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JSCE Magazine,“Civil Engineering”

土木学会誌

■土木学会誌2010年6月号モニター回答


■  次世代型ダメージフリー橋梁耐震実験 中山 学

研究者がもっと実験できる環境が大切だと痛感いたしました。
(氏名:越石暁)

橋梁耐震の件,非常に興味が湧きました。ポリプロピレン短繊維を含有させたモルタル,かなりの効果が如実に現れていますね。小職は,ポリウレタンの研究に携わっていますが,ポリウレタン繊維でも高耐久で,かつ同様の効果が得られると思われます(高価かもしれませんが・・・)。また,コンクリートそのものの補強にもウレタン樹脂が使用されている例もあります。いずれにせよ,昨今の耐震事業では,予期せぬ天災に対応するべく,数値以上の対策が必要となっている現状,その石杖となる研究は,必用不可欠であると考えています。
(所属:日本ポリウレタン工業(株) 氏名:田中一幸)

■  第67回 NHK『ラジオ英会話』講師 COMUNICA, Inc. 代表遠山 顕さんに伺いました [聞き手]松田 曜子

同じことを二通りの英語表現で言える能力が,外国人の信用を勝ち取るうえで有効だという.正直なところ,耳の痛いアドバイスである.なぜならば,小生の場合,ひとつの表現さえもなかなか浮かんでこないからだ.海外では,自分のやりたいことをきちんと説明しなければ味方をつくれない.味方がつくれなければ,プロジェクトは当然ながら進まない.かつて,アフリカの地で現地の技術者からしきりに「スピーク!」と要求されたことを思い出す.恥ずかしさを乗り越えて語ることが自分をよい方向に導くという体験,それを地道に積み重ねていくことでしか,「話学」力の向上は望めないのだろう.
(氏名:金井 利浩)

英語で何かを伝えたい時、「文法が間違えてないか?」とか「こんな英語で伝わるのか?」とかいろいろ悩んでいるうちに、伝える機会を逸したことは何度もあります。何故かと自問自答するとその原因は恥ずかしさであると気付きました。話相手がいないと伝わっているか分からないし、話相手がいると話せない。そこで、本文にあった「温かく無視して」ということが、この大きな壁を壊してくれる何よりの薬であると気付きました。間違いを指摘するのも大切ですが、温かく無視することも念頭に置きたいと思います。
(所属:首都高速道路(株) 氏名:石原 陽介)

コミュニケーションをとる際の「二文化主義」.文化が違うとまでは思わないものの,相手の立場を考慮して話す必要性を感じた.また,技術者の名前を出すことについては,現場で危険と隣合わせで作業した作業員がいたからこそ土木構造物はできるわけなので,工事に関わった全ての人を残す,そのような文化が日本でも育っていって欲しいと考える.
(所属:東日本旅客鉄道 氏名:吉田 知史)

まずインタビュー相手があまり土木とは関係がなさそうなNHK「ラジオ英会話」講師という人選に少し驚きました。しかし、私を含め、語学力の上達を目指す読者は興味を持って本記事を読んだのではないかと思います。私は土木業界にもそのうち日本語だけでは仕事ができない時代が来るのではないかと思っています。技術さえ優れていれば海外でも仕事ができるとは思えません。やはり今後は、技術とともコミュニケーション能力の向上が必須で、そのために遠山氏が薦める「二語主義」を意識して勉強していこうと思いました。
(所属:前田建設工業 氏名:奥田文)

■  特集1 インタビュー 低炭素社会の姿[語り手]小宮山 宏、[聞き手] 藤城 透

「2020年までに1990年比で25%削減」という目標値は、温室効果ガスの推移を見ていると、厳しい目標ではあると 思ってしますが、ポジティブに取り組み、具体的な目標を提示している小宮山氏の記事を読むと可能な気がしてくる。 本目標に向かって、各産業分野ならびに個人が行動することが、やはり達成するためには重要であるのだろう。
(所属:運輸政策研究所 氏名:梶谷 俊夫)

温室効果ガスの削減は、企業や消費者に経済的な負担や我慢を強いるものでなく、技術革新によりエネルギー効率を向上させ、快適な生活を実現させた結果として得られるものであるという考え方は、新鮮であるとともに納得の行くものであった。環境負荷の低減というと、どうしても抑制・縮小といったマイナスのイメージが強いが、企業の技術革新を動機付け、メリットをもたらすものであれば、1990年比25%削減という、一見困難な目標の実現可能性も高くなる。環境配慮型の製品・サービスに対する需要は、世界的に見ても確実に高まっており、環境技術で先行する日本が、将来世界をリードするような立場となることを期待する。
(所属:清水建設 氏名:河田雅也)

■ 2-3 CO2地中貯留の動向 萩原 義孝

CO2を地中に貯留するというのは初めて聞いた。気体のCO2を地中に長期間保存することは可能なのだろうか。それと、もちろん経済的なことも考慮に入れる必要がありあまり現実的とは思えない。技術開発、研究開発としては必要かもしれないが、それより、やはりCO2の排出削減を先に考えるべきと思う。このような動きがあるとして情報提供するためなら意味があるかもしれない。説明図の中の文字が小さくてわかりにくかった。
(氏名:高橋麻理)

■ 特集3 低炭素社会に向けた都市計画 谷口 守

低酸素社会へ向け、都市計画及び交通計画の観点から論じており、コンパクトシティについてより詳細に解説されていたことで、都市整備の手法について一律にコンパクトシティ政策のみが環境負荷の軽減につながらないことは、新鮮に感じた。環境負荷の軽減に向けた社会基盤の整備とは何かと言うことについて、これまでに国内で行ってきたものにとらわれず、進めていくことが土木技術者としての使命であると感じた。
(所属:戸田市 氏名:諸井 敬嘉)

都市と低炭素社会との関係について、幅広い視点で分かりやすく解説されていて大変勉強になりました。高いサービスレベルの提供・魅力的な交通環境の整備などとともにコンパクト化を目指すことの重要性と、一方では都心で増える道路負荷、人が抜けた周辺部ではコンパクトでなくなることなどを例にあげた、トップランナーに対してボトムウォーカーについて考慮することの必要性は説得力があり、私にとって新鮮な視点でした。最後に述べられている万里の長城建設に例えられた公共事業に対する考え方も共感でき、土木技術者として事業の必要性・重要性を強く一般にアピールしていく時に重要な視点であると感じます。
(所属:日本工営(株) 氏名:野末 康博)

低炭素社会の構築を、理想とする「都市計画」から論じられているのだが、筆者の不都合な真実を淡々と語られているのに非常に好感をもった。また、見出しのタイトルも非常に面白かった。歯に衣を被せぬ言い方で、人間の「あくなき生活質向上」に、改革も技術の進歩も呑み込まれてしまうというのも、さもありなんと思ってしまった。二酸化炭素のもっとも少ない地区が「質」の低い地域である、というのも皮肉な話しに聞こえる。シュトラスブルクのLRTが例として挙げられていたが、確かに日本での公共交通のイメージとはかけ離れている。個人的な意見かもしれないが、娯楽的な資質が多く、街と一体化しておりわずらわしく思わない。気軽に利用でき、しかも、ゆったりとした時間のペースで利用できる。「駆け込み乗車は危険ですのでやめましょう」からほど遠い、人々の「公共」での態度だと思った。低炭素社会には、人間の価値観の意識変革もまた必要なのかもしれないと思った。
(氏名:横田美行)

低炭素化社会を目指して、LRT導入を始めコンパクトシティの実現を推進する地方公共団体が増えています。経年によりCO2排出量が増大するというデータの紹介は、個別の社会基盤施設だけでなく、都市の維持管理が重要であることを示していて興味深く感じました。経年的なCO2の排出量の増加を緩やかにするためにも、当初の公共交通の基盤整備計画を適切に策定することが大切だと思います。また、社会基盤整備を市場原理だけで推進すると、サービスの低下が発生し、その影響が広範囲に及ぶことがあると思います。そのリスクを避けるために公共事業の意義があると思います。コンパクトシティを適切に計画・整備することで低炭素社会を実現することが可能になると思います。
(所属:五洋建設 氏名:向井 健)

■  事故・災害 2010年チリ地震被害調査報告(速報) 川島 一彦、今村 文彦

建設年次は古いが従来のチリ基準により建設された橋は健全である一方、近年建設されたが民間委託によるコスト縮減を企図した橋が落橋する現象について、広く一般の人に伝える必要性を感じた。「コンクリートから人へ」が本当に正しい選択なのか、この事例からも明らかではないかと感じた。
(所属:首都高速道路株式会社 氏名:小林 雅彦)

チリ地震における橋梁の被害は、スペインの技術の影響を受け単純化された構造が採用された比較的新しいものに集中していたという。施工性やコスト面で優位であったことから導入された構造なのだろうが、その際に、耐震性の問題はどの様な議論がなされていたのかが気になるところである。土木技術の進歩のためにも、新しい構造や基準は積極的に導入されるべきであるがその際に従来の構造・基準がどの様な考えのもと定められていたのか、どのようなリスクを見込んでいたのかをよく理解し、新しいものへと反映させていくプロセスが必要不可欠であろう。
(所属:東日本旅客鉄道(株) 氏名:伊東寛)

この報告で土木施設の被災状況を初めて知ることが出来た。貴重な調査速報だ。震源から300q離れたサンティアゴ市内で落橋が多発していることは、日本でも東南海地震などで大都市での被害を懸念しなければならない。さらに、1990年代半ば以降に建設された新しい橋が落橋し、古い橋はほとんど無被害であったことは興味深い。建設コスト削減で横桁を設けない単純化構造を採用したからだそうだ。「盲目的なコスト削減」への警鐘として他山の石とすべきだ。
(所属:東日本高速道路(株) 氏名:伊勢田 敏)

「橋梁の被害」の項を読んで、地震による大きな被害があったことにがっくりした。 チリでは1990年代半ば以降に建設された橋には横桁も、落橋防止構造もなくそれがために破壊されてしまったということだが地震国日本であれだけ大きな被害を出した阪神淡路大震災の教訓が活かされていないのかと残念でならない。阪神淡路大震災は1995年1月であり、チリでのスペインの技術の影響を受けた橋梁が建設され始めた頃である。日本では翌年に道路橋示方書が大きく改訂され、落橋防止装置や斜橋の場合の対応策などが規定された。これだけ情報が密な社会でなぜ日本の対応が地震国チリに反映されなかったのだろうか。 今となっては遅きに失した感があるが、私たちもわが国の情報を積極的に発信し、人的交流を行うべきだ。また、他国の失敗例も他山の石として活用する必要があるだろう。一方、津波に関しては、建物の被害は残念であったが、多くの人が非難したおかげで人的には大きな被害をまぬかれたことは幸いであった。日本では、津波警報が出されても、大丈夫だろうと非難しない人がいると聞く。チリでの状況を多くの人に知らせることで、日本での意識が変わることを望む。
(氏名:高橋麻理)

■  第7回 日本最長の海底道路トンネル 松尾 幸二郎、葛西 誠

今回の記事で,普段車で通行する際には絶対に見ることのできないアクアトンネルの裏側を知ることができ,非常に驚かせられた.緊急時の心理状況や,体の不自由な方の避難を考慮したスロープ,施工時の探査ボーリング工法による工夫等,通常時と緊急時,利用される方のことまで配慮したインフラ整備について記載されており,土木構造物の奥深さを再認識することができた.非常に面白い記事であった.
(所属:東日本旅客鉄道 氏名:吉田 知史)

■  第3回 讃岐のため池 [文・写真] 大村 拓也

毎回、いろいろなことに気付かされる土木遠景ですが、今回讃岐のため池を見て、話では良く聞くため池ですが、その数と割合については写真を見て初めて気付かされました。このように、地域の風景に溶け込んだ土木構造物を遠くから見ることで、改めて気付かされることに驚きと土木の楽しさを感じました。
(所属:首都高速道路(株) 氏名:石原 陽介)

■  第6回 電話ボックスの基礎台高さと雪への対応 伊達 政直

公衆電話に第一種、第二種の区別が存在すると勉強になった。文中にもあったように、需要が低くなることで地域特性が薄れていくことを残念に思う。
(氏名:白石直也)

毎回、このコーナーを楽しみにしていますが、今回の記事も面白く読ませていただきました。電話ボックスの基礎台の高さに違いがあることと公衆電話に「第一種公衆電話」と「第二種公衆電話」の区分があることに驚きました。携帯電話の普及により、街中でも公衆電話を見つけにくい昨今ですが、第一種公衆電話は緊急時・災害時の通信手段としての役割を担うものとして、一定の台数が維持されるとのこと。できれば全国統一規格のものではなく、高い基礎台の上にある電話ボックスなど特徴ある公衆電話をこれからも残していけたらいいと思います。
(所属:鉄道・運輸機構 氏名:山崎 功一朗)

■  第6回 温室効果ガス排出量 松田 曜子

特集でも土木がつくる低炭素社会が報告されているがエコカーやエコハウス、冷暖房温度の設定や買い物袋の持参など私たちの生活の中でもずいぶんCO2の削減意識が高まってきていると思う。その割にはCO2はあまり減っていない。特集の中にもあったが、やはり便利さが優先されてしまうのだろうか。それとも、本格的に低炭素社会に向かって動き出したのがごく最近なのでまだ、数字に表れていないのだろうか。どちらにしても、今後も低炭素社会の実現に向けた更なる努力が必要だ。個人が電気製品や窓ガラスを変えることでどれくらいの削減になるのか目に見えないところが難しさと思う。
(氏名:高橋麻理)

■  第10話 「実物大」の利点を最大限に生かす 松田 曜子

実大構造物での破壊実験となれば,多大な労力,時間そして費用が投入されていよう.応答を計測するのが目的の非破壊実験では,実験データがおかしければ測定をやり直せばよい.しかし,破壊実験ではそれが許されない.「最後は胃薬が手放せなかった」というのも頷ける話だ.一方で,実大構造物を破壊しなければわからないデータがあるから,そのような実験が必要とされるのだ.つらく厳しい仕事ではあるが,人々の命と財産を守りたいという願いがそれを支え,成し遂げたときの喜びをもたらす.スケールは異なるものの,同じく技術研究所に勤務する者として身の引き締まる想いがした.
(氏名:金井 利浩)

■  企画趣旨 羽鳥 剛史

現在我が国は明確なビジョンを持っていないと思う。個別の政策は、財政を立て直すとか、景気を回復させるとか、福祉を充実させるというようなものであるが、その先には一体何があるのか?日本が背負っている負の部分を潰していく事も重要ではあるが、夢がない。これからの日本をしょってたつ若い人々は何を目標として生きていくのか?国として魅力的な方向性を打ち出せない現在、そのベクトルが個人によりバラバラになってしまっているような気がする。また、介護や医療といった福祉分野に財政を投入する事自体には反対ではないが、経済効果は本当にあるのか?十分な検証はされているのか?疑問に思うところである。
(所属:東洋建設(株) 氏名:澤田 豊)

土木事業に対して各分野から厳しい批判を受けている現状を打破するためには大変時機を得た企画と思います。夫々の立場の第一線で活躍している専門家の記事は示唆に富んだご意見として拝聴いたしました。ただ今回の企画で執筆された先生方は土木事業を主体的に推進してきた経験を基に土木のビジョンを述べられています。 現在、土木事業への不信は構造物の機能や効率・効果だけではなく、事業遂行上の過程にも問題があると考えます。土木事業を色々の視点で見直し、ビジョンを描くには利用者・地域住民の立場や具体的に設計や施工している立場のコンサルタンツや建設業者からの考え方も取り入れる必要があると考えます。
(所属:NPO法人 ITステーション 「市民と建設」氏名:比奈地 信雄)

■ トピックス1 インタビュー これからの社会資本整備のあり方 [語り手] 森地 茂、[聞き手] 羽鳥 剛史

土木技術者として、社会資本整備が大事であるということは、言うまでもないと感じている。しかし、現状ではその緊急性は水道管や道路の維持管理が多少新聞の記事で散見されるのみであり、問題視されていないことが問題であると考える。また、ダム問題に見られるように政治問題化してしまうと、ダム整備の本質が隠されてしまい、社会資本整備が無駄の象徴としてのみ捉えられてしまっているのは甚だ残念なことであると考える。そういった意味で土木技術者が、社会資本整備の必要性について訴えるために必要なことは何かというヒントを本記事で見出してくれたように感じた。
(所属:戸田市 氏名:諸井 敬嘉)

経済のデフレ傾向に未だ顕著な改善の兆しが見えて来ないなか、政権は自民党から民主党へと交代し早や8ヶ月を経過した。しかし、民主党が掲げた数々のマニフェストの実現は、多くのハードルを越えなくてはならないことが表面化しますます国民の政治不信を招いている。そして、発生する諸問題の原因と責任が全て政府であるかのような報道が散見される。一方で経済の活性化と生活の安定を図るためには、とにもかくにも公共事業の推進が第一優先であり、そのことが唯一の手段であると考える人々がいる。しかし、そのための財源の確保手段については統一した見解が見出せない状況にある。今後、加速度的に老朽化する既設施設の維持補修管理、少子高齢化社会の現実と激減する税収、近い将来に発生が予測されている海洋性巨大地震・・・等々に対する事前の社会資本整備事業の遂行! 果たして、これら多くの問題を国民の支持と信頼を得ながら速やかに解決していくための施策とはどんなものであろうか?民主党が掲げた「コンクリートから人へ」のスローガンと、またそのことが間違いであるとばかりの論説もいささか偏り過ぎてはいないだろうか?過日、他紙で論説されていた政治評論家 森田実さんの「君子は中庸を成す。小人は中庸に反す。」を思い出し改めてこの問題の難しさを感ずるが、今こそ問題解決に向け国民一人一人が真剣に考えなければならない。
(所属:株式会社 大林組 氏名:大井和憲)

記事にあるとおり、予算不足で社会資本整備を怠ると将来何が起こるかを土木技術者は世間に発信する責務を負っていると思います。いつの時代も発信しているのだと思いますが、公共事業は受益者と非受益者でどうしても利害が絡み、万人に納得してもらえる説明は非常に難しいのでしょう。それをどうやって納得させ社会資本整備を着実に進めていくのかは、国や地方のリーダーの能力によるところが大きいのではないかと感じます。また、記事の最後に「オプション」という言葉が出てきますが、それがいったい何を指すのかがよくわからなかったので、もう少し詳しい説明があればよいなと感じました。
(所属:前田建設工業 氏名:奥田文)

■  トピックス2 公共事業はどのような意味において無駄なのか?中野 剛志

公共事業の必要性について、経済理論やデフレ脱却の観点を用いて、「コンクリートから人へ」の世論に対して真っ向勝負を仕掛けても、国民の理解を得ることは難しいのではないかと感じた。国民が直面し、実感しつつある課題に気づいてもらうこと、国民が想像できる範囲、身近に感じる将来に重点を置いて説明することなど、公共事業の必要性について国民に分かりやすい説明はどうすべきか、考えさせられた。
(所属:首都高速道路株式会社 氏名:小林 雅彦)

公共事業批判には、経済学的なものから感情論まで様々な切り口があるが、このように整理して考えてみると分かりやすい。その上で、現在の様なデフレ下の状況は、「大規模な公共投資を実施すべきタイミングなのである」という主張は、説得力のあるものであった。しかし、現実問題として、我が国の危機的な財政状況のもと、実施すべき公共投資の優先付けが必要であると考える。公共投資には経済対策だけでなく、社会資本の維持、安全の確保のための(社会保障にも近い)公共投資、国土のグランドデザイン実現のための公共投資もある。これらは景気や財政の動向からある程度独立し、長期的な視野に立って継続的に実施されるべき公共投資でなければならないと考える。
(所属:清水建設 氏名:河田雅也)

デフレ状況下にある今日において、需要を創出し、施設効果・事業効果をもたらす公共事業の重要性がよくわかる内容であった。また、高度経済成長期に建設された公共インフラの老朽化が深刻であり、再整備する必要を強く感じた。政府には今後の国家像のヴィジョンを持ち、将来を見据えた事業を展開してほしいと切に願う。
(所属:五洋建設 氏名:井瀬 肇)

近年のデフレ社会では、特に、「公共事業の経済効果」が「施設効果」(ストックによる便益効果)のみならず、「事業効果」(景気浮揚効果、デフレ抑止効果等)に、寄与することを忘れてはいけないと思う。しかしながら、我々土木技術者は、その特性から、前者の「施設効果」に関する有益性に着眼することが多く、「事業効果」に触れることが少ないと思われる。今後は、この「事業効果」について、古来における公共事業(例えばピラミッド事業)等に関する知見を得て、計画時に少しでも効率良く、この「公共事業の経済効果」が発揮できる様な提案が行えるように、日々研鑽に努めたいと思う。
(所属:三井共同建設コンサルタント株式会社 氏名:原田 紹臣)

■  トピックス5 座談会 国家と土木のヴィジョン [座談会メンバー] 栢原 英郎、藤井 聡、[司会] 木村 亮

「土木における物語の復権を目指して」の内容に共感を覚えた.子どもの頃に聞かされて育った昔話は,神秘的なリアリティをもって脳裏に刻まれている.その力は絶大で,大人になってからも思考や行動のパターンに色濃く影を落としている.土木業界がそのようなパワーをもつ物語を味方につけられれば,現在のような世間の風当たりも相当和らぐのではないか.土木が自然な形で日常生活に溶け込み,人々を幸せにした時代が長い歴史の中にいくらでもあったはずだ.それを物語として次の世代に引き継いでいく.とても大切なことだと思う.
(氏名:金井 利浩)

座談会において、土木における物語性の重視が必要ではないかと語られている。私は、座談会の議論とは逆に、土木構造物は物語性の無さ、言い換えると無名性が魅力ではないかと考えている。土木構造物には、特定の作者の思惑がないことで、そのものの機能や美しさや面白さが露わになっていると感じる。土木構造物のそばに、つくった人たちの名前を掲げるという議論についても、農産物であれば管理上やマーケティングの観点から、産地名や食品の生産者を明示することにはメリットがあるだろうが、土木構築物においては多くの人々の力による組織力によって施設が生み出されるため、特定の技術者名を銘板に刻むことのメリットはないのではないか。
(所属:東京急行電鉄 氏名:山口洋史)

■  高速道路の国家ビジョンと無料化 石田 東生

高速道路は、隅々まで整備されれば、アジアと一体した経済活動につながると思います。
(氏名:越石暁)

少子高齢化への対応、国際競争力の強化、低炭素社会、これらが求められる中で、空港・港湾・鉄道・道路、これらをどうしていくのか、こうした高所大所の観点を踏まえたうえでJALの問題、地方空港の問題、港湾整備、リニア新幹線、高速道路無料化に取り組むべきだと言うのは、本誌読者であれば当然の認識であろう。しかし、こうした将来ビジョンに裏打ちされた政策決定であることを、最近のマスコミ報道から、また政治家の口から聞いたことは無い。
(所属:首都高速道路株式会社 氏名:小林 雅彦)

このリポートを読んだとき,春に国土交通省道路局(殿)の講演会を拝聴した事を思い出しました。欧米やアジアの国々との道路事業比較をした場合,車線数・稼働率・環状放射線完成率と日本は,かなり出遅れているようです。また,高速道路については,本文と同様に欧米各国との比較では,インターチェンジ間隔が長いとの結果が出ています。このような現状から,道路整備後発の我が国は,残存する道路整備をまず完結させ,その上での国家ビジョンを議論して行くべきではと思います。
(所属:日本ポリウレタン工業(株) 氏名:田中一幸)

■  成熟したシビルエンジニアの活性化に向けて

建設業が低迷する中で、シニア技術者の活躍の場が、一段と厳しいと考えていた矢先でしたので、興味深く拝読しました。
特に、社会基盤の機能・安全維持は、必要不可欠なものですが、ベテラン社員の退職等で、安全管理面で疎かになっている一面は否めません。土木学会がリーダーシップを発揮していただいて、成熟したシニア技術者活性化のためのマスタープラン構築を期待しています。
(所属:清田軌道工業 氏名:原 繁男)

■  その他・意見等

ヴィジョンとビジョンの統一が取られていない点が気になった。
(所属:首都高速道路株式会社 氏名:小林 雅彦)

今回は、特集以外にトピックスがあり、関連記事がまとめられとり、非常に読みやすかった。関連記事が多いのは、一つの流れが出来やすく、個人的には面白いと思う。ただ、カテゴリーが、特集とトピックスとになると、別扱いのように思えた。特集1、特集2でも良かったのではないか。
(氏名:横田美行)


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