3.4 福岡県太宰府市三条

(1) 被害概要
 災害の種類:斜面崩壊・土石流
 発生時刻:平成15年7月19日(土)05時43分ごろ
 被害状況:死亡者1名
(国際航業(株)提供)

(2) 災害発生状況と地形・地質(写真-3.4.1)
 土石流災害発生地点は,太宰府天満宮から北西へ約500mの地点で県民の森がある四王寺山の南東側斜面である。今回の豪雨で再び氾濫した御笠川上流の右岸側にあたる。四王寺山の南東側では標高100m〜150m付近より下方に傾斜が緩く扇状地的な地形が拡がり,上方は標高350m程度の尾根までの斜面となっている。この地形的特徴より,基本的にこの緩斜面が斜面崩壊ないしは土石流で形成されていることがうかがえる。
 四王寺山全体が,白亜紀の花崗岩体で構成されている。早良花崗岩と呼ばれ宝満山も同じ地質である。花崗岩は一般に深層風化が特徴的であり,マサと呼ばれる風化土になる。今回の土石流発生箇所の源頭部では,比較的締まった鬼マサと呼ばれるザラザラの粗砂状に風化した状況が確認された。
写真-3.4.1 土石流災害の状況
源頭部の崩壊
崩壊部は比較的浅く表層崩壊である
源頭部崩壊の下流
花崗岩が露頭
下流砂防ダムの堆砂状況
満砂状態で流木がある
崩壊地の下方状況
杉・檜の植林地を削剥しながら土砂は流下
中流の状況
渓床には花崗岩類が露頭
残土は少ない
ダムの堆砂状況
礫が少なく砂質土が主体
(3) 土石流(写真-3.4.2〜3.4.4)
 九州自然歩道のある標高340mの尾根部南東斜面で発生した表層崩壊土砂が沢を一気に流下し,標高70m付近の住宅地まで達している。流下後の沢には花崗岩の岩盤が露出する部分が多く,削剥の状況から風化部や崖錐堆積物等の土砂部は薄かったものと推定される。標高170m付近に砂防ダムが設置されていたが,土石流はこれを越えて流下している。崩壊箇所に隣接する幾つかの源頭部でも崩壊が発生しており,砂防ダムにはこれらが合流したものが流下している。砂防ダムは,今回流出した土砂や流木で満砂状態であるが,ダム自体は越流部が少し損傷しているだけである。砂防ダム下流付近より傾斜が緩くなり堆積が始まっているが,全体に堆積物は薄い。砂防ダム下流には流路工が整備され両側は水田となっているが,この流路工はほとんど無傷で水田の形状もほとんど残っており,土石流によって削剥された箇所は少ない。流路が方向を変える箇所で土石流が直進し越流しているが,水田の上に土砂が薄く堆積している状況で元の地形は残っている。土石流の先端部に径1m程度の花崗岩礫や流木が多い。堆積物全体として,流木の割合が多く,礫が少ない印象を受けた。土石流は,末端部で障害物や流路により枝分かれし,一部は道路に沿って流下している。
 今回の土石流発生地点では,30年ほど前にも土石流が発生し数人の方が亡くなられている。災害箇所の西側に四王寺山県民の森に至る道路があるが,至る所で切土や盛土が崩壊し,かつ道路を土石が流下した痕跡が残っている。集中豪雨により短時間にすさまじい流量が生じたことが伺われる。設計流量より多い土石流が今回流下したために流路工を越流したものであるが,過去の教訓が十分に活かせなかったのは残念である。花崗岩地帯においては,今回と類似した土砂災害が繰り返し発生しており,花崗岩の風化の進行を定量的に把握し崩壊箇所を予測する必要がある。
写真-3.4.2 崩壊前
平成12年5月撮影
(福岡県土木部提供)
写真-3.4.3 崩壊後
平成15年7月19日撮影
(国際航業(株)提供)
写真-3.4.4 崩壊分布図
空中写真判読による

 豪雨災害速報のトップページへ