土木学会誌7号モニター回答
特集 20世紀ニッポン土木のオリジナリティ考 座談会:ニッポン土木のオリジナリティとは?

 オリジナリティを探すと言うテーマに大変興味を持ちました。また今回の座談会の、先生方のお話を、拝見して、ますます今後のシリーズが、楽しみになりました。「現実化」、「標準化」、外国でも採用されるようなもの、もオリジナルである。土木技術者が政策や、制度とかに関与している、こと研究開発をきちんとやりーーーオリジナルの研究成果を出す事、アメとムチの効用等々現実的で大変面白い。
(片岡真二)

 三木先生がシールド技術に関して紹介しておられましたが、日本のシールド技術については、シールドマシンのみならず、継手構造を含めた覆工技術や設計手法に関しての独創性は非常に高いものがあります。ただ、残念なことは海外に向けたアピールがやや不足していることです。数年前、ドイツのHOCHTIEF社の若い技術者と数ヶ月間シールド技術の比較のため勉強したのですが、なんと彼は、早稲田大学の村上先生、小泉先生が考案された「トンネルリングのはりばね解析法」を自社で開発したと堂々と言ってのけるのです。これからの国際競争に対しては、数ある日本土木技術のオリジナリティを自信をもってアピールし、勝ち抜いていかねばと痛感したことを思い出しました。
(ジオスター 田中秀樹)

 土木は、公共事業という性格上からか、オリジナルな土木技術や得られた成果をアピールする場が、土木以外の他分野と比較しても、少ないように感じられます。そのためか、土木の技術開発に対する姿勢について厳しい目で見られがちに感じます。本シリーズで、土木でもオリジナルな技術開発が行われてるんだというところを示してもらえるとありがたいです。またこれからも国際的な競争力を保っていけるための、技術開発に対する姿勢も示していただければと思います。
(長野工業高等専門学校 柳沢吉保)

 座談会形式で記事がかかれており、読みやすい記事であった。内容的にも、日本のオリジナリティについてということで興味深く読むことができた。これまでの日本のオリジナリティについての話のなかでは、日本において開発されたものが、英語で発表されなかったために日本のオリジナリティとなっていない話など、そうだったのかと今さらながら英語の重要性を痛感させられた。今回はシリーズの最初として、全体的な話を座談会形式で書いてあったが、次回からのトピックごとの掘り下げた記事に期待しております。
(大成建設 古池章紀)

 話が一般的すぎたような感じがしました。ある技術を取り上げた時に、その技術のどの部分が独創的だからオリジナリティがあるのだという点まで突っ込んだ話を聞きたかった。たとえば、新幹線を取り上げているが、土木技術ではどの点がオリギナリティーがあった・あるのかが記事の内容からは読み取れない気がします。
(千代田化工建設 野本 均)

 「土木とはなんぞや」という命題を考える上で、日本における土木技術のオリジナリティを論ずることは、全世界的な土木の潮流と比較することにも繋がり重要である。記事にも書かれていたが、どのような事例を「オリジナリティがある」と定義するかは難しい。日本独自の技術と言っても、社会的もしくは地理的要因で日本にしか適用できない技術が、世界に誇れるものとは言い難い。国際化が進む中で、これから進むべき日本の土木技術の進路を見極めるためにも、今回の記事は興味深く感じられた。
(東京大学 糸山豊)

 日本人の柔軟な考えや応用して形にしていく不屈の精神がオリジナリティーなんだなと感じました.その時代・状況に応じて担当者は,ベストを尽くしていると思います.今月の表紙のダムの設計の話も,設計手法を海外から取り入れつつも日本の風土に合ったものにするために努力をされている.形が残り公共性が高いが故,人目につきやすい土木構造物は,無言の情報を世界に発信していると思います.そんな目で,身近な構造物を見ると自分流の形が見えてきそうです.
(日本鉄道建設公団 佐々木養一)

 土木技術の発展のためには,その技術を必要とする現場があることが第一に挙げられるのではないでしょうか。この記事の中にも,いくつか”ニッポンのオリジナル”といわれる技術がいくつか紹介されているが,海外の国々とくらべて非常に狭い国土で,青函トンネルや本四連絡橋といった世界に名だたる土木構造物を完成させた日本の技術の高さも違った意味での”オリジナル”なのではないのでしょうか?
(本州四国連絡橋公団 高木 久)

 5人の著名な方々のごもっとなご意見の中で、三浦先生のご意見には目を見張るものがありました。中でも「創造性を高めるには、第一に基礎能力を十分身につけることが大事である」には、大いに賛成です。恥ずかしながら、私も自ら設計する立場になってからも何度も書棚から力学の教本を出してきては読み返しています。基礎は大切ですね。先生方には、是非とも大学教育においてその辺をみっちりと教え込んでいだだき、学生を送り出してもらいたいですね。
(熊谷組 松尾新治)

 土木技術を広くとらえるところに興味があります。私は、土木は工学や技術だけではなく、社会を造る総合的な学問とその実践であると考えています。つまり、工学・技術だけでなく、経済・金融、法律・制度、政治・意志決定などを含むものです。土木とは何か、オリジナルとは何かという議論を深めて、エンジニアリング(工学技術的)としての土木、シビル(市民、社会的)としての土木について考えることが重要と思います。これによって、土木の領域や大学教育、資格制度などについての方向性も見えてくるのではないかと考えています。
(地域みらい 北原良彦)

 土木分野の著名な先生方による日本の土木のオリジナリティに関する考えを伺うことができた。あるアイデアに対して,さまざまな条件,制約(土木の分野で言えば地形や気候,地質条件など)を受けながら実現したものすべてにオリジナリティがあると考えられる。ある技術,プロジェクトに関して,制約条件を見極め,何がオリジナリティなのか,どこにオリジナリティを見いだすか,常に意識した上で,また新しい物に取り組んで行く必要があると感じた。また,国際的な競争力のためには,技術を重視した制度が必要とのことである。結局のところ,その技術を定量的に評価する必要があり,特集の「リスクマネージメント」などにつながると考えられる。今後,土木技術者は,制度や管理に関する分野での活躍が期待される傾向にある。若手技術者として,その辺りを意識して取り組んで行きたい。
(大成建設技術研究所 石井裕泰)

 今後のニッポン土木の方向性を考える上で、非常に参考になる面白い企画だと思う。今回の座談会では、日本の土木技術のオリジナリティについて色々と議論されているが、すべてでは無いにしろ、話の大勢は「コンセプト(構想)を実現化する、あるいは発展させていく技術」であった。座談会の中でも話題として上がっていたが、日本のオリジナリティといった場合に「独創性」というものが出てこないのは非常に寂しい。これは、やはり「研究開発に対するインセンティブの低さ」が原因になっていると思う。日本の中での競争はコスト競争であって、技術競争ではない(といえば言い過ぎか)という現状が根本的な問題としてある。そんな事情を知ってか知らずか、学生の土木離れも問題になっている。今後の日本の土木を支えていく上でも「独創性」は非常に重要な課題だと思う。
(清水建設 藤田宗寛)

 技術を重視した発注制度にしなければという言葉が印象に残りました。発注業務に至る過程の中で「実績」、「横並び」は非常に大きな位置を占めており、もっと新工法、新技術に対する発注の対応を変えていければ、土木に対する国民の見方も変わるのではないかと思います。私はこういった土木の未来を語る文章がとても好きなので、次回も期待してます。
(水資源開発公団 塚本 守)

 どのようなものをオリジナリティというのかについていろいろなご意見が述べられ,意見の違いもあるように筆者は判断する。工学の分野では,オリジナリティが最も重要で,有用性も同時に満たされる必要があると考えている。ノーベル賞クラスの研究も必要だと思うが,ニッチ的産業の発展も必要であることから,その面で小さいながらも意義のあるしかもオリジナリティを発揮した研究も求められると思われる。海外にもその研究成果を発表し,大いに刺激を求め,研究の完成に向けて段階を踏んで発展させるべきと考える。筆者の専門とする第二部門の土木学会論文集の論文数は,最近でも1巻あたり十数編で,年鑑にして100編以下である。他の学会の人数規模と比較してもあるいは科学研究費をもらっておられる研究者数に比べて少ないように思われる。オリジナリティと有用性をベースに競争原理の働く環境作りをすればもっと論文数も増えるのではないかと思われる。今回討論に参加されておられるような有名な先生方が論文に関係することだけでなく,公共事業など幅広く声をにして各分野での新規性の大切さと意義のある結果を求めることを叫んでいただけないものかと思っている。
(福山大学 梅田眞三郎)

 研究開発部門にいる者にとって,土木の「研究開発」がマーケットになっていないというは,つくづく感じます。基礎研究よりも,研究開発から生じる利益を重視しなければならないのは,民間企業の宿命ですが,長期的に将来のことを考えた基礎研究も大事です。それがないと,開発成果も生まれて来ないと思っています。土木においても「研究開発」が脚光を浴びる日が来ることを願います。
(鹿島建設 藤澤 理)

 日本のオリジナルという視点から土木技術をとらえることは、これまで考えたことも大学などで教えられたこともなく、個人的にとても興味がある。おそらく、自然的、社会・経済的な背景などがオリジナルであるがために生まれた技術であろうと思う。このシリーズで、日本だけでなく海外のユニークな土木技術をその生まれた背景とともに是非紹介してもらいたい。
(五洋建設 水流正人)

 私は大学で研究を行なっているのですが、つねづねこのオリジナリティということを考えています。私はまだ学位を取っておらず、学生のときから指導して頂いている先生にいろいろとアドバイスを頂きながら研究を進めているのですが、その研究のうちいったいどこまでが自分のオリジナリティなのかわからなくなることがしばしばあります。厳密な意味でのオリジナリティとは、何もないところに新たな理論なり方法なりを打ちたてることだと思いますが、そういった意味では私が行なっている研究にはあまりオリジナリティがないことになると思います。すでに種のまかれたものを育て、発展させることもオリジナリティと解釈するのであれば、私の研究にもいくばくかのオリジナリティがあることになります。これから始まるシリーズ記事を読んで、この疑問に対する自分なりの答えが出せればいいなと考えています。
(京都大学 市川 温)

 シリーズの最初に座談会を載せるのが良かったのか、座談会の内容(会話)が良かったのか、なんの躊躇もなく最後まで休まず読んでしまいました。座談会では具体的なニッポン土木のオリジナリティがありませんでしたが、シリーズなのでこれからの掲載記事が楽しみです。私は、液状化対策としての地盤改良はニッポンが世界に誇る技術ではないかと思っています。
(五洋建設 佐々木広輝)

 土木の分野ではオリジナリティが抑えられてきた、という問題指摘に、まず興味を覚えた。「公共事業であるから、あまり変わったものは困る」ということだそうだが、一方ではさもありなんと妙に納得しながらも、もう一方ではこんな体質が脈々と続いていていいのだろうか、という素朴な疑問を感じる。「日本はどこかからの模倣ばかり」という表現に対して、論者は「謙譲の精神」から出たものと位置づけていたが、いま一つ納得できない。オリジナリティのないところには、そもそも模倣しかないと思うからだ。今後どのような議論が展開するのか、読み進めるのが楽しみなシリーズである。
(京都精華大学 角野有香)
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