建設コンサルタント委員会


平成11年度 全国大会/研究討論会 概要報告

実施日:平成11年 9月22日
会 場 : 広島大学


テーマ: 生涯職業としてのコンサルティングエンジニア
−教育,倫理,資格,能力,魅力−

■座長趣旨説明

【水谷潤太郎(日本上下水道設計)】 

コンサルティング・エンジニア(以下CE)とは事業実施にあたって,各種の専門家の多様な知識を集約して行うもの。ハード志向から脱皮して,ソフトな業務遂行が望まれる。建設の2文字を超えた役割を目指さなければならない。現状の建設コンサルタント等から未来のCEに脱皮するには,執行体制,能力開発,職業倫理の確立,環境マネジメントなどの課題について議論したい。

発表風景


■話題提供の概要


【佐野吉彦(安井建築設計事務所)】

知恵を統合し見通す能力を 設計者とは,技術をまとめうる能力を社会に認められた者のことをいう。設計者に必要とされる能力は,見通す能力,知恵を統合する能力である。今後の社会資本整備には,建築や土木の垣根を越えた発言や提案ができないと,どこかで行き詰まる。

【佐藤正則(日刊建設工業新聞)】

タフで優しくなければ 昔は,アーキテクトとエンジニアとは一体だった。建造物の大型化とともに川上から川下の関係が,力と金の関係を示すようになり、生産構造がゆがんできた。学生に倫理を教育し,仕事の中で要求し続けていくことが,CEとしての生涯職業の証となる。

【盛行宏(セントラルコンサルタント)】

知識創造社会こそCEの活躍舞台 21世紀は,人間が人類の存在意義、存在価値をかけて環境問題,資源問題などと取り組まなければならない。文化の違いを超えて,地球上の人類誰もが理解し合える普遍的な価値判断が求められる。ル−ルに照らして何が正しいかを判断する前に,モラルに照らして何が正しいかを常に問いかける必要がある。

【今井義明(大成建設)】

ゼネコンの立場からみたCE 日本では,施工会社,専業者にも多くの専門技術者が存  在する。設計と施工のバランスを得るには、彼らを活用し設計・施工一括発注方式などを取り入れる必要がある。これからのCEには各々自分の環境を最大限に生かす知恵が必要である。

【神長耕二(国際建設技術協会)

職業倫理の確立を 土木技術の世界に限らず,倫理問題は今やグローバルな問題である。現代は,倫理問題に真摯に取り組んでいる企業・国でなければ,世界からまともに相手にされない。技術者本人の良心に基づいて倫理を実践していけるシステム,倫理の向上に積極的に取り組むCE/PEが高く評価されるような社会の構築が必要である。

パネラーの方々 参加者の方


■会場からの意見


CEの生き方を問うには産学官の役割分担を変えないことには,この選択の道が築けない。建設コンサルタント 委員会は,もっと情報を発信すべきである。

発注者,建設コンサルタント,ゼネコンがCEの役割を担っているのはわかるが,フィロソフィーの部分をすべて大学に委ねてきた。もっと幅広く,CEの一員として大学を巻き込む必要がある。


日本はタテ社会の文化の発想を持つ国であり、発注者,建設コンサルタント,ゼネコンという序列で力関係が構築され易い。ヨコ社会では役割が並列で対等の関係にあるのでうまくいく。コンサルタントは、魅力ある職業とするためにも、ヨコ社会のいいところを学び、常に正当な発言をする責任感と姿勢を保持しなくてはならない。また,コンサルタントはパートナーというよりも、発注者の持っていないものを提供する相互依存の関係にあると認識すべきである。さらには,日本の土木分野では,設計者の位置づけが明確でない。ゼネコンに属していても,設計者の位置づけが確立されれば立派なCEである。

会場からの発言


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