土木学会誌
土木学会誌3月号モニター回答


視点・考点・論点 兵庫県南部地震後の耐震基準の改訂
震災当時は色々と検討してきたことが、いま、日常的に用いられてきている。当時と現在の基準の違いがわかり、実に解りやすかった。
(基礎地盤コンサルタンツ 中田隆文)

巻頭論説 世界の水危機は救えるか?
世界の水危機は救えるか?および特集 グローバルな視点で水問題に挑むに関して
世界の水危機は救えるか?・・・大変重い命題です。筆者が結論づけているとおり、「これは水をどこまで政治課題にし、政策に科学を反映できるかにかかっている」と思います。技術者だけでの問題解決は不可能です。なぜなら、今既に問題となっており、これからますます顕在化するであろう世界の水危機を克服するためには、各国の複雑に絡み合った利害の調整が必要であり、それは相当困難を極めると思われるからです。
では、このような状況下で、今我々水に関する技術者がなすべきことは何なのか。それは、@なるべく多くの情報源から、世界の水危機の現状に関する情緒的でない正確な情報を入手し、的確な情勢分析をした上で、科学的な解決方策を導き出すことと、Aそれらのことを従来にも増して声を大にして、世の中にアナウンスすることだと考えます。特にAのアナウンスは重要です。筆者が言うように「水科学、水マネジメントの専門家の責任は絶大」であり、「政治家、市民に見えるところで、見えるように、考え語りかける責任」があります。ここで敢えて「情緒的でない正確な情報」としたのは、いみじくも特集記事の「座談会」の中で、水に関する病気で子供たちが年間400万人死んでいるという話に対し沖大幹氏が指摘しているように、「この数字はそんなに多くない気がする、これらの数字はほぼすべて欧米からの受売り」ということが往々にしてあるからです。この例で言えば、本当に400万人全員が水に関する病気が原因で死んだのか、それは従来の数に比べて多いのか、全体に占める割合はどうなのか等を冷静に考えるべき、ということでしょう。自らの責任において、確たる調査の根拠をもって議論することが大切だと思います。
また、「水問題は絶対量ではなく、量と質の時空間バランスの問題」との指摘、この点も同感です。今海外のある国で水不足だからといって、日本国内でいくら節水を呼びかけても、個人の問題意識の啓発という点では効果があるでしょうが、現状の問題解決にとっては無意味です。むしろ、海外からの輸入食料品をなるべく買わないようにして、将来の海外での水使用を間接的に減らしていくことなどの方が重要でしょう。ただしこれについても、輸入食料品のうちどの輸入を減らせば効果があるのかを適切に把握することが必要です。
水に関して海外で起こっている現状を知らないまま、あまりにも海外に依存した生活に慣れきってしまった私たち日本人が、世界の水危機の現状を知らされた時、自らの生活水準を下げてでもそれを防ぐ気持ちになれるのかどうか。仮に日本でそれが可能だとして、その他の国々ではどうなのか。結局国家間の調整が不可欠、ということになりますが、このような調整は正に政治でなければできないことがらであり、その意味で、世界の水問題は大いに政治的なものだと思います。
(水資源開発公団 神矢 弘)

かつての日本でも水をめぐる争いが絶えなかったように、世界でも水は、それによる生産活動を含め、まさに命にかかわる厳しい問題だけに、解決していかなければならない問題だろう。ただ皮肉なことに、この地球は水の惑星と言われながらも、必ずしも公平には存在していないため、これが水問題を非常に難しくしている。これを、筆者は量と質の時空間バランスの問題として、政治に解決の糸口を見いだされており、その政策と実行のために科学的知見を生かさなければならないと指摘されている。しかし、地球温暖化防止においてもそうだが、世界的合意も国内事情で反古にされたりと、なかなか科学による政治の後押しだけで解決できるものでもないように思う。そこで、政治を後押しするもう1つの力としての世論も見方につける努力ということも必要だろう。
(関西電力(株) 大江直樹)

特集 グローバルな視点で水問題に挑む
渇水の時期を除いて、水の豊富な日本ではなおさら水資源問題が見えにくく、水資源の質及び量に関する現状及び問題点を深く考えさせられた。このような機会を通じた啓発はもちろん、社会の公器を利用した幅広くかつわかりやすいプレゼンテーションが必要である。
(国土交通省 片山壮二)

グローバルな視点での水問題の現状と取り組み状況について全体像がよく把握できた。構成が工夫されており大変良かったと思う。淡水資源の問題が地球環境問題であり政治問題としても重要なものであることが認識できた。内容も、今年8月に開催予定の持続可能な開発のためのサミット、来年開催予定の世界水フォーラムに向けてタイムリーなものだった。
(国際協力事業団 江塚利幸)

記事では、水問題の現状から解決への取組み・考え方まで丁寧に解説されており読みやすかった。わが国での問題点として、一般の市民が世界的に水が危機的状況にあるという認識が少なくことが挙げられる.多くの人は他人事のように感じているのではないか。これは、我々土木技術者でも認識が低いように感じる。実際、渇水の時ぐらいしか水の問題を感じる時がないように思う。今後、この水問題に対しては、巻頭論説で竹内氏が述べているように、専門家が市民や政治家に、現状を知ってもらい、対策の気運を高めることが重要となるように思う。
(呉工業高等専門学校 黒川岳司)

世界の水問題の話しをするときには、何かつかみどころがなく、いろいろなケースがあり、わかりにくいというのが実感です。21世紀は「水の世紀」といわれていますが国内においては水問題は20世紀でひと区切り、21世紀は安定した水を如何に守っていくかという時代ではないでしょうか。世界的には、日本は国際協力という位置づけで、これまで培った技術を駆使してハード的にはかなりの貢献をしてきたように思います。「水」は、人間が生活する上で非常に重要な位置を占めているわけですが、最近は問題があるときしか話題にされていないようですが、本来はもっと広く国民が興味を持って活発に議論されていなければならないテーマだと思います。「グローバルな視点での水問題」は、大学や専門的な研究機関等でもっと深く基礎研究的なものに取り組んでもらい、広く国民が理解できるようわかりやすい提言のようなものを、現在の国内事情とと合わせて訴えていくことが重要なのではないかと思います。
(水資源開発公団 吉田好浩)

昨年,琵琶湖畔の大津市において開催された世界湖沼会議に参加する機会を得た際に,水問題がとてもグローバルかつ複雑な問題であることを認識させられた.本特集記事の内容もこれと符合するものであったが,「我が国が食料の輸入を通じて400億m3もの水を輸入している」との記述に触れ,この問題に対する認識の不足と危機感をあらためて再認識されられた次第である.この問題を深刻なものにしているのは,世界的に見て膨大な量の水資源が不足していることや,他の環境問題同様に国や地域ごとに抱える問題の質が異なることで協調的な解決策が打ち出せないことに加えて,「人類の繁栄→人口の増加→エネルギー,食料の不足→飢餓→人口の減少→人類の衰退」といった大きなトリレンマの連鎖の中にこの問題が存在していることにある.水問題解決に向けて我々土木技術者ができることを考えた場合に無力感を感じずにはいられないが,我々が果たさなければならない責務はやはり大きいと考える.
(前田建設工業株式会社 清水英樹)

1月号のODA特集の時と同様に、考えさせられた。海外の実状を知るのは、必要なことである。だが、その上で何をするかについては、深く考える必要があると思う。もちろん、世界に対し、日本がリーダーシップを発揮し、貢献をアピールすることは必要である。しかし、「発展途上国に対して日本は何ができるか」、「どうすれば感謝されるか」という視点からの議論が割と目に付き、少しお人好しすぎる面がありはしないかと気になった。何のために国際協力をするかという動機付けが、今ひとつ見えにくい。世界的には水不足が深刻な中で、日本が一人当りの水消費量が多いことや、穀物、木材、鉱物、繊維製品などの物資を海外から輸入することにより間接的に相手国の水資源を大量消費していることを、後ろめたく感じて償いをしようとする消極的な姿勢では、尊敬もされないし、私たちとしてもメリットがない。そのようなことは気にせず、得意分野を売り込むことに専念するのが良いのではないか。
(鹿島建設 吉田 輝)

近年の諸問題に対するためには、日本1国だけでなく常にグローバルな視点から考えないといけない。このことは土木技術者として、重要なことであり、日本の位置について再考させられた。座談会では、もっといろいろな幅のメンバーで行なうとより様々な意見が出て面白いものとなるのではないだろうか。
(電源開発(株) 大島寿哉)

世界水フォーラムが来年3月に日本で開催されることを踏まえて、現状や今後について議論されていた。安全な水の確保、水資源の有効利用、水災害などは、我々に課せられた21世紀の課題である。国際的な問題は、国際・外交の場で取り組むべきであるので成果が期待される。しかしながら、問題が地域レベルの事柄から地球規模まで様々であるため、解決方法を見出すのは容易ではないであろう。したがって、一過性の取組みで終わらぬように継続的に啓発することと、蓄積された技術や研究を積極的に国際の場で活用(国際貢献)してゆくことが重要である。
(西武建設(株) 三村 卓)

『水に関わる病気で8秒間に一人が死んでいる』というのはかなり印象深いものでしたが、一方で実感がなく、自分自身の問題として受け入れられないというのが正直な今の状態です。そして、これはここ日本にいては変えることはできないのではとも感じざるを得ませんでした。現在の世界の状況を身近に感じ、「水」が「共有の所有物」ではなく「財産」という認識を早く自分の物にしなくてはと思いました。
(京都大学環境質制御研究センター 鈴木祐麻)

我々技術者にとって汚れてしまった水を浄化する技術(水処理技術)を開発することが非常に重要な命題になっているが、それよりも水を汚さない技術を開発する事が先ではないか。世界の数ある資源を見た時、水資源ほど「無限」にあると考えられているものは無いであろう。我々は生きていくために水を必要とするが、各々が水は無限資源ではなく、有限資源であることを常に念頭におきながら水を使用することが重要だと思う。
(五洋建設 羽田 晃)

本特集で紹介された世界の水問題は、あまりにも多岐に渡っているため、当然の事ながら即効性の解決策など無い。そのためか解決策に関する話題になると話が発散して、本質から離れたような内容のように感じた。
(関西電力 西川 亨)

「グローバルな視点で水問題を考える」この言葉を聞いて恥ずかしながらドキッとしました。日本国内で生活している中では、自然の水に恵まれ、なかなか気づかないことだと思います。土木事業の中では、水は災害防止のために治水するもの、生産のために利用するものとだけと思いがちです。しかし、本来はその清らかな水を生み出す環境を保全していくことこそ大切であると改めて気づかされました。先日、TV番組で直線的に河川改修された河川を、蛇行した河川に改修し河川環境を復元しよういう取組を目にしました。そして、これが大変難しいことも紹介されていました。これからは国内だけでなく諸外国にも目を向けながら、水を生み出しそれが流れる環境を保全する。そんな視点を持って仕事に取り組んでいきたいと思います。
(日本道路公団 税田賢二)

世界の水と日本
仕事柄、農業や農村地域の整備に携る中で、水の収支や循環といったことが環境そのものであると日ごろから感じていた。食料自給率の向上というものが、国の安全保障的な意味での重要性だけでなく、水という地球規模での環境要因のバランスを保つ上でも重要な課題であるという認識をもった。
経済という視点では、世界的な自由競争は必然のことであり、それによる物質の移動も当然のことなのであろう。しかしながら、自然(地球)と文明(人間)との間をとりもつ土木技術者としては、別の視点を持つことも大事だと感じた。
(太陽コンサルタンツ 田澤秀明)

不足する水資源
日本を取りまく環境、そして社会における概念や社会構造が大きく変化するなかで、より豊かで快適な社会環境の構築が望まれている中、地球温暖化への対応など、あらゆる面で環境への整備が求められている。そのような環境問題への関心は高まりつつあるのだが、今回の特集にある水問題に関する認識は低いと思われる。今後は社会の中で、水資源に関する問題を積極的に取り扱ってほしい。
(京都大学 菊池 輝)

水資源が不足する方向に向かっているというのは、なんとなく感じているが、具体的な例、数字をみるとかなり危機感を覚える。それに比べて”私たちにできること”は意識を変えるという点で重要だと思うが、水不足という大きな流れを変えることからは程遠い。それではどうすれば良いのかというと分からず、自分たちの生きている間は大丈夫だろうという無責任な思いで終わってしまいがちである。このような問題を考えるとただ無力感だけが残ってしまう。
(千代田化工建設 森田 光)

水不足の問題は、降水量の少ない乾燥地や半乾燥地では極めて深刻な問題であるというのは理解しているつもりでも、普段、降水量の豊富な日本にいると水のありがたさをつい忘れてしまいます。世界各地の降水量に非常に大きな偏りがあり、その偏りは人間の力ではどうすることもできないものである以上、この水資源の問題は極めて深刻かつ難しい問題だと改めて感じました。
(国土交通省 村下秀文)

深刻化する水質汚染
水質汚染は、種々の要因が複雑に絡まり合い意図しないところで発生したり、さらにその汚染の実態もある程度被害が発生してからでないと確認されなかったりと、後手後手となる場合が多いように思う。そして、汚染は世界的に進んでおり、発展途上国では一気に汚染問題が噴出する上に、対策もままならないようである。
そして、我が国においては、農業用の慣行水利権が固定されているため、後発の都市用水は河川下流から取水せざるを得ず、質的に劣悪で絶えることのない問題を抱えているという指摘があるが、まさに水質問題の源流であるように思う。確かに保護すべき既得権益もあるかもしれないが、この水利権を見直すだけでもかなりの問題が解決されるようになるように思う。このあたりも構造改革して欲しいところだ。
(関西電力(株) 大江直樹)

世界の水災害
本稿でのアジア地域での自然災害被害の報告に驚きを感じた。自然災害のほとんどがアジアという地域に集中していることは、モンスーン地域に属するということと切り離せないだろう。自然環境は、そのままダイレクトに被害の大小を規定し、被害は貧困の悪循環を生む。世界的な被害は定量的には、経済的損失で評価されることが多いように思う。これは、水災害に限ったことではなく、ありとあらゆる分野で感じられる矛盾だ。経済的損失量からみて、貧困国での災害は比較的小さい。しかし、当事国としては富裕国が感じる以上にはるかに大きなダメージを受けているはずである。このあたりの乖離をどう調整していくためには、大きなパラダイムの変換が必要であるように思う。マネーフローだけで議論を進めていけば、各個人の効用や生活水準とは離れ方向に世界全体が動いて行きかねないと危惧してやまない。
(東京大学大学院 田中泰司)

流域水循環系の視点で考える
「流域マネジメント」について、たいへん分かりやすく書かれていて、とても興味をひかれました。治水、利水と縦割りに考えるのではなく、水循環系を捉え、全体の視点から地球の水資源問題を考えることは、21世紀の世界展望に不可欠な要素であると思います。
(大成建設(株) 町田 晋)

読んでいて楽しい、元気が出てくる報文である。「暗いつぶやき」から事が始まって、身の回りの問題が身近な人達によってビジネスになる。まちづくりを進める上においては住民の理解と協力が重要であり、とりわけ「自分たちの住む地域をよくしたい」と願い集団的に行動するNPOのような存在が大きいと思った。
((財)漁港漁村建設技術研究所 宇賀神義宣)

水の惑星の危機と問題解決へのシナリオ
同じ様な内容の報文が続く今回の特集記事の中で、問題点を指摘するだけでなく世界の水危機の回避にむけて何をすべきかという視点から対策をズバリと提言しているところが光っている。対策の記述はわずかではあるが、この部分があることで大いに救われた。
((財)漁港漁村建設技術研究所 宇賀神 義宣)

第4章 座談会 わたしたちがすべきこと
世界各地で起こっている水問題についてわかりやすい記事であった。とりわけ「8秒に1人」等、水危機を示す数字は訴えるものがあった。こういった問題提起型の記事を読むと決まって「さて、どう取り組むべきか」と考えさせられるわけだが、各読者は同じ土俵に上がることが出来ず、取り組んでいく方向性を探している最中に、各問題提起に対し発散してしまうことも多いのではなかろうか。そういった意味で、最後の座談会記事は、特集を読んだ後の私達と同じ視点に立つ内容であり、読者に取り組んでいくべき方向性を示してくれるいい記事であった。土木学会誌としても、読者に特集を読んでどういった取り組みをして欲しいのか強く訴えることが出来る場になると思う。他の特集でも、読者の視点に立った座談会をぜひ取り入れて欲しい。
(東海旅客鉄道株式会社 梅田博志)

今回の特集で、様々な視点からの水問題についての知識の向上がなされたと思う。最後の章では、今何をなさねばならないかについて、沖先生が述べられている。沖先生の発言は、水問題だけにとどまらず、全ての自然生態系を考える上でも重要な考え方として、理解し実践していきたい。
(五洋建設(株) 檜山博昭)

普段、水循環について、意識を持たない環境にいるので、今回の特集では水問題の深刻さや最先端の研究者たちが持っている意見を知ることができて、大変意義深かった。今まで知らなかった概念や問題に対するアプローチ、解決を模索する枠組みなど、どれもが私にとって新鮮だった。研究者・技術者が、適当な方策と戦術を提案するとともにマネジメントを両立させなければ行けない点は水問題に限らず、土木技術者が今後、乗り越えねばいけない問題であると痛感した。特に、水問題では、方策を決定する権限が政治分野の人々にゆだねられているので、その色合いが濃い。技術者は技術だけではなく、外の世界や社会に対しての説明責任と提案の責務も同時に負っていかねばならない時代に来ているのだと感じた。
(東京大学大学院 田中泰司)

各国の水資源使用量を考える上で、輸入穀物に使われた灌漑水量まで考慮するのは新しい視点だと感じた。国内の水収支に留まらず、国家間のモノの流れまで考慮するアプローチは、タイトルにあるように、水資源問題を解決する上での「グローバル」な視点を提供しているように思う。
(鹿島建設 佐々木義裕)

いつもながら特集記事の担当者の方には、その御努力に敬意を表します。ところで今回ほど座談会記事がありがたかったことはない。人口増加、水不足、洪水被害、水質汚濁、地下水問題、国際河川紛争など深刻な水問題が世界各地で起きていることはよく理解できた。しかし、日本ではこれ程の問題は起きていない。島国で国際河川もない。外国のことなので日本として対策が打てない。であるのに、なぜこのような特集を組むのかと疑問しきりだったが、座談会の場でこれに関する議論と回答があり、溜飲が下がった。我々は、輸入食料あるいは海外協力などを通じて海外の水危機とつながっているのである。では、日本としてどう対応したらいいか。海外協力により直接貢献することはもちろん、日本にあっても、国内の食料生産を増やすこと、節水に努力すること、海外進出のため外国の事情を勉強すること、などだろうか。それにしても今回のテーマは遠い国のことだという感がぬぐえない。
((財)漁港漁村建設技術研究所 宇賀神 義宣)

全断面TBMによる48°の急勾配斜坑掘削
本報告の前方探査システムの紹介を興味深く読ませていただいた。通常地盤内の弱層の把握は事前調査における弾性波探査が主流であるがトンネル掘削直前に再度地質状況を把握するという点でこのシステムの導入は有意義なもので、施工性の信頼性を高めるものとなるので今後の事例紹介に期待したい。
((株)ダイヤコンサルタント 大口伸生)

私の研究室はトンネルに関する研究をしている者が多く,とても関心を持って読むことができた.特に,全断面TBMの欠点である前方の地質性状の把握に「トルク/貫入量(Tr/Pe)」を用いて岩級を分類したことは,さらなる活用の可能性を感じることができた.
(山口大学大学院 仲山亮史)

U形コア断面を用いた橋梁の工場プレキャストセグメント工法
工期やコストの縮減が期待され、かつ品質向上が図れる優れた橋梁技術として、「プレキャストセグメント工法」の紹介があった。本記事は、我が国の国土事情に合わせて運般可能なセグメント長から発案された、正に橋梁構造デザインの好例と読ませて頂いたが、筆者らはこれを徹頭徹尾"コスト縮減"の事例と扱っている点が残念と感じた。今や"無駄な公共事業"との世論の大合唱を前に"コスト縮減"でしか事業を評価し得ない風潮も見え隠れするが、特に本事例は欧州における広幅員橋梁のデザイン定石とも言える形態に合致するため、美しい国土を創出する素質の高い形式事例としての紹介も有ってしかるべきと感じた。
(大日本コンサルタント株式会社 高楊裕幸)

プレキャスト部材の軽量化によるプレキャストセグメント工法の適用拡大への取組についてのリポートを興味深く読んだ。
PC橋の現場架設においては、厳しい自然条件のもとで型枠・配筋・コンクリート打設・プレストレッシング等の作業を、高い品質を確保しながら効率的に繰り返えすことが求められており、高い技術力を持った多くの熟練技術者の確保が必要である。
しかし、このような熟練技術者を確保することは、今後ますます困難になると考えられることから、機械化などによる現地作業の削減及び工場等における効率的な品質管理が図られ、コスト縮減も期待できるプレキャストセグメント工法の適用範囲を拡大していくことは、社会的ニーズに合ったものであると考えられる。
この工法は、我が国では近年採用され始めた工法であることから、解決すべき設計・施工上等の課題はまだ多いと考えられるが、これまでの経験等を踏えマニュアル化を図るなど、より早く広い範囲で採用される工法となるような取組が求められているのではないだろうかと思われる。
((財)駐車場整備推進機構 大広 始)

土木エンジニアの工夫が結果として現れる事例として興味深い。事例が増えればさらに工夫できるところが色々とあるようでこれからの発展を期待したい。トレーラーの幅の制限から、セグメント長は最大3メートルとなるようだが、もっと長いセグメント長のものをヘリコプターで運んだほうが安いなんていう時代が来るのだろうか??
(千代田化工建設 森田 光)

セグメントのトレーラー輸送の制約から開発された工法であるが、コスト削減、製作ヤード面積の縮小と優れた工法と思います。従来の一体型のセグメントと比較すると単位重量も軽いため、架設ガーダーの重量も低減でき、また桁が架設された後から逐次現場打床版を打設していくため、非常に合理的な施工方である。今後の展開に張出し床版を長くして桁の幅を狭くする方法が提案されているが、是非とも技術的な課題をクリアして、実施工段階まで展開されることを希望します。上下線一体化、橋脚基礎断面の縮小と大幅なコストダウンが期待できる。
(東京大学大学院 金田尚志)

わが国で初めて採用された、U型コア断面の工場プレキャストセグメント工法の紹介であった。写真や図を多用し非常に簡潔な内容であったと思う。希望としては、在来工法との経済比較をもう少し詳しく解説して欲しかった。
(西武建設(株) 辻田 陽一郎)

土木紀行 笹流ダムと小野基樹
自らの残した作品(と言っても過言ではないでしょう)を常に省みる、そして効果的かつ具体の改善方策を研究・提案するという姿勢に感銘を受けた。同時に、そのような関わりを保てる作品との出会いに羨望を感じる。
(国土交通省 片山壮二)

技術者にとって本当に学ばなければ成らない姿がここにあると感じた。文末にあるように生涯責任と誇りを持ち必要に応じて情報を発信するという当たり前の姿勢を持ち続けなければならないことを痛感させられました。身が引き締まる思いです。
(五洋建設(株) 檜山博昭)

コンクリートの剥離剥落、補修、リニューアルが注目されている昨今でありますが、20年も前に、そのようなことを見越して、行動を起こしていた人がいたということは、ある種、驚きでした。立場を越えてでも、必要なことは提起していこうとする気持ちは、とても大切なことだと思います。
(大成建設(株) 町田 晋)

ひとつの構造物において、計画・設計・施工・補修という一連の作業を一人が全て担当できるという機会は現在ほとんどないと思われる。そのため自分が担当した構造物に対する責任感・愛情が昔より希薄になっているのだろう。心が引き締まるような文章だった。
(関西電力 西川 亨)

事故災害 2001年の日本の豪雨災害
「日降水量の最大値を更新した観測所と1時間降水量の最大値を更新した観測所はほとんど重複していない」が故に、「昨年の豪雨による被害が比較的少なく抑えられた」という結論は、なかなか興味深い内容であった。近年の特徴的な傾向なのであろうか。
(東海旅客鉄道株式会社 梅田博志)

近年、異常気象が増えているという印象があるが、2001は過去数年に比べると豪雨災害の少ない年であったことが投稿文から理解できた。観測網の充実に伴って気象データの整備が進んでおり、これらのデータを有効活用しどのように備えるかが課題であると思われる。災害リスクマネジメントへのフィードバックや、住民のリスク意識向上への活用がより一層求められていると感じる。
(鹿島建設 佐々木義裕)

題名通り、2001年の日本における豪雨災害の特徴を記述したもので、読みやすいとは感じました。しかし、目的を「災害の特徴を報告する」ことに絞ってあるのでやむを得ないかもしれませんが、写真の印象のみが残りました。
(京都大学環境質制御研究センター 鈴木祐麻)

連載「緑」
世に環境や緑の必要性を叫ぶ声は多いが、経済的効率性にも勝るとも劣らずそれらは重要なのだという点について説得力のある連載を望む。ウィズ・ウィズアウトが明確にするなど骨太な内容を望む。
(国土交通省 片山壮二)

興味深い連載を始めていただけることに感謝します。最終ページに次回以降の連載予定が掲示されていますが、出来れば執筆者まで乗せていただきたかった。わがままで申し訳ありませんが。
(五洋建設(株) 檜山博昭)

近年環境に対する関心が高まり、大きな位置を占めているということは、従来の方向ではダメであることを示していると常日頃考えている。これに対応するためには、他分野との連携が必要なことであり、そのことからは連載「緑」は有意義であると思う。この連載を足掛りにして、今後更に他分野との連携についての企画をお願いしたい。
(電源開発(株) 大島寿哉)

特集で水問題や水循環について取り上げられていたので、「森林地帯の水循環」の記事はタイムリーであったように感じた。これら個々の研究の積み上げによって成しえてゆく必要性と位置づけが重要であろう。
(西武建設(株) 三村 卓)

非常に興味深く読ませて頂いた。今後の「国づくり」を想定した研究を行っていく上で、「人間が自然界を完全に掌握した形で研究を行う」よりも「自然界の力を借りながら、豊かな世界を創造していく」方が得策であると思う。一度環境破壊を存分にまで味わった我々は、他の国が環境破壊を経験しないような方策、環境破壊を起こしてもそれをすぐに修復できる技術を先駆けて開発してき、他の国の見本となるようしなければならないであろう。
(五洋建設 羽田 晃)

連載「緑」をはじめるにあたって
「緑」の創造・再生に果たす土木技術の役割というのは極めて大きなものがあると思いますし、今後ますます重要視されるようになってくるだろうと思いますが、「緑」の再生と同時に、日本ではもっと「緑」の保全という問題に取り組むべきではないかと思います。アメリカの国立公園の様に、ある特定のエリアの自然環境については厳しく規制を掛けることによって徹底的に守っていくという姿勢がもっと打ち出されても良いように思います。土木技術によって創造・再生された「緑」は二次的な自然であって、原生林などの一時的な自然は一度失われてしまえば完全に再生させることは不可能であるような気がします。
(国土交通省 村下秀文)

時宜にかなった連載であると思う。緑が地球上でどのような役割を果たしているのか、わかりやすい解説を期待している。ところで企画案を見ていてふと思った。最近、‘森は海の恋人’と言われて、森林のもつ保水機能、栄養供給機能が海の魚介類の生育と密接に結びついていることが実感として漁業者にとらえられ、漁師が山に広葉樹を植えるという活動が盛んになっている。川を通じて栄養分が山から海に安定的に供給される、それがおいしい魚介類を育てている。何となくロマンがある。これに関する記事も取り上げてみたらどうかなと思ったのである。
((財)漁港漁村建設技術研究所 宇賀神 義宣)

第1回森が生命環境を守る
森林には、生命環境を維持・保全する機能があるという指摘は、確かにそのとおりだと思う。そして、木材となり、住宅の柱・梁などになった後でも、湿度の調節や香りなどを通じて、生命環境に貢献しているように思う。そこで、筆者の指摘される緑の質を向上させようという指摘には多いに賛成するところだが、そのためには多くの投資や土地利用に対する規制など、いろいろな解決すべき問題があるように思う。さらに、筆者は否定されているように思うが、個人的にはスギ・ヒノキなどの人工植栽林である林の再生も非常に大きなテーマであるように思う。まずは、このような林を活性化しなければ、一部に質の高い緑の森林が整備できたとしても、その他多くの荒れた山としての緑だけが取り残されるのでは、本末転倒ではないかと心配だ。
(関西電力(株) 大江直樹)

森林の機能と緑の質を考える
環境対策→緑化というように安易な対応には疑問を感じており、この記事で言うように緑の質が問題であり、なぜ緑の保全・創出を図るのか、それによってどのような効果がもたらされるのかという本質的事項の再確認が重要である。
なお、自然回帰を基調とする緑化への思考の転換も必要であると考えるが、特に都市を考えた場合、人工物への自然の導入には自ずと限界があるだろうし、また人が快適に住まう場であることをも考慮すると、現在の緑化技術を十把一絡げにして「生命環境を修復する意図からはほど遠い」とする意見には疑問を感じる。
(国土交通省 片山壮二)

いよいよ大きな連載がスタートした。意気込んで読み始めたものの、なかなか重厚な(教科書的な)文章で、かなり食いつきにくい記事であった。「草本群落」「木本植物」等、初めて聞く言葉(読み方も?)が多かったからかもしれない。連載のスタートだけに、少々ページを割いてでも、図・写真を多く取り入れ、読みやすい記事にして欲しかった。
(東海旅客鉄道株式会社 梅田博志)

緑化の動きが各所で盛んに起きているが、その主な目的は「木を植える」こと、すなわち緑の量を増やすことだけにあるのではないか。もちろん、それによって土壌流出防止、水循環などの森林の機能はある程度回復できるだろうが、本稿にあるような「緑の質」を考慮した生命環境保全機能を目的とする緑化計画がどれほどなされているのであろうか。そんなことを考えさせられる記事であり、今後の連載が楽しな記事であった。
(京都大学 菊池 輝)

緑の持つ機能について詳しく解説しており、興味深く読ませていただいた。そして、「生命環境の維持・保全」を目的とする緑化の重要性を強く感じた。今後における緑化技術の確立を期待したい。
(西武建設(株) 辻田 陽一郎)

例えば、公園や建物周辺の植栽など修景的な意味合いで樹木を検討する時、花が咲く季節とか実がなる季節などを考えながら樹種や配置などを検討することはある。しかしながら、見た目だけではなく「そこにこんな種類の樹木が必要である。」といった科学的なアプローチができないものかと常々考えていた。
森林の機能をある程度定量的に把握し、生命環境という視点で緑化をどのように行うかという考え方は大変参考になった。
(太陽コンサルタンツ 田澤秀明)

建設業(特に、大規模な土木分野など)は、概して、自然を破壊するもの、地球環境を汚すものとして捉えられがちであるが、ここに列挙されたような、森林の機能を正しく理解し、それを踏まえてモノづくりをしていけば、必ずしもそのような役回りだけにはならないと思います。のみならず、よりよい環境の創造にも貢献できる可能性も秘めていると思います。この連載は、第1回のようですが、今後の展開に期待します。
(大成建設(株) 町田 晋)

森林が水を養う
以前,森林が有する水源涵養機能,すなわち「緑のダム」が環境保護団体や一部マスコミなどに見られたダム不要論を唱える人々の論拠として用いられた際に,工学的に定量的な評価がなされない大衆迎合的ともいえる論説に対して,非常な違和感と危険性を感じていた.そういった意味で本稿にて示された「緑のダム」の定量的評価の試みを大変興味深く拝見した.
(前田建設工業株式会社 清水英樹)

写真で綴るその時の1枚
写真による説明は非常にインパクトがあり、読み手にも印象深く記憶が残ります。特になかなか実際に見ることができない災害現場の写真には興味がわきます。非常にいい企画だと思います。
(呉工業高等専門学校 黒川岳司)

すばらしい企画だと思う。私達若い世代には、耳に入ることはあっても、なかなか印象に残りづらいことも多い。このように写真付きで、諸先輩方の体験談を聞くことができるこの企画は土木学会誌ならではのすばらしい企画だと思う。毎月、ぜひ続けて欲しい。
(東海旅客鉄道株式会社 梅田博志)

1964年新潟地震(p.72)について。文章を読むと、掲載されている2枚の写真はいずれも1983年日本海中部地震であることが分かります。表題が不適切と思います。
(鹿島建設 吉田 輝)

昨今、技術の伝承が問いただされておりますが、かつて困難を極めた状況下での良好な施工方法など、先駆者が苦労して培ってきた経験を、如何に後世の若手職員に伝承するかということに、我が社も久しく取り組んでいます。何といっても、視覚的に表現され説明されたものは、心に残りやすいものです。どうしても人は、先達の苦労を忘れ過去の過ちを犯しそうになるのですが、それを防ぐ為にも今回の特集のように、ふっと過去の出来事を思い出させてくれることは、大変有り難いことだと思います。
今日は、家に帰ってから過去の苦労した現場の写真を眺めてみたいと思います。
((株)大林組 小石川 隆太)

新潟地震の記事は、日本海中部地震の話と混同したため、焦点がぼやけてしまったような気がした。
(西武建設(株) 三村 卓)

新潟地震の写真は数少ない。貴重な一枚と思われる。またこの地震は38年前に発生したものであり、当時の若手技術者といってもいまでは60を越えて入ると思われる。したがって、過去の記録を後世に残すため、この様な規格および整理は重要である。
(基礎地盤コンサルタンツ 中田隆文)

今月号から始まったこのコーナーはつい最近のことと感じ感慨深いものであった。中でも、日本海中部地震については私が秋田にて小学5年の時に経験した地震であり当時のことが今でも頭によぎる。記事には津波被害のことが記載されていたが、当時日本海側では津波が起りにくいと解釈され、地震が起っても危険性を一般的に周知されていなかったためにこのような被害が出てしまい、この地震をきっかけに学校にて防災教育を受けた覚えがある。本記事では回顧録のような形式ではあったが、この当時に土木分野ではどのような動きがあったか(例えば示方書の改訂など)ご紹介いただければなお一層興味が沸くように思えた。
((株)ダイヤコンサルタント 大口伸生)

新潟地震日本海中部地震における液状化現象被害、津波被害の写真を見て改めて地震災害の恐ろしさが痛感された。写真を見れば、これらの被害が風化されることなく記録される。津波の犠牲になった子供達の慰霊碑や石碑に刻まれた詩など、風化させてはならない記録が紹介されている。こういった記録はこのような形でどんどん取り上げ、防災教育に役立ててもらいたい。
(大成建設 加藤 隆)

今回はたまたま自然災害の写真だったが、その時の写真と現在の復旧後の写真とを比較して掲載すると、対比ができてより興味深い記事になったと思う。
(関西電力 西川 亨)

1964年 新潟地震
液状化による崩壊の様子が良くわかる写真である。事務所の中で液状化の検討をやる時には、”液状化なんて本当に起こるのか?”という感じであまり気合が入らなかった覚えがあるが、この写真を見ると検討にも力が入るだろう。土木技術者は、やはり現場を見ること、経験を積むこと、という事を痛感する。
(千代田化工建設 森田 光)

1983年 日本海中部地震
昭和58年5月26日12時00分、秋田県能代の西方沖約100kmでマグニチュード7.7の大地震が発生した。当時小学生だったのですが、関東地方でも軽い揺れを感じたのを覚えています。当時の担任の先生が東北地方出身で、家族の安否を気遣っていたので、余計に記憶に残っている。
地震発生後、約13分程で津波警報が発令されたが、秋田県の震央に近い海岸では、津波が地震発生後約7分で到達する程の近海性津波であったため、逃げるための時間的猶予がなかった。残念ながら、合川小学校の児童13人をはじめとする100名以上の尊い命が奪われてしまった。記憶に新しいところでは、1993年の北海道南西沖地震で200人近い奥尻島住民が犠牲となっている。このときは、危険を察知しながらも高台に非難する途中で津波にのまれた島民も多かった。
最近は、津波に対する警戒心も強くなり、地震速報でも津波情報がすぐに流れる。過去の悲しい経験がいかされ、防災教育に役立っているのでしょう。
(東京大学大学院 金田尚志)

土木工学の新しい挑戦
確かに土木離れを起こしている原因は、本来デザインと密接に関連していた土木が、いわゆる「用と美」の「用」にシフトした結果、多くの場合、画一的な仕様に基づく無機的な構造物というアウトプットしか得られなくなってしまったからではないだろうか。 この記事とP54の『笹流ダムと小野基樹』を併せて読むと余計にそう感じずにはいられない。
(国土交通省 片山壮二)

土木分野では、世間があっと驚くような新発見や新発明がないため、地味な印象が否めない。筆者の指摘のとおり、新しい挑戦を歓迎し、育てていけるような業界の土壌づくりは必要と感じる。そして、同時にこれまで培ってきた優れた土木技術をもっとわかりやすくPRできるような場を設けることができればいいのだが。
(呉工業高等専門学校 黒川岳司)

一言で土木といっても、その中身は細分化され、それぞれが専門性に特化した体系になっているように、常日頃感じられる。全体として、土木分野から立ち上がってくるアウトプットとしての構造物は、あまり魅力の感じない、無味乾燥なものであることが多いように思う。土木という分野は、他産業ではできない、優れた技術と多くの人材を持っている。専門と拘束の殻から脱却すればいくらでも、魅力の高い物を世の中に提供できるはずである。映像のような仮想空間での芸術性は近年、レベルが向上しているが、実空間の芸術性はさほど変化していないように思う。実空間では、力学的、自然要因的な問題が生じるからだ。これは、芸術家では解決できない問題である。土木技術者は、空間創造・造形能力に秀でている人々である。新たに作られた空間は、訪れる人々をドラマの主人公にしてくれる。かつて、高度成長期で人々が感じた魅力とは違う形の魅力を作り出すことは可能だと思う。
(東京大学大学院 田中泰司)

土木の無限の可能性を垣間見た思いがした。若い人たちが土木に魅力を感じなくなったということであるが、以前は魅力を感じていたのかというと、それは疑わしい。ただ、これまでと同様な画一的なハードウエアの建設だけでは、若者に限らず一般の人たちを惹きつけることができないと思う。とくに、近年改善の兆しはあるが、これまで意匠や景観、環境との調和が軽視されてきたことによるマイナスイメージが大きい。
年輩の世代の方々から、我々の時代は右肩上がりで良かったが、君たちは大変だね、と言われることがある。この種の言葉は、文字通りの意味に受け取っても良いのだろうが、前向きに解釈したい。人々の心を豊かにし、夢を与える本来のCivil Engineering、すなわち人びとのための工学へ回帰する機会が与えられていると思うからである。
(鹿島建設 吉田 輝)

心理学から見た地下のイメージは、じめじめしているといった「影」と、包み込む様な温かさといった「グレートマザー」の二面性を持ち、地下空間の設計に関しては、「グレートマザー」としての特性を充分に生かす必要がある、と筆者は述べていた。
「影」のイメージを完全に排除することは不可能であるが、「グレートマザー」のイメージを強くするのは重要であろう。従って、筆者の提案する今までにない新しいアートの採用といった方法は、非常に有効であると感じた。
(西武建設(株) 辻田 陽一郎)

この記事を読んだときに,私は大学1年生のときに今私が所属している研究室の教官が神戸六甲山の地下シンフォニーホールの話をしてくださったことを思い出した.その話は,私が今の研究室を希望した理由となった.私も地下空間はすばらしい可能性を持った空間であると考えている.
地下空間のイメージは,夜の海のイメージと似ていると私は思う.両者とも,あるときは雄大で感動を与えてくれるものであり,またあるときはその雄大さ故に感じる自然の恐ろしさを持っている.芸術とは創造者の感動や喜び,悲しみ,恐怖を伝えるものである.地下空間での音楽や新しいアートは,感動や恐怖を人々が感じることができる最も良い場所の一つであると,私はこの記事を読んで改めて感じることができた.
(山口大学大学院 仲山亮史)

地下空間をアートとしてとらえ、土木技術者がそのために貢献することができるのではないかとの著者の提言に共感している。私は、「土木」と「アート」は全く別物ではなくて、自然と対話しながら様々な構造物を構築している我々土木技術者が切りひらく世界こそ、芸術な要素が大きいと感じた。例えば、古代のピラミッドは、先人が土木技術を駆使して未知なる天空の世界に近づく構造物を構築しており、土木技術者以外の人間が、また現代人がみても芸術的と感じるような構造物である。同じように、我々土木技術者がつくる構造物は、一般の人々が知らないような地下の構造物や、厳しい自然と闘いながら作り上げたダムなど、本当はアートに値するものばかりであると思っている。しかし、土木技術者はこれをアートとしてとらえるよりむしろ経済性や性能の面を向上することに傾注しているような気がする。このような提言を機に、土木技術者もつくりあげる「作品」を芸術としてとらえ、それをもっと世の中にアピールできるようにはなれないものであろうか?
(大成建設 加藤 隆)

『地下空間におけるアート』を著者が本文で提案した時、「ちょっと無理やりだな・・・。」というのが第一印象でした。しかし、筆者の『土木技術者は発想を変えて新しい分野に踏み出さなければ、土木はいずれまったく魅力のない前世紀の学問になってしまうであろう』と考えには私なりに賛同する部分があり、土木工学がもつ新しい可能性を探求するという筆者に共感しました。
(京都大学環境質制御研究センター 鈴木祐麻)

土木工学におけるアートの想像という観点から非常に興味深く読ませて頂いた。地下に対する考え方は著者がおっしゃっているように賛否のあるものだと思う。しかしながら、我々土木業界にいるものにとって、(何故かきつい、汚い、危険と言われる業界に鋳るものにとって)我々の手でアートを作り上げることが出来るということは非常に嬉しいことだと思う。従来の「美」の見せ方と違った見せ方をすることができるという点で土木業界の新しい観点が広がるのではないか。
(五洋建設 羽田 晃)

新しい水景都市を目指して
まちづくりの評価は難しい問題である考えている。本文ではかなり断定的な評価をしており、ちょっと疑問である。是非、その後の評価について各種意見とその評価について掘り下げるとよいのではないか?市民のニーズは常に変化するものであり、土木学会誌は是非今後の方向づけに一役かってもらいたい。
(電源開発(株) 大島寿哉)

構造改革と経済再生を進めるなかで、公共事業の経済活性化における有効性が低下しているといわれる。ここで紹介されている「MM事業」は、縦割りの行政組織を横断的に連携させることによって、防災・交通・環境(住環境・自然環境)といった多方面の効果を発生させているだけでなく、公共投資の3倍もの民間開発を誘発している。また、市民参加・ユニバーサルデザインといった手法も取り入れられており、これからはこのような公共事業の仕組みづくりが重要だと感じた。
(太陽コンサルタンツ 田澤秀明)

本と私
本の出会いが偶然にもたらした人との出会いについて記述されていてドラマチックであり、また魅力を感じた内容であった。最近は読書をすることがめっきり減ってしまったが、人生に影響を与えるような出会いを求めて、本を漁ってゆきたいと思う。
(西武建設(株) 三村 卓)

この本
面白かった。私は原書を読んでいないので、誤解があるかも知れないが、紹介されている三か条は、私たち土木人のために書かれたものかと見紛うほど、土木と関わりが深く、示唆に富んでいる。決して反語的三か条として受け流すべきものではないだろう。土木に限らず、他のすべての職業に対しても、リーダーたるべき人の心得として、真実を突いており、普遍性を持っていると思う。本書のように表面上は土木と無関係であっても、味わい深い書物が紹介されることを、今後も期待する。もっとも、私事ながら自由な読書にあてられる時間が少ないので、当記事のように、原書を手に取らなくてもそのエッセンスを吸い取った気分になる紹介文が有り難い。
(鹿島建設 吉田 輝)

見て・聞いて・土木の動き
今月号の投稿募集記事をみてこのコーナーの充実性を図る意図が見えてこのコーナーが土木分野全般の掲示板的役割にとなることを期待したい。
((株)ダイヤコンサルタント 大口伸生)

(株)協和コンサルタンツの広告
毎回、毎回、海や水辺の写真が掲載され、ちょっとした楽しみになっているのは、私だけでしょうか?これからも是非学会員を楽しませてください。
((株)大林組 小石川 隆太)

学会誌全般へのご意見、編集委員会への要望等
非常に個人的意見で申し訳ないのですが、土木学会誌の表紙−裏表紙はそれだけで1つの情報となっていますが、本誌内にこれと関連する記事が無いことに多少とまどいます。出来れば本誌内の内容とリンクするようなことは出来ないのでしょうか?
本学会誌の表紙は毎号楽しみにしていますので(表紙に変化のない学会誌が多数ある中で)よろしくお願いします。
(五洋建設(株) 檜山博昭)

今回の特集のように、それぞれの分野で議論されているパラダイムをまとめてくださると、大変ありがたいと思います。今後も上質な記事を届けてくださるよう、期待しています。
(東京大学大学院 田中泰司)

今月も締め切りに1日遅れてしまいました。興味があるところだけを飛ばし読みしてるとすぐ終わるのですが、モニター回答を考えながらじっくり読むと結構時間がかかります。水の問題は土木の問題というより、もっと大きな問題であり土木技術者としてどうアプローチするのかというのは難しいと思いました。
(千代田化工建設 森田 光)

今月号は割とおもしろかったと思います。特に「Dr.という道」はVery Good 。これからも学生会員向けのサービスを定期的にやってゆくのはいいと思います。次回は「就職するか、それとも大学院に進むか」とかいうテーマですかねぇ。
(大阪産業大学工学部土木工学科 波床正敏)

最近、デジカメの普及により、現場での写真撮影もデジカメの使用率が高くなってきています。土木学会誌で紹介されている写真の中にもデジカメで撮影されたものがあります。画質面では通常の写真と比較すると悪く、不鮮明なものもいくつか見受けられます。コスト面や、撮影後の汎用性の良さからデジカメを使用する傾向にありますが、重要な写真や芸術度の高いものには、出版物用にデジカメだけではなく従来のカメラでも撮影していただきたいと思います。
(東京大学大学院 金田尚志)

今回でモニター3回目となる。いつも思うことであるが、土木学会誌を専門に呼んでいる人間はともかく、通常仕事をおこなっている人にとって、これだけのボリュームのある会誌を読むということは、結構大変である。そこで、より文章を平易にし、更に参照としたい人に対してはその参照先を各文章の最後に記載する。また、かなり簡単なもので良いから要約を目次欄に記載するなどの案はどうであろうか?
(電源開発(株) 大島寿哉)

今回取り上げられた水・緑といったテーマは、グローバルでシリアスな問題ではあるが、これからの土木技術者にとって、考え方の基本のひとつに据えなければならないテーマだと感じた。
連載「緑」は、体系的な知識と理解を得られるよう期待しています。
(太陽コンサルタンツ 田澤秀明)

今月号は、なんとなく過去の記録を取りまとめた物が多かったような気がする。この様な物は忘れがちになる事が多い。この様な企画が定期的に行なわれる事を望む。
(基礎地盤コンサルタンツ 中田隆文)

今月号は特集が「水」であったが、特集以外でも「水」で占められてたような気がする。ジャーナル誌思考であるならば、土木分野全般をバランスよく取り上げていただきたく思う。
((株)ダイヤコンサルタント 大口伸生)

グローバルな視点にたった特集が多いのでとても刺激になります。今後ともこのような視点にたったテーマの掲載を楽しみにしています。
(日本道路公団 税田賢二)

他の雑誌において、どのような記事が望まれているかというアンケートがあった際、訃報通知は不要という意見が多かったように記憶している。そのよううな中で、今号の90ページに訃報の掲載があるが、少なくとも経歴のみの紹介ではやはり不要なように思う。そこで、今後も訃報の掲載を続けいるのであるば、今号の倉田先生のように、教訓をメインにするべきではないだろうか?
(関西電力(株) 大江直樹)

編集委員会より読者の皆様へ
2月号に対して寄せられた「会員の声」に対する編集委員会からの回答です。


【ご意見・ご要望など】
僅かな数のモニターの意見が学会員全員の声を代弁しているしているとは限りません。年に1回でも、学会誌の内容に関するアンケートをとってみればどうでしょうか?学会誌にアンケート用のハガキを添付すれば、ある程度の回答数が期待できるのではないでしょうか?
(関西電力 西川 亨)

【編集委員会からのお答え】
編集委員会は、学会誌の編集において、読者の方々のご意見を取り入れることが重要であると認識しており、モニター制度を設けております。しかし、アンケート収集することは現在考えておりません。したがって、モニター期間を終了なさった後も、遠慮無くご意見を投稿してくだされば幸いです。


【ご意見・ご要望など】
巻末の土木学会員の構成を見てわかるように、土木学会は会員数が4万人と数多くある日本の学術学会の中でもマンモス学会であります。しかし、一般的にその認知度は日本建築学会や日本医学会等と比べると低いです。以前に、中央大学多摩キャンパスで行われた全国大会に向かう途中のことでした。バスを多摩センター駅で待っていると、同じ列に並んでいた中央大学の学生さんが全国大会の案内板を見て「土木学会って何?学会というと医学とかを想像するけれども、こんな学会もあるんだ」と話していました。これだけ活動も盛んに行われ、社会基盤の発展に寄与しているのにも関わらず、一般市民の方々には知名度が低いのだなぁと残念に感じたのを覚えています。土木学会と他の学術学会と比較したり、一般市民へのアンケート調査などを行ってレポートしていただけると、面白いかもしれません。
(東京大学 金田尚志)

【編集委員会からのお答え】
今回いただいたのと同じ趣旨である一般の方への土木学会の情報公開やPRの重要性に関するご意見は以前からいただいており、4月号の会員の声において編集委員会の方針を回答させていただきました。なお、アンケートについては、前のご意見に対する回答と同様に、当委員会で実施することは、現在、考えておりません。



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