に反映されにくいことである。国民発信の公共事業が少ない気がするのだ。2つ目は、そもそも知識・技術不足のために要望する公共事業のあり方自体がわからないことである。国民発信の公共事業は、絵に描いた餅に終わる可能性が高く、さらには餅すら描けないことが想像される。以上の悩みに対しての1つの回答が本記事で述べられていたように思う。国民と行政の間に、筆者の技術的視点をベースにしたNPOが入ることで、公共事業が非常に円滑に進められるように思えた。また、筆者の根気強い活動に感銘を受けた。
(所属:電源開発株式会社 氏名:小林憂三)

■ 記事2 インタビュー 見える化で最適解を見いだす [語り手]横田 尚哉 氏 [聞き手]三浦 良平、黒山 泰弘

恥ずかしながら本稿を読んで、初めてVE(バリュー・エンジニアリング)なるものを知りました。長期の供用および多大な費用を要する公共事業の資金投入に際し、コスト縮減のみならずZBB(ゼロベース・バジェッティング)という計画の見直しまでを視野に入れたVEは最適なツールの一つであることが分かりました。また、「見える化で最適解を見いだす」とのタイトルにもあるとおり、問題共有化のコミュニケーションツールとしても優れており、私自身も建設コンサルタントとして有用な手法であると思いました。何かと一般の方々に理解されにくい土木業界において、「見える化」で事業の透明性と必要性を訴えていく技術も習得しなくてはならないと感じました。
(所属:開発設計コンサルタント 氏名:野嶋潤一郎)

■ 記事3 インタビュー 地球環境改善に貢献する [語り手]島谷 幸宏 氏 [聞き手]河野 俊郎

趣味がJリーグ観戦ということもあり、本稿でサッカー関連の話が記載されていたため興味深く読んだ。一例として、打ち水をしてサッカーやイベント等に割引入場させるなどインセンティブを与えることで身近に都市気温の低減、環境改善に役立つ工夫をしていた。このような良い事例は、我がホームタウンチームのサポーターミーティングで提案したいと率直に思った。
(所属:高山運輸建設(株) 氏名:高澤 謙二)

かつて路地がコミュニティーの背骨のような存在だった頃、打ち水はよく見られた光景だったと思います。しかし、打ち水から環境を考えるという発想ではなかったでしょうから、現代的な意義として、環境を考えるきっかけにするという考えは興味深いものでした。特に、福岡の“打ち水に水道水を使ってはいけないというルール”に環境を考えるきっかけとなるエキスを感じました。水道水を使わないとすると、川や池から水を汲んでくる、雨を貯めておく、下水処理水を使う、等の方法が浮かびます。それぞれの方法を考えると、環境を考える裾野が確かに広がる気がします。
(所属:メタウォーター(株) 氏名:楠本光秀)

■ 記事4 期待の鉄道建設を推し進める ─東北縦貫線整備─ 柳澤 則雄

鉄道工事は、工事を実施するための制約条件が多いことから一つの事業が完了するまで、非常に長い年月がかかる。そのため、多くの関係者の方々と調整が必要となるが、本工事での特筆すべき点は、高架下の店舗の移転を行わず、工事を実施されたことだと思う。長期間に及ぶ鉄道工事については、工事関係者だけでなく工事箇所周辺の地域の方々の協力無しには成しえないため、工法を工夫することで、高架下の店舗に影響なく工事を進めることが出来たことは、工事を円滑に進めるための大きな成果であったと思う。今後、自らの業務の中でも、費用の削減・工程の短縮だけでなく、地域との強調が図れるよう工法等の工夫を行えるよう努力したいと思った。
(所属:東京急行電鉄(株) 氏名:勇 龍一)

私は、上野−御徒町間の混雑を実際に感じながら、京浜東北線南行で毎日通勤しています。東北縦貫線工事の線路改良部は日常的に車内から目にする一方で、神田駅付近の高架橋新設部は車内からはよく分かりませんでしたが、本記事では断面図が紹介されており、新幹線との重層構造であることが今回分かりました。限られたスペースの中で、工事トラブルに備えた様々な対応策の検討に感心する中、一番興味を持ったのが、騒音対策と近隣への圧迫感低減策として防音壁材料に透明のポリカーボネートの使用を計画していることです。完成イメージ図を見ると、騒音対策・圧迫感の低減といった本来機能に加え、透明資材の使用による景観性の向上が付加価値として生まれていることが非常に印象的でした。
(所属:(一財)日本水土総合研究所 氏名:橋 直樹)

■ 第2回 概要報告 議長:阪田 憲次(第98代会長) 社会安全について

本テーマは、東日本大震災以降数多く特集が組まれ、様々なインタビュー記事が出たところであるが、今回の内容は、その振り返りとも言える内容であり、読者へのリマインドとして効果があったと思う。(私自身にはそういう効果があった)様々な先進的な取り組みも大切であるが、このような振り返りに関する記事も大切であると感じた。
(所属:東京急行電鉄 氏名:鶴長 輝久)

■ 第11回 海外で活躍するトンネル掘削スペシャリスト編 阿部玲子/志田 翔平、相沢 圭俊

「トンネル工事現場に女性は入れない」と言い伝えられていた時代に、「いつか入ってやろう」という強い意志を持ち続け、その後実現した姿に敬意を表さざるを得ません。そして、今やトンネル掘削のスペシャリストになられている。誇るべき技術者です。登壇者の「あきらめないでほしい」というメッセージを心に強く刻みたいと思います。
(所属:メタウォーター(株) 氏名:楠本光秀)

■ 企画趣旨 黒山 泰弘

富士山のごみの問題は、山だけでなく、富士山山麓の周辺河川内にも生じています。山中湖が源流の桂川(相模川)も出水後の河川内には、水がきれいな分、ペットボトル、空き缶、ビニール袋等の腐蝕しないごみが河床や立木の根元とかにはっきり見えます。数年前に河川調査を初めて行った時に、幽霊屋敷のようで、愕然としたことを思い出しました。今回の世界遺産への登録申請は喜ばしいことと思いますが、これを契機に、山を含めた地域全体の持続可能な自然環境の保全・再生の事業を国家プロジェクトなみの計画として押し進め、将来の子供たちのために“自然環境”を残す手本として取り組んでもらいたい。それぐらいの価値があり、国内にとどまらず世界中からの注目を集めると思います。
(所属:小柳建設 氏名:金原義夫)

■ Part 5 世界遺産・富士山に向けて ─求められている土木工学から風土工学への回帰─ 竹林 征三

本記事を読んで、過去において風土工学を提唱していた故佐々木 綱先生(京都大学名誉教授)の 言葉を思い出しました。【土木と風土は言葉としては大変よく似ているが、そのイメージは大変異なり、土木は男性的イメージを、風土は女性的イメージを連想させる。従って、土木工学は機能的(男性原理的)な面の研究が主体となり内容としては4つの横軸「構造」「水」「交通」と4つの縦軸「計画」「設計」「施工」「環境」とがある。一方風土は、土木施設を建設する対象地域に根ざしている「心性」のようなものでものであり、長年そこにすんでいた住民の共通の「思い入れ」や「憧れ」「祈り」であろう。それは「成功と挫折から生まれた伝統的欲求」ではなかろうか。風土工学という場合は、対象地域に潜む心根に適した技術を駆使して、心根を形で表現することである。・・・佐々木綱著 人生工学うらおもてより。】

私は、経済的価値を評価する時代すなわち効率、利便性を追求する時代から人間の心、利他的、道徳的な評価を重んじる時代がもうすでにきていると考えています。その為、土木的手法ではなく風土工学を手法とした社会基盤整備のあり方、心安らぐ豊かな地域づくりとはなにかとこの記事を通じて考えさせられました。
(所属:阪神高速道路(株) 氏名:山田 清敬)

■ 小学生に土木を教える! ─空から見るダムと橋─ 吉川弘道、山口博之

このような取組みを通じ、若い世代に土木の魅力と必要性を伝えていければと思いました。土木に携わらない人は、その投資額などに目が向き、自分が利用しないことを理由に必要性を否定することが多いと思います。このような教育をきっかけに、必要性の面も理解してもらえるような風潮になればと思いました。
(所属:日特建設 氏名:田中 尚)

以前の学会誌にも投稿されていたが、土木工学については、一般の方への情報発信等が下手な分野であると思う。そのため、本記事のように小学生などの若年層に対して土木構造物の魅力を伝えることは、非常に重要な取り組みだと思う。今回の小学生の児童などの若年層だけでなく、一般の方に対しても、まずは土木構造物の魅力を知ってもらい、興味を持ってもらうことからはじめることで、「土木」に対する理解が得られると思う。
(所属:東京急行電鉄(株) 氏名:勇 龍一)

この記事を読んで、プレゼンテーションにおける「見せ方」の重要性を改めて感じました。最近ではWEBの利便性や3D技術の進歩が、PCの高度化に伴って利用し易くなっていると思います。特に土木構造物においては、2次元の図面や写真だけでなく、3次元の立体的な映像によってより理解が深まる部分も大きいと思います。プレゼンテーションは教育の場や学会、工事における近隣住民や施主への説明等、必要性に合わせて様々な機会があるため、データを示すことも重要ではありますが、「発表する側にとって何を伝えたいか」ということを念頭に置いた上で、聞く側に興味を持ってもらうための「見せ方」も大切な要素であると感じました。
(所属:東洋建設株式会社 氏名:山野 貴司)

■ 東京駅丸の内駅舎保存・復原工事 川口 大敏、神品 英夫

東京駅の赤レンガ駅舎のドームが原型に復すると聞き、原型はどんなものだったのだろうかと外観ばかり気にしていた。しかし、そこは首都圏の最重要駅であって、免震工事も併せて行っていたとは、さすがではあったが、この免震に関する工事が取り上げられるところは少なかった気がする。首都の代表する駅としての歴史を最新技術の安全が支え、免震と共に駐車場スペースの整備というインフラ整備も併せて実施しているところにこの工事についてももっとアピールしてもよいと感じた。空襲によって変化してしまった駅舎の姿を取り戻すという景観上も歴史上も重要なことの中に、土木として重要な駅周辺整備も併せて取り上げたこのリポートは興味深かった。総武快速線の連絡となる地下通路で大きく工事を行っているなぁと感じたが、これほどまでの大規模な工事とは気付かなかった。今後も、こういった歴史と最新技術の融合した都市施設の整備が出てくることを期待したい。
(所属:中野区 氏名:諸井 敬嘉)


© Japan Society of Civil Engineers 土木学会誌編集委員会