■ 専務レポート

土木学会専務理事 古木守靖
土木学会専務理事
古木守靖

ホームページのリニューアルに際し、若干タイムラグがありますが、専務理事の業務に関連した事柄を中心にレポートするコーナーを設けました。

2007/1/25

新しい委員会の設立

 1月19日の第五回理事会で、17・18年度会長特別委員会(委員長 濱田会長、担当タスクフォース座長 草柳俊ニ教授)で検討していた二つの委員会の設置が承認された。
 ひとつは倫理・社会規範委員会であり、もう一つは論説委員会である。
 これらは、学会の改革策「JSCE2000」(1998年発表)、定款の改定(技術者の資質向上と社会の進歩への貢献を活動目的として加えたこと−1999年)、倫理規定の改訂(1999年)、その具体策である「2000年仙台宣言」の発表、技術推進機構と技術者資格制度創設などに見られる最近の土木学会の活動の流れ、すなわち学会の社会化を具体化するものの一つであるといえる。


 倫理・社会規範委員会は、従来あった倫理規定改定委員会(高橋裕委員長)と教育企画・人材育成委員会の中の倫理教育小委員会を発展的に取り込む形で提案された。
 倫理・社会規範委員会は、教育・研究者や技術者などProfessional(知的職業者)である土木学会会員の、倫理・社会規範にかかわる問題に対して、学会としての行動原理を明確化し、制度・システムに関わる実践として、学会内外への発信や、教育・啓発活動を行うことを目的としている。この委員会は会長を委員長とし、委員会の下に(1)特設ワーキンググループ(WG・臨時)、(2)企画運営小委員会および(3)教育小委員会の3つの下部組織を構成する。
 特設ワーキンググループは、学会に重大な関係のある事案が発生した場合に、設置され、必要に応じて意見表明、学会員の支援、顕彰・処分の起案などを行う。
 企画運営小委員会は、倫理・社会規範委員会の運営・行動にかかる基本的検討を行う場であり、土木技術者等にかかわる倫理や土木技術者等を囲む諸課題、社会の諸制度を社会規範あるいは社会の要請の視点から検討して必要な行動を行おうとするものである。
 教育小委員会は文字通り倫理教育にかかる教育を扱う場で従来の倫理教育小委員会を引き継いでいる。
 なお委員会名を単に倫理委員会とせず倫理・社会規範委員会としたのは、技術者が直面する倫理的課題は個人の行動原理としての倫理によってのみならず、技術者等個人や彼らが所属する組織に関連する現実の仕組みの改善なども行わないと解決しないとの認識からである。
 また数年前から議論されてきた倫理委員会がこのような形で設立にいたった背景には、土木学会の会員の間で、技術者倫理にかかる問題事例が集積され、これらの事例分析などを通して、法令、社会の要請あるいは技術者等個人のあり方等に関する理解が深まったことがあげられるが、これには倫理教育小委員会の活動が大きく貢献している。


 論説委員会はJSCE2005−土木学会の改革策−の基本的行動指針である“社会への貢献と連携機能の充実”を具体的に推進するため、土木学会として、土木工学、土木技術者、国際貢献、社会資本整備事業および建設産業のあり方や関連する諸問題解決の基本的方向性、さらに土木界の倫理・社会規範に関わる重大な問題等に対する見解を学会内外に明確に表明することを目的として設置された。
 委員長及び委員は、学会会長をはじめとする理事経験者、特別上級技術者など土木界を代表する方々から構成され、自ら執筆者となるとともに、委員以外の方々への依頼投稿の決定、公募論説の審査等を行う。
 論説は当面学会ホームページに掲載されるが、将来は更に多様な発表形態を検討する。
 この論説は土木工学に関わるProfessional(知的職業者)としての見解を学会内外に表明する場とすることを目指し、実証の有無にこだわることなく、課題の分析とそれにもとづく将来を見据えた提言を積極的に登載する.また既存の研究部門にとらわれることなく、教育問題を含めた横断的・総合的な視点からの論説を重視することとしている。なお論説は委員会論説(学会としての論説)、委員論説、依頼論説、投稿論説から構成され、査読を経て掲載されることになる予定である。
 今後両委員会ともに、委員会の構成、設置の内規、具体的活動計画を早急に詰めて実施に移す予定である。


以上