平成23年3月11日(金)14:46に宮城県沖でマグニチュード9.0の地震が発生しました。激しい揺れと高さ10数mの津波は、青森から岩手、宮城、福島、茨城、千葉まで約500kmに及ぶ東日本地域の太平洋岸全域に甚大な被害を与えました。死者、行方不明者が2万人を超え、避難者42万人(3月24日現在)に及び、道路・鉄道・都市・工場・港湾・空港・発電所・精油所など都市と多くのインフラが破壊されました。特に福島第一原子力発電所の冷却装置の故障と電源の不通による原子炉の危機と放射能漏れは周辺20km圏の避難と30km圏の待避指示、約100km圏に及ぶ農作物や水道水への放射能汚染など深刻な状況にあります。また電力施設の被災した東京電力管内では、一日3時間の計画停電が実施され、公共交通も十分な運行がされず、避難所への物資も不足状態で、被災地や避難地での不便な生活を強いられています。被災地の復興には多くの費用と時間と労力が必要です。
亡くなられた方々には深く哀悼の意を表するとともに、被災された方々には心よりお見舞い申し上げます。
こうした未曾有の大震災の対策と地域の復興を目指す状況下ではありますが、第11回目の土木学会デザイン賞を平成23年度もできる限り実施する所存です。
このたび従来の災害規模の予想を遙かに超えて発生した現実の自然災害を思いますと、防災上の安全に関する基本的な基準の設定の考え方、エネルギーと資源と材料の利用のあり方、海岸沿いの低平地に立地してきた都市、港湾、空港、工業団地など都市基盤配置構造のありかた、国土の社会基盤の配置のあり方、リスク管理に対する公共、民間企業、市民意識のあり方など、土木計画と土木デザインの総合的な枠組みを、根本的に見直さなければならない状況にあると認識されます。かつて震災復興や戦災復興に努力した先人の足跡をたどりますと、非常事態の緊急時においても将来を見据えて、社会基盤のあるべき姿を追求する重大な計画設計の判断をしていた土木技術者の姿があったことに気づかされます。
土木学会では震災後直ちに東北関東大震災災害調査団を派遣し、被災地での実態の把握と対策に努めています。
本年度において土木デザイン賞の表彰を実施する意図は、いかなる状況下においても、現実に発生した根本的な課題に対処できる構造物や地域のデザインのあり方を、原点に帰って考え直すべきであるという信念に基づくものです。
土木デザインは機能の充足、防災上の安全と耐久性、省資源と省エネルギー、環境の保全と創造、地域の合意と活性化などをベースに新たな国土の美を創造する総合的な活動です。このたびはデザインの原点に帰って、過去に取り組まれた良き事例を見いだしていただき、多数の応募を期待しております。
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