土木学会誌9月号モニター回答
20世紀ニッポン土木のオリジナリティ考
世界の高速鉄道ブームを作った新幹線

 新幹線建設に関する背景,位置づけを理解することができた。戦後復興の流れ,景気の動きの中で,新幹線建設計画が実現に至った経緯は興味深い。
 1950年代後半に,それこそ0の状態から計画を立ち上げたチャレンジ精神を,われわれ若手技術者は学ばなければならない。現状で夢の様な構想であっても,様々な角度から思考を加え,理論的・実験的なアプローチで物事を完成させる姿勢を常に持つように意識したい。
 また,当時の総裁が景気や輸送量の動向を元に,東海道線に沿った新幹線を建設することを決断したとのことである。その判断に対する評価は様々であろうが,ますます高度化する社会について,その歴史を理解することは,社会を作る上げる技術者としての責務であろう。
(大成建設技術研究所 石井裕泰)

 無の状態から作りあげた東海道新幹線は、苦労の連続だったことが推察されます。時速210kmに耐えうる構造物を作るために数多くの問題点を短期間の内に検証し、答えを出していく作業はとても大変なことであり、関係者の'努力と忍耐'こそが日本人らしいオリジナリティでありその結晶の1つが今の新幹線であると考えます。
(日本鉄道建設公団 佐々木養一)

 読んでいて面白かった。
(アジア航測梶@天野 篤)

 当時の東海道線の輸送力不足というニーズを越えて、世界に誇りうる高速鉄道技術を作り上げた当時の国鉄の状況がよく理解できた。この中で、鉄道総研を発足し、さまざまな技術開発を行い、コストの縮減を図って作っていった。驚いたのは、建設後の幹線の初期故障が1年ほどで収まり、耐久性の高いものを作ったことである。また、極めて高速でかつ安全性が高いということで、社会的なコンセンサスを国内外ですぐに受け入れられたこと。他の幹線に比べ、非常に安くできたこと。オリンピックという目標があったというわけではないでしょうが、先人達、土木屋だけだなく、機械屋、電気屋、用地屋、などなどが一体となって新技術を開発しながら、短期間で事業を展開してきたことが伺える。非常に興味深く感じました。これこそ、日本の土木のオリジナリテイ(7月号掲載)ではないかと思いました。
(建設省土木研究所企画部 中野清人)

 新幹線の誕生はまさにニッポン土木のオリジナリティにふさわしいと感じた。この背景には、PSコンクリート技術・軌道設計と保守技術などの技術開発状況、神武景気に伴う東海道線の輸送需要、東京オリンピック開催までの期間といった社会・経済的な情勢が極めてオリジナルであったことが主要因であると思われる。もちろん、関係者の長年にわたる努力なしでは実現不可能であったことは間違いない。
 今後、このようなオリジナルな背景が頻繁に出現するとは思えないが、新幹線のような素晴らしい事例に少しでも近づけるように我々土木技術者は一層の努力が必要である。現在関わっている業務が後世に誇れるかどうか、30年、40年後のあるべき姿をイメージすることが何よりも重要なのではないだろうか。
(五洋建設(株)水流正人)

 新幹線は日本が世界に誇れる土木技術の筆頭であると思うが,新幹線プロジェクトについて様々な観点から勉強することができて大変興味深かった。東海道新幹線のような大プロジェクトが着工から5年という短期間に完成する背景には様々な要因があったことがよく分かった。政治,当時の経済状況,国内の景気動向,技術力などの要因があるが,その中で土木技術者を含む多くの技術者がいかに尽力したか,敬虔な気持ちにさせられた。日本の土木は過渡期にあると思われるが,我々若い世代も,このように世界の鉄道技術をも牽引した輝かしい成果はしっかりと認識しておく必要があると強く感じた。
(東京大学大学院 細田 暁)

 戦後の大プロジェクトである”新幹線建設”について,わかりやすくまとめられており非常に興味深く読ませていただきました。
(本州四国連絡橋公団 高木 久)

 弾丸列車構想から新幹線が完成するまでの歴史的な背景や、用地買収などの苦労話しなど興味深く、読んでいるだけでもワクワクするような記事であった。当時にとっては夢のような東京・大阪間3時間を現実にした土木技術。またそれが、世界の高速鉄道ブームをつくり出したということ。その後の新幹線の社会的な効用を考えても本当にニッポンのオリジナリティといえるもののひとつである。現代のように社会資本の整備が進んできた社会において、既設構造物の補修や環境問題など、当時とはさまざまな意味で違うことが土木に要求されてきている。当時の日本の経済状況などの時代背景から生まれてきたオリジナリティ。現代におけるニッポンのオリジナリティとは一体なんなのか?今後の特集では、そのような現代のニッポンのオリジナリティについての記事も期待しています。
(大成建設 古池章紀)

   今では250km/hがあたりまえの新幹線。着工後5年で完成してしまう当時の日本の土木技術のものすごさを思い知らされた。開業以来人身事故を起こしたことはないということは知ってはいたが、そのための工夫(高架化、在来線との分離等)までは知らなかったので、新たな発見が出来た。
 最近読んだ別の雑誌でリニアモーターカーの記事があったが、リニアモーターカーは新幹線が開通したときに既に計画されていたらしい。便利さを求める飽くなき追求が新幹線を開通させた直後に新たな鉄道をイメージすることになったのではないかと思う。
 リニアモーターカーは全く新しい技術のかたまりであり開発に時間がかかること、需要と供給の関係等によりまだ実用化されてないが、早く実用化して欲しいものです。最高速度が553km/h、試乗車が1万人を超えているとその記事に書いてありました。
 公共交通機関が非常に便利になったことにより時間距離が短くなり、出張、旅行にはとても便利になったと思います。
 しかし、私の通勤時間(約1時間)で東京から那須へ行けると思うと、少しだけ複雑な気持ちになります。
(五洋建設株式会社 佐々木広輝)

 本記事を通じて,普段出張等で利用することの多い新幹線の建設の歴史を知ることができた.
 今や国民にとって根幹となる輸送手段の一つであるが,新幹線というとどうしても車両の方に関心が行ってしまう.しかしながら,その根本を支えているのは”土木技術”であり,それに従事していることへの満足感を再認識した.
(住友建設(株) 高橋直樹)

 土木の視点から見た新幹線建設までが、ドキュメンタリーを見るようにまとめられており面白かったです。新幹線建設の基盤とも言える弾丸列車構想が、戦前からあったことをこの記事で初めて知り、驚きを覚えました。技術革新・経済発展において、新幹線の開通が与えた影響は計り知れない事を再認識するとともに、土木の世界に対する魅力がますます強くなる気が致しました。
(住友建設(株) 松元香保里)

 社会資本整備の不要論などから土木業界にとっては厳しい時代を迎えつつある。このときこそ、新幹線のオリジナリティに掲げられている先見性や有効性を参考にして、例えば大都市間の新しい輸送システム作りなど土木業界の再生に向けた新しい技術革新に挑戦すべきと考えられる。そのためには、競争原理が働くような環境作りも重要であり、大学などの研究者や技術士の中から素晴らしい技術の提案を期待すべきであろう。そうすれば、鼎談「2000年仙台宣言」中で森杉先生の言われる”今までいなかった土木評論家”も出現するのではないかと思われる。
(福山大学 梅田眞三郎)

 ここで述べられているように,新幹線を実現させたことは多くの関係者の努力の賜であり,また,運転事故による死者が一人も出ていないということもすばらしいことである.しかし,先日も新幹線に乗っている時,昨年の起こった山陽新幹線のトンネルのコンクリートの剥落事故のニュースを思い出した.人的被害はなかったものの,大惨事につながりかねない事故であった.完全な信頼の回復には長い期間がかかるであろうが,利用者として安心して乗れる新幹線となっていくことを願っている.
(運輸省港湾技術研究所 森屋陽一)

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