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JSCE Magazine,“Civil Engineering”

土木学会誌

■土木学会誌2008年7月号モニター回答


■ 表紙

熊本県の宇土轟泉水道は、300年の歴史があり、しかも現役とのことで感銘を受けた。ひるがえって、私たちがいま作っているもの、行っていることのうち、300年後に残るものはいかばかりであろうかと考えさせられた。
(所属:国立環境研究所 氏名:櫻井 健郎)

■ 巻頭言「現場力」の向上に団塊世代の力を 小林 将志

現場力の劣化の根源は、コスト競争による経費節減によるものが大きい。経費節約が徹底され、少ない元請職員で現場を運営しなくてはならない状況は今後も続く。そのためには、協力業者の高い技術力が求められ、元請職員は電話一本で手配が付き、施工を行ってくれる協力業者を求める。また、失敗をして覚えるといった雰囲気も現場には無く、若手社員であっても、失敗は許されず、そして、書類作成に追われる毎日である。また総合評価方式により、工程短縮が求められる厳しい状況にある。こういった、人・金・時間の不足している状況を打開することも、若手技術者の現場力養成に必要なのではないかと考える。
(所属:清水建設株式会社 氏名:渡辺晋平)

巻頭言を読ませて頂いて,「そのとおり!」と感じる.確かに「要領」「指針」「マニュアル」等の整備は一定品質を保証するための必需品ではあると思う.しかし,実現場では必ずしも教科書に書いてある事ばかりではない.基本を知りつつ技術を応用する力(考える力)や経験則を身に付け,それを実践することが更なる品質向上につながる.各種マニュアル等が整備され,考える力が低下していると懸念されているが,このフォローアップ策として諸先輩の経験を伝承して頂くことは,まさしく「現場力」の底上げにつながる事だと感じた.
(所属:益村測量設計(株) 氏名:益村公人)

筆者のご意見には、まったく同感です。団塊世代の技術力や現場を自分の肌で感じる感覚には、敬意を表します。自分たちも、本来その技術力や感覚を十分に養うべきでしたが、発注者の求めること(電子納品、ISO、書類等)が変化し、現場での業務形態が時代とともに変わってきたかに思います。しかし、土木の現場自体が易しくなったわけではなく、逆に困難さが増すばかりであります。まさにこのような危機的状況を打開するには、団塊世代による、若手技術者への技術の伝承をOJT教育をベースに強力に推進することが必要不可欠だと考えます。
(所属:東亜建設工業株式会社 氏名:加 藤 隆 士)

若手技術者のひとりとして、団塊世代のノウハウを継承することの必要性を強く感じるとともに、本当に継承できるのか不安に感じています。「技術伝承」と身構えると、承る側として何をどのようにして継承すればよいかわからないし、伝える側にも同じことがいえるのではないでしょうか。やはり、技術は実践の中 で受け継がれていくものですから、若手とベテランが直接組んで、一緒に仕事をすることは、技術を伝承していく上で最も効率がよく理想的な方法だと思います。このような機会が増えることを願います。しかし、現場についていえば、若手が現場に出られない状況を打開しなければ、「現場力の劣化」の根本的な解決にはならないと思います。
(所属:大林組 氏名:佐々木一成)

■ PHOTO REPORT (1)ミャンマー・サイクロン高潮災害緊急調査報告(速報)

この記事を読ませて頂いて,先日のTV報道で紹介された内容を思い出した.未だ被災によるインフラ復興もままならぬまま,食料支援の滞りや遺体放置などの衛生環境の改善がなされていない等,人命確保を率先させる事の出来ないミャンマー国政の鈍足な対応にため息がでる.
(所属:益村測量設計(株) 氏名:益村公人)

■ PHOTO REPORT (3)野辺地ウインドファームが完成!―国内最大級の風力発電所が青森県に―

最近は地球温暖化の防止策としてCO2の削減をよく耳にしますが、環境面に配慮し、自然の力を活用した風力発電所はその典型でしょう。しかし視点を変えれば、施設の建設自体が自然や景観の破壊につながっているとの見方をする人もいるかも知れません。原子力や化石燃料に替わるエネルギー源として、太陽光、風力、地熱などの自然エネルギーの活用は必要です。そのためにも、重要性を温暖化対策と環境破壊は紙一重であると捉え、地域住民の方々に認識・周知できれば、自ずと進むべき道が開けるのではないのでしょうか。
(所属:日本シビックコンサルタント  氏名:田島久美)

■ 特 集 地球温暖化 あなたはどこまで知っていますか?

今回の意見は,土木学会誌そのものへの意見ではないかもしれない。しかし,この場を是非お借りしたいと思う。地球温暖化問題が深刻さを増していることは,多くの人に周知されつつあるようだが,その対策は,極めて心もとない。「やれることからやる」のは当たり前であり,(少なくとも呼びかけとしては,)「やれないと思うことも努力し,やれるようにしていく」ことが求められているはずだ。もっと,強烈な自己批判も含んだ呼びかけを私はこれまでほとんど耳にしたことがない。なぜ,研究者はそのような,耳の痛い話をしないのか。「まず隗より始めよ」である。事実を知った上で,私たちは今何をしていて,今この瞬間自分は何をすべきかが問われているはずである。
(所属:東大都市環境工学 氏名:尾崎宏和)

■ 4.インタビューわれわれは温暖化へどう対応していくのか [語り手]三村 信男

今月号の特集「地球温暖化」について、現状や原因分析の記事を読んでも、土木分野の動向がどのように結びついていくのかなかなか理解できなかったのだが、この三村先生のインタビューを通して、具体的な対応方法がよくわかった。特に、災害に強い地域づくりが温暖化対策のひとつであるということは、土木の 本来の目的にも合ったもので、今後益々重要なテーマになってくるだろうと思われた。また、産業界に大きな負担になってくる温暖化対策を土木業界の今後の武器にしていこうという発想は、大変共感できるものだ。
(所属:(株)山下設計 氏名:廣瀬 由紀)

土木業界に対する風当たりが厳しい昨今、業界として、温暖化対策にどのように取り組むべきかということが、今後、我々土木業界が生き残っていくための重要なテーマではないかと思います。三村先生も「仕事の中身、つまり質を変えていくきっかけ」と仰っているように、多くの他の業界で温暖化をテーマとした事業を展開しております。温暖化のみならず環境をテーマにした取り組みには、多くの方々から支持をいただけるのではないでしょうか。本誌で特集されているように土木業界として温暖化や環境に貢献できるところはたくさんあると思います。「地球のために必要不可欠な土木業界」、そんな業界になれるかどうか、今まさに岐路に立っているのではないでしょうか?
(所属:大成建設(株) 氏名:野勢辰也)

■ 第3章 美しい河川を蘇らせた廃止発電所の再生 ―落合楼発電所再生事業― 黒川 昌彦

老朽化により放置されていた水力発電所を再生し、活用するという取組みで、規模は小さいながらとても意義のあることと思いました。最初に作られたのが昭和37年という古い発電設備が河川の風景になじんでいて美しいです。
(所属:鉄道・運輸機構 氏名:水野 裕之)

とてもすばらしい取り組みで、このテーマに相応しい内容であった。特に、発電能力を取り戻したとともに、美しい川も戻ったということが、写真からもよく伝わってきた。放置されていた発電所が、どのような経緯で再生事業に取り上げられたのか(例えば、費用負担はどのようになっているのかなど)が、とても、気になった。
(所属:(株)山下設計 氏名:廣瀬 由紀)

■ 学生記事 土木ではたらく 最終回「研究職」という仕事 近藤 由美

今回はとくに興味深かった。「大学,民間の研究所,独立行政法人の研究所の違い」,「今後の研究職の行方」,「学生時代の研究と違う点」,「研究者として欠かせない資質が何がおきてもへこたれないこと」これらは今時分が直面している問題であり,このような記事が組まれていることが非常にうれしかった。とくに最後の研究者として欠かせない資質などといわれると,発想力とか才能とかを考えがちであるが,「何が起きてもへこたれない」とは,とても希望のわく言葉であった。
(所属:東大都市環境工学 氏名:尾崎宏和)

■ 見どころ土木遺産 大津島(旧)回天発射訓練基地 阿部 貴弘

見どころというには申し訳ないような負の遺産であった。薄暗く無機的なトンネルが無言の圧力を感じさせる。回天は映画などでもとりあげられているが、ここには実物の迫力があると思った。戦後60年を経過し、実体験のある人達がどんどん減っていく中、土木遺産として私たちが忘れてはいけない意志を引き継いでほしい。
(所属:(株)山下設計 氏名:廣瀬 由紀)

特殊特攻といえば、神風特攻隊が有名だと思いますが、大津島といえば誰もが人間魚雷を思うことでしょう。回天発射訓練基地跡、砲台跡、魚雷見張所跡をなどから、戦争に勝利することの執念や当時の悲惨さを伺うことができました。戦争のない平和な国であり続けるためには、戦争の悲惨さを親から子へと受け継ぐことが大切です。しかし、言葉だけでは理解しがたい面もあり、このような戦争遺跡を訪れることで、当時の状況や平和の大切さを誰もが実感できるのではないでしょうか。
(所属:日本シビックコンサルタント 氏名:田島久美)

■ 土木屋の海外生活 技術者編 フィリピンの水関連災害の技術協力 徳永 良雄

日本同様台風常襲地域であるフィリピンが、政府の予算不足のため、我々先進国のODAで作られた災害関連施設にその対策を頼らざるを得ないという実情を考えると、ODAが、我々日本人としては、非常にやりがいのある技術協力であるものと思われる。一方で、フィリピン人により、これら最新技術で建設された施設の維持管理や同様な施設の建設を行うことが困難であるという実情は、非常に残念であり、ODAが我々先進国の独りよがりになっているのではと思ってしまう。現地で実務に携われた筆者が感じられた「より現地の視点に立った技術協力が必要になってくるのではないか」という点は、今後のODAの進め方において十分考慮すべき事柄であろう。
(所属:大成建設(株) 氏名:野勢辰也)

■ どぼく自由自題 小声で一言〜その1 コンパクト"国土"再生 斉藤 親

「東京一極集中から地方への分散」が戦後からの一貫したテーマであり、全国各地の都市が熱心に都市再生に取り組んでいる中で、高齢化社会が到来し、債務と福祉で財政運営が厳しい現状の中で、何百もの都市再生が必要であるのか?という意見も理解できる。都市的土地利用のコンパクト化も、これからの時代の流れを考えると重要なのかもしれない。ところで、「都市再生」とは、「国家の経済再生」のみを目的としたものでよいのだろうか?「生活者が都市を選択する時代」がすぐそこまで来ているようであるが、我々生活者も経済や利便性だけを目的とした都市選択をするのではなく、個人が目的に応じた都市を選ぶようにしたいものである。行政は経済だけでなく、地域の特性を活かし、生活者がいきいきとした生活を送れるような「都市再生」を目指して欲しい。そうすることが、結局のところ、経済の再生に繋がるのではないだろうか?
(所属:大成建設(株)   氏名:野勢辰也)

© Japan Society of Civil Engineers 土木学会誌編集委員会