土木学会 平成26年度全国大会 第69回年次学術講演会

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基調講演

会長講演  平成26年9月11日(木)14:00~14:45 ホテル阪急エキスポパーク


高知工科大学 副学長
磯部雅彦 ISOBE Masahiko
第102代土木学会会長
学会歴
1975年 学生会員
1978年 正会員
1993年 学会誌編集委員会幹事長
1995年 フェロー会員
2006年 理事
2007年 海岸工学委員会委員長
2008年 関東支部長
2009年 副会長
2010年 論文集編集委員会委員長
2014年 会長

学歴・職歴
1975年 東京大学工学部土木工学科卒業
1981年 横浜国立大学工学部土木工学科講師
1987年 東京大学工学部土木工学科助教授
1992年 東京大学工学部土木工学科教授
1999年 東京大学大学院新領域創成科学研究科環境学専攻教授
2009年 東京大学副学長
2013年より現職



講演題目:「あらゆる境界をひらき、持続可能な社会の礎を築く」

 土木学会は、1879年に設立された日本工学会を前身として、1914年に設立された。初代会長である古市公威は第1回総会会長講演において、土木工学の総合性を表して「指揮者ヲ指揮スル人即所謂將ニ將タル人ヲ要スル場合ハ土木ニ於テ最多シトス」とし、そのために「本會ノ研究ハ土木ヲ中心トシテ八方ニ發展スルヲ要ス」と述べた。この講演会では、工学系の他、医学、理学、法律、経済、軍事の分野において諸外国事情を含めて活発な討議が展開された。
 明治時代に始まる近代土木の中心は河川、鉄道、港湾である。1872年の鉄道開業から、1880年の逢坂山トンネルの竣工を経て、明治時代に主要幹線を敷設し、大正時代にはその高度化と新線・支線の建設が行われた。また、明治時代の小樽築港は近代港湾の幕開けとなったし、琵琶湖疏水事業では、灌漑・上水道・工業用水道・舟運・水力発電という総合開発を実現した。1923年の関東大震災は甚大な被害を及ぼしたが、その復興を成し遂げ、隅田川に架かる多様で優れた形式の橋梁群、地下鉄の開業が結実した。
 昭和に入って世界恐慌に襲われながらも、ダム、鉄道、工業地帯、道路、港湾などの建設を推進し、近代国家としての産業基盤の整備を進めた。昭和初期には土木学会員は3,000人に達し、1938年には「土木技術者の信条・実践要綱」を発表した。
 戦後の国土荒廃と経済混乱、さらには頻発する台風、地震、火山噴火などの自然災害から立ち上がらせた土木の貢献は著しい。連合国軍設営土木工事から始まり、河川総合開発事業、佐久間・奥只見・田子倉・黒部などのダム建設、戦災復興・市街地整理、新幹線・地下鉄・道路・港湾・空港建設が急速に進行し、高度経済成長を支え、オイルショックなどの経済危機を乗り越えて、日本を世界の先進国に押し上げた。
 その後、1974年の山陽新幹線新関門トンネルや中央自動車道恵那山トンネルの開通、1978年の新東京国際空港の開港、1979年の大飯原子力発電所の完成、1981年の高瀬ダム・新高瀬川水力発電所の完成、1988年の青函トンネル・瀬戸大橋による4島連結などにより着実に社会基盤整備が進むとともに、既に昭和30年代には環境問題の深刻化の兆しも見られていた。また、閉鎖性海域の水質汚濁、水俣病の発生、1994年の長良川河口堰反対運動などの象徴的出来事が起きた。さらに近年は、高齢化問題やエネルギー問題も顕在化しているし、地球温暖化問題が現実のものとなりつつある。そして、1995年の阪神淡路大震災や2011年の東日本大震災は改めて社会安全を大きな問題として提起した。
 このような問題の全てに対して、土木は真摯な姿勢で取組み、最大限の貢献をしなくてはならない。これまで整備してきた社会基盤施設を適切に維持し管理することは、社会の維持に不可欠であり、土木の責務である。東日本大震災は、最大クラスの津波に対してあらゆる手段をもって人命を守り、それよりも発生頻度の高い津波に対しては施設などによって人命とともに産業や生活を守るという方針を明確化した。我が国が抱える様々な自然災害や事故による危険性に対してこの考え方を援用し、リスクを適切に管理しながら、人的被害を限りなく抑え、生活や産業の継続性を確保していかなければならない。人々がいきいきとした生活を送ることができるように、高齢化社会を乗り切るためにも、高齢者や女性を含むすべての人々が健康を維持し、社会のために快適に働くことができる環境を築くことが肝要である。エネルギー資源の持続的利用のためには、省エネルギーを徹底的に進めながら、再生可能エネルギーの導入を最大限に増加させるとともに、エネルギー転換の過渡的段階として化石エネルギーや原子力エネルギーの利用を適切な方向に導く必要がある。顕在化しつつあると見られる地球温暖化問題に対しては、できるだけ緩和策を進めるとともに、問題に対する適応策を準備し、手遅れにならないうちに実行しなければならない。そして、長期的に快適で安定的な社会を維持するには、適切な土地利用が基本となることを踏まえ、未来の世代を見据えた社会を構築することを忘れてはならない。これらを始めとする課題に取り組みながら、国際社会との協調を保ち、日本の経験をもって他国に貢献することは、国際社会の要請であり、日本の義務である。
 このような社会に対する貢献を土木学会が最大限に行っていくために、初代会長の講演の趣旨を十分に理解し、橋本前会長を始めとする歴代会長の方針を引き継ぐことを基本として、土木分野の周辺にあるすべての境界をひらき、他分野の知識と知恵を吸収し、むしろ他分野の中に舞台を広げながら、人材を育成し、究極的に目指すべき持続可能な社会を実現するための礎を築く決意を、土木学会創立100周年を機に新たにするものである。

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