土木学会誌7号モニター回答
設計の自由度拡大とリスクマネージメント

 国際規格として位置づけられているISO規格では,構造物の共通設計コードは性能規定型であり,性能照査は信頼性設計法によることを原則としている.1996年に発行したWTOにおける政府調達協定により,技術基準類はISO規格に準拠しなければならない.ISO規格における構造物の共通設計コードは,ユーロコードをベースに2003年頃までに策定される予定である.そのため,我が国における各分野の技術基準類は,ISO規格が策定されるまでにISOに準拠した,性能規定型に再構築していく必要がある.
 これが,設計合理化の社会要請にも増して,技術基準類を性能規定型にしていかなければならない大きな理由の一つである.性能規定型への移行には,設計に考慮するすべての変数の確率分布の評価を行うなど,まだ,解決しなければならない課題も多い.しかし,我が国の技術体系の混乱を避けるために,残された時間で十分な準備と戦略を持ってISO規格へ対応していくとともに,設計の合理化やリスク管理の観点からも,前向きに技術基準を性能規定型に再構築していく必要があると思う.
(運輸省港湾技術研究所 森屋陽一)
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