Civil Engineering Design Prize 2003, JSCE
Civil Engineering Design Grand Prize 2007, JSCE
Total Design of Tomata Dam Area
所在地:岡山県苫田郡鏡野町久田下原1592-4  地図
事業者:国土交通省中国地方整備局苫田ダム工事事務所
    (現・苫田ダム管理所)
授賞対象者
氏名
所属(当時)
役割
名合宏之
岡山大学環境理工学部教授 委員長として委員会の総括ならびに放流水理の指導
千葉 喬三
岡山大学大学院自然科学研究科教授 委員会委員として植栽デザイン等を指導
清水 國夫
岡山県立大学デザイン学部学部長 委員会委員としてサインシステム等を指導
篠原修
東京大学工学部教授 委員会委員としてダム本体、橋梁等土木施設のデザインを指導
内藤 廣
東京大学工学部教授 委員会委員として指導ならびに管理庁舎デザインの提案・設計
岡田 一天
(株)プランニングネットワーク デザインワーキングとして全体デザイン方針、ダム本体デザインを担当
高楊 裕幸
大日本コンサルタント(株) デザインワーキングとして橋梁群のデザインを担当
苫田ダム環境デザイン検討委員会
デザインワーキングに対する指導、方針決定ならびにデザイン決定
国土交通省中国地方整備局苫田ダム工事事務所
デザイン検討に対する条件提示、修正指示およびデザイン決定案に基づく設計・工事発注
財団法人ダム水源地環境整備センター
デザイン検討委員会事務局ならびにデザインワーキングの統括
講評

好天に恵まれた秋の日、奥津湖と称される苫田ダムを訪れた。続発した洪水、一方で度重なる水不足という、治水、利水のためにできたダムという面影は全く感じられない雄大で穏やかな風景があった。車で周囲を巡るだけでも相当な時間のかかる大きなダムであるが、車窓からの風景は変化に富んでいる。もちろん、その時の水量にもよるのだろうが、特に感心したのは、上流のほう、車でも人だけでもその水辺に寄っていけるほど親水性が高く、植生の豊かな自然の地形とでもいえる風景が素晴らしい。総じて、水際のデザインが良い。ここでは、採用されたデザイン体制が素直に評価に値する。デザインの決定が「環境デザイン検討委員会」にあることを明確にし、場所ごとの条件に素直に対応している。場所ごとに強弱をつけ、周辺からの連続する風景として、全体を見る(デザインする)試みがなされた。そのせいで、様々に架けられた橋はそれぞれ異なるデザインとなっている。ひとつひとつの橋のデザインをとれば、風景の中にきれいに融け込んでいるものもあれば、さほどでもないものもあるが、風景の連続性にはそういった視点も重要だ。持続的に連続していく視点を持ちつつ、場所ごとに独自の解でこれらをつないでいく。ダムのカタチも、管理庁舎もトンネルも、そういった趣旨で出来ている。総体としてのデザインの考え方とその全体像が評価された作品である。(江川)

苫田ダムの一連の景観デザインを体験してみると、それぞれの構造物の質の高さに驚かされる。これほどダム本体、管理棟、トンネル、橋梁など数多くの土木構造物が一定のレベルを超えてデザインされ、ダムとダム湖というキーワードの中で統一感を持って、出現されているのは、わが国でここだけだろう。苫田ダム本体はわが国初のラビリンス式の放流工を持ったダムであり、その放流工の大きさと形はインパクトがある。ラビリンスとは迷宮すなわち越流部が折れ曲がった放流工のことである。管理事務所は宙に浮いた近代的な構造物であるがその色とデザインはなかなか面白い。湖岸道路のコンクリート擁壁は、天端の処理、地山との境界の処理がうまく風景の中に納まっている。周辺道路のトンネルの坑口もしっかりとデザインされ、いやらしさが無く、よくできている。目立つ橋梁と目立たない橋梁を仕分けしたこともうまくいっている。橋梁群の中では、奥津湖の中央部に位置する苫田大橋のデザインは秀逸で、景観を引き締め、存在感のあるV型脚を持った印象的なデザインである。浮島橋梁、湖岸公園、いずれもきっちりとデザインしてある。わが国もこれほどの空間をデザインできるような国になったものだなということを強く感じた。土木デザインのテーマパークのようである。(島谷)

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