土木学会誌9月号モニター回答
インサイト「近代憲法における公共」

 比較憲法学がご専門の立場から、公共と市民、公共事業と土木技術者といった切り口で、我々が常日頃漠然と捉えていたこれらの意味や役割について、非常に分かりやすく解説されており、得るところが多い内容だった。
 戦後の日本は、公有化の憲法上の限界というアメリカ型の視点で、官から民へという流れが支配的になっているが、民営化の憲法上の限界、すなわち、公共の担い手としての国家が手放してはいけないことがあるというフランス型の視点からも今後の社会基盤整備のあり方を考えていく必要があるとの解説があった。その際、宗教、金、民族、それ自体は価値のあるものであっても、それに政治とか公的な空間を握らせてはいけないという主張に共鳴を覚えると同時に、改めて「公」の果たすべき役割をより深く考える時期に来ているとの感想をもった。
 また、公共事業を含め、世の中のことを最終的に決めるのは、「国民」であり、土木技術者は、様々な利害関係を十分承知した上で、専門技術者としての判断をし、国民に対してのインフォームドコンセントを提供する義務があるとの氏の考えを、産官学を問わず、すべての土木技術者一人一人がこれを真摯に受け止め、実践していかなければならないと思う。
(開発土木研究所 梅沢信敏)

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