公益社団法人土木学会


平成15年度認定
稚内港北防波堤ドーム
稚内市 竣工年:1936(昭和11)年/1980(昭和55)年復元
海陸の連絡を波飛沫から防護する類例のない設計であり、原型保存に徹した復元と補修で次代へと受け継がれるドーム型有覆防波堤。

 稚内港北防波堤ドームは、北海道と日露戦争後にわが国の領土になった南樺太とを結ぶ稚泊航路の施設として誕生しました。防波堤の陸地側を岸壁とする設計でしたが、海が荒れると防波堤に激突する波しぶきがひどくなるため、列車や乗客を包み込むようなドームを計画したのでした。こうしたデザインは世界でもほかになく、ここだけの珍しい構造物です。
 稚内港の連絡船作業を風雪から守ってきたドームは終戦後、航路が消えたため石炭置き場や倉庫に使われました。昭和50年代になると老朽化により一時は解体の方針が立ちますが、稚内市の発展を伝える記念構造物である、と地元からの保存要請が上がり原形のまま改修復元されました。
 現在ではドームを資産として活用する「みなとまちづくり」の取り組みが行われ、地元アマチュアバンドによるコンサートやスノーキャンドルがドームを幻想的な光で彩るイベントなど、市民のイベントスペースとしても活用されています。


稚内港北防波堤ドーム

イベント会場として利用されています

ドーム構内の鉄道桟橋駅と稚泊航路乗船出入口 (昭和11年)

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用語解説
稚泊航路(ちはくこうろ)
1923〜1945年まで稚内と樺太(からふと)の大泊(おおとまり)(現:コルサコフ)を結んだ鉄道連絡船のこと。1999年5月から東日本海フェリーのアインス宗谷が両市の港を約5時間半で結んでいます。

北海道選奨土木遺産カード : No.5 稚内港北防波堤ドーム

選奨土木遺産マップ