関東の土木遺産 関東の土木遺産
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埼玉県さいたま市桜区五関 地内
せんがんぴ
千貫樋
H30年度認定(2018)
1.候補の名称:
せんがんぴ
千貫樋
2.完成年:
1904年(明治37)
3.形式:
煉瓦造樋管(頂部アーチ・2連)
管路 北側:巾2.40×高2.27×長14.30
同 南側:巾2.40×高1.80×長14.30
面壁 堤外(荒川)側:長6.10×高2.00
   堤内(住宅)側:長5.90×高0.95
翼壁 堤外(荒川)側:長2.60×高(3.95〜2.95)×両2
   堤内(住宅)側:長2.60×高(3.78〜2.38)×両2
単位:m
4.設計者:
鴨川落悪水路普通水利組合が、県の補助と技術指導を得て設計・施工したことが推定される。設計者は不明である。
5.推薦理由(65文字):
県内に現存する煉瓦造樋管のうち2連以上の頂部アーチ型は3基で、千貫樋はその一つである。樋管は多数の松丸太杭等で支持され、良好な状態である。
6.推薦理由:
千貫樋は被災箇所として記録に残る
千貫樋は荒川左岸堤に設けられた支川鴨川の排水樋管で、文政9年(1826)編集の新編武蔵風土記には「銭千貫文で樋管を築造したが、完成しなかったので千貫樋の名を残した。」の記録がある。これは千貫樋の位置が荒川の洪水で、幾度も被災したことを示している。
千貫樋の建設
明治37年6月(1904)、煉瓦造り樋管の構造で築造した。
煉瓦造りの樋管、面壁・翼壁の重荷重を支持するため、その下部は末口6寸(18.1cm)、長さ18尺(5.50m)の生松丸太を158本打ち込み、その上に6寸角(18.1cm)の生松木を平面を縦横に組んだ土台にしている。
これらの下部構造が上部構造を十分に支持する設計になっている。生松材の土台は地形砂利に置かれ、底版のコンクリートが打設される。その上が樋管本体等の煉瓦積みとなる。頂部アーチ型のアーチ部分は、煉瓦の側面(長手)が見え、呑吐口では小口が見える(アーチリング)。千貫樋のアーチリングは4巻である。
吐口(川表=荒川側)は観音開き型の門扉構造である。
木製の門扉は現存しないが、戸当りと軸受け金具が取り付く部分は、強度を配慮して堅石が本体に埋め込まれている。
千貫樋の治水の役割終了
大正9年(1920)、荒川改修に伴い鴨川は合流点が南に移行され、荒川本堤は前出しとなって、千貫樋の治水機能が廃止された。
同箇所は旧堤防で県道を兼ねていたので、橋梁として供用を継続した。
千貫樋の保存
昭和62年(1987)、浦和市(現さいたま市)は、千貫樋周辺の鴨川旧川敷を整備し、千貫樋の名称を冠して「千貫樋水郷公園」とした。
同公園は千貫樋を保存して、2連の頂部アーチ樋管の1孔を遊歩道として人の通行を可能にした。
市民が水辺や緑に触れることができ、郷土の治水史を身近に学習できる場であり、憩いの場にもなっている。
千貫樋の現状
埼玉県内には明治・大正期に建設された煉瓦造樋管が39基現存し、現役の施設が多数ある。そのうち頂部がアーチ状の煉瓦造樋管は21基現存し、4連管路が1基、2連管路が2基現存し千貫樋がその一つである。残る18基は単管路である。
現在の千貫樋は、樋管本体のアーチ部に部分的なヘアクラックを除いて、ほとんど目地の剥離や欠損がなく、良好な状態を維持している。
千貫樋は橋梁としての供用を継続しているが、増加する車両交通にも支障は生じていない。
7.所在地:
埼玉県さいたま市桜区五関 地内「千貫樋水郷公園」
8.管理者:
埼玉県 さいたま市
9.特記事項:
▪2800選ランク:B
▪建設時の設計図書等が県立文書館に保管されている。
▪樋管上部の県道は、さいたま市が管理している。
10.PR方法:
現地標示板:土木遺産認定の内容を記載する。
市の広報誌:土木遺産認定について、千貫樋の歴史や経緯などを詳細に紹介する。(認定時の情報提供)
市のホームページ:上に同じ(認定後継続して情報提供)
11.連絡先:
さいたま市 建設局 土木部 道路環境課 道路橋りょう係
課長補佐(兼)係長 横地 一久
TEL 048-829-1491 FAX 048-829-1988

図1 案内図(全体)

図2 案内図(詳細)
千貫樋の樋表(荒川側)

千貫樋の樋表(荒川側)を望む。向かって左側の樋管が常時の水路で、右側はくぐり抜け可能の遊歩道である。
樋管に増工した公園施設は、水路護岸・左翼壁(向かって右)袖壁・遊歩道土留である。

千貫樋の樋表

樋裏を望む。向かって右側の樋管は、常時の水路である。

樋表
樋裏

樋表から常時水路の管内を望む。

樋裏から遊歩道の管内を望む。



観音開き型構造(マイターゲート)で、木製門扉が取払われているが、ヒンジ部分の金具が残る。躯体のヒンジ部分、戸当りおよび水切りは、石材(堅石)が用いられている。


千貫樋水郷公園

面壁に銘板石が埋め込まれている。「樋」「貫」「樋」並んで縦書きの「完成年月石」は表面が剥がされている。

「千貫樋水郷公園」さいたま市が鴨川の旧流路を整備して小公園にした。シンボルは千貫樋である。
(遠方に千貫樋が見える)


「手づくり郷土賞」の銘板

公園の門の側に2013年受賞の「手づくり郷土賞」の銘板がある。

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