令和元年度土木学会全国大会 Japan Society of Civil Engineers 2019 Annual Meeting

実行委員長挨拶

令和元年度土木学会全国大会実行委員長挨拶

令和元年度土木学会全国大会実行委員長 小林 稔(四国地方整備局長)

令和元年度土木学会全国大会実行委員会

委員長小林 稔(四国地方整備局長)

 令和元年度土木学会全国大会を9月3日(火)から5日(木)までの3日間、香川大学幸町キャンパスを主会場として開催いたします。
 四国での全国大会の開催は平成23年に愛媛大学で開催して以来8年ぶり、香川県高松市での開催は初めてとなります。
 香川県は、日本で初めて国立公園に指定された瀬戸内海国立公園の中心に位置し、四国の東北部にあります。面積は全国で最も小さく、平地と山地はおよそ相半ばしています。北は瀬戸内海をはさんで、瀬戸大橋で岡山県と結ばれ、東及び南は徳島県に、西は愛媛県に接しています。海面には多数の島が点在し、風光はまことに美しいものがあります。気候は、四季を通じて温暖少雨で、気候温和、明るい瀬戸内海の気候に恵まれています。近年では「うどん県」として知られています。今回、お越しいただく高松市は、香川県の県庁所在地であり、地方にありながらも利便性の高い都市機能を有しております。また、瀬戸内海の風景やコンパクトにまとまった街並みが魅力であり、「瀬戸の都」と称されております。
 美しい自然と温暖な気候に恵まれたこの地は、万葉集にも、「玉藻よし讃岐の国は 国がらか見れども飽かぬ」と歌われています。その見れども飽かぬ讃岐の国が、瀬戸内海の島々をキャンバスとした瀬戸内国際芸術祭で脚光を浴びているのは、皆様もご承知のとおりです。本年は、3年に1度の芸術祭の開催年です。本大会の開催日には芸術祭の夏会期は終わっていますが、本大会の香川での開催は時宜を得たものといえるでしょう。

 今回、主会場となる香川大学では、「地域に根ざした学生中心の大学」として、地域の防災・危機管理、地域をフィールドにした地域活性化教育などを推進しています。それを更に進めるため、香川大学では、平成30年3月に従来の「工学部」の募集を停止し、新たに「創造工学部」を新設しました。
 次世代を担う技術者には、単なる設計能力だけではなく、「どのようなモノが必要なのか」、「どのような社会になったら幸せになるのか」といったコンセプトそのものを創り出すことが出来る「デザイン能力」が必要となるでしょう。新しいビジョンを現実化しようとする際に直面する危機に対しては、「リスクマネジメント能力」が必要でしょう。香川大学創造工学部では、「デザイン思考」と「リスクマネジメント」を2本の柱として、工学教育を行っています。教育学部や法学部のある幸町キャンパスでの開催とはなりましたが、本大会は地域の工学教育の面からも得がたい機会となりました。

 さて、今回の全国大会のテーマは、「激甚化する自然災害、挑戦する土木」とさせていただきました。
 平成28年熊本地震や平成30年7月西日本豪雨など、ここ数年、毎年のように自然災害に見舞われています。インフラ整備を進めているにも関わらず、被害が発生し続けています。あたかも自然が人間の挑戦に対して再考をうながしているように思えました。そこで、私たち土木技術者に何が出来るのか、もう一度考えてみたいと考えました。
 ここ四国にも、人々の夢と希望を背負って活躍された先人たちの足跡が残っています。国内最大の灌漑用ため池である香川県の満濃池を改修したのは弘法大師 空海、高知県の掘り込み港湾 手結港を改修したのは野中兼山です。小樽港の整備に従事された「港湾工学の父」廣井勇は高知県の出身です。橋梁工学の大家で広井の後継者といわれる増田淳は香川県の出身、信濃川大河津分水路の可動堰建設工事を指揮した宮本武之輔は愛媛県出身の土木偉人です。
 このような先人たちのゆかりの地で、災害に対して土木技術者に何が出来るのかを考える、それは即ち、私たち土木技術者が社会に貢献できる「夢」をもう一度考える機会ことに他ならないと思います。

 全国大会の行事として、二日目に、基調講演会、特別講演会、全体討論会を配置しました。最初に、林康雄土木学会会長の基調講演があります。特別講演は、瀬戸内国際芸術祭の総合ディレクター 北川フラム氏にお願いをいたしました。地域の活性化に向けての一つの答えを示していただけると考えております。そして、全体討論会では、「激甚化する自然災害、挑戦する土木」をテーマにパネルディスカッションを行います。私たち土木技術に何が出来るのか、新しい「令和」の時代に、私たちは何をイメージし、何を成せばよいのか、それを皆さんと一緒に考えてみたいと思います。私たち土木技術者の新しい「夢」を見つけるお手伝いをしたいと思います。
 本大会は、土木学会の7つの研究部門が一堂に会する唯一の、そして、最大の機会です。「瀬戸の都 高松」にて、皆様の参加をお待ちしております。
 本大会にて、研鑽を積まれるとともに、会員相互の交流、情報交換などを通じて新しい令和の時代の「土木技術者の夢」を見つけるお手伝いが出来る事を願って、挨拶とさせていただきます。