調査報告 第三報


1. 阿武隈川支川の被災状況

 福島県南部と栃木県北部は8月26日から8月31日にかけて記録的な集中豪雨に見舞 われ、阿武隈川最上流部の特に左支川の各流域は甚大な被害を受けた.
 堀川流域,谷津田川流域に近い西郷村真船,隈戸川流域の大信村隈戸,釈迦堂川・ 江花川流域の長沼町長沼の各観測所における降雨状況を表−1に示す.この地域の年 平均降雨量はほぼ1300〜1600mm程度であり,真船では1年間の約8割の雨がこの期間に 降ったことになる.この降雨により堀川,谷津田川,真名子川,隈戸川,釈迦堂川・ 江花川等でほぼ全域にわたり破堤,越流,氾濫し,住宅の浸水,橋梁,護岸,道路の 流失・損壊,田畑の冠水等甚大な被害を生じた.隈戸川では,橋梁流失6,損壊12, 県道流失2,また大信村の耕地面積の7割に当たる350・の水田が冠水した(写真−1) .
 各河川とも,湾曲部での被災が多いが,多発した土砂災害によって土砂,樹木が河 道をせき止め,被災範囲を大きくしている事例も幾つか見られた.また,29日に実施 した災害調査等から,被災のほとんどは26日夕方から28日朝方にかけての降雨によっ て生じているものと考えられる.
なお,今回,支川氾濫によって大きな被害を受けた白河市,西郷村,大信村は1986年 の水害ではほとんど被害を受けていない.(98.9.18.高橋迪夫記)

表−1    降 雨 状 況
観測所名 真船 隈戸 長沼
8/26 9時〜8/28 9時の雨量(mm) 855 649 470
総雨量(mm) 1268 890 687
最大時間雨量(mm/hr) 90 61 50
同発生日時 8/26 17時〜 8/26 18時〜 8/27 0時〜

写真−1 隈戸川 県道流失 (大信村川田)

2.阿武隈川本川筋の浸水・氾濫状況

 1986年の水害においては,本・支川合流点付近の支川の破堤,越流あるいは内水に より大きな浸水・氾濫被害があった.今回も本川合流点付近の杉田川で堤防決壊があ ったが甚大な被害には至らず,また,須賀川,郡山,本宮,梁川等上流域の各地で27 日と30日の2度にわたって浸水・氾濫被害を受けたが,本川筋全体としては,1986年 に比べ浸水範囲,浸水深共に減少している.これは,今回の降雨・出水等の自然特性 ,および合流点付近の支川の整備,排水ポンプの設置等の効果に因るものと考えられ る.その中で,内水氾濫は今回も各地で見られた(写真−2).この問題は,河川周 辺の都市化・土地利用の問題,街づくり,あるいは流域全体の問題として今後も取り 組んでいかなければならない課題であろう.(98.9.18.高橋迪夫記)

写真−2 内水氾濫 (郡山市安積町)

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