土木学会誌9月号モニター回答
話の広場 水質保全事業に対する市民の評価

 水道水、水道事業について、市民アンケートを実施したものであるが、その結果は、比較的簡単に想像できる内容にとどまっているように感じた。
(建設省土木研究所企画部 中野清人)

 われわれにとって最も身近な飲料水や排水に関する上下水道事業に対する市民の意識がわかり、興味深かった。生命に直接関係する飲料水や排水の処理に関しても意外に無頓着になりがちであり、せっかく導入した技術が正当に評価されていない場合もあることがわかった。上下水道事業に限らず、あらゆる公共施設に対してこのような傾向がある可能性もあるので、各事業に関する情報公開をしっかりと行う必要性を強く感じた。本説の中で、高度浄水処理を導入しても引き続いて浄水器を使用しているとある。我が家でも浄水器を使用しているが、浄水器を使用する場合としない場合で、水の色・におい・味が明らかに違う。浄水器の使用は、浄水場の処理能力というよりは、浄水場から家庭の蛇口までの間に水が汚れてしまうという認識による場合も多いと思う。このように市民が身近に感じているような点にも気を配らなければならないと思う。
(長野工業高等専門学校 柳沢吉保)

 事業に対するアカウンタビリティーは当然、必要と思いますが、この調査結果によって、どのような点が市民に正確に認識されていないのか、言い換えれば、事業者が重点的に説明しなければならないことが何なのかが明らかになっており、大変参考となるものでした。
 ただし、1点だけ論文中でよくわからなかったのですが、水道水の臭みが解消された人が半数に満たない(図2)ことが、高度浄水処理事業の効果が市民にあまり認識されていないと結論づけていましたが、一方で高度浄水処理事業導入前から家庭用浄水器を使用している人が半数近くいます(図4)。家庭用浄水器を使い続けている人は、水道水の水質が改善されても、変わったとは感じにくいのではないでしょうか。
(水資源開発公団 大島伸介)

 今回の調査を読ませていただくと、水道水の使用量は増える傾向にあり効率的な浄水処理と水質の向上を図ると共に循環型の水資源利用も考えていく必要もあると思われる。そして水道事業について情報を公開し、浄水処理方法、水質、処理に必要な経費等を市民に伝え相互理解を深めて水道水の安全性を広めていくことが必要であるというのが理解できました。
(愛媛大学工学部 二神 治)

 昨年広島で行なわれた全国大会に出かけたときに,飲食店で飲んだ水が余りにおいしかったのに驚き,店員に尋ねてみたが,ただの上水道水であった.都市域における水道水の問題として最も大きなのが異臭味だという話には納得がいく話だ.大阪府営水道では高度浄水処理が導入されたものの,その効果が認識されていない状況との話であったが,十分な説明がいずれ正しい評価へと繋がるという話は真実であるような気がする.
(東京工業大学 大学院 理工学研究科 土木工学専攻 博士後期課程 2年 渡邊学歩)

 この記事を読んで、我々土木技術者と住民の意識・評価のズレを再認識しました。公共事業に対する不信感の根幹は、こういったところにあると感じました。事業の効果や情報を、過去の事例なども含めて住民にわかりやすく伝達し、事業に対する正当な評価を住民から得られるよう、我々も努力する必要があることを痛感致しました。
(住友建設(株) 松元香保里)
 下水道は,最近になって,私の住んでいる地域にも整備されました。実はそれまで,自宅の排水が浄化槽で処理されていることさえ知りませんでした。これは,この記事の中で指摘のあった,住民が下水道の効果について正しく認識していないことと同じ状態だと思います。記事を読んで,土木の仕事は,市民の気がつかないところで役に立っているということを感じました。逆をいえば,本当は役に立っているということを市民に認識してもらうのが下手だったとも言えるのではないでしょうか。公共事業の見直しが叫ばれている中で,もっと土木の重要性をアピールしていかなければいけないと感じました。
(鹿島建設 藤澤 理)

 大阪の水から臭みが消えたとのことについて,水質と飲んだ人の感覚にずれがあることなど,興味深く読ませていただきました.私は就職するまで20年余り大阪,京都と過ごしていたので,この地域の水が美味しくないという固定観念があり,近年,帰省した際も浄水器を通した水を飲んでいました.次回の帰省の際には,試飲してみたいと思います.しかし,折角,高い費用をかけて水を美味しくしても,妻と私の実家の双方とも浄水器を未だに使用していましたので,原稿にあるようにPR不足なのかもしれません.これは,この問題に限らず社会資本整備全般,土木業界全体に当てはまるように思えます.
 また,原稿では水道水の浄水処理に多くの費用を投入されているとのことですが,水道の異臭味の問題は琵琶湖の汚染に起因する部分も多いと思われます.個人的には,琵琶湖の水を飲んでいる京阪神の都市が費用を分担して,琵琶湖の水質改善を図ることも非常に重要である考えます.その判断材料として,水源保全と高度浄水処理,それぞれの費用便宜共益評価はどうなのか非常に興味がありますが,それらの情報がインターネット等で容易に閲覧可能な状況にあるのでしょうか.もし,可能であるならば,事業評価の閲覧に関して,よりPRが必要であると思われます.
(若築建設 酒井久和)

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