土木学会誌
土木学会誌4月号モニター回答


表紙・裏表紙
今月の表紙を見て,土木の歴史を垣間見た気がする.本来土木技術というものは人々に感謝されるものであったはずだ.写真を見ながら,人々の暮らしをよりよいものにしようとする努力が強く感じられた.しかしながら,昨今至るところで土木工事に対する批判の声を耳にする.人々の暮らしの安定化,整備事業の推進などその理由は多数あげられるであろう.もう一度,我々土木技術者が信頼を取り戻し,自信を取り戻すためにもこのような土木の歴史を振り返るのもよいのではないだろうか.
(東京大学 小島昌太郎)

巻頭論説 素晴らしき土木屋たち
世の中には土木技術者が受け身の姿勢であると捉えられられているのかもしれない。そして住民参加さかんになるにつれ、技術者が専門的な立場から判断することをしなくなり、単なるコーディネイターとしての活動に自己満足してしまってはいないだろうか。と同時 に、長期的視点に立った社会資本整備という責任がありながら、“地域の要望”という言い訳を便利に用いるようになってしまっているような気がしてならない。
モノをつくるだけでなく、自然や貴重な施設を保全することだって土木技術者の重要な役割であることは言うまでもない。ただし、どちらであっても、取り組む姿勢が積極的でなければ、土木技術者はやがて世の中から見放されてしまうだろう。
(建設技術研究所 米山 賢)

特集 素晴らしき土木屋たち
土木の世界でこれまで頑張ってこられた先輩方の苦労した点、発想方法、今後期待することなど興味深く読みました。様々な業務の中での経験を生かすことの重要性とともに、いま従事している業務だけを注視することなく、バランスのとれた「ものの見方」を養うとともに、社会基盤整備をつくる意識のもと、必要となるものを効率よく、また高品質のものをつくることのできる技術者を目指すべく努力していかなければならないと感じました。
(五洋建設株式会社 土木設計部 氏三好俊康)

近年、土木関連業務において3K等のあまりよくない印象が強く、ゼネコンへの就職希望者が減少する傾向がみられます。これは、仕事を選択する時、または実際に従事する上においてどれくらい夢を持てるかという点と強いつながりを持っていると思います。今回の特集は、土木業界で土木屋として強いプライドと誇りを持って仕事を行ってきた事例の紹介であり、感心とともに伝記的な読み物としても面白く、土木の世界と関係のない方々にも興味を持って読める内容であると思いました。読んでいて、NHKで放送している「プロジェクトX」のテーマソングが何となく頭に浮かんで、土木の仕事の規模の大きさ、世界的にフィールドが広いこと等を改めて教えられたと思いました。
あまり頻繁に採用する企画ではないのかもしれませんが、百の切り口上的説明よりも一つの実事例の持つ説得力を感じさせられました。
(金沢市交通政策課 木谷弘司)

こういった個人的な業績が紹介されることは、若手の土木技術者やこれから土木業界に入ろうとする人たちにとって、将来に対して夢や希望を持つ意味でとても有意義な企画だと思います。土木というと他の分野に比べて一般的には今ひとつ社会的な地位が低いように見られるところがあると思うので、学会誌に限らずもっと幅広く紹介されることが土木のイメージアップにつながるのではないでしょうか。
(熊谷組 蓮池康志)

現在就職活動中の私にとってタイムリーな話題でもあることから,今回の特集は非常に興味深かった.それぞれの分野において第一線で活躍されている方々の,土木技術者としての自覚・誇り・哲学は,自分にとって非常に刺激的で,今までにない感銘を受けた.自分もこのような技術者に一歩でも近づくよう努力したいと思う.これからもこのような特集を組んで欲しい.
(東京大学 竹上浩史)

特集全体の感想として、土木屋と呼ばれる人たちの仕事振り、情熱が伝わってくる好企画だと思います。また、若手に送るメッセージもそれぞれの方の経験に基づいたものであり、興味深かったです。このようなインタービュー形式で理論と経験をうまく聞き出すような質問の設定であれば、土木が専門でない読者にも十分楽しめる内容の記事になると思います。
(国際協力事業団 神崎博之)

学会誌の企画趣旨に人物,個人の生きざまに焦点をしぼって紹介していく,との説明がなされていました.どの記事も非常に面白かったと思います.少々学会誌とはずれますが,90年代のNHK特集で電子立国やテクノパワーがありました.私は当時は学生でしたが,両方の特集を比較して,電子立国のほうが面白いと思いました.その理由はこの土木屋たちの記事のように個人の生きざまが描かれていた部分が多かったからです.7人の土木屋たちにおいても電子立国においても各人がどのような困難に直面し,どのように問題を解決していったのか,そして問題を解決したあとの笑顔が印象的でしたし,問題取り組みの姿勢など,学びとるところが多いと思います.学生だった私も電子立国を見て元気が出ましたが,この記事を読んで同じく元気が出た方も,私を含めて多かったのではないかと思います.
最後に要望ですが,専門的にも勉強になることが多いので7人の業績に関して,会社の技報,論文などの文献もあるかと思いました.記事の最後に参考文献としてあげておいてほしいと思いました.
(武蔵工業大学 白旗弘実)

まさしく「素晴らしき土木屋」である諸先輩方の経験談は、紙面からも生き生きとした人間像が伝わってくるほどに、とても刺激的であった。確かに時代は変わり世の中の情勢も変わってはいるが、そこで働く土木屋はいつでも共通の土木という世界で生き生きと活躍していく集団でありたいと思った。
(栗ア夏代子)

土木の各方面の第一線で活躍している方々へのインタビュー記事は読み応えのあるものであった。どんな巨大な事業であっても、つまるところ各個人がどのように考え行動するかにかかっており、人的なファクターを抜きにして事業を語ることはできない。先人の経験に学ぶところは大きい。今回登場した方々は、ほんのひとにぎりであり、今後更なるインタビュー記事を望みたい。
(国際協力事業団 梅永 哲)

景気の低迷や社会ニーズ(情勢)の変化,自然環境との調和や大幅なコストダウンなど要求事項が多岐にわたる近年,土木屋の周辺環境は複雑かつ多様化した過渡期に置かれている.そうした中,高度成長期の体験談を踏まえた本記事は,若手エンジニアに対する警鐘として非常に新鮮味のある内容であった.
今回の記事では特に,「杭打ち」や「鉄道橋」の話題に興味を持った.近年の若手技術者は,机上議論(これはコストダウンの流れを追求した弊害とも思っているが)のウェイトが大きくなり,現場を注視する機会が減少している感覚がぬぐえない.そうした意味で古きを知り,自分が誇りに思える業績があるエンジニアが非常に羨ましく思えた.このことは若手エンジニアにとって,限られた職務経験においていかに高度な洞察力を持ち,柔軟な好奇心と知識・経験の拡充を図り,失敗こそが学習の場であると認識したさらなる向上が必要であることを再認識させてくれたと思っている.
(電源開発梶@中山義紀)

四月号の特集「素晴らしき土木屋たち」を読みました。それぞれの方の人間性や真摯な考えには、感銘を受けました。私は、特にJR東日本の石橋忠良氏へのインタビューを興味深く読みました。云うまでもなく氏は、国鉄時代も通じ、技術分野では構造物設計の指導的立場にある方だと思います。
お若い頃の業務経験に対する姿勢から、単に技術を平面的にとらえることなく、柔軟に広範に、体内に吸収することが如何に大切かが分かりました。
高架橋の火災災害に関しての話の中で、「・・・こういった経験があると、どこかで高架橋が真っ黒になっていて現地の人々が驚き、夜中に電話がかかってきても、電話で鉄筋は見えているかどうか聞き、見えてないというと列車を通してもいいという判断ができます」とお話になるのには、全く脱帽です。
技術とは、設計計算や解析に限ることなく、もっと感応を働かせて技術開発する思考力を身につけよとおっしゃっているように、私は石橋氏のお話を受け止めました。
(株式会社 桜井測量設計 技術部 飯野己子男(投稿))

今回の特集は土木に関係している者であれば、程度の差こそあれ興味を持って読んだと思います。時期的に土木の社会に進む新社会人へ送る良いメッセージにもなったと思います。このようなインタビュー記事は特集ではなくても学会誌に毎月1,2編程度掲載しても良いのではと考えます。
(独立行政法人土木研究所 河藤千尋)

海上の杭打ち屋で知られるアイディアマン
真剣に悩んだ後、ふとリラックスしたときに解決策が何処からとも無くやってくるという感覚は確かにあると思います。私の場合、集中して業務に取組んだ後、@帰宅中の車の中、A風呂に入っているとき、Bジョギングもしくは自転車で軽く流しているときなどに、解決策が忽然と頭の中に浮かび上がります。経験と実績の豊富な松木田氏の力強い言葉に勇気づけられ、今後も壁にぶち当たることにひるまず、明日の土木技術を築いていこうと思う。
(新日本製鐵 杉本雅一)

正直いえば企画趣旨にあった「土木屋魂」という言葉はあまり好きではありません。また、インタビュー記事は 得てして表面的な話に終始してしまうものでありますから、余り期待しないで読んでおりました。しかし、松木田氏のインタビュー(お話し)は非常に説得力があり、思わず引き込まれてしまいました。特にアイデアが夢の中から出てくるくだりでは、自らの不断の努力の足りなさを羞じるとともに 物事の本質をどのように考えていくべきかを教示され 大変勉強になりました。
(千代田化工建設(株) 清水啓之)

筆者である松木田氏の考え方の数々に感心し、かつ共鳴するところが多くありました。色々と苦労し体験された事を生かして、リーダーとしても立派に後進の指導をされておられますことに、心からの敬意を表したいと思います。特に、『両端にアイデアが隠れている』とのご意見は、私も日頃から感じており実践してきたことが多いだけに、我が意を得た感じです。私も具体的に申しますと、「困った時には原点へ」と云うことを信念としていますし、基準書や指導書が余り好きでないのです。そのために、若い時は時々周囲がびっくりするようなことをよく言っていました。最近いくらかその辺りが鈍くなっていると感じておりましたが、これでまた自信を持って少し極端から発想してみることにしたいと思います。
(潟Gイトコンサルタント 石井憲郎)

宮城沖、阪神で復旧工事に携わり、経験と実証の重要性を認識
災害時復旧の現場に携わられた多くの経験を踏まえて,現場を統括するマネージャーとは斯くあるべきとの見識が随所に示された貴重なインタビューであり,興味深く拝読させていただいた.冷静な視点・判断,的確な情報収集,最前線で働く人々の志気への配慮が,混乱する復旧工事の現場マネージャーに求められる条件であるということがよく理解できた.社会インフラの建設・維持管理に勤しんでいる土木技術者の考え方や生き方を,学会員以外の方々にもアピールしていくことが,開かれた土木工学を形成していく上で今後ますます重要になるかと思う.今回のインタビュー特集を土木学会誌の一特集として完結させるのではなく,より広く情報発信することもご検討いただきたい.
(京都大学 宇野伸宏)

自然界の微生物や組み換え技術を使い、汚染土壌・地下水の修復に取り組む
微生物の働きと土木を関連付けて、わかりやすく説明されており非常に興味深い。生態土木・生物材料土木という新分野の可能性が提示されているが、インタビューの流れに沿っていくと、その必然性に対して、なんの無理も無く納得してしまった。現時点での研究のレベルが、実用面、あるいは、事業としての実現性にどの程度近づいているかを具体的に知りたいと思う。二月号で、土木のベンチャービジネスの特集があったのを覚えているが、こういった分野が今後のベンチャービジネスの核になっていくような予感がする。
(西松建設香港支店 林 謙介)

私は、10年足らず前に『農業と環境の関係』について、いくらか学びまたこれを用いた技術の実践を試みたことがあります。このため矢木先生の説には、大変興味も持ちましたし、体験的に共感できるところも多くありました。土壌の浄化能力と言うのは、実に素晴らしいものですが、一定の許容限界を越えますと、効用は極端に減じてやがて機能しなくなることも判ってきました。農学分野ではこのように理論よりも実証で、これら微生物を色々と利用していましたが、土木分野では以前「工学的検証が困難と言うことで論議対象から外されている」と云うことを聞いたことがあるように覚えていますが、このように学会誌で議論の対象になったことは喜ばしいと考えます。
(潟Gイトコンサルタント 石井憲郎)

発展途上の国々の持続可能な開発を支える
インタビュー形式という事情もあるのだろうが、できればタイトルに関連する内容に紙面をより多く割いていただければと感じた。豊富な経験をお持ちの話し手が、途上国における今後の開発のあり方等についてどのようなビジョンやアクションプランをお持ちかを知りたかっただけに、少々残念であった。
(建設技術研究所 米山 賢)

地下タンクの連壁技術の発展とともに27年
今回紹介された地下タンクに限ったことでは無いのですが、現場で実際に構造物を作っておられる方は、それに愛着と情熱を持って仕事をされていることが多いように思います。何も土木の分野に限ったことではないのでしょうが、自分のしてきた仕事に対して誇りが持てることはまさに技術屋冥利に尽きるといえるでしょう。
(水産工学研究所 宮地健司)

持続可能な社会資本整備を担うコンクリートの維持管理技術
この記事を読んで考えることは多い.今現在,社会基盤を整備していく上で,もはや建てることよりも維持管理を含めたマネジメントに力を注ぐべきだと思う.その中でいかに環境問題に着目し,強度,耐久性を含めたライフサイクルのコストを低減できるかが我々土木技術者の命題となっていることは言うまでもない.私の研究室ではそういった観点からコンクリートの研究,課題に取り組んでおり,維持管理を考慮に入れた研究を行っていきたいと考えている.
(東京大学  小島昌太郎)

コンクリート構造物のメンテナンスに関して、ずいぶん昔からこの問題にテーマを絞り取り組んでこられたことに、感心しました。最近いろいろとコンクリート構造物の劣化がクローズアップされてきており、新規構造物の設計・施工よりも幅広い経験と知識が要求される分野であるため、どちらかというと年輩の技術者が担当することが多いのですが、これからの時代を考えると、目先の補修・補強のノウハウを追うのではなく、テーマを絞って若手技術者が取り組んで行く必要があると感じました。
((株)芙蓉調査設計事務所 須賀幸一)

プロジェクトリポート  東京都水道局金町浄水場常用発電PFIモデル事業
日本初のPFI事業の立ち上げには、様々な苦労があったかと思います。事業として機能させるためには、リスクマネジメント面からの検討などを十分におこなうこと大切さを感じました。今後のPFI事業についても、筆者が述べられているように規制緩和など自治体側の発想の変換と迅速な対応を求めるだけでなく、土木学会からの提言や提案など是非とも検討していただき、PFI事業の一層の発展に寄与すべく、土木技術者も含めて議論の場を設けるなどしていただければと感じました。
(五洋建設株式会社 土木設計部 三好俊康)

最近いろんな雑誌でこの金町浄水場のPFIモデル事業を目にする。本文中に発注者の利点がいくつか挙げられているが、PFI事業を薦めることは、民間側の技術等の発展にはつながっても、公共側の発展にはつながらないような印象を受ける。私の理解が浅いのかもしれないが、そのあたりをもう少し詳しく知りたいと思う。
(栗ア夏代子)

我が国初のPFI事業の運用に関する詳細が良くわかり,非常に興味深く読ませていただいた.今後機会があれば,事業立ち上げに要した時間や費用など,従来までの方式に比べたプラスα部分がどの程度のものであるかについても紹介して頂きたい.
(五洋建設(株) 中山晋一)

PFIという言葉は近年よく耳にしていたが,これまで具体的な事例にふれる機会が無かったので,この記事によりPFIの仕組みを概ね理解することができた.リスクが低く安定した収益が見込める事業であり,民間側が有する効率的な事業運営のノウハウを活用することで,収益の拡大が期待できる様な事業が,PFI方式の適用に向いているということがよく分かった.今後,行政体のスリム化を進めるためにも,PFI方式を活用した公共サービスの安定的な提供を促進することが必要になるものと思われる.本文中にも50以上の事業がPFI方式の適用を検討中とあるが,今後ともその動向を継続的にお教えいただきたい.
(京都大学 宇野伸宏)

本記事は,今後の公共事業のあり方を模索する一例として非常に興味深いものであった.震災対策を主目的とした常用発電プラントの建設・運営管理ということだが,これは東京都にとっては危機管理を見越した自衛策の一つであり,民間側としては蓄積されたノウハウを発揮することを容易にするものとして注目される.
一方,民間出資のPFI事業においては記事に明記されているように,民間事業者側のリスク認知と管理が重要であり,今後の事業運営において不具合が生じた場合の対応状況を評価して,初めてその真価が問われるように思う.いずれにせよ今後は,発注者側である公共機関がPFIにおけるリスク認識を深める傍ら,民間事業者側は高度な技術提案と事業推進能力,そしてリスク認知・管理を発注者側と相互共通認識することが,今後のPFI事業普及へのカギになると思われる.
(電源開発梶@中山義紀)

イヌワシと共存する発電所建設
建設行為と「イヌワシ」との共生は,環境共生型建設のひとつのスタイルとして興味深く感じました.短期的な経済性ではなく長期的な観点で工事を進めたことが,今後の環境共生型建設の参考になると考えます.また,「ビオトープ」に関しては,循環型建設の一例として貴重な試みと思います.生物に対する対策は,同じ手法が他のサイトにも効果があるとは限らないことを,魚道に関して聞いたことがあります.したがって,土木技術者は,単に力学的な学習を積むだけでなく,生物や環境に対する学習も平行して行う必要があると感じました.
(大成建設 伊藤一教)

今月号の中でももっとも興味深そうなタイトルという事で,一番初めに目を通した.タイトルから,どのようにイヌワシと共存するのか,その具体策が紹介されていると想像していた自分の期待はもろくも崩れ去った.確かに記事中に若干その内容は紹介されていたが,それは私でも思いつく範囲に限られていたように感じる.これでは,これでは一般に公開したときに世論を納得させるだけの説得力は無いのではないだろうか.記事全体としては大変面白い内容であったが,タイトルから連想する内容とのずれを感じざるを得なかった.
(東京大学 小島昌太郎)

日頃マスコミの流す大規模建設工事=環境破壊という一面的な報道が多いなかで、今回の記事などはその反駁の一つとしてもっと対外的にアピールしてもよい内容であると思いました。これだけ努力、工夫して工事を進めれば環境破壊を最小限にして自然と共存できるという貴重な例だと思います。この記事に、環境保護のためにはこれだけ建設コストが増加します、工期が伸びますという話が実際の数字を持って加われば、自然を守っていくためにはそれ相応の負担が必要であるということがより現実味を持って伝わると思いました。
(独立行政法人土木研究所 河藤千尋)

技術リポート フルコンテナ船寄港隻数世界1位国・日本
輸送コストの低い大型コンテナ船の寄港は輸入依存型の日本経済にとって重要で,このことは従来より知られている.そのため,大型コンテナ船対応の大水深岸壁の建設が進められている.本稿の分析によれば国内経済圏の分散化と高い陸上輸送コストのために,一寄港当たりのコンテナ取扱量が低い.高い陸上輸送を避けるために全国各地に分散的に大型コンテナ船が寄港することは効率的だと思います.国民経済にとって第一に重要なことは, 輸送単価の低い大型コンテナ船が直接日本に寄港するよう対応することと思います.本稿の分析のように,より詳細なデータ解析は,事実の把握に重要であると考えます.
(大成建設 伊藤一教)

日本は輸入依存大国であり、近年コンテナ取り扱い量が減少していることは、予想通りのものでした。本稿で紹介された分析では、陸上輸送が高価な日本では、コンテナ船が目的地域の最寄の港を利用しているのが分かりました。現状を把握することはできたところで、今後の方向性をどのようにしていくのかが読み取れなかった。コンテナ取り扱い量を増やしていく方策を考えていくことが大切かと思います。
(日本鉄道建設公団 岡 康博)

日本のコンテナ港湾の地位低下を、寄港隻数という新たなデータを基に分析を行い、なるほどと納得のいく考察が加えられている。ただ、88年から98年にかけての寄港隻数の伸び率だけをとると、日本が2倍に満たないのに対し、香港、シンガポールは約3倍であり、差が広がっているのは事実である。
小さな所ではありながら、コンテナ取扱量では常に1,2位を争っている香港に住んでいて感じることだが、まさに町中いたるところがコンテナだらけである。たまに実家のある神戸に帰り、港のあたりを歩くこともあるが、香港との差は歴然としている。取扱量、寄港隻数ともに大きく水をあけられてしまったのは、少しさびしいが、今後とも客観的な分析をもとに日本独自の運営の舵取りを行っていってもらいたいものである。
(西松建設香港支店 林 謙介)

意外な事実を知って驚きであった.ただ記事が分析結果の羅列だけに留まったのが残念であった.これから日本としてどのような方向に進めばよいのか,といったところまで論じてあればもう少し興味深い記事になったと思う.
(東京大学 竹上浩史)

コンテナの総取扱量、寄港隻数で比較されていますが、コンテナに積まれている物の総価格で比較すれば、日本はいいところに位置するのではないでしょうか。それから、1国1港しかない所に比べれば、集積地に応じてコンテナ港のある日本の方が自然にやさしい物流のあり方のように思えます。また災害など非常時の代理機能性もあると言えるのではないでしょうか。
ただし、中継としての寄港があるとはいえ、L値の低さは問題かもしれませんので、規模は小さくても高能率なコンテナ港を目指すことが肝要ではないかと思いました。
(本四公団 梁取直樹)

関西に居住しているため、阪神大震災以後、神戸港の取扱量や寄港隻数が低迷していることは耳にしていたが、国際的な海上輸送に関するまとまったデータを目にするのは初めてであり、興味深く読ませて頂いた。新たな調査データに基づき、新たな視点(指標)で現状を分析されている点が印象的であった。ただ、今回のような分析を行おうとした動機(どうして従来の統計データだけでは不十分であると感じられたのか等)について、もう少し詳しい解説を加えていただくと、今回の分析結果をより面白く読むことができたのではないかと思った。
(都市交通計画研究所 田名部淳)

近年,港湾競争力低下が指摘されている我が国が,フルコンテナ船の寄港隻数では,依然世界1位であることに驚いた.レポートでは,上記の要因として日本が分散した経済圏からなる国土構造を有すること,また,国内陸上輸送費が高いため基幹航路から点在する拠点に直接寄港した場合でもメリットが得られること等を挙げている.日本の将来を考える上で,物流プラットホームとしての港湾の役割は依然として高いことが予想され,その整備は不可欠といえる.我が国にとって真に効率的な国際海上輸送体系を考える場合,単に一港のコンテナ取扱量のみからその相対的地位を議論するのでなく,こうした我が国特有の経済構造を充分に評価する必要があることを感じた.
(五洋建設(株) 中山晋一)

土木紀行 旧淀川の橋梁群
いつも楽しみに読んでいるシリーズであるが、今月号の最初の写真を見て、天満橋が主役であるのであろうが、その上に架かっている高架橋の方が目立ってしまっており、都市景観を悪くしているように感じた。さらに言うと、この写真を見てどれが天満橋かをすぐに分かる人は少ないと思います。つい最近、首都高速において都市景観を悪くしている高架橋を見直すという記事を読んだのであるが、大阪でもそういった動きはあるのでしょうか。今回の記事では特に、そういった今後の計画などを知りたいと思いました。
(大成建設(株) 小池真史)

2月号の隅田川の橋梁群に続いて、大阪の橋梁の紹介である。かつて先輩の橋梁技術者からここに紹介された橋梁の資料を譲っていただいたことがある。高欄のデザインなども含めて全体のバランスがすばらしく、自分たちの設計している橋梁と比較して(?)、ショックを受けたのを覚えている。比較することが土台無理なのだが、50年、100年と残る橋を造りたいものだと考えたものでした。本誌を読んでそんなことを思い出しました。
((株)芙蓉調査設計事務所 須賀幸一)

20世紀ニッポン土木のオリジナリティ考  Seif-Compacting Concrete
20世紀ニッポン土木のオリジナリティ考のシリーズ連載は、その内容も多岐にわたっており、いろいろと参考になりますが、21世紀を見据えて、「このような技術があってほしい」、「なぜこうした技術が無いのか、何が問題となり開発がされないのか」といった観点から、学識経験者の意見や市中の方々の意見など掲載されてもおもしろいのではないかと思います。
(五洋建設株式会社 土木設計部 三好俊康)

本稿の中で自己充填コンクリートの特徴を学ばせて頂きました。コンクリートの土木構造物を維持管理していく組織にとっては、品質向上は重要な課題である。文中にあるようにコンクリート構造物の早期劣化の原因は材料と施工にあることは承知のことである。この自己充填コンクリートにより、良質な土木構造物を提供していけることを期待しております。本稿では利点を強調されていますが、例えばコンクリート打設時の養生や温度管理などの面で従来のコンクリートとの違いがあるのか疑問に思いました。
(日本鉄道建設公団  岡 康博)

Self Compaction Concreteが日本で生まれた事はなんとなく知っていたが、この記事を読み 研究/開発過程またその影響を系統的に理解することができました。記事の中では、海外でもオランダ等でかなり普及させているとのことではありますが、より世界的に普及されるためには低コスト化および品質管理の容易さが必要であります。今後のさらなる研究成果に期待したい。
(千代田化工建設(株) 清水啓之)

自己充填コンクリートが日本独自で開発され技術的には世界をリードしていて、それを採用することによって工期短縮や耐久性の向上など今までのコンクリートに比べてかなり有効な技術であることや、世界でも注目されいくつかの国では普及率が高いということは理解することができた。ただ開発した日本ではそれほど普及していないという事なので、今後の実用性の向上という点でもこの原因についてもっと追求した内容があってもよいように思います。
(熊谷組 蓮池康志)

世界中から関心の高い自己充填コンクリートの発祥の地が我が国であるというのはとても誇りだと思います。
あの有名な明石海峡大橋に適用され、複雑な構造形式ではこの施工法なしには建設不可能な工事があるくらいに普及されてきているだけに、日本がこの技術分野で既に遅れをとってきているという事実には驚きました。技術が素晴らしい故に関心度が高く、各国で研究されてきているのも誇れるものですが、世界中に定着、普及しているSelf-Compacting Concreteだからこそ、日本は常に世界の技術のトップでいてほしいと願い、今後の更なる技術開発へ期待をしています。
(熊谷組土木部 道村未佳)

オリジナル性の高い技術の開発には、「逆転の発想」ともいえる自由な思考が必要であることもよく判りました。自己充填コンクリートの性状特に間隙通過性のメカニズムは判りましたが、もう少し配合、施工の合理化、耐久性向上などが省略されていることあるいは、価格の問題以外にそのデメリットに触れられていない点に不満が残ります。このように施工性がよくしかもコンクリート品質向上に寄与できるこの製品が、なぜもっと普及しないのでしょうか。思うに、現在のコンクリート施工システムの延長線上にこの自己充填コンクリート技術を適用していることに原因があるのではないかと思われます。本来は、現在の「生コン」ではなくそれとは大きく性状の異なる新しい土木材料として認識する必要があるのではないでしょうか。ここで省略された前記の点を含めて、後日再報告頂くことを期待したいと思います。
(潟Gイトコンサルタント 石井憲郎)

話の広場 日本最古のアースダム
今回紹介された飛鳥時代に造られたアースダムの存在を初めて知り参考になりました。古代の土木構造物としては、古墳などは良く知られていると思いますが、ダムという治水・利水を目的としたものは珍しいと思いました。本稿では、堤体保存のために大変苦労されたことが読み取れました。約1400年前の土木技術を是非拝見しに行きたいです。古代から現代までの土木技術の発展について新しい発見が出来そうな気がします。
(日本鉄道建設公団 岡 康博)

資料館や博物館等の入館料はいつもとても高いと思っていました。しかし、狭山池博物館のように、堤体断面を保存するための検討をみると、仕方がない場合もあると感じました。
(清水建設(株) 田中八重)

昔のダムから断面を切り出し,それを保存する,というアイデアが面白かった.最新技術の華やかさの陰に隠れがちな土木史だが,先人たちの偉業は現代人の感覚からしても驚愕されるものが多く,こういったものを見つめなおす機会を設けるのは良いことだと思う.土木技術は他の分野と比べても歴史が古いものであり,土木技術史を集めた博物館などができたら面白いと思う.
(東京大学 竹上浩史)

古代日本の土木構造物としては,こうした提体の他に古墳などが挙げられると思う.後者は改修の機会がほとんどないと考えられ,こうした試みは非常に貴重であろう.レポートで紹介される提体サンプル保存のための施工方法もさることながら,古代飛鳥人の土木技術力の高さには初めて驚かされた.特に,提体の圧密促進や排水能力確保のため,現在のペーパードレーンやサンドマットに類似する工法が用いられていたそうである.機会があれば博物館を訪ね,切り出された提体の断面を見学したい.
(五洋建設(株) 中山晋一)

飛鳥時代からの土木構造物が、形を変えながらも現役であるということは驚きであった。土木構造物はしっかり施工されていれば、子々孫々にわたって使われる公共財であることを示すよい例である。機会があれば、この堤体断面をはじめとする様々な遺物が展示されている狭山池博物館に行ってみたいものである。
(国際協力事業団 梅永 哲)

事故災害 新島・神津島近海の群発地震による道路・急傾斜地等の被害と応急復旧
三宅島が噴火してかなりたちますが、現在でも三宅島をはじめとした方々が未だに避難生活を余儀なくされているなど現地は未だ危険な状態にあります。そんな中に果敢にも出かけていき災害復旧の作業にあたられている方々は非常に大変なことと思います。私自身が普段現場に関わることが少ないこともあって大変興味深く読ませていただきました。
(水産工学研究所 宮地健司)

平成13年芸予地震が起こった直後だけに,この「災害報告」を最初に読んだ.被害状況や復旧の時間経過が要領よくまとめられており,何かと参考になった.地震と豪雨,追い打ちをかける群発地震,こうした悪条件のなかの離島?での復旧作業,頭が下がる.
(愛媛大学 高橋治郎)

海外リポート Hazard Assessment and Remediation Work at Tsho Rolpa Glacier Lake, Rolwaling Himal, Nepal
問題になっていた「氷河湖の決壊」災害を防止すべく,湖水位を下げる工事が完了したとのリポート,興味を持って読んだ.1993年夏にネパールへ行ったとき,「氷河湖の決壊」による災害に手を焼いていることを大勢の人から聞いた.人海戦術に頼るしかなかった当時の国情を考えると隔世の感がある.
(愛媛大学 高橋治郎)

英語の記事でもあり、読むのが億劫になってしまいました。すいません。
(千代田化工建設(株) 清水啓之)

日本にいる私たちは氷河などにはなじみが薄いですし,氷河湖が決壊するということも恥ずかしながらはじめて知りました.この記事は氷河湖決壊に対して,水路をつくって水位を下げるという内容でした.
まとめのところに書かれていましたが,氷河湖決壊に対する世界的な認識を高め,経済的援助もほしいとのことですが,私もこのような問題があることを知ることができましたし,他の方にも読まれるべきと思いました.紙面が限られているのでしょうが,過去に決壊によりどのような被害が出たか,モレーンの透水特性についてなども書かれているといいと思いました.記事の中では言及されてなく,今後の調査結果がまたれると書かれていましたが,湖の水位が上がるのはいわゆる温暖化現象のひとつなのでしょうか.
(武蔵工業大学 白旗弘実)

この本 イギリスは豊かなり
この本の紹介のなかで「…多くの不便と非効率性を承知の上で歴史を残そうとするイギリスの都市開発の哲学を著者は高く評価している…」という記述があるが、都市計画での一つのポイントになるのではないか。都市部の利便性に加えて、地方に残っている昔ながらの建物や風景を思い描くような環境を取り入れることにより、本当の意味で人や国を豊かにするのではないでしょうか。
(熊谷組 蓮池康志)

この記事の中で紹介者はイギリスの例をもとに,心の豊かさ,ゆとりをとりあげています.私はイギリスには行ったことはありませんが,日本を出て外国に行っただけでも日本とは違う心の豊かさを感じます.さらには私は東京都内で生活していますが,東京を出て地方に行っても東京にはないゆとりを感じます.各論に入ってしまいますが,私はゆとりがないのは東京人だと思っています.
各論はともかく,ゆとりや心の豊かさを失いつつある,ということに関して私も深く反省すべき者の一人であると思いました.自分にはなかったゆとりを感じるのは一部繰り返しになりますが,外国などに旅行したときやこのような本を読んだときなのかもしれません.「イギリスは豊なり」を買って読んでみようと思います.
(武蔵工業大学 白旗弘実)

協定学協会のページ 海外支部って?
今回、海外支部として台湾支所の記事がありました。土木学会に海外支部があることを初めて知りました。将来、日本国内と同様に最新情報を得たり相談できる体制を整備して頂けることを期待しております。
(日本鉄道建設公団 岡 康博)

支部のページ 大分スポーツ公園
都市化の進展の著しい大分市において、市街地近傍では、里山林として現存している価値が高いとあるが、これは著者の主観的評価なのか、地元住民の意見が反映したものなのだろうか?後者の場合には、里山を散歩などで利用することが多いとか、そばを通ると空気がおいしいとか、これといった利用はしないが、眺めるだけで気持ちが落ちつくとか等の様々な住民の意見を調べる必要がある。すなわち、スポーツ公園開発以前の住民の意見の報告が必要不可欠である。
 もし、著者の主観的評価となれば、開発はどんな意味があるだろうか?ワールドカップサッカーの会場にするまでの開発をしないと、里山は、住民に見向きもされない存在になりさがってしまったのか?そして、このような開発で、里山のもつ効用が発揮されるといいきれるのであろうか?よくわかりません。
(豊橋技術科学大学 平松登志樹)

学会誌全般へのご意見、編集委員会への要望等
先輩技術者の経験談は,非常に興味をもって読めますし,今後の参考になります.特集ではなく,継続的に実施して欲しいと思います.
(大成建設 伊藤一教)

特集自体にテーマが無い分、類似した内容や同じトーンの記事が無く、かなりの速度で、ぐいぐい読めました。特集以外の記事も読みやすかったように思います。
(西松建設香港支店 林 謙介)

「仙台宣言」が1月号にありましたが、この宣言のFollow Up記事があってもいいのではないでしょうか?
(千代田化工建設(株) 清水啓之)

モニター回答をはじめて数カ月がたちました.多くの他のモニターの方もおっしゃっているように私も多くの時間を学会誌モニターに費やすようになりました.しかしながら,私の書いた回答は学会誌には一度も出てきません.先日,学会誌モニター回答のホームページを見たのですが,数カ月間で毎回回答されているにもかかわらず,学会誌に掲載されていないモニターの方もいらっしゃるように見受けられます.その一方で,すでに5,6編も学会誌にモニター意見として掲載されている方もいらっしゃいます.これは正直,不公平感を感じずにはいられません.仮にモニター依頼を受けた時点でモニターすべての方に等しく学会誌に回答が掲載されるわけではないとの説明があれば納得いきますが,そのような説明は事前にはありませんでした.
おたずねしたいのですが,学会誌編集課ではモニター回答をどのような基準で学会誌に載せるかどうか決めるのでしょうか.また,必ずしも平等に回答が掲載されるのではないという印象を与えてしまった以上,モニター各位にある程度のモニター回答後の学会編集課での編集過程を説明していただきたいと思います.
ここまで要求すると,私が自分の意見を学会誌に誇示したいと解釈されるかもしれませんが,申し上げたいのは純粋に学会誌掲載基準と掲載決定過程を教えていただきたいということです.趣旨をご理解のうえ,納得のいく説明をお願いいたします.
(武蔵工業大学 白旗弘実)

多くの方々に取りつきやすい学会誌を目指すのも、一つの方法であることは認めます。しかし、最近の記事には、その方向が強すぎて内容に全く専門性が感じられないものが多いように思われてなりません。それを具体的に指摘するのは、色々な要因もあって適当でないと判断しますので差し控えますが、本当に知りたいと思う情報が全くと言っていいほどないものにはただ残念と言うばかりです。一般の素人の方にも判り易い紹介記事と、専門的な情報伝達を目指すものと、双方向で編集すると言う方法も考えられるのではないでしょうか。
(潟Gイトコンサルタント 石井憲郎)

・広告は広告欄として,巻末等にまとめた方がいいのではないでしょうか?
・最近の学会誌や,図表や写真が充実されており結構である.
(電源開発梶@中山義紀)

編集委員会より読者の皆様へ
3月号対して寄せられた「会員の声」に対する編集委員会からの回答です。


【ご意見・ご要望など】
記述の正確性向上が望まれる学会出版物
土木学会誌2001年3月号の夢舞大橋に関する報文を見て、何が世界初なのかといぶかった。カリブ海に浮かぶキュラソー島の港町で、女王エマ橋という13隻のボートで支えられた素朴な浮橋が、大きな船が近づくとドアを開けるようにして路を譲っているのを見たことがあるからである。
土木学会創立80年周年記念事業のひとつとして刊行された“ヨーロッパのインフラストラクチャー”は、今や土木屋がヨーロッパ旅行をする際の必携書ともいえる労作であるが、例えば、南に傾き続けるピサの斜塔の安定化対策の解説、レインヒル鉄道斜アーチ橋に関して「橋」を「渠」としている表記、キンデルレイクの風車群へのアクセスで東南東であるべきものが西南西になっているなど、いろいろの不適切な記述や誤りが見受けられる。また、関西支部による“橋の何でも小事典”は、手軽な土木工学の啓蒙書として親しめるが、その中では、城塞橋として記述している中世のアラカンタラ橋とは別の、ローマが造った同名の道路橋の写真が掲載されていたりする。
例示してきた学会誌や学会刊行図書の不正確な記述は、執筆者の情報収集の不備、専門的知識の不足、印刷システムの過信や、思い違いによるミスに対する推敲の不十分、共同執筆者間の意思疎通の欠如など、さまざまな原因によると思われる。しかし、文字になっている記述内容は、特に専門外のことに関しては、怪しいと思ってもさらに疑うことは難しく、ましてやそれを正すのには時間も手間もかかるし勇気もいる。すなわち学会は、その責任において、専門家の集まりである編集委員会や学会の編集出版関係担当者に一層の努力を要請し、不正確な記述を極力なくすることに努力する必要があろう。また、特に刊行図書については出版後、放置するのではなく、読者である会員に呼びかけて気付いた不正確な記述を指摘してもらい、それらを各図書ごとに整理して正誤表にまとめて常時公開し、その図書の改訂を待つまでもなく会員がいつも正確な記述内容を知ることができる態勢を整えるのもひとつの方法であろう。
(東京大学名誉教授 三木五三郎)

【編集委員会からのお答え】
貴重な御指摘と御意見ありがとうございました。学会誌編集委員会としても正確な記述となるよう、より一層努力していきたいと存じます。また、不正確な記述があった場合には本コーナーにおいて「おわびと訂正」を掲載しておりますので、会員の皆様におかれましても、今後とも御指摘のほどお願い致します。御指摘の本誌3月号掲載の夢舞大橋の記述については筆者からの回答を得ておりますので下記に掲載いたします。
また、学会の刊行図書についても、正確な記述となるよう一層努力するとともに、改訂時に適切な見直しを行うこと、誤りをいち早く読者の皆様に知らせる工夫などについての御意見を当学会の出版委員会に伝達したいと存じます。また、「ヨーロッパのインフラストラクチャー」等につきましては、御指摘を筆者に伝えます。

【筆者からの回答】
御指摘の本誌3月号掲載「夢舞大橋」の記述について回答させていただきます。筆者らは、夢舞大橋がアーチ形式の旋回式浮体橋として規模や内容的にも世界初であると考えて今回の表現と致しました。しかしながら、記述説明が不十分であり「世界でも類をみない」等の表現をすべきであったと思います。本欄を借りまして、表現に誤りがありましたことをお詫びし、ここに訂正させていただきます。
(大阪市 川村幸男)

『ヨーロッパのインフラストラクチャー』に対するご指摘はいちいちごもっとも で、これすべて編集を担当した馬場の手落ちによるものである。現在馬場の手元には、データ解説の全面変更が1ヶ所(ゲルチタール鉄道高架橋)、同・部分変更31ヶ所、同・新設追加4件、アクセスの部分変更・追加37ヶ所の正誤訂正・バージョンアップが情報として蓄えられている。そのほとんどは、馬場自らが現地を訪れた際に、解説内容やアクセス記述に不備を認めて修正したものであるが、少数ながら読者の方々からご教示いただいたものもある。
土木の世界では、個々の構造物について専門家が何人も揃っている建築と違って、この種の海外ガイドブックのすべての項目に専門家レベルにまで通暁した執筆者を見出すことは困難である。そこで本書では、ボランティアとして執筆を担当したりお願いした箇所が多かった。責任を回避するわけではないが(間違っていることは確かなので)、ボランティアを叱責するだけでなく、学会全員でデータを管理しその質を上げていこうとする姿勢・努力があってしかるべきではないか。すなわち、この本を購入され間違いに気付かれたら、正しい情報を添えて「こう書き換えたら…」と学会に提言していただくことが肝要で、こうした参加・育成意識があって初めて、この種の情報・企画が一過性に終わらず土木の共有財産となって定着するのであろう。
なお、アーチ渠(拱渠)はアーチ・カルバートを指す用語で、土木学会の近代土木遺産の分類で普通に使われている。ただ、名称はレインヒル跨線アーチ橋とでもして おき、斜拱渠という表記は解説文中に留めておいた方が良かったのかもしれない。
(馬場俊介)


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