調査報告 第四報

那珂川水系水害調査報告

1.余笹川沼野井地先

 8月27日、国道294号線の余笹橋付近では右岸の家屋と水田が流失した。左岸にも流 れは乗り上げて家屋に被害を与えた。
今回の出水では、かなり大きな流量のために、普段の流路とは異なるルートを水が流 れたようである。上流では、蛇行わん曲部をショートカットするように、新しい流路 が形成されていた(写真1−1)。この新しい流れがちょうどあたるところの護岸( 法面擁壁というべきか)では、下方を洗掘されたためなのか、擁壁全体が崩落してい た(写真1−2)。流れはこの後、普段の流路に沿って曲がりきれずに、右岸側に乗 り上げて家屋と水田を根こそぎ奪い去ったものと思われる(写真1−3)。この右岸 側には大量の砂礫が見られる(写真1−4)。ただし、これが今回の出水で堆積した ものなのか、それとも地表面が流出したために、もともと深いところにあったものが 見えるようになったのかは、一見しただけでは判断できなかった。

写真1−1写真1−2

写真1−3写真1−4

左岸側の被害は橋の周辺に集中していた。上流側の家屋には、細かな土砂が堆積して いた(写真1−5)。およそ40cmほどである。下流側の家屋は全体的に川側に崩れて いるものがあり、基礎部分の土が流出していた(写真1−6)。左岸の護岸そのもの には被害はなかったようである。左岸側の被害が橋周辺に限られたことについては、 橋脚に流木がかかって流れを阻害したために、流れが橋の両側に乗り上げたためとい う話がされている。確かに流木は目立っていたが、それが主要因であるか即断はでき なかった。橋周辺の地形や、当時の主流部分が本来の流路でなく右岸の水田部分を流 れたであろうことなども考慮すべきである。
(98.9.4. 文章と写真:池田)

写真1−5写真1−6

2.余笹川漆塚地先

 8月27日、余笹川にかかる国道4号線の余笹橋の左岸側が崩落した。調査当日にはす でにトラス状の仮設橋がかけられており、通行止めは解除されていた(写真2−1) 。橋の右岸上流側もかなり浸食され、家屋や道路の一部が流失した(写真2−2)。
(98.9.4. 文章と写真:池田)

写真2−1写真2−1

3.余笹川北沢地区

 8月27日の出水で、大谷開拓橋の右岸下流側の護岸が崩れた。それに伴う浸食で川沿 いの道路も一部が流失した(写真3−1、調査時にはすでに橋の取付部に応急処置が 施されていた)。この道路は橋から下り坂になっており、道路沿いに一軒ある家屋は 、床上7cmほどの浸水にみまわれていた。ここからしばらくの間は、右岸の浸食が激 しかった(写真3−2)。左岸には小規模な崩落部分がいくつか見られた。 この橋の500m上流では、ところどころ中規模の斜面崩壊が見られた。道路のガード レールをなぎ倒すほどのものもあった(写真3−3)。崩れた斜面を見ると、ローム 層の中に大きな礫が混ざっており、この地域が土石流堆であることがうかがわれた。
(98.9.10. 文章と写真:池田)

写真3−1写真3−2写真3−3

4.多羅沢川大島地区

 余笹川支流の多羅沢川沿い大島地区でも家屋が流されるなどの被害が見られた。写 真4−1において、もともと沢の流れは黄色のテントの向こう側を流れていたが、出 水時にいきなりこちら側に強い流れが押し寄せ、そこにあった家屋を押し流した。写 真4−2は流されずにすんだ家屋であるが、それでも家1つ分くらいは位置がずれた という。流木も目立っていた。
(98.9.4. 文章と写真:池田)

写真4−1写真4−2

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