土木学会誌9月号モニター回答
住まい方の多様性を考える

 記事の内容個々については同感するところが多いが、全体として理想論にとどまっている気がしたのが残念であった。  個人的に「働き方の多様化は、職住の一体化や近接をうながす」ことになればよいと思うし、逆にむしろ、心豊かに生活を送るためには、自分の住む地域にある程度しっかり関わらなくてはならず、そのためにこそ働き方の多様性を求めたい。しかし男性の働き方がパート女性の働き方に近づくだろうという筆者の見通しについては、あまりにも現実離れしていることもあるが、その必然性がどうもよく理解できない。
 時間的なゆとりや豊かな自然の中での生活の重要性はもっともであるが、幅広い共通認識であるにもかかわらず、転換への突破口が見つからない状況は深刻であり、もう一歩踏み込んだ議論が必要だと感じた。
(京都精華大学 角野有香)

 4月から徳島から東京に転勤後初めて島根の実家へ帰省したが,緑豊かな山村の風景は都会での生活のリフレッシュさせてくれたのと同時に,都会の緑と自然の緑の圧倒的なパワーのようなモノの違いを感じました。ここに書かれた”森林都市”が実現されればすばらしい事だと思います。
(本州四国連絡橋公団 高木 久)

 主張されたいことはわかるような気もしますが、ただ全体的に、最近のキーワードを羅列して、イメージ(雰囲気)にかたよった記事になっているように思います。たとえば、人間が動物である限り植物が必要である、だから都市の緑化が優先されるべきであるといった記述がありますが、緑地と都市の熱環境の関係に関する研究なども行なわれているのですから、そのような科学的見地に基づく視点から社会論を展開して頂ければと思います。
(京都大学工学研究科 市川 温)

 この記事に対するコメントにしたのは、たまたま特集2「個性豊かな地域づくりビジョン」のなかで、ビジョンらしいものを示してくださったのがこの記事しかないように思えるからです。土木関係の先生方のビジョンなるものは、これからの「成り行きの解説」に近いのではないでしょうか。「豊かさ」という定量化しにくい目標ではやむを得ないのかもしれませんが、「地域づくり」とは違った様々な場面で言い尽くされた言葉が並んだ寄稿が多いように思いました。その中で、学会外からの寄稿であるこの記事と次の「環境の時代とグランドデザイン」は、少なくとも「豊かさ」とは何かを、見せようとされていると思います。ただ、学会誌の記事としては、事実なりデータを示した上で自身の意見や見解を述べるという構成が一般的だと思います。この点では、この記事は言いたいことだけがいっぱいありすぎ、次の記事は示すことだけでいっぱいになってしまっており、それが特集内の他の記事から浮いてしまった理由だと思います。一方、学会外からの寄稿を交えて特集とする以上、学会内の寄稿者には、お二人が示されようとしたビジョンを踏まえた議論をできれば展開していただきたかったと思います。
(伊戸川環境総合企画 伊戸川善郎)

 人間は生き物であるという大前提の基に,21世紀の住環境についてエンドユーザーである生活者からの視点に立って述べられており,非常に興味を持った.ここでの議論には,介護,家事,子育てへの配慮が見えてくる.今後の社会資本整備に関する議論にも,少子化や高齢化をマクロ的にのみ扱うのではなく,ローカルな問題としてもとらえるとともに,介護,家事,子育て等への配慮が見えるような議論がもっと必要なのではないかと感じた.
(運輸省港湾技術研究所 森屋陽一)

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