公益社団法人土木学会


平成23年度認定
虻田発電所
虻田郡洞爺湖町 竣工年:1939(昭和14)年
洞爺湖と噴火湾の落差を利用した巧みな発電計画により、戦中から戦後にかけて、北海道の産業発展に貢献した現役利用の発電所です。

 虻田発電所は、カルデラ湖である洞爺湖を貯水池とし、湖面標高が84mと高く、海(噴火湾)までの距離が近い地形を利用して開発された19,500kWの水力発電所です。
 昭和12年8月に着工し、昭和14年10月に完成しました。完成当時は、専ら製鋼、製鉄の街となった室蘭市に送電され、急速に進展した軍需産業を支えました。
 日本が高度経済成長期に入った昭和33年頃、室蘭の富士製鐵がホットストリップミルの稼動を始めました。この設備は灼熱した鉄魂をローラーの列に送り一気に圧延して板材にするものであり、最大使用電力は5万kWで、ローラーが鉄を噛み込んでから10秒で一気に最大負荷となり、15秒くらい継続した後に10秒で無負荷となる変動負荷でありました。当時の北海道電力の系統容量が昼100万kW、夜50万kWであったことから、系統の10%にも及ぶ大きな変動に対応するため、鉄魂がローラーに入る直前にこれを検知し、信号として虻田発電所に送ることによって負荷と同時に発電出力を増加する追従制御を行う機能を導入し、戦後の産業発展を支えました。これは、洞爺湖の湖水を噴火湾に放流するため、瞬時の運転開始と停止、出力変更が可能である特徴を活かしたものであります。


建設当時の洞爺湖(後方は羊蹄山)

完成時の虻田発電所と調圧水槽


工事中の導水路

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北海道選奨土木遺産カード : No.28 虻田発電所

選奨土木遺産マップ