土木学会誌7号モニター回答
ハイブリット時代の橋 吉野川渡河橋の計画

 吉野川河口橋のプロポウザル評価をここまで、きちんと公表して頂くと、コンサルタントの者として、大変興味があり、勉強になり感謝します。
(片岡真二)

 吉野川渡河橋は、新橋建設の必要性が高いが、その位置は吉野川河口堰の下流にあたり、多くの野鳥や貴重生物が生息する干潟を通過する。そのような中でオープンコンペ形式の検討委員会を組織し、専門外の人々も参加したうえで、新たな形式の橋梁形式が採用された。このことは、建設コスト縮減が縮減され、景観について住民の理解が得られて、地域のランドマークとなったことは画期的であり、今後の参考となる。
(日本道路公団 伊藤孝広)

 第十堰が問題となっている吉野川の河口でこのようなプロジェクトが進んでいることは全く知らなかった。オープンコンペという方式も画期的だが、採択された橋梁も非常に画期的である。このような橋梁が採択された背景には、オープンコンペ(情報公開)、干潟、野鳥への配慮(環境共生)、新構造の提案と採用(性能設計)という時代の流れがあるのだろう。まるで、仮設桟橋を本設橋梁に造り変えるような手法は、一見、奇をてらった考え方のように見えるが、もの造りの原点に立ち返って得られた結果ではないかと思う。この橋で得られた成果は、橋梁に限らず、土木構造物の新たな形にさまざまなヒントを与えている。自分も既成概念にとらわれず、新たな感覚でもの造りに取り組んでいきたいと思う。
(清水建設 藤田宗寛)

 今月号の中で圧倒的に興味深く読めた記事であった。吉野川渡河橋の建設に際し,徳島県,県がイニシアティブを取った検討委員会,20社に及ぶ設計業者の間で行われたやりとりについての言わばドキュメントである。橋の建設計画は,吉野川第十堰の賛成・反対の問題で大きく揺れている時期になされており,計画段階で最善がつくされているのがよくわかる。検討委員会は完全公開であり,環境保全をも考慮した相当厳しい要求性能に対して,設計業者から次々と優秀な設計案が提示され,時には全く斬新で要求性能を満たし,なおかつ相当なコストダウンにも成功した設計案も登場している。日本の土木業界が今後進むべき道が見事に示されていると感じた。国民の注目度がかなり高い,という大きな圧力が存在したことと,相当な技術力を必要とする工事であったという2点により,発注者も徹底的に要求性能に厳しくなり,設計を照査するための委員会も力を大いに発揮し,それに耐えうる技術力を業者が提供したのである。日本の土木の今後に大きな魅力と期待を感じさせる記事であったし,土木に携わるいろんな分野の若い技術者に夢を抱かせてくれるこのような記事が今後も多くあるとよいと思う。
(東京大学 細田 暁)

   干潟に飛来する野鳥の保護と建設コストの削減という問題を、大胆なデザインにより解決を試みた新型橋梁の紹介でとても興味深い文章でした。また適度な量の用語と数字による説明で充分に読み応えのあるものでした。塔の高さから橋柱の厚さまで、環境に配慮することで新しい構造形式が開発されたという今回の事例は、土木技術の発展にとって環境問題が重要な存在であることを改めて実感させてくれます。新工法と複合構造の適用によって建設コストの削減も可能ということで、建設コストと環境の両方にやさしいハイブリッドな橋ということになるのでしょうか。環境問題を考慮すると建設コストが増加するという固定概念に縛られていた私にはとても新鮮な話題でした。
(東京工業大学 渡邊学歩)

 最近の行政への住民参加や情報公開、コスト縮減等の事項を網羅しており、橋梁の分野だけでなく、他の分野にも参考となる内容でした。
 また、技術的には「20世紀のニッポン土木のオリジナル考」という座談会の記事にリンクする内容であり、大変興味深いものでした。
(水資源開発公団 大島伸介)

 以前から思っていたことであるが、専門化は実は専門のことは良く知らないのではないかと…。専門化ばかりが集まると、典型的な議論がなされ、問題をある一方から解こうとする傾向がある気がしてならない。高校生の時の生物の授業を思いだしたが、遺伝はより強い遺伝子を残そうとする傾向があり、より強い遺伝子を求めて、遺伝を繰り返すと教わった気がする。雑種は遺伝的にはより強いものを求めた結果と言える。土木技術も同じであり、様々な強い遺伝を持った技術を求めて、遺伝し続ける必要がある。専門化は他分野の専門化と技術という遺伝子を交換し合って、より強い技術を作り上げていく必要があると考えている。
 ハイブリットは自然科学上は極めて当たり前のことであるが、我々土木技術者には新しい響きなのかもしれない。新しい発想で生まれた技術や発想、事例など学会誌で紹介することは、新しい遺伝子を組み込んでいくことと同等であり、非常に役に立つ。土木分野に限らず、様々な記事を紹介して欲しい。
(日本鉄道建設公団 依田淳一)

 まずは、表題に興味を引かれた。ハイブリットという言葉は、記事の冒頭にも記載されている様に車のコマーシャルでは聞きなれた言葉であった。内容を読んでいくに従い、ここで述べられているハイブリットとは、「鋼とコンクリート」のハイブリット化(混成物化)を意図されている。しかし、もう一つの観点から、形式選定における委員会形式のあり方及び採用案についての今後のあり方についてもこのハイブリットという言葉を引用されている。特に筆者が意図されているのは後者のことをイメージされていることが伺える。私は、橋梁の専門ではないので技術的な細かい部分についてはよくわからないが、橋梁の様に視角的に大きな影響のある構造物に対しては色々な角度・分野からの意見を聞き決定して行かなければいけない時代である。そういった意味で委員会のハイブリット化も必要となってくる。
 最期に、繰り返しになるが記事のネーミングはインパクトのあるものであると感じた。
(中電技術コンサルタント 佐々並敏明)
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