トンネルはいつごろからあるの?

3700年も昔にトンネルはあった

 人類のつくったトンネルの中で最も古い記録は、ユーフラテス川をくぐる水底トンネルです。川の流れを変えて溝を掘り、レンガとアスファルトで固めて幅4.6メートル、高さ3.7メートルのトンネルをつくった後、川をもとに戻しました。長さは約950メートルと伝えられていますが、その跡は現在まで発見されておらず、伝説のトンネルと言われています。ユーフラテス川のトンネルは、水の底をくぐるという点で東京湾横断道路の元祖と言えるかもしれません。


ユーフラテス川の水底トンネル(想像図)

日本のトンネルの歴史 (青の洞門(どうもん))

 大分県の耶馬渓(やばけい)にある青の洞門は、今から約200年も前に、禅海(ぜんかい)というお坊さんが30年もコツコツとのみをふるい、村人の協力を得ながら完成させたトンネルです。長さはわずか185メートルにすぎませんでしたが、このトンネルのおかげで人々は危険な岩場を遠回りすることなく安全に通行できるようになりました。青の洞門は、菊池寛の小説「恩讐(おんしゅう)の彼方(かなた)に」にも描かれて有名になりました。


現在の青の洞門

 

最初の鉄道トンネル

 日本は山が多い国なので、あちこちにトンネルを掘りながら鉄道や道路を通してきました。初めは長いトンネルを掘ることができませんでしたが、いろいろな苦労を積み重ね、今では世界に誇れる技術のひとつになりました。西洋の近代技術で掘られた日本で最初のトンネルは、明治3年に着工した大阪~神戸間鉄道の川の底をくぐる石屋川トンネルで、長さは61メートルでした。

 

17年かかった丹那トンネル

 東海道線の丹那トンネル(長さ7.8キロメートル)は、大正7年に工事を開始しましたが、強い地圧と滝のように流れる地下水によってそれまで経験したことのないむずかしい工事となり、トンネル工事をあきらめなければならないような状況になりました。そこで、セメントを注入して地盤を固めたり、地下水を抜くためのトンネルを掘るなどの工夫をして、17年後に完成させました。


難工事となった丹那トンネル

初めて10キロメートルを越えた北陸トンネル

 北陸本線の北陸トンネルは、日本で最初に長さ10キロメートルの壁を越え、13.9キロメートルとなりました。できるだけ早くつくるために、横や斜めの方向からも小さなトンネルを掘り、ここからさらに枝分かれして本体のトンネルをつくりました。


10キロメートルの壁を破った北陸トンネル

 

最初のトンネルは水底トンネルだったんだ

 世界で最初といわれるバビロニアのトンネルは、ユーフラテス川の水底を通っていましたが、日本で最初に完成した鉄道トンネルも河の底をくぐる水底トンネルでした。
 明治3年、大阪~神戸間の鉄道建設が開始されましたが、六甲山のふもとには天井川(まわりの平野より高いところを流れている川)があり、鉄道はその下をくぐらなければなりませんでした。このため、いったん川の流れを別の場所に移し、トンネルを造ってから川を元へもどしました。こうして、石屋川トンネル、芦屋川トンネル、住吉川トンネルの3本が完成しましたが、これらは大正時代に改築されたため今はありません。天井川をくぐる水底トンネルは、今も関西や四国地方などにいくつかあります。


川の下に造られた石屋川トンネル