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JSCE Magazine,“Civil Engineering”

土木学会誌

■土木学会誌2010年3月号モニター回答


■ 表紙・裏表紙

3月号を手に取った時、海の鮮やかなブルーとコンクリート橋の淡い灰色が見事に調和しているのに心を奪われました。この写真を採用された編集委員さんの、土木業界のイメージアップにかける想いを感じました。
(所属:首都高速道路(株) 氏名:石原陽介)

ある夏の1日でしょうか、響灘の海の青緑、鳩島の緑といった大自然の中に、人工構造物の白い角島大橋が美しく調和していて、全体としての景観を映えさせています。島民の生活道路としてはもちろん、また観光用道路としても重要な社会基盤となっていると思います。裏表紙の説明文の背景食の黄緑も海の色と調和していて読者に爽やかな印象を与え、観光パンフの1頁のようです。学会の顔である表紙には多少経費がかかっても、社会基盤と周辺環境との調和がとれたものを紹介することで、社会基盤の必要性を実感し、再認識させる効果があるではないかと思います。たとえば、土木学会デザイン賞から選定されるのはいかがでしょうか?
(所属:五洋建設 氏名:向井 健)

■ 一研究者からみえる総合科学としての土木 細田 尚

土木工学の重鎮と呼べる方々が環境に目を向け、土木工学を学ぶ学生が新しい土木を意識しているこの状況を、冷え切った建設業界が吹き飛ばしているように就職活動をしながら感じます。
(氏名:越石暁)

社会基盤を整備するための工学の基礎としての土木のアイデンティティは、いつの時代も、バランスのとれた総合的なマネジメントにあるのではないかと思います。グローバル化、価値観の多様化していく社会の中で、国民が持続して安全で安心した生活を享受するための社会基盤を整備、維持管理していくためには、自然条件に対しては細分化されますます高度な専門技術の総合、そして、社会条件に対しても社会科学、人文科学の要素も総合して取り込み、国民に投資効果の最適性、正当性を説明することが重要になってくると思います。今後、ますます高度に総合化したマネジメントが要求されると思います。
(所属:五洋建設 氏名:向井 健)

土木技術者は、ある専門分野だけに特化するのではなく、幅広い知見を持ち、総合的に物事をとらえる必要のある、非常にやりがいのある仕事だと思います。しかしながら、土木のことをあまりよく知らない人にとっては、土木という言葉は必ずしもいいイメージばかりを与えるものではないと感じます。近年では、大学の学部名に環境という言葉を加えるなど、将来を担う人材を集めるための様々な試みがなされていますが、総合科学としての土木という魅力を業界全体として積極的に伝えていく必要があると思います。
(所属:五洋建設 氏名:井瀬 肇)

■ 社会資本の「コンクリートから人へ」 近藤 徹

身の回りのほとんどのインフラにコンクリートは用いられており,当該材料の重要性は衆目の一致するところである.一方で,会長のご指摘のとおり,我々は考え方の見直しを迫られている.コンクリートに代表される土木技術そのものを目的化することなく,人あっての土木技術という原点に立ち返って将来を展望すべきだ.
(所属:鹿島道路 氏名:金井利浩)

社会資本整備が、国民生活の安全と安心を守るための手段としての基本的な理念に異を唱える人々は居ない。
しかし、手段としての「公共工事」のあり方に疑念や不満、あるいは失望感を抱く国民が存在する事実も、今更それを否定出来るものではない。何故なら、過去において「官製談合」「官民癒着」や「一部の個人や団体」の営利追及のための手段として社会資本整備の名の下に公共工事が展開されてきた事実があるからである。しかし、今日では、これらは一新されるとともに厳しい市民の目に注視されており、公共工事は費用対効果を徹底して調査・検討した上で、本来の目的に沿った形に改められ進められている。ここに、少子高齢化社会の到来と国家経済収支の不均衡により、社会資本整備投資額は自ずと制限されるのは必然である。このような状況の中「コンクリート」から「人」へのスローガンの下、社会資本整備のあり方として無理無駄を排除した確実な費用対効果を目指した公共工事の推進が望まれている。また、一方で老朽化しつつある既存資本の補修や補強による構造物の延命技術に関る開発が求められるようになった。私も土木技術屋の一人として、これらのことを良く意識しながら真摯に携わって行きたいと思う。
(所属:株式会社大林組 氏名:大井和憲)

日本における社会資本整備に関して,急務となる項目がこれほどあると言うことに驚きました。公共電波等から聞こえてくる情報でも社会・自然条件の変化は,明らかに進んでおり,かつ近い将来遭遇するだろうと言われている昨今,社会資本整備者の視点から人のみでなく,材料を含めた仕分け作業が必要となっている時代ではないかと理解しております。
(所属:日本ポリウレタン工業(株) 氏名:田中 一幸)

■ 地域の安全・安心と憩いの場を提供する千代田新水路 宇佐美 彰

洪水時の治水安全度を向上させるために整備された千代田新水路は、貴重な市民の命と資産を守るともに、周辺と一体となりエコロジーパークを創造し、市民に豊かな自然と環境学習を提供することを可能とすることでしょう。また、実物大実験水路が設置されており、数値実験、実験室レベルの成果を補うための実験を可能としている。堤防破堤のプロセス、流砂現象と河床変動、河道内樹木の抵抗評価、植生による護岸築造、多自然型工法の適用性、市民の防災教育への活用等、河川整備を進めていく上での技術的課題を解明し、安全で安心した国土、美しい国土づくりに寄与することが期待できると思います。
(所属:五洋建設 氏名:向井 健)

■ 関門海峡を結ぶ道路トンネルのリフレッシュ対策 小林 康範

関門トンネルが計画的に補修され本州と九州を結ぶ大動脈の安全が確保されている事は大変嬉しい事である。しかしながら、一方で毛細血管と考えられる地方の道路トンネル等に対する不安が増すと思った。
(氏名:越石暁)

建設後50年が経過した構造物が、今後も50年、100年、さらにそれ以上、続けて供用できるようにリフレッシュ工事を行ったものである。60日間の連続した通行止めを伴う工事は、代替ルートである関門橋が存在しなければ不可能であっただろう。1本あればもう1本は不要、無駄な道路と批判されることが多いが、生命線となる1本の道路のリフレッシュが不可欠となる時期を迎える前に、代替ルートを確保する必要がある、こうした観点からの道路整備計画の吟味も重要と改めて感じた。
(所属:首都高速道路株式会社 氏名:小林 雅彦)

弊社は,山口県に主力工場があります。その恩恵か関門トンネルは,車・徒歩の両方で渡った経験があり,懐かしい感覚で拝読いたしました。前号でも感じたままをご報告した通り,老朽化の波は,直ぐそこまで来ている状況なのですね。道路トンネルでは,迂回路等での代替が可能ですが,今後,鉄道はどうするのでしょうか?設備の保安・保全は,毎日の積み重ねとの報告も記されていたように,今今からの準備が大切でしょうね。
(所属:日本ポリウレタン工業(株) 氏名:田中 一幸)

土木工事の現場は多種多様であり、各現場には技術という形で多くの知恵や工夫が盛り込まれている。しかし、そのほとんどは一般の人の目に触れることはない。特に、海底のトンネル工事はその典型だと思う。今回の「関門海峡を結ぶ道路トンネルのリフレッシュ対策」に関する記事は、そのような普段は目にすることができない現場を見せてくれており、土木技術者の知恵や工夫を感じずにはいられない。非常に興味深い。
(所属:鳥取大学農学部 氏名:芳賀弘和)

■ 富山都心線の開業 粟島 康夫

写真をみて懐かしい感じがした.公共交通機関と人々が,市街地において仲良く寄り添っているイメージである.そこには,昔の,人中心のゆったりとした時間が流れているようだ.「個別に」から「一緒に」への回帰が時代の潮流である.プロジェクトのコンセプトも車両デザインもとてもよい.すぐにでも乗ってみたいと思った.
(所属:鹿島道路 氏名:金井利浩)

写真を見て驚いた。人の賑わい、広い歩道に並ぶテント、ライトレールと歩行者の調和。レンガ敷きの舗装、洗練された照明、信号、電停のデザイン。日本ではなく、ヨーロッパの古都市を思わせる風景と感じた。ライトレールの導入で街が賑わい、住む人、訪れる人が増え、街の競争力が上がる。他の都市の模範となって、さらに多くの街に広がることを期待する。
(所属:首都高速道路株式会社 氏名:小林 雅彦)

最初この写真を拝見した際に、「どこの国だろう?」と思うくらいトラムが街並みに見事に調和していて、ヨーロッパの国で撮影された写真と勘違いしてしまいました。景観を考慮した街づくりの斬新さを改めて感じました。
(所属:首都高速道路(株) 氏名:石原陽介)

パッと見たときに、ヨーロッパの風景かと勘違いするほど、このセントラムと呼ばれる環状線には停留場も車両も垢抜けている印象をもった。富山市の中心部では、06年に富山西武が撤退、総曲輪通りと中央通りの両商店街の約180店舗のうち6分の1が空き店舗となっているなど、空洞化が進んでいるという。 調べたところによると、従来の市内電車と比べ、環状線が出来たことにより、1日平均の乗降客数が2割近く増えたそうで、中心市街地の活性化への効果も期待できると感じた。ただ、新聞等の報道によると、自動車が原因となる電車との接触事故が相次いで発生しており、開業から1月末までに5件が発生したとのことである。自動車が原因とはいえ、事故の多発は路面電車の公共交通としての信頼性が低下してしまうため、より一層の安全対策が望まれる。
(所属:東京急行電鉄 氏名:山口洋史)

市内環状線開業日の「CENTRAM」デビューの催しであるトランジットモールに市民が数多くあふれ盛況な様子がうかがわれます。地方都市の再生・活性化実現を目指したエコ・コンパクトシティの先進都市である富山市の成功の鍵は、公共交通機関である路面電車の有効性がその一つだと思いますが、交通弱者だけでなく、一般市民が中心市街地内の貴重な移動手段となることが期待できます。土木学会デザイン賞2008最優秀賞受賞した美しい形状をした黒、白、銀の落ち着いた3色の車両が勢揃いしてこの日限りのイベントを盛り上げており、鉄道ファンならずとも、一度は乗車してみたいと思いました。
(所属:五洋建設 氏名:向井 健)

■ 第64回  (財)鉄道総合技術研究所 構造物技術研究部長 舘山 勝さんに伺いました [聞き手] 喜多 直之

現役の土木技術者の紫綬褒章受章を心から嬉しく思う。地味な補強地盤を研究開発している館山氏が、国家から褒められた。「目先に追われず大局的に先の姿を見据えて力を蓄えよう」とのメッセージは、「コンクリートから人へ」の嵐にうつむきがちになる土木技術者へ勇気と元気がもらえた。
(所属:東日本高速道路 氏名:伊勢田敏)

舘山さんが紫綬褒章を受章されたニュースは、私にとっても大変うれしいニュースである。それは私自身、大学時代地盤系の研究室でジオグリッドに関する研究を担当させていただいた事もあり、舘山さんの論文をいくつも読ませていただいたからだ。「技術は閉塞した状況を壊す手段」。これからは、土木にとって厳しい時代となるだろうが、世の中の流れに流されず、私も自分の役割を果たそうと思う。
(所属:東洋建設株式会社 氏名:澤田豊)

土木工学は有史以来、人間の生活を安全で快適なものとするため、大きな役割を果たしてきた。にもかかわらず、わが国においては、科学技術の一分野として十分な評価を得られていないという思いが強かった。そのような中、土木の研究者として舘山さんが紫綬褒章を受章されたことは、土木分野の末端に従事する身として、とても名誉に感じられ、勇気付けられる思いがした。土木に対する風当たりは昨今ますます厳しさを増すばかりであるが、老朽化した社会資本の維持更新、安心・安全な国土づくり、エネルギー対策など、わが国の将来に関して大変重要な課題を担っている。これらの課題の解決に貢献することで、土木が正当に評価される時代が来ることを期待する。
(所属:清水建設 氏名:河田雅也)

■ 特 集 2009年 土木と社会を振り返る ANNUAL 2009

2009年という1年を社会と土木から振り返るのであるから、多くの内容を書き込むことになるので、当然と言えば当然ではあるが、全体的に、制限されたというイメージが随所に感じられ、少し残念であった。社会の動きと土木学会誌の動きとを分けて、間に学生編集委員や支部活動が入ったのも、より分散化してしまったように感じた。いっそのこと、社会の動きと土木学会誌の内容を繋ぎ合わせて記事にしたら、どうなっていただろうか。短い文章は読みやすい反面、どうしても浅薄になってしまう。支部活動の中で、「エクスカーション」への取り組みを書かれた記事に、こどもへの体験型教育のことがあった。また地域のくらしのかかわりあい、のことも書かれていた。個人的な趣向なのかもしれないので、恐縮しているのだが、これらをもっと具体的に書いてあったら、より読み応えのあった記事になっていたと思う。限られたスペースであることも分かるのだが、読めなくて残念。こういった活動記事等は、是非、詳細に記載していただきたいと思う。
(氏名:横田 美行)

■ 土木の各分野での主な出来事

ここ数年の首都圏におけるネットワークの拡大により、(1)所要時間短縮、乗換回数の減少による利便性の向上 (2) 混雑路線のバイパス機能による混雑緩和 が進んでいることを、事業者また一利用者として実感している。相互直通運転の拡大により、問題化している列車遅延については、国や研究機関等により、メカニズムの解明が進められており、最も効果的、効率的な対策が判明されることをまずは期待している。
(所属:東京急行電鉄 氏名:梶谷俊夫)

■ 特集を終えて…水谷 聡

「新」を含む四字熟語・・・といわれて,特集で紹介された半分ほどしか思い浮かべることができなかった.しかし,土木技術にもっとも当てはまるものは温故知新であろう.これまで技術者の先輩方が蓄積されてきた技術を受け継ぎ,未来へと発展させていくのは若手技術者の使命であると考えている.「土木工学科」という名称が減少している今日ではあるが,「土木技術者としての自覚」をもって日々の業務に取り組んでいくとともに,日本の土木,世界の土木の動きにも目を向けていきたい..
(所属:東日本旅客鉄道 氏名:吉田 知史)

■ 第4回 世界初の海水揚水発電所 澁谷 容子、石村 陽介

海水揚水発電所が、世界初の技術であることにも驚いたが、その利用に当たっては様々な環境対策が行われていることにも驚いた。海水の漏水、浸透を防ぎ、貴重な自然を守りつつ、技術を以って海に囲まれた沖縄の電力供給の安定に貢献していることは、電力分野の中にも土木技術の知恵が活きてくると言うことを実感させてくれた。このような土木と一見関りないような分野でも土木が活躍していることを広く知ってもらいたいと感じた。
(所属:戸田市役所 氏名:諸井 敬嘉)

海水揚水発電所というものの存在を記事で初めて知りました.掲載写真の,エメラルドグリーンの調整池がとても綺麗で印象的でした.沖縄には海水揚水発電が必要だったとありますが,その土地に必要なものをそこの環境に合ったかたちで造るというのは難しいとは思いますが,土木のすごく面白いところだと 思います.どんな課題をどう克服したのかをもう少し詳しく説明していただければよかったかなと思います.
(所属:前田建設工業 氏名:奥田文)

”世界初”と名のつく構造物は計画段階から、綿密な研究・調査、データの蓄積等が求められ、また世間からも注目されます。記事を読んで、数多くの土木技術者の多大なる苦労、努力があったことを感じました。
また、特にこれから土木系の職場を目指している学生会員にとって、このような”世界初”のプロジェクトの紹介は、土木離れを解消する非常に有意義な企画であり、これからもどんどん紹介して欲しいと思いました。
(所属:鉄道・運輸機構 氏名:鈴木 隆)

■ 第68回 大阪市地下鉄1号線停留所(梅田駅│心斎橋駅間) 出村 嘉史

素晴らしいの一言に尽きます。早速、心斎橋駅に行って、アーチ型の大天蓋と、清水氏のレリーフを見てきました。「世界に恥じないものをつくれ」のコンセプトどおり、雄大、かつ優美な空間に感動するとともに、歴史の重みと、先人技術者としての強い思い入れが、伝わってくる感じがしました。私も、今回を契機にして、認定された土木遺産(特に鉄道施設)の資料を収集し、順に訪れてみたいと、思っています。
(所属:清田軌道工業 氏名:原 繁男)

大阪の地下鉄で壮大なスケールを持つ駅構内が見られると聞き、実際にこれらの駅を見て納得した。更に本記事を拝見し、開通に携わった技術者達が百年先を見込んでいたと聞き、今の時代において、このような視点が現在の市民意識の中では、この考えに理解していただけるものかふと考えた。効率性と将来性と相反するものを如何に整合させていくかも大事な視点であると感じた。
(所属:戸田市役所 氏名:諸井 敬嘉)

本施設も同時代に生きる人々の夢と、技術者の情熱が一体となって完成し、今の時代にも輝きを残す土木施設の一例であろうと思います。時代の最先端をいくモダンな施設に「われ先に電車へ殺到する人々の様子」が目に浮かぶようです。費用を惜しまずの基本姿勢に逆風もあっただろうと思います。そのような中、現代も残るこのような施設の建設に関わった前人達の偉大さに圧倒されるとともに、うらやましく思いました。我々の時代にも、人々の夢となる土木技術はあるでしょう。そういった仕事に携われるよう努力したいと記事を見て考えました。
(所属:日本工営株式会社 氏名:野末 康博)

昭和8年日本初の公営地下鉄として、大阪市地下鉄1号線(御堂筋線)が梅田・心斎橋間で開業し、現在では9路線153kmが計画路線として大阪市の中心市街地と郊外と結ぶ高速鉄道網として発展している。開業当時の各駅はアーチ型大天蓋無柱の大地下空間で12両連結車両が発着できる施設であり、壁面・照明具の意匠も洗練されていたようである。何十年先を見越した当時の都市計画事業のプロジェクトの先見性に感心します。現在は当時のデザインの面影は残っていないが、貴重な地下構造物を土木学会推奨土木遺産として後世に継承することは、土木技術者だけでなく、市民にも有益なことと思います。
(所属:五洋建設 氏名:向井 健)

現在、大阪市内を縦断する地下鉄御堂筋線は、大阪で働く我々にとっては、重要な交通手段と一部となっています。特に、市街化された大阪市内と、大阪府の北部に点在するベッドタウンとを直接結び、毎朝夕、大量な働き手を輸送し、大阪市の経済を支えているといっても過言でない状態です。この様な大プロジェクトを、約80年前に、現在のサービス水準を想像し、十分な費用、技術を投資した多角的視点に基づく取組は、現在、公共事業の計画等に取組んでいる我々にとっては学ぶべき所は多いです。本記事を読み、今後より一層、設計時において、公共事業予算削減の中での真のLCCについて深く吟味し、取り組んでいきたいと思います。
(所属:三井共同建設コンサルタント株式会社 氏名:原田紹臣)

■  第7話 化学者の発想で鋼橋を守る 原 隆広

鋼構造物の塗膜が剥離剤で一度にはがれる技術が開発されたことは土木技術資料などで知ってはいたが、開発のきっかけや開発までの経緯についてはあまり知らなかった。何層にも塗られた塗膜を安全簡単にはがすことができるのはすばらしい技術である。今後は、このような一見まったく関係のない技術を土木に応用することが土木のみならず産業界全体の技術開発や発展につながるのではないか。
(氏名:高橋麻理)

■ 第3回 建設投資・公共投資 松良 精三

近年の政府建設投資の減少傾向は、公共事業性悪説とでも言うような論調で、留まるところを知らない。わが国は地震や台風などの自然災害が多く、地形・地質的にも制約条件の厳しい中、社会資本を整備し国土を有効利用することで経済発展を遂げて来た。現在の公共投資の減少傾向が続けば、高度経済成長期に整備された大量の社会資本が更新期を迎えるに当たって、大きな不安を抱えることになる。2007年にアメリカミネソタ州での落橋事故で13名の人命が犠牲となったことは記憶に新しいが、わが国においても同様な事故の発生する懸念は十分にある。アメリカの事例を他山の石とするためにも、長期的視野に立った社会資本整備計画の議論が望まれる。
(所属:清水建設 氏名:河田雅也)

■ 第3回 地熱発電 伊藤 悟郎

地球温暖化対策として、CO2の排出量が少ない、準国産のクリーンエネルギーである地熱発電は、太陽光、風力発電についで潜在的な可能性を秘めていると思われる。ピンポイントの立地場所を選定するのに開発リスク、開発コスト等課題はあるものの、活火山に恵まれている我が国においては、エネルギー供給源との選択肢として期待できると思います。特に、年間日照時間が少ない北陸、東北、北海道の日本海側では積極的に検討されてよいとも思います。中温熱水でも発電可能なバイナリー発電という技術の開発と、開発事業者の開発リスク、開発コスト低減に向けての支援策を打ち出すこと、温泉事業者との共生方法も検討する必要があると思います。
(所属:五洋建設 氏名:向井 健)

■  文明の頂点にて 竹村 公太郎

本記事を読んで,大きな変化の時代に生きているという思いを改めて強くした.この時代を乗り切るには「変化を楽しむ」という態度を貫くしかない.国という枠組みを越えて,人類が生き残るための4つのポイント「安全」「食料」「エネルギー」「連携」に,日々の業務を通じて少しでも貢献できればと思う.
(所属:鹿島道路 氏名:金井利浩)

論者は現在が日本における文明の頂点であるとし、今後日本が存続していくためには食料やエネルギーの完全自給以外に道がないと説く。満場一致で賛成の拍手が起こるだろう。だがその実行はすぐには難しい。「わかるとできるは違います。」というやつで、同意はできても今の社会の構造や状態がそれをさせにくくしているからだ。米が余っているのに食料輸入率が6割もあるのは食の欧米化だけではなく企業の利害や国同士のお付き合いも関係しているからだろうし、2度もオイル・ショックを経験しているのに未だに消費エネルギーの約半分を石油に依存し、他国に比べ官民共に再生可能エネルギーの開発機運が低いのは景気の低迷による研究費用の縮減もいくらかは関係しているのだろう。だが論者の言う“歴史の中で滅んでいった文明の滅亡理由”からすると、そろそろ腰を上げないと手遅れになりそうだ。日本は古来より世界に誇る再生型・持続型社会である。これはいわゆる“もったいない精神”だけではなく、資源貧国ならではの、経済観念ならぬ“資源観念”が成せるワザで、今まで世界の発展を牽引してきた“大量消費”とは一線を画すものであるが、これからはこれが世界の牽引力となるべきよき風習である。第二次産業大国の技術を生かし、食糧やエネルギー生産のリサイクル大国となって是非とも日本を存続させたい。
(所属:岡山県 氏名:松永誠)

確かに、文明の盛衰を人口の増減で表現すれば、日本を始めとする20世紀の先進諸国の文明は頂点を迎えて衰退に向かっていることになります。頂点を通り過ぎた今こそ、過去の総括を適切に行い、既設の社会基盤の維持管理、更新すべき箇所に適切に対応することで、衰退することを回避することが可能になると思います。さらに、我が国固有の問題である自然災害に対して安全な国土づくり、自然エネルギー自給率、食糧自給率のアップが日本文明の衰退を食い止めることが可能になると思います。「文明の頂点」という警鐘を鳴らすことは意味のあることだと思います。
(所属:五洋建設 氏名:向井 健)

■ 「アカデミズムの存在理由」 塩谷 喜雄

論説記事は、一つの現象や事件を、論者の独特のアプローチで切り込んでいき、論理を構築して「こと」の真相を解明・解説していくところに醍醐味がある。塩谷氏の批判は非常に小気味よい。少々過激とも思われる言葉を駆使しつつ、核心的な箇所はシンプルに描くことにより、よりアカデミズムの苦悩を際立たせていて、確かにと何度も頷いた。ただ、少し残念だったのは、最後の提言のところで、市民生活ときわめて近いところで研究者の生まれてきた学問分野である土木が、具体的に如何にして、この社会に明示するのか、大いに発信するのかが書かれていない点である。是非、お聞きしたかった。
(氏名:横田 美行)

■ 柱列式ソイルセメント地中連続壁のこれまでと将来像 村上 正、野中 稔

土木技術に求められる要素としては施工性、安全性、品質、コスト等があげられるが近年これらの要素に加え、環境という要素が非常に重要になってきている。社会の大きな流れとして、各企業が環境面から社会的責任を果たすことを求められ、土木分野もまたその例外ではない。そうした状況の中、本記事にあるような新工法の環境優位性を広く社会にアピールしていくことは重要である。また、土木技術者としてはそうした情報に興味を持ち積極的に活用してくことが必要であると感じた。
(所属:東日本旅客鉄道株式会社 氏名:伊東寛)

■ 第43回 乱流工学ハンドブック [評者]日野 幹雄

内容に関してではなく非常に恐縮です。4段目、後ろから6行目の「シュミレーション」は正しい用語ではありません。
間違って記載されることが非常に多い語ですが、学会誌なのですから正しく記載してほしいと考え取り上げました。かく言う私も長い間「シュミレーション」が正しいと信じ込んでいました。もし、原稿が間違っていたとしても編集委員が訂正すべきと思います。正しくは「シミュレーション」ですね。
(氏名:高橋麻理)

■ ウィキペディアを用いた学術学会による社会貢献の新形態を提案します。 応用力学委員会ウィキペディアプロジェクト

ウィキペディアは、アクセス性が高く、容易に情報を得るためには優れたツールである。しかし、情報の正確性を期す場合には、別途、裏付けをとる作業が必要だ。「不特定多数が執筆・編集可能」というウィキペディアの特性を知らずに、記述内容を鵜呑みにしているユーザーもいるのではないだろうか。学術学会が定期的にフィルターをかけ、正確な情報を発信していくことは、社会貢献のレベルを超えて使命であると言える。こうした土木学会の取り組みが他の学術分野に広がりを見せることを期待したい。
(氏名:山本 諭)

私自身,気になった事柄があった際によくウィキペディアを利用している.何かニュースがあると,それに関連した用語が次々と更新されていく.非常に便利なツールの一つである.一方で,匿名でも投稿できる点,出典は明記されているものの,その出典をすぐに確認できない点等より,そこで得た知識が事実であると即思わないように注意をしている.以前,欧米のウィキペディアに比べ日本語の方は匿名投稿が多いという新聞記事を読んだことがある.同じ記事には,間違った投稿を削除する人数も足りないという.匿名性は,気軽に投稿できる良い面を持つ一方で,文章の検証の難しさを増してしまう可能性がある.そういう問題点の中で,ウィキペディアの編集を若手技術者の育成にもつなげようとする本プロジェクトには関心がある.日本でのウィキペディアの将来像へ一石を投じるだけでなく,理想モデルの一つとなるような成果を期待する.
(所属:東日本旅客鉄道 氏名:吉田 知史)

ウィキペディアは便利ではあるが信頼性に問題があるので使用者としてはいま少し不満を持っていた。学会のような信頼できる機関がウィキペディアの編集執筆をしていただけるならこんなありがたいことはない。また、このような専門家グループが編集を行っているのが日本では土木学会が唯一というのも驚いた。是非、ほかの学協会にもこのような手法を広げウィキペディアの信頼性を高めることで科学技術をわかりやすい形で社会に発信してほしい。この記事の内容を家人に伝えたところ、私と同様に土木学会だけでなく科学技術関連の学協会はこのような活動を積極的に行ってほしいとの意見であった。
(氏名:高橋麻理)

学生教育の一環で、ウィキペディア執筆作業に携わることで、文献能力や文章作成能力が向上するなどの教育効果には大いに期待できる。しかし一方で、その恩恵を受け、文献検索を行おうとしない学生の方が増えるといった弊害を危惧する。
(所属:豊橋技術科学大学 氏名:白石直也)

■ 土木学会に要請される社会貢献 河上 省吾

先生のご意見に賛成です。昨今の社会基盤施設に対する様々な批判は土木技術者にとって大変辛いものがあります。その原因は造られた社会基盤施設の役割や機能が不明確であると同時に当初設定した効果や稼働率に大幅な差が生じているためと考えます。更に建設費や工期が計画時より常に増大するのも要因の一つと思われます。このような現状を打破するためには先生が提案された土木学会が主体になって社会資本整備に関する検討チームを設置し、土木学会の英知を集めて望ましい社会資本整備を提言すべきと考えます。検討チームは大学・高専の研究者だけではなく、設計を担当するコンサルタンツや施工を担当する建設会社、更に事業の企画をする公官庁のメンバーも入れることを提案します。会議の検討状況を公開する事により公平性や合理性等が担保出来ると思います。
(氏名:比奈地 信雄)

■ その他

3月号の会員の声は土木学会として重要な課題と考えます。原稿の投稿が昨年10月になされたのに3月号掲載は少し遅いのではないですか。会員の声がタイムリーに掲載されないと投稿意欲が削がれる恐れがあります。またこのような時期ですので土木学会のあり方に関する特集を組む事を望みます。
(氏名:比奈地 信雄)

特集 2009年 土木と社会を振り返るについて―社会基盤が社会(国民生活)と密接な関係があることを考えれば、2009年度の土木のうごきを振り返るときに、必要であることは理解できますが、カラーで4ページ使用するまではなかったのではないでしょうか。「土木学会誌を振り返る」と一緒に紹介しても良かったのではないでしょうか。土木の出来事には、土木技術者として概要程度までは知っておくべきことが紹介されており、非常に参考になると思いますが、文字のサイズが若干小さいのではないかと思いました。また、土木の各分野での主な出来事については、各分野を1/2頁に写真2枚を盛り込みかなり凝縮されているので、1頁あればもう少し紹介できたのではないかと思います。
(所属:五洋建設 氏名:向井 健)

特集の支部だよりやニュースなどで、各地で土木を一般の人たちに周知理解してもらうためのさまざまな活動が行われていることを知り頼もしく思っている。土木屋は世間へのアピールが下手だといわれているが、学会を中心としたこのような地道な活動が土木に対する市民の理解につながると考え、私自身も機会があればお手伝いしたい。企画する方は準備や手配など多くの手間がかかることと思う。不況のさなかではあるが、産や学と協力して今後も活動の継続をお願いしたい。学会誌でもこういった記事を取り上げて紹介しその効果や感想を載せたらいいのではないか。
(氏名:高橋麻理)

多くの記事に、人々のくらしの安全・安心を守るために、利便にするために、という文言が見受けられる。確かにその目的をもってインフラの整備をされているのはわかるが、常に土木に携わる人からの意見で、そこに暮らしている人たちからの言葉が聞かれない。例えば学生班の方が、限界集落とかに行って、そこの人々にヒアリングを行った記事があれば、とても興味深いと思う。大型地震があった村々に住むご老人に若い人々が取材すれば、そこに暮らす人々にとっても、喜びであろうし、若い人にとっても、何か目的でもない限り、滅多に行けないところだろうから、良い経験になるのではないだろうか、と思う。
(氏名:横田 美行)

© Japan Society of Civil Engineers 土木学会誌編集委員会