平成18年度会長特別委員会


平成18年度会長特別委員会「土木の未来・土木技術者の役割」
会員に対するアンケート調査の中間報告

 平成18年度会長特別委員会「土木の未来・土木技術者の役割」は、第一回委員会を本年7月に開催以来、「1.土木を取りまく社会の現状と展望」、「2.土木界と土木技術者の役割」、「3.土木技術者に必要な資質と能力」、「4.土木学会の役割と具体的方策」の4項目について検討を重ね、本年度末を目途に報告書のとりまとめを行っている。
 委員会報告書の第1次案を8月25日に学会ホームページに全文掲載し、検討経過を会員に報告するとともに、以下の事項についてアンケート調査を行った。500名超の会員より回答があり、これら委員会の報告書内容に反映させて行く予定である。以下に、アンケートに対する会員からの回答の概要を報告する。

平成18年度 会長特別委員会

(1)アンケートの項目

  1. 公共事業投資減少の状況下における社会基盤整備のあり方と土木技術者の役割
  2. 環境問題に関して土木技術者が果たす役割
  3. 自然災害軽減に関して土木技術者が果たす役割
  4. 食糧・水・エネルギー問題に関して土木技術者が果たす役割
  5. アジアをはじめとした世界において日本の土木技術者が果たす役割
  6. 1.〜5.の土木技術者の役割を踏まえた、土木技術者に必要な資質・能力
  7. 1.〜5.の土木技術者の役割および6.の能力・資質向上のための土木学会の役割、あり方

(2)アンケート回答者の内訳(合計520名)

年齢人数(%)
10代0.4
20代5.0
30代18.8
40代25.4
50代36.7
60代11.9
70歳以上1.5
不明0.3
所属人数(%)
建設会社29.4
コンサルタント26.2
中央官庁3.7
公団・公社4.2
地方自治体5.6
大学等の教員9.8
学生1.5
その他19.6
【その他】
電力会社,JR・鉄道会社,
メーカー,独立行政法人,
財団法人,高速道路会社,
エネルギー会社,製造業,
研究機関等


(3)アンケートに対する回答の主要キーワード、キーフレーズ

  1. 社会基盤整備のあり方と土木技術者の役割
    • 大規模事業でなく、補修・改修工事が主となり、ライフサイクルコストの考えが必要となる
    • 本当に必要な社会資本整備を見極めるべき
    • 国民への説明が必要で合意を得る
    • 国民に費用対効果、必要性を判りやすく説明ことが必要
    • 社会資本整備の順位付け
    • 予算の有効活用
    • 国民に対する広報、マスメディアの活用
    • 市民と社会の意見を十分に反映させた社会基盤整備
    • 工学以外の経済や社会の・経営についても広く修得し、多方面で活躍すべき
    • 全国一律の整備ではなく、地域の特色・実情を考慮すること
    • 社会の合意形成に向けて客観的な分析・助言・提案を行うこと
    • 防災分野の基盤整備は必要
    • アセットマネジメントへの取組が必要
    • 本当に必要な社会基盤整備は実施すべき
  2. 環境問題に対する土木技術者の役割
    • 環境に与える影響の少ない社会資本整備の推進
    • 低コストで環境負荷を低減する工法・資機材の開発
    • 環境負荷を低減する工法・資機材を導入しやすい入札制度の採用
    • 土木技術の環境修復技術への応用
    • これまでの土木以外の林業・農業、生物・化学・地球物理学など異分野技術との融合
    • 自然環境を含めた人類の生存環境の整備
    • 自然災害によって環境が改変されることもあるので防災も重要
    • 一人一人の環境問題への意識向上
    • 利便性・コストと環境のトレードオフの関係
    • コンパクトシティー化による効率的な国土の形成
    • 交通渋滞の解消
    • 地球温暖化対策の具体的な施策、砂漠化抑制、森林育成への取組
    • 社会資本整備が環境に与える影響を開示して社会のコンセンサスを得ることが必要
    • 環境問題の真の原因究明が不可欠
    • 受動的な対策(不要不急の工事回避、構築物の長寿命化、環境への影響低減化技術開発・採用)
    • 能動的な対策(環境修復、温暖化対策)
    • 地球環境の現実をわかりやすく、正しく発信することが必要
    • 専門分野ごとに果たすべき役割は多いが、ビジネスとしての役割なのかボランティアとしてなのかが不明確
    • 土木分野でできることは限られており、個人でできることも限られている
    • 土木は本来地域密着であり、地域の社会・自然環境問題に取組んだ上で、外の広い世界に広げていくべき
  3. 自然災害軽減の対する土木技術者の役割
    • ハード対策技術だけではなく、ハザードマップや避難誘導・計画、緊急時の活動体制などのソフト対策が必要
    • 地域に応じた危険度を社会に発信して、コンセンサスを得た整備や対応を進めること
    • 人口減少の時代を迎えることから、危険な地域からの住居移転やライフラインの迂回・移転を進める
    • 災害対策事業の必要な場所と程度を予測し、その結果を積極的に社会に公表すること
    • 日本の優れた自然災害軽減技術を災害に苦しむ諸外国に展開すること
    • 事後の防災対策ではなく、優先順位を設けた事前の計画的な防災対策の必要性を社会に発信し続けること
    • 自然災害のリスクがゼロにはならないことの社会全体への周知と各地域の被災ポテンシャルの明示と最適な回避方策の提案
    • 防災減災に必要な社会資本投下の妥当性を国民に示す評価技術の確立
    • 施設に頼らない総合的な被害軽減策の立案
    • 自然災害を受け入れ、その被害を最小限にとどめるためのリスクマネジメントの実施
    • ソフト対策(災害予測、情報収集・発信、避難など)について関与していくために、関連領域との連携に対する見識が必要
    • 自然や地域と共存していくための説明責任を果たせる技術者の育成
    • 災害予測技術の国内外への発信による国民自身の危機管理促進
  4. 食糧・水・エネルギー問題に対する土木技術者の役割
    • 土木以外のさまざまな分野との連携、多方面の知識が必要
    • 広い視野と見識、社会性、コミュニケーション力の向上が必要
    • 水を大切な資源として捉え、社会全体で取組む意識を高める
    • 都市部における効率的な水循環技術の開発
    • 市民一人一人の意識、行動を喚起するべき
    • 海外での活動、技術協力が重要
    • 技術の融合・総合力を得意とする土木技術者の貢献が必要
    • 新技術を発揮できる循環型社会の提案とそれに基づいた基盤整備
    • 砂漠化対策による食糧生産力向上
    • 効率的な水循環システムの構築
    • 循環社会構築を目指した新技術開発と実施プログラムの提案
  5. 世界における日本の土木技術者の役割
    • リーダシップと交流
    • 規格の統一・標準化
    • 建設技術の供与と技術者の活用
    • 国内外での人材育成
    • 環境・防災・エネルギー問題での貢献
  6. 土木技術者に必要な資質
    • 土木に対する矜持と誇り
    • 広い分野における知識と見識
    • 企画能力・マネージメント能力・コミュニケーション能力
    • 国際化のための能力と資質
  7. 土木学会の役割、あり方
    • 調査・研究における役割
    • 社会とのコミュニケーション
    • 土木と土木技術者に対する信頼の回復
    • 国際協力と国際的リーダシップの確立
    • 土木技術者の教育
    • 災害の復旧・復興支援と防災教育活動
    • 学会の組織の改革

Last Updated: 2006.11.28
土木学会