2022年7月号 会長就任挨拶


土木学会の特徴と土木グローバル化への対応


上田 多門 土木学会第110代 会長

6月10日に開催された総会において第110代会長に選任された。歴史のある土木学会であり、その重責を感じている。新型コロナによるパンデミックとウクライナ問題という世紀的な事態の中で土木学会のかじ取り役を担うことになった。このような世界的な課題解決に土木は関わりを持たずには済まない。この意味では土木学会としても注視していかなくてはならない。
土木学会はユニークな存在である。国内的には日本工学会から分離独立を最後までせず支えた学会だからであり、国際的には産官学の技術者が集い技術活動を行っている数少ない土木系学会だからである。従って、土木学会の創立は他の学会より新しく、他の国では土木学会が存在していなかったり、あっても活動が活発でなかったりする事実が見られる。つまり、土木という総合的な分野の諸課題に対応することができる世界的に希少な組織なのである。学会員の皆さんには、この特徴を生かして国内外の課題に向けて土木技術者あるいは土木に関心がある者として可能な社会への貢献をするために土木学会を活用していただければ幸いである。
現在の日本の土木の状況は決して好ましいものではない。建設市場が長期的に縮小傾向にあり、研究分野としての土木工学が他の分野と比較して必要性が小さいと見られている。実はその原因が日本の土木の実力が海外の主要国と比較して劣っていることにもあると考えられる。家田前々会長の下「日本のインフラの体力診断」を行いその事実を明らかにし、谷口前会長の下「土木のビッグピクチャー」によって土木のありたい将来像を示した。私の会長プロジェクトとしては、土木人材に視点をおき、研究者と技術者に日本の実力を把握してもらい、自分たちで議論するプラットフォームを提供し、これからグローバルな課題を解決できる人材として育つことができる道筋を作る。さらに、海外が受け入れてくれる魅力的な土木プロジェクトの創成の具現を目指す。
最後に、土木と同様に地位の地盤低下が見られる建築と協働して、日本の建設分野のあるべき姿を目指すために、2021年に作られた日本建築学会と土木学会との協働の仕組みを開始させたこともお伝えする。この協働はグローバルな課題への対応にも重要である。
この1年間、新たな視点も加えて社会へさらに貢献する土木学会となるよう尽力する所存である。みなさんのご理解とご協力をお願いするとともに、ご意見などを土木学会(https://committees.jsce.or.jp/chair/)に寄せていただければ幸いである。
© Japan Society of Civil Engineers 土木学会誌編集委員会