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JSCE Magazine,“Civil Engineering”

土木学会誌

■土木学会誌2012年5月号モニター回答


■ 15回 土井 功 さん 仏法僧の道 森田 博之

本記事を読んで、市場原理主義である現代社会の歪み、限界について考えさせられた。資本主義として効率化を重視した結果、人口が集中し都市が膨張した。そして都市と地方の格差が生まれた。都市には仕事があふれ、地方には、高齢者が残された。東日本大震災において復興中は、確かに地方経済は豊かになるであろう。しかし、また復興が終われば元の閑散としたまちに戻るであろう。人を守るために防潮堤を建設したのはいいが、そこに守るべき人は住んでいるのであろうか?我々の「豊かさ」とはなんなのか、物があふれた、お金による豊かさをこれからも求めていくのであろうか?我々土木技術者は、社会資本ストックを整備する担い手としてインフラを整備すれば豊かな社会を築けることができると信じていた。しかし、我々は、後世に負債を残しながら利益だけを享受している。高度成長期に造った土木構造物はまもなく多額な費用を要する補修が待っている。いまこそ、西欧思想からなる資本主義の呪縛を離れ、東洋精神から利他主義を基本とする社会となることを祈ります。
(所属:阪神道路株式会社 氏名:山田清敬)

■ 記事2 レジリエンスの視点での社会資本整備 中塚 隆雄

世界都市災害リスク指数なる図を恥ずかしながら初めて見た。東京、横浜の指数は突出して高く、大阪なども相当高い。しかもこの指数が企業の事業継続性に直結するリスクとして、経済価値を低下させる大きな要因となっているとのことである。世の中情報過多の時代ではあるが、このような情報はあまり世間に出てこないのではないか。日本の都市が世界と比べて、どのくらい自然災害のリスクが高いのかを国民に周知した上で、その後にレジリエンスの視点での社会資本整備の重要性を示すことが大事であると感じた。
(所属:高山運輸建設 氏名:高澤 謙二)

本記事を読み、レジリエンスの視点に則った社会インフラの整備が、新成長戦略に沿った内容であるということに得心いたしました。同時に、多数のダムや発電所を有する弊社においても、この考え方は非常に 重要であると感じ、身が引き締まる思いがしました。本記事で重要なことは、レジリエンスの視点を都合よく取り入れるのではなく、それに「則る」ということであると私は解釈しました。突発的な自然災害による被災時にできる限り「想定外」という言葉を使わない為にも、会社が成長していく為にも、レジリエンスの視点に「則る」ことを念頭に置いて私自身、技術を磨き、業務に励んでいきたいと思いました。
(所属:電源開発(株) 氏名:小林憂三)

■ ─豊田市低炭素社会システム実証プロジェクトの取組み─ 西 和也

東日本大震災以降、発電所に関するニュースが毎日のように報道されており、「節電」、「省エネ」という言葉を今まで以上に目にする機会が多くなりましたが、現代は電気を使わずに生活することはもはや不可能な時代になってしまったと思います。これから生活していく上で重要となってくるのは、創エネや蓄エネ、エネルギーの地産地消だと再認識しました。ただ、記事にもありましたように、コストの問題があると思いますので、それを解決するためには行政と事業者の連携が重要だと改めて思いました。その問題が少しでも早く解決することに期待したいと思いました。
(所属:東洋建設株式会社 氏名:山野)

■ 記事4 羽田空港D滑走路整備がもたらしたものは何か?
─設計・施工一括発注方式による土木技術の進化の可能性─ 宮田 正史、宮本 久士

設計・施工一括発注方式を採用された事例として発注者側・請負者側の各々の利点・リスク等が記載されており、非常に参考となった。発注者側・請負者側それぞれに利点・リスクを伴っているからこそ、各々の技術力を切磋琢磨することができ、新技術の提案や、工期短縮等にもつなげることができたのだと思った。今回は大規模なプロジェクトであり、設計・施工一括発注方式をとることで、新技術等が多く提案されていたが、今後、設計・施工分割発注方式であっても、施工・維持管理まで考慮されたトータルとして最適な構造物を造るために、技術提案が多くなされるように請負者側の技術力向上を期待するとともに、請負者側からの提案に確実な回答・対応ができるよう発注者側の技術力向上が必要不可欠であると思った。
(所属:東京急行電鉄(株) 氏名:勇 龍一)

首都高速道路を大師JCTから川崎浮島JCTへ向かって走ると、突如として多摩川の河口付近に巨大な構造物があらわれ、一大プロジェクトのスケールの大きさを実感することができます。本稿では、その羽田空港D滑走路の設計・施工一括発注方式にまつわる、発注者側と受注者側のそれぞれの視点での意見が記載されています。記事の内容は新たな入札・契約方式における具体的事例を元にわかりやすく展開されているので、非常に興味深く読むことができました。新しい設計概念や新技術を導入し、それらを短い工期で竣工させるために、様々な苦労や工夫をされていることが良く分かりました。今後の東日本大震災に対する復興プロジェクトも、早期の竣工が望まれているものが数多くあります。我々土木技術者はこの様な大規模プロジェクトの良き事例を踏まえ、産学官の力を最大限に発揮できる発注方式を模索し、社会のニーズに応えていかなくてはならないと感じました。
(所属:開発設計コンサルタント 氏名:野嶋 潤一郎)

非常にインパクトのある発注方式であり、特に30年間の維持管理におけるリスク管理の考え方(例えば設計変更)について、発注者・受注者それぞれのお考えをもっと詳しく知りたいと感じました。今後の維持管理において、提案技術を評価することにより、貴重な知見が得られることと思います。また文中にもありましたが、このような設計施工一括発注方式において、発注者がどのように新技術を評価し責任を持つのか、枠組みが整備されていく必要があると思います。
(所属:阪神高速道路 氏名:佐藤彰紀)

本記事は非常に興味深く、文中に書かれていない背景をあれこれと想像しながら繰り返し拝読させていただきました。設計・施工・維持管理までをパッケージとし、さらに30年間に渡る維持管理を含めた一括発注方式には、前例が無いだけに様々な賛否両論や課題もあると思いますが、発注・受注側の共創と、土木技術の創出を刺激する活性剤となる可能性を感じました。今後、ぜひ建設的で前向きな評価と課題解決に向けた議論が展開されることを期待します。発注者視点では、既存のマニュアルや実績のある汎用化された技術をベースに検討ちがちになる、というウイークポイントをカバーする画期的な入札・契約方式だと思います。一方、技術提案を含めた設計を一括発注することは、「特定の新技術・新工法の採用」と「入札に対する公平性・透明性の確保」のバランスを図ることが重要なポイントになると思いますが、そこに注力された点などを他の機会にぜひ紹介いただけたらと思います。
(所属:東京急行電鉄 氏名:藤田 貴文)

■ 記事2 インタビュー 三陸鉄道の復旧、そして復興へ向けて
  [語り手]望月 正彦、[聞き手]坂井 康人、三室 碧人

三陸鉄道の社長による、巷では鉄道不要論もありますが地方で鉄道がなくなって元気になった町はひとつもありませんとの言葉があった。そう言われて見ればそのような気がする。今、全国の地方鉄道は観光客の囲い込みに不断の努力をされている。関西であれば嵯峨野鉄道や和歌山電鉄のように特色のある鉄道となって復活し、地域の活性化に役立って欲しいと思った。
(所属:高山運輸建設 氏名:高澤 謙二)

■ 森地 茂 政策研究大学院大学 特別教授

インタビューの通り、仕事を行う上で制度や法律、基準類を確認をする事はよくあり、それらをルールとして受け入れていることが多分にあります。高層ビルが1棟建つだけで風の強さが大きく変わり、標準的な設計手法では全く問題が無いが、局所的に見ると設計上の余裕が少なくなっている事がありました。置かれている状況の変化を敏感に感じ、リスク感度を高め、既存の基準等に捉われることなく柔軟な発想を持つことで、想定外という事は減っていくのではないかと思います。
(所属:東京急行電鉄株式会社 氏名:堀江 宏明)

先入観を一度捨てて、常に原点から発想する。現在の私よりも、大学を卒業し、社会人として歩みだす時期に強く抱いていた感覚であることを思い出しました。土木技術者は専門性を高めることも必要ですが、全体を俯瞰し、複眼的になることを忘れてはならないとあらためて思います。効率性一辺倒の時代ですが、批判的な目を持ちながら、それをどう変えていけばいいのか建設的に「答え」を出すことこそが、技術屋の中でも1番広いエリアを対象にしている土木技術者の使命なのだと思います。
(所属:東京急行電鉄 氏名:藤田 貴文)

■ 第7回 『黒部の太陽』伝道師編 大田 弘、相沢 圭俊、三室 碧人

一流の人間は、強い信念とともに確固たる哲学を持っている。このことが本記事を読んでまず最初に頭に浮かびました。小学校の時の感想文に書いた思いが、『男とは一度決めたら最後まで曲げちゃいかん!』という御祖父の教えに支えられ念願の会社に入社する。そして、今もなお土木一直線の人生を歩まれている。夢は諦めなければ必ず叶うという言葉、ちまたではよく聞くものの、この言葉をどれだけの人間が体現できているでしょうか。ある著名人の少年期の作文が昨今のテレビCMでも話題となっているが、「一流の人間」と呼ばれる人達は共通して一貫した強い気持ちとそれを支える哲学を持っているということを教えて頂きました。
(氏名:高橋直樹)

■ 企画趣旨 山浦 浩太

公共事業において最低限考慮されるべき基本的な基準は、全国一律で、時代とともに変化すべきものでよいと考えますが、その基準を踏まえた上で、各地域の特性、要求機能、経済効果を満たすように基準(ルール)を変えることも重要と思います。地域住民との協働によって計画されることが多くなっている“川づくり”等が近年盛んに行われている事例でも、地域住民の方々の想いを反映されやすくなっており、そこに地域の特性、機能を考えたルールを入れ込むこことができれば、住民の方の満足度もあがり、川への親しみと伴に、土木事業への理解も高まると思います。技術のローカルルールの展開は、今後の土木事業の方向性を示していると思います。
(所属:小柳建設 氏名:金原義夫)

■ Part1 事例:高知県 1.5車線的道路整備 [語り手]山地 勇輝氏

1.5車線道路や萬代橋のような技術のローカルルールの適用した土木構造物には,計画や設計に携わっている方の葛藤が見えるようで,土木の面白さを感じます。また,「特集 土木技術の新成長戦略」にある,インフラの社会的価値を高めることにつながるように思います。ローカルルールを適用するためには,新たな技術開発が必要となる場面もあり,土木技術の発展の可能性があるのかもしれません。震災関連の記事が多い中で,新鮮さを感じる特集でした。「ローカルルール」という訳ではないかもしれませんが,東京スカイツリーが,赤と白の2色でなかったことは,東京?日本?のシンボル,社会的価値をさらに高めているのではないかと思います。
(所属:東電設計 氏名:恒國光義)

地域住民の理解を前提とした道路整備は、これからの主流になるものと考えられる手法であると感じ、とても興味を持った。この整備手法が、道路構造令との整合も取れ、税金を効果的に使う形としてもアピール性が高く、もっと宣伝されて良い形式であると感じた。第二東名や外環等の高規格道路の整備に目が行ってしまうなかで、地域住民が使用する道路整備についても効率的な整備がされていることは、これからの少子高齢化による税収減が予想される環境の中における社会基盤整備を考えるにあたって大切な視点であろう。都区内の道路整備においても、都市計画決定したまま事業認可されていない道路が多くあり、木造住宅密集地域も残されている等、社会基盤の整備はまだまだ大切な分野であることから、このような柔軟な整備手法を編み出せるよう研鑽していきたいと感じた。
(所属:中野区役所 氏名:諸井 敬嘉)

高知県の1・5車線整備実施に至るプロセスについていろいろと考えさせられた。土木技術者として本質は、単に技術基準通りのことを遂行していくことではない。整備されるインフラ利用者の本当の声に耳を傾け、整備により解消すべき最低限のことを洗い出した上で、与えられた条件のもと、投資の優先付けを行うことである。それを実現する為には、高知県の事例のように基準の弾力的運用も必要となるケースが出てくるが、これも基準や法令を理解していないと簡単にできることではない。本記事を気づきとして、土木技術者としての本質を考えなおすとともに、基準や法令の習熟を図るべく研鑽に努めたい。
(所属:東京急行電鉄 氏名:鶴長 輝久)

■ Part2 事例:滋賀県 滋賀県独自の水害リスク評価指標「地先の安全度」[語り手]瀧 健太郎氏

住民目線に立ったリスク情報の見える化が求められる中、場所ごとの地先安全度マップとリスクマトリクス図は、効果的である情報だと分かった。また、独自の水害リスク評価指標が地域の防災、減災のため、土木・建築構造物を造る上でうまく反映、活用する事例も記されていた。このようなことを長期に渡り継続的に行えば、各々の地域に応じた、自然災害リスクの低減されたまちづくりができるのではないかと感じた。
(所属:高山運輸建設 氏名:高澤 謙二)

■ Part3 事例:群馬県 住民主体の土砂災害時自主避難ルール策定支援業務 [語り手]近藤 克一氏

今後、日本中で取組まれるべき活動だと思いました。東日本大震災後、災害から身を守るためのハード対策には限界があり、ソフト対策が重要であることが。ソフト対策は、やはり避難当事者である住民の意識、取り組みが重要であると思います。その手助けをするのが行政であり、土木分野の技術者ではないでしょうか。私の実家は山奥にあります。土砂災害の危険性を昔から感じているので、いつか実家に帰ったときには、そういった活動の手助けができればと思いました。
(所属:日特建設 氏名:田中 尚)

■ Part 4 技術にも自治がある─「ローカルルール」はあり得るか?─大熊 孝

ローカルルールというサブタイトルに記載されている言葉を目にしたとき、様々な基準や省令等をもとに自治体等が定める条例のようなものだと思った。しかし、記事の中では、通達により決められている数値があるにも係わらず、住民要望によって通達により決められている数値以下で構造物を造ったことにより、住民に愛される構造物となっているものが紹介されていた。私の業務(鉄道駅改良工事の設計・施工管理)では、安全の確保を大前提とした上で構造物をつくっている。安全の確保を大前提とした上で、実際にご利用されているユーザーに居心地良く、安心して利用していただける構造物をつくることができれば、更なる沿線価値の向上につながると思う。地元の自治体や、沿線にお住まいの方々の声に耳を傾け、「他の場所でもやっているから、ここも同じような構造物」ではなく、「この場所だからこそ、この構造物」と言われるような構造物をつくることができるよう「技術の自治」に関する心構えを、今後の参考とさせていただきたいと思いました。
(所属:東京急行電鉄(株) 氏名:勇 龍一)

画一的な技術基準は目安であり、地域の自然的・社会的条件に対応した独自の技術展開が望まれると述べられています。換言すれば、技術の適用に際しては、「何が出来るか」ではなく、「何が適するか」で判断すべきで、判断条件として地域の歴史や自然特性に対する住民の“思い”や“愛着心”などがあるということだと思います。コストパフォーマンスは、重要な評価要素ではありますが、技術は何よりもローカルの環境や文化と調和すべきものであると改めて感じました。
(所属:メタウォーター(株) 氏名:楠本光秀)

長期間に渡って我々の生活や経済を支え続け、今でも現役である河川構造物などの公共施設は数多く存在している。先代の技術者が整備してきたこうした社会資本は、必ずしも現代の技術基準を満たしているものではない。しかしながら、なぜこれらの施設が今でも現役でいられるのか、技術の自治という視点からその理由を解説したこの記事は、地方自治体で社会資本整備に携わる身として興味を惹かれる内容でした。
(所属:福島県 氏名:小林元彦)

■ Facebookに市民として参加しよう -今すぐ「土木学会Facebook」で検索を- 社会コミュニケーション委員会

土木学会Facebookについては,今回の記事を読むまでは知りませんでしたが,「市民工学への原点回帰」のための有効な方法の一つだと思いました。学会誌だけでなく,例えば土木の日には,地下鉄の駅や高速道路のサービスエリアなど,インフラのユーザである市民が多く使う施設にチラシや学会誌の別冊などの広告を置くと,もっと広く認識されるのではないかと都合のよいことを理想しました。
(所属:東電設計 氏名:恒國光義)

時代のながれをとらえた、よい試みだと思う。記事にもあるとおりFacebookは、その参加人口が多く、私のまわりでは、どこかで出会った人とは名刺交換するのみでなく相手の方がFacebookに居るかどうかを確認しオンラインでも繋がようとするケースが、極めて多くなったものである。記事にあるような使い方を想定する場合、多様なつながりを楽しめるのみならず、リアルタイム(スピーディ)で、かつ(原則実名なので)荒らされる等のトラブルの可能性も低く信頼性ある情報交換、意見交換が行えるところに、大きな意味があると思う。土木学会誌のような「紙ベースでの」発信や(本モニター欄のような)議論はそれはそれで大きな価値をもつが、Facebook等SNSを活用した交流機会を活かすとともに積極的に盛り上げていければ、これまでなかったような愉快なことも色々起きるのでないか。またFacebookページの活用のみならず、必要に応じてグループページ等も適宜利用することで、さらなる議論の活発化が実現すると考えられる。
(所属:国交省 氏名:鈴木 高)

記事を読んで、早速Facebook上で土木学会を検索してみた。「いいね」ボタンをクリックすると、自分のトップ画面に友人の近況情報に混じって見慣れない土木学会の更新情報が反映されるようになった。この行為がいわゆる「参加」ということになると思うが、この「参加」以降、自分の中でのFacebookの使い方が若干変わってきたように思う。これまでの友人の近況を知るまたは自分の近況を発信することとしての位置付けだったものに、土木部門の情報を容易に収集できるものということが加わったからだ。毎日使用するツールから土木関連のイベント情報が自然と目に入ってくることは、自分自身が改めて土木に携わるものであることを自覚させられる。本記事には一般市民が気軽に土木に触れられるという目的が記載されているが、私のような若輩者の土木技術者にとっても非常にありがたい内容である。充実した更新情報に感謝するとともに記事内容に「いいね!」を登録することで、一般市民へのファン層拡大の目標に貢献していきたい。
(所属:東京急行電鉄 氏名:鶴長 輝久)


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