ご案内

実行委員長挨拶

土木学会平成22年度全国大会を迎えて

関 克己

高松 泰
全国大会実行委員長
国土交通省北海道開発局長

平成22年度の土木学会全国大会を、来る9月1日(水)から3日(金)の3日間、北海道大学札幌キャンパスを会場として開催致します。北海道における全国大会は、2002(平成14)年以来8年ぶりとなります。

土木学会全国大会は、土木学会の7つの研究部門が一堂に会する唯一の機会として、学会の最大かつ最重要行事です。全国から一人でも多くの学会員の方々に参加していただき、学術・技術の研鑽を積むとともに、会員相互の交流・情報交換の場となることを期待しています。大会行事としましては、学術講演会、研究討論会、特別講演、全体討論会(パネルディスカション)のほか、パネル展示及び国際関連行事が開催されます。

今年度の大会テーマは、「土木はつなぐ、“地域”を、“生命(いのち)”を、そして“未来”へ」です。

一瞬で地域に大きな被害をもたらすゲリラ豪雨や竜巻の多発等、我が国の近年の自然災害は激甚化の一途をたどっています。ここ北海道においても、オホーツク沿岸の流氷が年々減少する等、自然の変化は生物や様々な産業に影響を与えています。

一方、世界に目を向けますと、ヒマラヤ地方における解けた氷河による湖の発生とその決壊による洪水、北極海をおおう海氷の急激な減少等、各地で地球温暖化を要因とする現象が多発しています。

急激な地球環境の変化の中で、地域社会や経済、そして生命の営みを維持していくためには、広範な地域を見据えた議論が必要となってきています。

土木は古来から人類の発展を支えてきました。しかし、時に知らぬ間に自然にダメージを与え、自然破壊の象徴としてとらえられてしまいました。

本大会のテーマには「地球温暖化等環境変化への対応と人類社会の持続可能な発展を同時に考える今、環境と土木は対立軸にあってはならない。人類も自然も同じ生命(いのち)である。豊かな生命をはぐくむ環境を持続させる土木、そしてこの地球を未来へとつなぐ土木でありたい。」との思いが込められています。

この「サスティナブルな社会づくり」を推進するためには、前例にとらわれない先導的な技術、研究開発が必要となります。このことからパネルディスカションでは、地球環境、気象、地域振興など様々な分野でご活躍の方々にご参加いただき、今までになかった切り口で新たな土木についての議論を深めます。

また、パネル展示は大会に参加される研究者・技術者だけでなく、市民の方々にも興味を持っていただけるよう、わかりやすい身近な内容を企画しております。

今年は北海道にとって、第1期拓殖計画から100年、石狩川治水100年に当たります。実面積で約74万4千ヘクタール(昭和26年以降実績、東京ドーム約16万個分)に及ぶ農地の造成や道路、治水を始めとする社会資本整備を進め、土木は北海道の生産性向上に大きく貢献しました。この結果、たとえば、北海道の食料自給率は全国の約5倍の約200%に達し、多くの農産物が国内外に出荷されるなど食料基地北海道の実現を通じて食料の安定供給に大きく貢献し続けています。

フロンティア精神が培った北の大地において、参加者全員が人類の未来と環境を見据えた土木の役割とは何かを考え、土木が担う新たな使命を認識する実り多い大会になることを祈念し、挨拶といたします。