Civil Engineering Design Prize 2002, JSCE
Civil Engineering Design Grand Prize 2002, JSCE
鮎の瀬大橋
所在地:熊本県上益城郡矢部町大字白藤〜菅 地図
事業者:熊本県
氏名
所属
役割
大野美代子
株式会社エムアンドエムデザイン事務所 熊本アートポリスの指名を受け、基本構想の立案、基本デザイン、詳細デザインに続いて、施工中にデザインを管理
永木卓美
熊本県上益城事務所(当時) 発注側の最終担当者として、コスト、デザイン、施工の関係を調整
林田秀一
株式会社中央技術コンサルタンツ JVを組んだ構造設計会社の最終設計管理者として、詳細設計を管理
荒巻武文
住友建設株式会社 現場所長として、デザイン実現のための施工方法を提案し、実行
八束はじめ
株式会社ユーピーエム 当時の熊本アートポリスコミッショナー磯崎新氏の下で、プロデューサーとして関係機関を調整
・まるで生け花で言う天地人の構成を思わせるように、高い主塔とV字橋脚が呼応して美しいバランスを保っている。桁下に本橋のような大きな空間がある場合には、通常、上路アーチ橋のように桁下の空間に構造体を配置して、桁上にさらに構造体がある橋梁形式は選ばないが、本橋ではあえて高橋脚の上にタワーを配した斜張橋としている。したがって、普通ならば否定的な違和感の方が勝る形式をV字橋脚と組み合わせることで肯定的に評価できるユニークな橋梁形式にした手腕は見事である。桁は斜張橋部ではケーブル定着位置毎に横桁を強調した形となっているが、構造的要請と形をうまく調和させている。V字橋脚部では横桁はないが、張り出しのある箱桁が斜張橋部から通っており、全体としてスレンダーで美しい桁形状となっている。構造面や施工面からみた必然性という観点からは他にも幾つかの案が成立しそうであるが、本橋では一目で鮎の瀬大橋だと識別できる独自性を創出した点を評価したい。(杉山)

・渓谷に懸かる美しい橋である。申請書には「斜張橋とV字橋脚を組み合わせたアンバランスな形態のイメージを地形に重ねた」とあるが、斜材によるラインが主塔から上空へと集まり昇華していく流れと、逆にV字橋脚により大地へと集まっていく流れとがあって、この両者が安定感を生みだしている感がある。斜材定着部の湾曲させたデザインや斜材保護管の色や素材など、各所に細やかなデザイン配慮が読みとれる。また、非常に厳しい地形条件での施工には苦労が多かっただろうと敬服する。しかし一方では、これが農免農道の一部であることにデザインとは別の意味で驚くとともに、当作品のある矢部町が通潤橋をはじめとする数多くの歴史的な石橋の残る町であることから、これらをモチーフにしたデザインの選択もありえたのではないかと感じる。山間に忽然と現れる現代技術の粋を集めた美しさは、そうした地域の歴史的文脈とは少し乖離している感も否めなかった。(澤木)

・深い谷の斜面の岩棚地形を活かして、V形橋脚ラーメン橋と斜張橋を組み合わせた発想は、構造計画的論理性があり、形態的にも∨と∧の対比が斬新で深いV字谷ともうまく調和している。確かに新しい「橋のある風景」を創り出しており、共感できる。デザインも全体のプロポーションから構造ディテール、路面、橋詰に至るまで目がよくゆき届いており完成度も高い。特に斜張橋主桁のケーブル定着部はユニークで作者の個性が感じられる。なお、私としては、以前雑誌(造景1996.2,P58)で見た原案のイメージスケッチの大きく左岸側に傾けた∨と∧による一体感のあるフォルムが今でも印象強いせいか、それと較べて現橋はともすれば2つの橋が別々に並立しているようにも感じられるのはちょっと惜しい。同じ緑川水系にある名橋、通潤橋、霊台橋とは、昔の重厚な石積アーチ対鉄、コンクリートの近代橋梁(イメージ的には、SL対新幹線か)と好対照をなし今後の風雪に耐えどのような姿になるか楽しみでもある。(田村)
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