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JSCE Magazine,“Civil Engineering”

土木学会誌

■土木学会誌2011年7月号モニター回答


■ 記事1 東日本大震災における津波と港湾施設等の被害 高橋 重雄、根木 貴史、富田 孝史、河合 弘泰

地震直後に津波からの被害を極力少なくするために、最大級の津波を考慮した性能設計の考えを紹介していた。災害を受ける地区がどのような地形になっているかによっても想定される被害状況が大きく変わってくるため、性能方針である震災レベルをどのように設定するかは難しいが、詳細に設定することによるアウトプットの安心感は大きいと思った。最低限どこまで逃げればよいかの目安、津波が来るまでの時間的な余裕等の早期情報提供をいかに行い、得られた情報を被災者がどう判断して避難するかが、被害を最小限に食い止められる重要なポイントだと思う。
(所属:東京急行電鉄 氏名:鶴池 康介)

■ 2-1 道路、河川、港湾施設における被害と復旧状況 国交省 東北地方整備局

関係者の東日本震災の初動から応急復旧に向けた対応には、すばらしいものがあると感じています。しかしながら、現在は本復旧の対応を検討していると思いますが、その対応は、いいとは思っていません。何か目標が応急復旧で終わってしまって、次の方針が示されるのが、非常に遅いように感じています。全体に段々と、お役所仕事になっていませんか。どれが重要で、どういう方針の下で、何処からやっていくかを明確に示さないとやるべき仕事は消化されません。すべて同じ線引きで動かさないと、進んでいかないのはどうしてでしょうか。地域性と重要性で選別して対応を考えるべきです。
(氏名:金原義夫)

今回の大災害初期の調査や応急復旧活動は大変だったろうと思います。特に広域にわたる道路の復旧は瓦礫を排除しながらの作業で困難を極めたことと想像いたします。東北地方整備局に対策本部を設置し、組織的に活動した成果と思われますが、破壊された橋梁の横に仮設道路を建設し、湛水した空港を1か月余りで復旧したのは土木技術者として誇りに思って良いと考えます。小生も5月中旬に気仙沼や女川を視察しましたが道路が普及され、整備されているのには驚きました。同時に瓦礫が至る所に山積にされており、今後どのように処理されるのか、非常に気になっておりました。地域の社会資本整備を担当する整備局がどのような計画で処理して行くのかについても記述してほしかった。
(所属:NPO法人シビルまちづくりステーション 氏名:比奈地 信雄)

■ 2-2 JR東日本の鉄道施設における地震被害と復旧状況 水野 光靖、野澤 伸一郎

地震の事前検知により、大きな揺れを受ける前の「数秒」という時間の中で、いかに列車停止に近づけられるかが被害を最小限に抑える大事なポイントであり、今回のように脱線等による人的被害がまったく生じなかったのは大きな成果だと思った。 構造物の面では、耐震補強に効果があったが、宮城県沖地震を契機に高架橋や橋梁上の電化柱の基礎構造を変えていたことを初めて知った。構造物を頑丈に設計し守っていく考えもあるが、震災を受けた後の復旧を早められるような構造物別の性能設計の考えも、早期復旧をしていく上で重要であると感じた。
(所属:東京急行電鉄 氏名:鶴池 康介)

■ 2-4 高速道路の被害と復旧状況 矢崎 敏之、高野 正克

まず、今回の震災で犠牲になられた方々のご冥福をお祈りするとともに、被災された皆様に心よりお見舞い申し上げます。今回の震災後の高速道路の早期復旧については海外メディアから注目され、日本の技術力が高く評価されました。この背景には、日本の技術者の日頃の研鑽に加え、過去の教訓を踏まえて耐震補強等の対策を講じたり、自らの技術として蓄えてきたからだと思います。大きく辛い犠牲の上であり大変残念ではありますが、今回得た知見や技術についても着実に蓄え、今後に生かしていく必要があると考えると同時に、私自身、日頃の研鑽の重要性を感じました。
(所属:JR東日本 氏名:山田 拓也)

■ 4-1 建設会社における技術的支援とその役割について 遠藤 哲朗

こういった活動の末に現在の復旧状態があると思うと、復旧支援をして頂いた建設会社の皆様に対し感謝の気持ちでいっぱいです。もちろん、いち早くの復旧を目指して総指揮をされた管理者の方々や現場へ資機材を提供していただいたメーカーの方々にも、同様に感謝の気持ちでいっぱいです。今回のような緊急時の、それも広域で発生した災害の復旧支援のノウハウを、ぜひ全国展開して頂き、発生が指摘されている東海・ 東南海・南海地震時に備えていければと思います。今回の震災では、阪神淡路大震災や中越地震における災害復旧の経験が活かされたということですが、被災エリアの大きさからくる、今回特有の新しい難しさがきっとあったと思います。東海・東南海・南海地震では、今回の震災と同様、広域災害となることが予想されることから、そのような被災エリアの規模に応じたノウハウを、ぜひ強調して展開して頂ければと思いました。
(所属:日特建設(株) 氏名:田中 尚)

■ 大阪駅ステーションシティ 5 月4 日グランドオープン 下野 一行

通常建築という立場で取り上げられることが多いが、土木の立場で取り上げられていたのが新鮮であった。 フォトレポートという限られた紙面の中で、鉄道駅という特殊な場所での施工の苦労が窺い知れた。 大判の写真が取り上げられているが、その解像度がやや粗いのが少し残念だ。
(氏名:坂上聡史)

■ 切土法面を生物多様性の豊かな森として再生を図る取組み 関 文夫

法面保護とそれに伴う植栽という分野は、大変重要かつ身近な工種でありながら、比較的土木工事の中では目立たないような感がある。しかしこの記事では、短いながらも森を再生することの難しさを効率よく伝えてくれた。もっと数多くの事例を含め、先を読んでみたい記事であった。
(所属:アクセンチュア 氏名:宅間 朗)

■ 第84 回 角島灯台および関連施設群 樋口 輝久

灯台の存在しない夜の海。想像しただけで恐ろしくなる。ましては、そこを船で通過することはとても難しいことなのだと思う。日本海側で最初の灯台として建設が決定したのが明治6年2月のことで,山口県下関市の角島灯台であったという。角島灯台の建設経緯や建設に関わった人々について分かりやすくまとめて下さっており、また、そこを訪れたくなる素敵な写真を盛り込んでいただいておりとても楽しく読むことができた。まっ暗な海を照らす灯台の光。それがどれだけの安全を守ったのかを考えると、この美しい外観を持つ灯台がひどく頼もしく見えてた.
(所属:首都高速道路(株) 氏名:飯島 雄一)

学生の頃,コバルトブルーの海とその海に架かる角島大橋を見るためによくドライブに出かけたことを思い出しました。つまり,角島に行く目的は海と橋であり,角島灯台がこんなにも歴史のある建築物だったとは全く知りませんでした。目に見える美しさだけではなく,歴史にまで踏み込んだ見方が大事だと痛感させられます。今後,角島に行く機会があれば,是非とも灯台まで足を運んで,景色の美しさとともに,歴史の奥深さを感じたいと思いました。
(所属:新日本製鐵 氏名:久積和正)

■ 記事1 世界の水問題および上下水道インフラ分野事業の現状と課題について 吉村 和就

日本の技術者は、世界に通用する技術を有しており、非常に勤勉で真面目であると思う。それは非常に重要なことであるが、海外で戦うためには、もっとプレゼンテーション能力を伸ばし、自分の業界以外にも視野を広げ、意識を高く保つことが重要であることを記事より学んだ。海外における仕事は、国内における仕事とは全く異なり、困難なことも多いということは感覚的、多くの人の話しからわかる。しかし、だからこそ、やりがいがある。日本の技術者の技術力を最大限に活かしながら海外で活躍するためには、何が必要であるかを考えながら今後の業務と向き合っていこうと思う。
(所属:日本水工設計(株) 氏名:森脇 隆一)

今後、日本が国際展開していくにあたり、スエズやベオリアと競争することになるのだろうが、バックグラウンドで国内の上下水道事業での経験が言われる。日本は国内企業に国際展開を言うだけでなく、国内市場の開放も併せて行うべきではないか。大手商社が外国の水事業会社を買収し、上下水道事業に乗り出したとのことであるが、民間企業のこのような動きは本来国内で歓迎したいものであり、実体験を通じた経験を積んでこそ海外で戦えるのではないか。また、日本国内に外資が参入し、競争が始まれば、ユーザー(国民)にもメリットがあるのではないか。どんなに技術力が立派でもいきなり海外の強豪とやりあうのは無理であり、早く追いつくためには多面的な取組みが必要であろう。追いつけ追い越せは日本の得意とするところでもある。
(所属:国土交通省 氏名:佃 誠太郎)

■ COLUMN 中東シリアの下水道事情 清水 浩二

「この国で『良い天気』とは雨のことだ。」途上国が水不足に悩まされていることは頭の中で理解していても,実際に文字として視覚的に捉えると,何とも言えない悲壮感,焦燥感が伝わってくるように思える。日本の国力低下が叫ばれているここ数年であるが,このシリアのように,日本に対して厚い信頼を寄せてくれている諸国もまだまだいることを肝に銘じ,期待を裏切らないように精進しなければならないと改めて感じた次第である。
(所属:京都大学 氏名:高井敦史)

■ 企画趣旨 加藤 宏司

毎年大阪で開催されている「建設技術展」におけるひとつのイベントであるが、私自身も3年前に参加した。当時は会社からの初参加ということで、要領もよくわからぬまま手探りの状態で、当日と同じ材料を調達、橋を設計、試作そして本番に臨んだ。このとき最も重要視したのが「載荷試験で壊れぬこと=恥をかかないこと」であったため、少し頑丈な構造物となってしまい、採点基準のうちの「経済性」について劣る結果となったため上位入賞はかなわなかったが、個人的には十分楽しめた。このイベントではこの他にも採点基準があり、単なる模型作りではなく、たとえば所定時間内に完成させることが必要となる工程管理等、様々な管理技術も必要となる。特に若手技術者にはぜひとも参加をおすすめしたい。
(所属:(財)阪神高速道路管理技術センター 氏名:志村 敦)

■ PART1 建設技術展 橋梁模型製作コンテスト M田 信彦

橋梁模型を作ると言うのは、それだけでもワクワクするが、それに加えて共通した材料で如何に精度と強度が整った橋梁模型を作ることが出来るか。私も学生時代に簡単な構造で学科内で行ったことがあるが、作成過程は非常に苦労し、成績も芳しくなかった。今にして思えば、構造を理解し、作るおもしろさを両方経験出来る貴重な機会であったといえる。解析プログラム等で簡単に効率的な構造を出すことが出来る世の中であるが、このような実体験を出来る場を一般の方々にも体験してもらいたいと感じた。
(所属:中野区役所 氏名:諸井 敬嘉)

■ PART2 神戸市 橋梁模型コンテスト 加藤 宏司

評価方法などが明確に示されており、初めて読んでもわかりやすかった。折角学生班があるので、時間の関係などでやや困難かもしれないが、この種の企画に学生班でグループを組んで参加してみるのも面白いと思った。
(氏名:坂上聡史)

■ 群馬県の工業高等学校によるまちづくりに関する取組み 西尾 敏和

非常によい取組みと思います。この出前授業を企画し、実施するのに、いろいろなご苦労があったと思いますが、それ以上に多大なる成果を生徒ならびに講師の先生方も得たように思います。お互いを理解してこそ、多くの知見が得られると思います。土木事業も住民とのコミュニケーション不足から多くの問題点が出ているように思います。大それた住民説明会よりも、ちょっとした出前授業(勉強会)を頻繁に開いたほうが、地域連携事業はスムーズに進むように感じます。まだまだ“お上の仕事には口を出すな。”というスタンスや、“ただ、開催するだけ”という一方的な伝達のみの集まりが多いように感じています。出前授業を大いに進め、出前授業から学んだ知見を、参加した多くの人が、将来に生かして欲しいと思います。
(氏名:金原義夫)

工業高校での自治体等の出前授業を活用した街づくりに関する事例について、大変刺激になりました。今回の事例は、地域の将来を担う若者たちに、官学の地域連携で社会基盤整備についての理解を深めるための講義が行われたものですが、民間企業等においても、現場で多くの知識や経験を積んだ人材はたくさんいますので、活用していただきたいと思いました。より多くの人たちに、地域社会へ関心と興味をもっていただくために、このような機会が多く与えられるよう、教育現場でも柔軟に取り入れていただきたいと思いました。
(所属:(株)建設技術研究所 氏名:上原 励)

出前授業の活用による地域と連携したまちづくりの取組みが紹介され、将来の地域社会の発展にとって非常によい取組みであると感じました。教科書だけでの授業は受身になりがちで、問題の本質が見えないままになる傾向があるかと思われます。行政で働く方からの生の声をもとに、学生が自分達の暮らすまちの課題を認識し、生徒自身でその打開策を考えることで、まちづくりに対して興味と関心をもつことが出来るかと思います。そしてグループディスカッションから様々な意見を聞くことで視野を広め、またその生徒の議論を聞く行政の方も、何かの気づきを得られるのではないかと思われます。今後このような場を広げることで、将来のより良いまちづくりの方向性が見出せるのではと考えます。
(所属:東京急行電鉄(株) 氏名:杉山 圭大)

インフラの維持管理や環境保全の促進など,今後も土木の担う役割は大きいが,一方で土木離れが起きているのも現実である。そのような点でも,まだまだ人生の選択肢が無限にある高校生を対象に出前授業を行い,興味・関心を持ってもらうことは,将来的な技術者育成にも繋がり非常に有意である。今後は工業高校だけではなく,普通科など幅広く展開していってもらいたいと思う。また,この授業を通しての高校生からのアンケート結果なども公表していただければ,さらに有益ではないかと思う。
(所属:京都大学 氏名:高井敦史)

■ 第56回 三陸海岸大津波 [評者]神田 学

全体として「理系的」なトーンの土木学会誌において、いつも良いアクセントとなっているこの「私の本棚」のコーナーであるが、今回は特にタイムリーな話題で良い本を紹介してくれたと思う。書評も大変興味をかきたてる内容だったこともあり、文庫本なので是非手にとって読んでみようと気にさせてくれた。
(所属:アクセンチュア 氏名:宅間 朗)

今回の東日本大震災で発生した津波をTV映像で見たが、今までに見たことのない映像に強く衝撃を受けた。 その後のニュースや新聞では「想定外であった」という言葉を鵜呑みにしていたが、過去にも同程度の規模の津波が起きていたという事実が記されているということから、なぜ今回のような被害が出てしまったのか 知る為にも有効なのではないかと思い、非常に興味が持てた。また、文中には、「津波後の住居が一旦は高所に移っていたが、記憶の劣化とともに海辺に逆戻りした。」という記述があったが、人々から災害が忘れ去られていくということが改めて分かり、今回の災害に対しても同様の文書を残し後世に伝えていくことが非常に重要だと感じた。
(所属:首都高速道路 氏名:浅野 靖)

© Japan Society of Civil Engineers 土木学会誌編集委員会