長崎松が枝国際観光船埠頭

所在地:長崎県長崎市松が枝町7番16号 MAP
事業者:長崎県土木部 港湾課 建築課

 

受賞者

氏名
所属(当時)
役割
伊藤滋 早稲田大学特命教授 環長崎港地域アーバンデザイン専門家会議座長 ・全体コーディネート
篠原修 東京大学名誉教授 環長崎港地域アーバンデザイン専門家会議副座長 ・デザインの指導
石井幹子 (株)石井幹子デザイン事務所代表取締役 環長崎港地域アーバンデザイン専門家会議委員 ・デザインの指導
上山良子 長岡造形大学学長 環長崎港地域アーバンデザイン専門家会議委員 ・ランドスケープデザインの指導
林一馬 長崎総合科学大学教授 環長崎港地域アーバンデザイン専門家会議委員 ・建築デザインの指導
太田啓介 (株)オリエンタルコンサルタンツ ・ランドスケープデザインの提案、設計、デザイン監理
佐々木信明 Inter Media一級建築士事務所 ・建築デザインの提案、設計、デザイン監理
長崎港湾漁港事務所港湾課 ・緑地の工事発注、施工管理
長崎県土木部港湾課 ・予算確保、事業調整
長崎県土木部建築課 ・建築の工事発注、施工管理
長崎県企画振興部まちづくり推進室 ・環長崎港地域アーバンデザインシステムの運営
株式会社オリエンタルコンサルタンツ ・ランドスケープ設計、デザイン監理
Inter Media一級建築士事務所 ・建築設計、デザイン監理

 

講評
松が枝埠頭が立地する長崎港の南側一帯は、洋館や教会など、歴史的建造物が保存されている地区であり、厳しい景観規制が行われている。その中にあって、松が枝埠頭のデザインは、国際埠頭としてのシンボル性、威厳や誇大とは異なり、隣接する水辺の森などに見られる海岸の市民への開放や、周辺の景観保全を目的とする再整備事業と連担することを主なコンセプトにした点がむしろ斬新さを覚える。
長崎の港は山に囲まれた細長い入江にあり、外洋からのアプローチの中途には、軍艦島(端島)、教会の見える小島、造船所、丘の上の洋館、教会等の歴史的産業遺産、文化遺産がひしめき、その全てが長崎のゲートウェイの役割を果たしている。
そうした環境が、デザインコンセプトに発想の転換をもたらしたのではないかと考える。いずれにしろ、自己主張をしない建造物、土木デザインのあり方に示唆を与える好例となったと考える。(山道)

対象地区は長崎港の最深部である長崎駅からは一定程度離れ、グラバー園、大浦天守堂などの直下に位置する。「周囲の高台から長崎港への眺望を確保するため、岸壁側での高さが0となる厳しい景観規制」の中、この国際ターミナルは計画された。このため、高さは低く抑えられ、その中で外国航路の旅客の出迎え、見送りの場として緑化された屋上部へ、人々が登ることができる。港町イメージが強い長崎のそれも国際航路の旅客ターミナルとしては、景観に配慮した規制といえども、あまりにおとなし過ぎるのではないか、と第一印象を持った。高さ規制を前提とするなら、その範囲において施設は良く整備され、適切な緑化とともに周囲の景観に溶け込み、消失さえしている。港内の他所では一定程度押しの強いデザインの施設が存在するなか、眺望確保とはここまでのことをすべきなのかと考えさせられる事例でもある。前提条件を尊重し、関係者の努力にも敬意を払いつつ、優秀賞としたものである。(高見)