土木学会土木史研究委員会
2004年度 第2回 土木史研究委員会・幹事会 議事録
日 時:
平成16年11月4日(木) 13:30〜17:00
場 所:
土木学会 E会議室
出席者:
昌子幹事長、北河幹事、中井幹事、知野幹事、樋口幹事、日野幹事、深堀幹事、三浦幹事
配付資料:
資料2-1: 2004年度 第二回土木史研究委員会・幹事会議事次第(案)
資料2-2: 土木史研究小委員会報告
資料2-3: 「第25回土木史研究発表会」の開催と講演用論文及び討議欄の募集(案)
資料2-4: オーラルヒストリー研究小委員会平成16年度活動経過及び予定・小委員会名簿等
資料2-5: 平成16年度土木学会選奨土木遺産候補 一覧
資料2-6: 『図録土木史年表』(仮称) 出版企画(案)
資料2-7: 餘部鉄橋についての報告
資料2-8: 文化遺産防災連絡会議への出席報告
資料2-9: 日本大学及び吉林建築工程学院の共同研究について
議事:
1. 配付資料及び前回議事要旨の確認(昌子幹事長)
幹事会の開会にあたり、配付資料と前回議事要旨の確認がなされた。なお、前回議事要旨を事前に各幹事にメールで送信しており、ウェブサイトにも掲載しているため、配付資料には含まれていないことが説明された。もし、議事録に修正すべき点がある場合は昌子幹事長及び日野幹事に連絡することが確認された。
2. 土木学会全国大会の総括(昌子幹事長・知野幹事)
土木学会全国大会における共通セッション及び研究討論会の総括がなされた。
- 全国大会共通セッションは「土木史教育−講義と教材」と題し、最初のセッションでは現在、行われている講義に関する発表、次のセッションでは教材作成小委員会の委員を中心としたディスカッションが行われた。ディスカッションでは数多くの要望が挙げられたが、教材作成に対する批判意見は見られなかった。
- 研究討論会は「土木学会初代会長古市公威についてのパネル展とトークショウ」と題し、実施された。しかし、土木史研究委員会の委員・幹事がほとんど出席していなかった点が、課題として挙げられた。
3. 各小委員会からの報告
1)土木史研究編集小委員会(深堀幹事)
配付資料に基づき、小委員会での検討事項と今回の幹事会での審議事項が説明された。
- 土木史研究論文集の編集に関し、現在は査読者を選定し、依頼している段階であること、査読要領や方法は昨年度を踏襲していることが報告された。ただし、スケジュールは査読期間の長さを重視し、判定会議を1月に開催する予定であることも報告された。
- 小委員会での検討事項のうちの組織強化については、今年度は予算制約等もあるため、委員の増強を行わないことが報告された。また、査読者負担については、多くの投稿があったが、査読者一人あたりの査読論文数を平均2本にとどめたことが報告された。
- 幹事会での審議事項として、重点部門を「土木遺産の保存・活用事例報告に関するもの」と「長期にわたる特定プロジェクトの史的考証に関わるもの」に変更することが説明された。また、本来は委員会で決定すべき事項であるが、本幹事会の結果を電子メールで各委員に諮ることが確認された。
重点部門の変更に関し、下記に示すような意見交換がなされた。
- ・現在、十分に論文が集まっているのであるなら、重点部門とする必要はない。ただ、保存はキーワードに含まれているが、評価はキーワードからも消えてしまう。(知野幹事)
- →「土木遺産の評価方法」も重点部門に残すということも考えられる。(昌子幹事長)
- →重点部門の数を増加させることは望ましくなく、キーワードに含めた方が良いと考える。(深堀幹事)
- ・「事例報告」は既にT分野のキーワードに含まれている。また、事例報告に対する審査基準は現在から変更されるのか。(北河幹事)
- →事例報告を重点部門としたのは前回委員会等での議論を反映させた結果である。審査基準は検討中の段階である。ただし、その部門に貢献しうる論文内容であるかどうかが基準となる。(深堀幹事)
- →現場で保存活動等に携わっている人達に論文投稿の道を開くことが重点部門化の意義だと考えられる。また、そのことが活動のモチベーションを継続することにもつながるのではないだろうか。すなわち、人材育成と保全活動の両方に貢献するものである。(昌子幹事長)
- →審査基準や査読員選定は非常に難しい点がある。しかし、一律の基準とはしない方向で小委員会での議論を進めている。(深堀幹事)
- ・基準を検討する上で、研究論文に何を求めるかを明確とする必要がある。(昌子幹事長)
- ・研究成果を蓄積することでフォーマットのようなものを作成できたなら、それは非常に有用である。(北河幹事)
- →論文に求められるものは知見の有用性である。単に事例を紹介するだけではなく、他者が利用できる役に立つような知見が学術的にまとめられていることが望ましい。ただし、客観的に査読してもらうためには明文化された基準が必要であろう。
- ・ケーススタディを重視するという方針は研究発表会の時にも出た話題である。評価は土木史研究における前段として必ず含まれるものであり、保全等とは異なるレベルにあるものと考えられる。その点において、キーワードに含めることには賛成である。むしろ審査基準を検討することの方が困難である。(中井幹事)
- ・評価を重点部門から取り下げることに関し、歴代委員長を含めた各位に意見を伺った方がよい。(知野幹事)
- ・現在の研究論文の方向性として、一次資料の重要性を軽視する思想があるとの意見も出ている。(昌子幹事長)
- →一次資料にこだわることも一つの思想であるといえる。(知野幹事)
- →現在は一次資料のありかが定かではなく、共有もされていない。アンフェアな状況にあるともいえる。そのような状況が主流となっていては研究分野としての広がりは少ないと考えられる。(中井幹事)
2)土木史フォーラム小委員会(知野幹事)
土木史フォーラム28号が編集作業中にあることが報告され、今後の発行方針に関する小委員会の考え方が説明された。
- 委員会で了承されたため、発行回数を3回から2回(8月・12月)へと減ずる方向で進めている。
- 委員会において、議論の場としてのフォーラムの役割を再確認すること、PDF配信を促進することで予算を新規読者の開拓に使用することが意見として出されていた。しかし、次小委員会の考えを尊重するため、現小委員会ではこれらに関する議論は進めていない。
- 土木史フォーラムの発刊方針に関し、下記に示すような意見交換がなされた。
- ・新規に読者を開拓すべき分野として、どのような分野が想定されるだろうか。(昌子幹事長)
- →行政組織や教育委員会などが挙げられる。(知野幹事)
- ・PDFで配信した場合、それは本当に読まれているのだろうか。(中井幹事)
- →前小委員会で実施したアンケートでは回答自体も少なかったが、賛成とする意見も少なかった。(昌子幹事長)
- ・ウェブサイトに随時掲載することとPDF配信には大差がないようにも感じられる。現在、フォーラム発刊には多大な労力が割かれていると思うが、労力を割く必要があるのだろうか。(中井幹事)
- ・委員会でも意見として挙げられていたが、フォーラムの意義は双方向の議論にあるといえる。土木史研究委員会からの告知はウェブサイトで充分である。過去にはウェブサイトがなかったため、フォーラムで各種の告知を行う意義はあった。(昌子幹事長)
- ・土木史フォーラムの送付先リストが土木学会内で閉じてしまっていないかを確認すべきではないだろうか。例えば、国土交通省の各事務所長等に送付することが考えられる。土木史フォーラムの目的と目的に応じた送付先・媒体を検討すべきである。また、土木史フォーラムは土木史をPRする戦略とセットになっているべきと考えられる。(中井幹事)
- ・これまで読んでいただいている方々はPDF配信とし、新規読者の開拓に印刷物を用いることは考えられる。(昌子幹事長)
3)オーラルヒストリー研究小委員会
前回委員会において、11月16日開催予定のワンデイ・セミナーのPR方法が議論されていた。そのことに関し、業界紙や朝日新聞には河村委員、都市計画家協会・週刊まちづくりには昌子幹事長から連絡していただいていることが確認された。また、伊東委員長から各パネリストに自ら宣伝して頂けるよう依頼していることが報告された。
4)土木史教材検討小委員会
土木学会に提出された出版企画案についての報告がなされた。
5)古市公威研究小委員会
古市公威研究小委員会について、活動の継続が確認された。
6)新しい小委員会について(企画展示検討小委員会・世界遺産検討小委員会)
第一回委員会において議題となった企画展示検討小委員会と世界遺産検討小委員会はそれぞれの設立が検討中であり、今後も幹事会において議論することが確認された。また、主に世界遺産検討小委員会の設立に関し、下記に示すような意見交換がなされた。
- ・小委員会の設置に関し、基準等は存在するのか。(中井幹事)
- ・委員会としての戦略が重要である。委員会の人的なリソースは限られており、それを有効に活用することが必要である。これまでは各個人の研究をサポートすることを目的にしていたように感じられる。(中井幹事)
- →現在はメンバーの活動に対し、委員会が後からついて行っているような状況にある。(昌子幹事長)
- ・委員会の活動に関しては、整合性がとれている部分と思いつきに見える部分がある。ただし、言い出した人が相応の負担をしている。選奨土木遺産において世界遺産の検討を行った方がいいのではないだろうか。(知野幹事)
- ・リストの作成が世界遺産検討小委員会の目的として、その先の活動はどうするのか。本当に世界遺産となることを目指すためには相応の体制が必要となる。(北河幹事)
- →世界遺産検討小委員会の設置・活動が前提ではなく、委員会内で議論することが目的である。これは世界遺産検討小委員会だけではなく、企画展示検討小委員会も同じである。また、小委員会のあり方についても議論することが必要である。(昌子幹事長)
- ・企画展示検討小委員会と世界遺産検討小委員会という2種類の小委員会が存在してもいいのではないだろうか。委員会として、何を主軸に戦略を立てるべきなのかを幹事会で議論する必要がある。(中井幹事)
4. 委員会としての社会貢献活動について(昌子幹事長)
土木史研究委員会の活動に関し、社会貢献活動が充分ではないとの意見をいただいたことが報告された。また、社会貢献活動が充実している委員会として、景観・デザイン委員会の事例が紹介された。行事の参加人数や収支と同時に社会貢献活動についても重視することが確認された。
5. 土木構造物の保存要請について(昌子幹事長)
土木史研究委員会から保存要請が出されている餘部橋梁・平木橋と今後、保存要請が必要とされるであろう阪急梅田駅に関し、状況の報告と今後の方針に関する議論がなされた。
- 餘部橋梁の保存要請に関する佐々木葉先生からの報告が紹介された。また、大平理事に委員会で説明をしてもらうことを検討していることについても報告された。
- 阪急梅田駅については田中幹事に活動していただいていることが報告された。また、現在のものは壊すことが前提となっていること、文化財に指定するという話もあったが、その動きは進んでいないことが紹介された。
- 平木橋の保存要請に関しては、今後も神吉先生にその対応を依頼することが確認された。
委員会としての今後の対応に関し、下記に示すような意見交換がなされた。
- ・阪急梅田駅については、建築学会と連名で保存を要請すべきである。ただ、どのような形式で要請すべきか等に関し、検討する必要がある。そのためにはもう少し情報が必要である。(中井幹事)
- ・餘部橋梁についてはおおよそ収束したものといえる。また、記念館を残そうという動きがある。今回のことを今後の課題としてどのように活かすべきかを考えなければならない。(昌子幹事長)
- →餘部橋梁の保存に関しては、佐々木先生が孤軍奮闘していたように思える。委員会としてのバックアップがほとんどできていなかった。(中井幹事)
- ・委員会としての戦略的な活動がなされていないのが現状である。このままでは、今後も同じようなことを繰り返すのではないか。(知野幹事)
- ・少なくとも近代土木遺産2000選に掲載されているような構造物の改築等が行われる際、委員会に相談が持ちかけられるような動きが欲しい。(昌子幹事長)
- ・餘部橋梁保存のための基金が必要であるなら、土木史研究委員会と景観・デザイン委員会との共催でシンポジウムを開催し、寄付を募ることなどが考えられる。(中井幹事)
意見交換の結果、下記に示すような事項が確認された。
- 餘部橋梁の保存要請について、中井幹事と佐々木先生の間で意見交換をしていただき、今からでも考えられる手だてを検討する。
- 阪急梅田駅の保存については、田中幹事に活動していただくが、建築学会や他の先生への働きかけも検討する。
6. 今後の活動について
1)文化遺産防災連絡会議への参加について(昌子幹事長)⇒ 資料2-8
文化遺産防災連絡会議への参加経緯に関する報告がなされ、今後、土木史研究委員会としてどのように関わっていくべきかについての意見交換がなされた。その結果、当面は松村先生に会議に出席いただくことと今後は北浦先生にも出席していただくことが了承された。
2)「勝鬨橋をあげる会」への後援について(委員長提案)
土木史研究委員会として、「勝鬨橋をあげる会」を後援するという委員長提案が説明され、下記に示すような意見交換がなされた。
- ・土木学会ではなく、土木史研究委員会が後援することになるのだろうか。(北河幹事)
- ・土木史研究委員会として、具体的にどのような後援活動を行うのか。(知野幹事)
- →人や資金面での支援が必要なわけではない。活動の後援を行うだけである。(昌子幹事長)
- →今後、人や資金面での支援を必要とされる可能性がないかが懸念される。(知野幹事)
- ・「勝鬨橋をあげる会」が主催するシンポジウム等の後援ならば理解はできる。ただ、橋の管理者との関係が気にかかる部分である。(中井幹事)
意見交換の結果、後援の対象が明確となるように電子メール等で確認をすること、土木学会側に手続き方法等を照会することが確認された。
3)中国東北地方の近代土木遺産調査(日中共同)への対応について(委員長提案)
土木史研究委員会として、日中共同研究を後援するという委員長提案が説明され、下記に示すような意見交換がなされた。
- ・土木史研究委員会として、具体的にどう関わるのかという点は確定していない。(昌子幹事長)
- ・委員会が後援する意義が不明瞭である。(中井幹事)
- ・「勝鬨橋をあげる会」と同様に、シンポジウム等の後援であるならば理解はできる。(知野幹事)
- →このために新たな小委員会を立ち上げる等の予定はない。(昌子幹事長)
意見交換の結果、委員会としてこの種の共同研究を後援する手段を土木学会・橋本氏に確認すること、後援の意図や土木学会としての関与方法を明確化することが確認された。
4)その他の社会的活動について
今後、土木史研究委員会として取り組むべき活動に関し、下記に示すような意見交換がなされた。
- ・土木史に関わる人材供給が一つの大きなテーマである。大学等では教養としての歴史教育で充分とされている。委員会として、戦略的に人材育成を進めるべきである。(中井幹事)
- ・現在の体制では企画・展示等を実施する余力がない。立案されたものを実行できる人材を発掘すべきである。これまでに蓄積されたものが全く出されていない。(知野幹事)
- ・他の小委員会よりも人材育成は優先されるべき事項である。(中井幹事)
- ・そもそも土木史という分野が知られていない。様々な人の参加を促していくべきである。自らの活動に関し、声を大にしてアピールすべきではないか。(三浦幹事)
- ・報告書等のために活動を考えていると、上手く行かないのではないだろうか。小委員会等のように委員会内だけで活動するのではなく、他委員会との連携等を積極的に考えるべきである。(深堀幹事)
- ・土木史の研究者は二足のわらじを履いている人が多い。本務を活かすための情報交換の場として、委員会を位置づける考え方もある。ただし、その場合は委員会活動等に専念することができない。背水の陣で委員会を引っ張っていける人が出てきて欲しい。(中井幹事)
- ・最近は横の方向に分野を広げていく努力が少ない気がする。建築のように、外にもストックを作っていきたい。土木史は実務と結びついていないというイメージを拭い去っていくべきである。(知野幹事)
- ・土木史に関与する人が増えていけば、イメージを変えていくことは可能であろう。今後、そのような人達が増える可能性はある。ただし、行政の予算や地元の盛り上がりが問題となる。それらが実務の発生に影響するともいえる。学会内で土木史の重要性を強く訴えていく必要がある。(三浦幹事)
- ・選奨土木遺産を上手に活用していくべきではないか。単に表彰を行うだけではなく、評価委員による講演等があると良いのではないだろうか。(知野幹事)
- ・過去の美しい土木構造物にふれられるような媒体が必要ではないか。(中井幹事)
7. その他
1)土木学会功績賞について
土木計画学研究小委員会から新谷先生を合同で推薦したいとの申し入れがあったことが報告され、幹事会としてはこれを了承することが確認された。
2)第3回土木史研究委員会・幹事会の開催について
次回幹事会(第3回土木史研究委員会・幹事会)の開催日時を3月1日(火)または3日(木)の13:30〜とすることが了承された。なお、正式な日程は幹事会後の日程調整によって決定される。
※第3回土木史研究委員会・幹事会の開催日時は平成17年3月1日(火) 13:30〜に決定した。
(文責:日野 智)
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