Civil Engineering Design Prize 2003, JSCE
黒川温泉の風景づくり
所在地:熊本県阿蘇郡南小国町満願寺  地図
事業者:南小国町役場
     黒川温泉自治会
授賞対象者
氏名
所属(当時)
役割
内山 督
熊本大学教授 ・風の舎、べっちん館等の建築設計
・景観全般のアドバイス
植田 宏
熊本大学 助教授 ・風の舎、べっちん館等の建築設計
・景観全般のアドバイス
後藤健吾
黒川温泉観光旅館協同組合代表理事 ・自治会(地元)との調整
・地元側の総括責任者
遠藤敬悟
黒川温泉観光旅館協同組合環境部長 ・沿道緑化、屋外広告物等の改善に尽力
徳永 哲
株式会社エスティ環境設計研究所所長 ・基本計画・実施計画立案
・全体調整・総括責任者
黒川温泉自治会
・まちづくり協定締結
南小国町役場
・街なみ環境整備事業推進
講評

 黒川のランドスケープデザインはとてもいい。最優秀賞に匹敵する。「雑木による風景づくり」は、他の地域にも参考になる。道路にも雑木を植えるという発想もとてもいい。緑の風景を柱としたまちづくりを考えている人には必見の事例である。是非皆さん一見して欲しいと思う。まちづくりとしても、温泉組合、ルールづくりに参加した旅館の人達・住民、さらにはコーディネイターの連携した活動が、風景をつくったことも高く評価したい。この点も最優秀である。
 となれば、「なぜ黒川温泉が最優秀賞ではないのか」が、当然議論の焦点である。様々な意見はあるけれど、最終的な理由は公共空間、道路・河川のデザインにある。赤い橋やガードレールを塗り替えダークブラウンにしたこと、みちづくりの工夫など、風景づくりの努力は評価できる。ただ、土木デザインの質という意味では万全ではない。黒川温泉では、これから公共空間デザインの質をあける取り組みを期待したい。
 現行の規定では無理のようだが、再度土木デザイン最優秀賞の対象として議論する機会があっていいと思う。( 小出)

 小さな谷間に温泉旅館がひしめく。無秩序に「発展」した温泉街で、壊して新しくつくるという再開発的な手法は通用しない。このまちを歩いても、特別に土木的な修景整備を見ることはない。丸鈴橋は高欄の修景程度。転落防止柵は茶色に塗装しただけ。急斜面には法枠コンクリートの擁壁。いたるところに過去の土木的整備の「成果」が残存している。にもかかわらず、なんと心地よいまちの空間だろう。
 狭い道や急な坂の隙間に植えられた笹や低木、建物がむき出しになった場所や道の曲がり角に配置された雑木。温泉街の要所に植えられた雑木が、景観的な秩序をもたらしている。いご坂はただのコンクリートだが、黒の縁石がおしゃれである。歩くことが楽しくなるような空間に仕立てている。黒川温泉のまちづくりは、「そこだけがよくなればいい」という行き方ではない。時間をかけてまちの全体を少しずつよくしていく住民主体の運動。こういうまちづくりはいいと思う。( 吉村)

土木学会 | 景観・デザイン委員会 | 研究発表会 | 論文集 | デザイン賞 | デザインワークショップ | 報告書/過去のイベント | 委員会について
(c) 2002-8 土木学会景観・デザイン委員会 テキストおよび画像の無断転用を禁止します
Copyright by Landscape & Design Committee, JSCE. All Rights Reserved.