■ 就任ご挨拶

2015年6月12日

学会活動を通じた次代を担う土木技術者の育成

第103代会長 廣瀬 典昭

第103代会長 廣瀬 典昭

この度、土木学会第103代会長にご推挙いただきました廣瀬でございます。

昨年、土木学会は創立100周年を迎えました。各種の記念行事も磯部前会長の指揮のもと、滞りなく行うことができました。これも数年前から準備を進めてこられた関係各位の御尽力の賜物と心から感謝申し上げます。

土木学会創立100周年では、長期的目標として「あらゆる境界をひらき、持続可能な社会の礎を築く」が宣言され、同時に策定したJSCE2015では4項目の中期重点目標と、当面の5年間で取り組むべき10項目の重点課題を設定いたしました。これらの課題の設定の背景には、我々を取り巻く社会・自然環境が、現在急速に変化しているという認識があります。例えば、人口減少と急激な少子・高齢化社会の到来、エネルギー供給のベストミックスと地球環境への対応、防災対策やインフラの延命化も急がれています。これらの多くは、早晩、先進国や中進国が直面する課題であり、持続的社会の実現のためには、世界に先駆け我が国が解決策を編み出し実践することが望まれています。同時に、蓄積した土木技術を駆使し、開発途上国や新興国のインフラ整備を通じて国際貢献することも、グローバル時代における我々の責務と言えます。

創立101年目の今年は、JSCE2015で掲げた10項目の重点課題の具体的取り組みをスタートさせる年です。一部は既に実行に移されているものもありますが、それらを含め、これらの課題のアクションプランを各委員会において検討していただき、それを着実に効率的に実施していきたいと思います。

JSCE2015の推進にあたっては、これまでの経験や最新技術の活用はもちろんですが、これからの土木工学には、それぞれの地域の市民とともに、地域経営や国土のあり方について考えることが、今まで以上に重要となります。そして、その担い手、すなわち、土木技術をもって社会に貢献しようとする「志」と「熱意」をもった人材の確保と育成が土木学会に強く求められています。人を育てるということでは、優れた土木事業を残してきた先達の事績から学ぶことも大事です。社会のニーズや事業の進め方が変わることがあっても、土木技術を持って地域の人びとのために貢献しようとする土木技術者の基本姿勢は決して変わりません。先人たちの生き方に、その手本を見出し、その技術への探求心や、事業遂行への「志」と「熱意」を学び、継承し、実践していくことは土木技術者として非常に大切なことと思います。

また、土木事業は一個人の力で成し遂げられるものではなく、多くの関係者の智恵と協働を必要とします。土木学会は、年代、職域、性別の異なる多くの方々からなる集合体であり、学会活動の場は、そこに参画する若者にとって、様々なバックグラウンドを有する人々を理解する絶好の機会とも成り得ます。会員が一丸となって、次代を担う若い土木技術者の育成に取り組むことを第一目標とし、学会活動の活発化を図ってまいります。

最後に、国際交流について申し上げますと、アジア土木技術国際会議は3年に一度開かれますが、2016年にはハワイで、そして2019年には日本で開かれることとなりました。アジア地域の各国の学会との交流の場ですので、国際的な活動の一環として、有効に活用していきたいと考えています。

この準備を含めて、会員の皆様方のより一層のご協力とご支援を賜りますようお願い申し上げます。


Last Updated:2015/06/12