土木学会誌
土木学会誌8月号モニター回答


時局を論ずる 公共事業の欠陥とその生成の根拠は何か 社会学の視点より改革の方向を考える
我々建設コンサルタントにおいても,公共事業のあり方についての批判や透明性への要求に対して,ある特定の利害関係者やマスコミ等の一方的な見解に一刀両断されることへのもどかしさを感じていたものでした。巻頭を飾る本論文は,土木工学の分野とは異なった社会学の論点から非常に分かりやすく記述していただいており,社会学の用語にて支配システム,経営システム,技術システムの関係にはおおいに納得させられました。
最後に,解決策としてカリキュラム改革を提示されており,行き場のない閉塞感をもつことなく読後感を得るものでした。掲載されているHPより本論文の現本となったJCIでの発表原稿を入手することも出来るしかけもよいと思います。
(東洋コンサルタント 小林幸男)

毎号そう感じるが,この「時局を論ずる」には,真正面から問題を指摘する真摯なコメントが書かれており感銘する。指摘されている「行政組織の自存化傾向」は,行政組織に限らず民間企業でも起こることだが,民間企業の場合には商品が売れない等,消費者からの批判と抑制が働くため軌道修正(改善)される。行政組織の場合には,身分保障された公務員が,収益を目的としない公益事業をしているため,そういう軌道修正がもともとできにくい構造となっている。この記事に書かれているように,軌道修正を可能にするために必要なものは「住民側の絶えざる批判と抑制」であり,それが「閉鎖的受益圏の階層構造」をうち破る唯一の手段である。民間企業では,クレームこそが財産という意識が根付いているが,行政組織には歴史上「お上意識」があり,まだその意識が未成熟だと感じられる。今後,行政の情報公開をさらに進めることにより,「住民の批判こそが財産」という意識が成熟することを期待する。
(太田ジオリサーチ 太田英将)

提起されたモデルに基づいて説明された社会システムについては大変興味深く拝見することができました。ただ,私が社会学的な発想になれず,本来のモデル生成の目的とは異なるのかもしれませんが,示された社会システムに対して,「それでは,望ましい支配−経営−技術の関係とは何なんだろう?」あるいは,「これらモデルの何を改善したらどの程度効果があるんだろう?」と考えてしまいます。
論述の根拠にも疑問が沸きました。筆者は秋田・山形新幹線の例を成功例として挙げていましたが,感覚的にはうなずけるのですが,もう一つその根拠がはっきりしない気がしました。私の理解不足もあると思いますので,今後勉強していきたいと思います。
(日本技術開 中野雅規)

社会学の立場より公共事業の諸欠陥を生み出す社会的メカニズムの考察は大変興味深いものでした。話の広場での「土木技術者の気概の起源」の記事に関する内容を含めて,世論から非難されている公共工事とそれに携る土木技術者の使命感喪失に通じる話題が,学会誌に掲載されることが多い最近の事情ですが,今月も佐賀地裁で諫早湾干拓事業の工事差し止め請求に関して,沿岸漁民の求める仮処分申し立てが認められるという記事が新聞紙面を賑わしました。司法の判断を仰ぐ事態に陥っている数多くの事例が,住民の意思を無視した利権構造と結びついた公共工事というイメージを生み,その結果逆風なる言葉で土木技術者の気概が失っていくというパターンがまたも展開されたような気にさせられます。公共事業の計画策定は行政の専管事項ですが,住民参加のもとでの計画作り,非政府組織(NGO)や非営利組織(NPO)の関与などによって,大規模な公共事業の総点検に取り掛かる態度を示す時期なのでしょう。そうでなければ,今月号の「社会資本のアセットマネジメント導入に向けて」という特集も,住民の賛同を得ない「要らない物の維持管理」というイメージに陥る危険があります。作る段階での「公共事業の欠陥とその生成の根拠は何か」の解決が図られてこそ,「維持管理」のためのアセットマネジメンの意義も明確になると考えます。是非はともかく,市民の参加のもとでの淀川水系委員会の計画策定などがマスコミに評価される時代を考えれば,世論を味方につける方策を模索する試みとしてのマネジメントも検討の余地があるでしょう。
(京都大学 西山 哲)

新会長インタビュー 長期的な視点で,技術力の維持と,土木技術者の社会的評価の向上に取り組んでいきたい
海外での仕事,特にアジアで働きたいと思っている私にとっては貴重な助言が含まれていたと思う。特に人生の目標を3段階に分けて考えるということ,このことはとても参考になりました。私は決して若くはありませんが,40代で独立開業,50代で地盤や環境の仕事をメインにアジアで働く,60代ではボランティアとして海外を中心に働きたいと考えています。今は海外では必須の英語の学習に励んでいるところです。
(明代環境地盤研究所 明代達也)

特集 社会資本へのアセットマネジメント導入に向けて
アセットマネジメントについて多分野からの意見があり勉強になりました。修繕計画や投資計画の策定イメージとして,仮想の数値を用いて計算されたグラフとそれをどのように評価するかを示したものは,計画策定の流れが具体的に示されていたので理解しやすかったです。
資産価値算定やライフサイクルコスト算定などの定量化作業が計画策定の基本となっているようなので,定量化の精度向上が非常に重要かと思います。土木技術者として携わることが可能な要素技術の例(劣化予測,リスクマネジメントなど)も多く示されていた点がアセットマネジメントとの関わり方を考える上で参考になりました。
また,社会資本の株式化に関する記載の中で,道路の維持だけでなく通行料を増加させて収入増をはかるという積極的手法の提案が興味深かったです。アセットマネジメントというと劣化予測のイメージが強かったのですが,交通計画などからのアプローチも考えられるのではないかと思いました。
(東電設計 白濱美香)

アセットマネジメントの導入の背景,考え方から始まり,理論・実践・課題の一連の流れが様々の視点から統一性を持って書かれていたため,非常にまとまっており理解が深まりました。ミクロマネジメントとマクロマネジメントとの連携が技術的視点,経営的視点等,様々な視点からどう絡み合い,何が課題で必要であるか興味深く読ませていただきました。今後,アセットマネジメントによるインフラ整備が大きな柱となると予見され,インフラ整備に関わる身として,ライフサイクルコストを含めしっかり先を見据えた整備・設計計画が必要であると思いました。
(鉄道建設・運輸施設整備支援機構 佐藤貴史)

特集内容としては時勢を捉えたテーマで,構成的にも現状と必要性,先進事例,今後の展望及び提言からなり,良かった。
ただし,各論文中の最初に現状と必要性等がほぼ類似する内容で記載されていることが少し残念であった。
(JH 高橋俊長)

現在アセットマネジメント業務に取り組んでいますので,特集全般に対して非常に興味を持って拝読させていただきました。今までに,いろいろな文献や参考資料などで,勉強・研究をしてきましたが,今回の特集記事では短い記事の中に多方面からの最新の知見が織り込まれていて,たいへん参考になりました。これからアセットマネジメントについて勉強される方にも,とてもよい教材になると思います。
折りしも美浜原発で不適切な維持管理を原因とする悲惨な事故が発生しました。増大,老朽化した社会資本ストックの適切な維持管理は,もはや猶予できない状況に置かれています。アセットマネジメントなどの効果的な手法を導入することによる,効率的で適切な維持管理方策の向上が望まれます。
(中央復建コンサルタンツ 澤田幸治)

近年,建設投資の低減といった環境面だけでなく,省資源環境負荷低減の観点や,コンクリート構造物の老朽化と相まって,新築するだけでなく補修・維持・改善するといったリニューアルのニーズが高まっており,当社においても,管路診断コンサルタント協会や構造物非破壊診断技術協会等において活動しているものであります。そこでは,アセットマネジメントとは,施設や構造物を資産としてとらえ,資産価値を高める目的で維持や補修・改築を行っていくことを目的として計画的・効率的に管理するマネジメント手法と狭義にとらえ,調査業務より発展させようと企画している段階であり,このような特集により総合的に(1)考え方(2)事例(3)方向性(4)提言,とまとめられているので,今後の業務へのアプローチへ非常に参考となるものであります。
おりしも関西電力美浜原発において配管の減肉磨耗が事件となり一般紙においても「予防保全」等の用語が見受けられる時代に突入しており,本企画はタイムリーであったと思います。
(東洋コンサルタント 小林幸男)

記事全体を拝見して,アセットマネジメントの重要性,必要性を再認識させられました。
先人が苦労して建設した土木構造物を次の世代まで維持するために知恵を絞ることは誇りある立派な行為だと思いますが,日本ではなぜか社会全般にそうした意識が薄く,社会全体にその必要性が理解されているとは言い難いようです。もっと社会が,こうした,派手ではないけれども意義ある取り組みを称える世の中になればと切に願います。
(日本技術開発 中野雅規)

金融関連で使用されている「アセットマネジメント」という言葉が,土木分野において使われ始めた頃は非常に奇異に感じていたが,昨今の社会情勢,厳しい財政状況の中,非常に重要なキーワードとなっている。
今回の記事を読み,アセットマネジメントにおいて最も重要なことは,対象となる施設の劣化予測等の適切な判断を行うために建設記録や点検結果,補修履歴等のデータベースを適切に管理することではないかと感じた。効率的な維持管理を行ううえで,いかに適切に点検・診断結果を整理,蓄積し,これらのデータベースを効率的に管理,活用していくかがキーポイントであると思われる。
(本州四国連絡橋公団 矢野賢晃)

公共工事(海岸事業)の,地方自治体の要望の中に,新設より改良の方が圧倒的に増えており,そういった要望にさらに応えて行くために,アセットマネジメントの考え方は勉強していく必要があると実感した。
(水産庁 浜崎宏正)

本格的な更新時代を迎え,様々な雑誌や文献等でアセットマネジメント導入の重要性について触れた記事を目にします。ただ,これらの記事を読んでいつも不満に思うのは,記載内容が概念的なものばかりであり,これまでの維持管理と何が違い,どのような効果があるのかが具体的に示されないことです。したがって,私にはアセットマネジメントを概念的に「ぼんやり」としか理解できません。今回の特集は,幅広い分野から取り組み状況や課題を紹介しており,興味深く読ませて頂きましたが,これも概念的な記載が中心であったことは残念に思います。
(本州四国連絡橋公団 鳥羽保行)

我が国の社会資本が抱える老朽化という問題について深く考えさせられた。通常,マスコミの報道に寄るところも大きいと思うが,公共事業というと新しい道路や橋などの建設ととらえることが多い。高齢化社会における年金問題と同様に社会資本高齢化社会における社会資本の維持管理問題も国民全体で考えていかなければならない重要な問題であるということを再認識させられた。
(九州大学 浜田康治)

「アッセトマネジメント」という言葉に惹かれて読ませてもらいました。執筆者も様々な分野でご活躍の方々で,たいへん興味深い特集でした。昨今の公共事業見直し論議が活発な中で,たいへん時宜にかなった特集と思います。これからの新規事業に対してはよく理解できますが,既存のもの,特にすでに資産価値のマイナスになっているものや,マスコミ批判の対象となるような元々資産価値が疑問視されるものが,実際にはどう扱われ,市民生活への影響はどうなるのかというようなことも興味があるところです。
(日揮 宮岡秀一)

論説 アセットマネジメントシステム導入の考え方
本特集を通じて,アセットマネジメントの概要や個々の要素,事例を通じた今後の課題など,とても興味深く拝読させていただいた。8月号ではミニ特集として技術者倫理と意思決定が話題としてあげられていたが,アセットマネジメントこそが,総合的な土木技術の運用という観点で,技術者倫理の総合的な意思決定システムの良い例であると感じた。より適切な意思決定を行うためには,ライフサイクルコストやリスク管理など,個々の専門技術に深く根差した判断基準の高度化が必要であり,またそれらの要素技術を総合的にとりまとめ,時々刻々変化する環境に柔軟に対応しながら意思決定を行っていけるようなシステムづくりは非常に難しいが重要な課題であると感じた。米国の事例で紹介されていたように,全体をとりまとめるシステムとしてはできるだけ主観を廃し客観的に意思決定を行うソフトの開発が有効であると考えられるが,最終的にはソフトにインプットする諸条件やパラメタは,それぞれの要素技術における専門技術者の判断(倫理)によるところも大きいと感じるので,その意味でもしっかりとした技術者倫理を持つことは重要であると感じた。
(五洋建設 田島芳満)

第1章 土木分野のアセットマネジメントとは?
本文の感想としまして,まずミクロマネジメントの部分の社会資本に対する評価というのは非常に難しいのではないか,という点です。というのは,土木工事にかかわる技術者は「つくる」ことに対してはノウハウの蓄積も多いと思いますが,「維持する」ということに関しては前者と比較して非常に少ないのではないでしょうか。その点から維持に関して精度の高い評価は現時点では出にくいのではないでしょうか。信用度の高い評価が土台としてなければ,最も費用対効果の高い資源配分を得ることは困難でしょう。しかし,逆に言えば,社会資本の維持管理の視点を持った技術者の育成が今後,重要になってくるということがはっきりしてくると思います。
次にマクロマネジメント面について,本来の金融資産の「アセットマネジメント」には不確実性の分散という観点も入っていますが,それは社会資産をマネジメントするときにも不確実性という概念は入ってくるのかどうか。例えば,急激な予算の減少から,設計基準の変更による補強費,災害よる破損など不確実性ということでは様々なケースが考えられると思います。もし,構造物のライフサイクルについて可変であると考えるならば,緊急の場合であっても,不確実性を加味した行動を取ることができ,しいては社会資本に対して国民もしくは住民という顧客の満足度をより高くすることが可能になるのではと思います。
(鉄道建設・運輸施設整備支援機構 石橋英介)

もともとは,金融資産の運用に関するものであったのが,社会資本にも適用していくことの必要性,また現状や課題について詳細に説明されていて,大変勉強になりました。高度経済成長時代の急遽な社会資本整備による反動やこれからの社会資本整備のあり方,またIT技術の向上により,アセットマネジメントシステムが急速に構築されようとしています。今後,土木分野の社会的貢献には,工学的技術の知識だけでなく,経済・法律といった社会科学の知識も必要になり,建設技術者としての役割がますます大きくなっていくと感じました。
(東洋建設 北出圭介)

多くの機関で,土木分野でのアセットマネジメントが取り上げられるようになり,アセットマネジメントとは何か?その必要性などが分かり易く解説されているが,では,今,具体的にどうすべきかという提言を,もっと突っ込んで述べて欲しいと感じた。
(前田建設工業 赤坂雄司)

1-2 社会資本におけるアセットマネジメントの定義と実用化に向けた課題について
社会資本のアセットマネジメントと実用化に向けた課題が体系的に述べられており,理解が深まった。特に「ニーズに基づくサービス水準の設定」では,国民が行政サービスの顧客であるという視点から,重要であると感じた。
アセットマネジメントの目標として望ましいサービス水準の実現は大切であるが,その具体的設定は困難である。例えば,サービス水準を考えるにあたって「利用者の受忍限度を満たす」という概念を取り入れてみたらどうであろうか。社会資本整備に携わる者としてやや消極的な姿勢と映るかもしれないが,私個人「開かずの踏切問題」に関わった時期に非常にこのことを感じた。また,このような利用者に関わる人間工学的な基礎的研究資料がほとんど存在しないことも分かった。「許容範囲」は個々人や時代背景などで差があることも事実であるが,統計的手法などに基づいた受忍限度の設定は,今後の事業執行者の説明責任にとっても重要な役割を果たすものと考える。
(復建エンジニヤリング 川瀬喜雄)

2-3 東京都の道路現況と道路アセットマネジメント
アセットマネジメントの事例として,自治体の道路を対象としており,分かりやすい記事であった。特に定期点検によるデータの蓄積の重要性に関しては,その通りであると感じた。
「2-1 国土交通省における道路アセットマネジメントの考え方」でも述べられているが,舗装のLCCの場合でも大きな外部費用が発生しており,予防型維持管理は重要である。これを一歩進めると施設の点検にも費用が掛かり,最適化する必要があると考えられる。データベースの蓄積と構築は,点検を「いつ,どのように行えば効率的か」という問題に対し,信頼性工学に立脚した確率論的手法の導入などにより解決する与条件となり得る意味からも重要であると考える。
(復建エンジニヤリング 川瀬喜雄)

2-5 社会資本の証券化事例(熱海ビーチライン)
民間資金調達によるアセットマネジメントの手段としての証券化の概要と特徴を 理解することができました。次の機会には,ビーチラインや海外の証券化の実例に基づき,事業者と投資家の概要,潜在リスクとその分配方法,キャッシュフロー,商品の値段とリターンや今後の改善点などについて多少詳しく知りたいと感じました。
(日揮 飯塚浩晃)

社会資本の証券化について専門家らしく丁寧に説明されていたが,「表-1 海外における社会資本の証券化実例」で規模やその内容についてもう少し情報を入れて欲しかった。また,アセットマネジメントにどう活かしていくかの視点からも述べて頂きたかったと感じた。
(復建エンジニヤリング 川瀬喜雄)

3-1 「歴史的地区」の資産評価を考える
歴史地区や文化財,美術品などの価値を理解し保全していくためには,まずそれらに身近に触れることの出来る環境造りが必要ではないかと思います。日本には法隆寺などの国際的に価値の高い文化財が多数ありますが,入場料が高額なこともあり頻繁に訪れることができないのが実情です。博物館や美術館についても同様で,せっかくの資産が有効活用されていないと感じます。保存とともに,積極的な資産の活用についても考慮していく必要があると思いました。
(日揮 飯塚浩晃)

多くの人は美しい自然や,歴史的な町並みや伝統的技術を要する建物などに,物として存在する以上の価値を感じていることが予想されますが,それをどのように定量的に示すことができるかは,難しい問題だと思います。文化的景観を保存していくために支払ってもよい金額を尋ねるという手法は,定量化する手法の1つとして興味深く感じました。
この手法により定量化された値を,それに準じた資金を得るための説明材料としてうまく利用できれば歴史的地区に生活する方々の負担を減らす手助けになるのではないでしょうか。
(東電設計 白濱美香)

3-4 不動産金融におけるアセットマネジメントと社会資本への応用可能性
日本で不動産の証券化が定着しつつある現在,社会資本に対してははどうなのかという観点で拝見させて頂いた。実際に「熱海ビーチライン」が社会資本として初めて試みられており,この道路では既存道路における今後の維持運営のために証券化という手法がとられたようだが,もっと積極的に証券化を活用することはできないだろうかと感じた。新規路線においても維持運営の部分に関しては証券化することで,公共事業費を抑えられるだけでなく,通行料金のアップなどをせずに済むのではないだろうか。(逆にアップサイドの目論見通りに進めば通行量を下げられる可能性もあるのでは?)また,採算性においても建設当時から集客力のあるパーキングテナントをいれるなど様々な可能性が考えられる。さらには,証券化による事業の透明性という面からも,社会資本整備に対する国民の見方を変えていくこともできるのではないだろうか。「熱海ビーチライン」が試金石となろうが、円滑な社会資本整備における最も可能性ある手法として今後も着目していきたい。
(オリエンタルコンサルタンツ 岡本俊哉)

特集の「社会資本へのアセットマネジメント導入に向けて」は,全偏をとおして興味深く拝読させて頂いた。中でも,3章の「展開の可能性と方向性」の3-4の最後で示された提案に目がひかれた。国内初の事例である熱海ビーチラインの証券化の例をだし,AMの内容の次第によってはさらなる付加価値を産み出し得ることを提示した上で,今後のAMは,都市間競争に勝つための積極的な手法となっていくとの内容であった。
社会資本には,整備・維持管理等に多くの費用を要するものが多いという特徴がある中で,今ある資本を維持し,さらにうまく活用していくという視点は,かなり広範な分野の資本に適用が可能であり,そういった切り口を提案していくとともに,展開が可能な資本として今後の整備・運用を進めていく経営的な視点が,今後の地域づくりに有効と考えされられた。
(八千代エンジニヤリング 高森秀司)

今後のアセットマネジメントのあり方
アセットマネジメントが重要であることは今では誰もが認めるところである。しかし,現在でも社会資本の大半は「メンテナンスフリーが最良=造りっぱなしが良い」というスタンスで造られているように感じる。自分の家・財産に関しては誰もが真剣にアセットマネジメントするものと思うが,それを社会資本でも行うことが必要だ。社会資本の場合には,小林先生が書かれているように,信頼−責任−知識共有化という高いレベルの財産管理が要求され,そこにプロフェッショナルが関与するということになるが,基本は「社会の財産を我がこととしてとらえる」という意識ではないかと思う。
(太田ジオリサーチ 太田英将)

ミニ特集 技術は人なり いま,問われる技術者の倫理
今月号から始まったミニ特集。興味深く読んでいこうと思っています。
(JH 高橋俊長)

「技術者倫理とは何か」から,自分の行動規範を見つめ直すよい機会が得られました。全4回にわたる掲載を期待しています。
(東京都 石川幸裕)

ここ最近,企業という組織に対するCSRについての話題が取り上げられ,また,その発展形とも捉えられるSRIについても関心が集まっている中で,個々人のレベルでの倫理観に関する特集が組まれたことはタイムリーなことで,興味深く拝読しました。なかでも,技術者倫理とプロフェッションについて,異なる切り口から書かれた記事を読んで,自らがこれまでに経験してきたこと・思っていたことを整理するよいきっかけになったのは,私だけではないと思います。
また,実務における責任と倫理観に関する記事も興味深く,事例を挙げながらの問題提起と答えにつながる方向性についての記述は,直面するであろう問題が多様であることを再認識させられるものとなりました。欲を言えば,学生や若手技術者を対象とした基本的な知識を補完するような内容が取り込まれていればいいなと思いましたし,例えば,Q&Aのようなコーナーがあるとより良いのでは,と個人的に思いました。
(JR東日本 外狩麻子)

技術者の倫理は近頃,金銭的価値に圧倒されている節があると思う。ばれなければ,多少の問題があっても改善しない事例は身近に多い。事の重大さにもよると思うが,基本的には自社の利益が減少することが根底にある。「利益優先」資本主義の基本のようだが,失敗するのが人間。やり直しには,お金がかかる。倫理と利益を天秤にかけると,現在の日本は,利益を優先している気がする。社会資本を構築しているという意識を忘れずに,仕事に取り組みたい。
(匿名希望)

土木学会誌ではしばしば,土木技術者(というより企業)にとって耳の痛い倫理問題が真正面から取り上げられており,素晴らしいことだと思う。しかし,書かれていることは正論であるが,この記事と同時期に新潟市の談合報道があったため,この正論が建設業界の「建前」として見えてしまい,本気で「現実」に対して批判しているように感じられない。この「建前=正論」と「現実」とのギャップを埋める突っ込んだ記事が必要な時期になっているのではなかろうか。
(太田ジオリサーチ 太田英将)

社会資本整備に限らず,企業活動として,ものづくり行う場合,安全・環境・公共利益・企業利益など,適切な価値のバランスを取りながら,判断・行動することが求められます。最近,このバランスが崩れたことによる事件や事故が多く発生しているように思われます。建設業界が,いまだ不況の域から脱しきれていないこのような時代こそ,このバランスを常に意識していかなければならないことの重要性をこの記事を読んで再認識しました。今後,技術者に対する社会的信頼を取り戻すためにも,技術者倫理がさらに浸透していくことに期待します。
(東洋建設 北出圭介)

近年の企業の不法行為・不祥事を反映して,技術者倫理について様々なところで議論されている。私が学生の頃,専門教育の中に倫理がなかったことを考えると時代の変化を感じざるを得ない。
個人的には,技術者倫理は,「技術者の倫理的行動」の問題のみならず,コーポレートガバナンスに代表する「組織倫理」の問題を同時に論ずべきと考えており,その点で記事の示唆には共感をおぼえる。また,土木工事の主体が公共セクターからの発注である以上,この問題は公共工事の執行システムにも波及すると考える。「公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律」の施行以後、多くの発注者が適正な施工の確保・企業評価等を目的に様々な施策を展開しているが,もう一歩踏み込んだ議論をする必要性を感じた。
(東京都都市整備局 草深玲安)

倫理や哲学といったものは,定期的に耳に入れておくと,心の糧となり,仕事への姿勢を見直させる貴重な機会となるので,ありがたい。
(水産庁 浜崎宏正)

技術者倫理に関する特集が今月号より掲載されるとの事。時代が要請するものとして注目すべき特集であると考えます。技術者に対する倫理教育の普及が考えられていく一方で,倫理を大切にする企業を育てる工夫も必要になるでしょう。倫理に反する行動を行った企業は,不買運動などにより市場から撤退させられるという自然の流れだけでなく,倫理感に優れた会社を積極的に増やしていく制度等,例えば,社会に対する企業活動の貢献度を評価し,優れている企業には株式投資を行うといった社会的責任投資型ファンドの整備などの試みです。既に欧米では公的年金を,このような社会的貢献度の高い企業に投資して運用しており,特に英国では年金運用受託者が当該投資政策に積極的に関与するように指導しているとの事。我が国における環境重視型企業に対するエコ・ファンドも,社会貢献や社会的責任を評価基準にしたファンドであると考えられますが,公的資金の運用対象にするには消極的とも聞きます。「してはいけない」事を教え込む教育によって襟を正すことも大事ですが,逆に優れた倫理感をきちんと評価し優遇することで,そうでない企業や技術者と差別化していくシステムの整備も考える必要があるでしょう。学生を見ていても,倫理を持っていて当たり前を教える時代ではなく,倫理を持っていることが目に見えて業績の拡大につながることを体験させなければいけない時代です。SRIと称される社会的責任投資は,倫理だけでなく環境や人権あるいは消費者,従業員などを大切にしている企業を応援するための投資手法として,既に米国では200兆円,欧州でも45兆円程度の投資残高になっているとの報告もあります。信託銀行や投信会社において,企業年金向けのSRI運用の受託も始まっているようですが,家計から安全な郵貯や預金へ,金融機関からは国債・地方債というように公共セクターへ資金が流れている現状において,資金の流れを変えるという観点と企業の社会的責任を結びつけるSRIは,公的資金の活用によって,より一層普及すると考えられます。経済産業省などでは研究会も設置されているようですが,減点主義の政策ではなく,倫理に優れた企業の株式は買われ,業績が伸びることで社員の給料も上がるという,「ほめて育てる」型の政策に,政府が積極的に加担していくことも期待したい。
(京都大学 西山 哲)

技術倫理とは
福井県の美浜原発3号機で11名が死傷した事故が起こってしまいました。
今回破損した配管が検査対象未登録だったうえに,点検が必要と認識していたと報道されています。このことから,「ひたすら“真面目に,悪いことをせず”」に作業を行っただけでは,マニュアル外にあることに対して対応できず,最悪のケースも発生してしまう可能性もあることを示したものだと思うと同時に,自律性を基にした技術者の倫理観の重要性について痛感した気がします。
と同時に,この事故を当事者以外はどこか他人事に思ってしまうということはないでしょうか。今回の事故は発電所内の委託関係が問題である,と簡単にかたずけてしまわず,自分の会社にも「事故の巣」となっているところがないか,あれば早く摘み取る体制を取ることが必要なのではないでしょうか。
(匿名希望)

本稿を通じて,技術者倫理について深く考える良い機会となった。技術の高度化・専門化が進み,さらには環境問題などを含めたより総合的な技術の複合が重要である今日こそ,それぞれの専門分野の技術者はそれぞれの視点に立って適切な意思決定・主張を行い,議論を尽くした上でプロジェクト全体としての意思決定を行う必要があると強く感じた。また実際問題では,ある視点では正であることが違う視点では否となることが数多く見受けられ,この観点から,専門技術者の意見を公平にとりまとめ,適切な意思決定を行うためのプロジェクト全体としての倫理的なシステムづくりも重要であると感じた。
(五洋建設 田島芳満)

なぜ,今,技術者倫理が求められているのか
ここでは,土木技術者を中心にした技術者倫理の必要性,培われてきた土壌と,崩壊するに到った経緯などが解説されている。
土木工学は「Civil Engineering」であることを,我々土木技術者がもう一度,よく考え,行動することが必要であることを強く思い知らされた。
(前田建設工業 赤坂雄司)

組織の倫理と個人の倫理 個を重視した仕事と組織の関係の構築
個としての責任感を抱かせることで倫理を回復することは有効であると思う。 しかし,それは純粋に技術者として存している場合には適用可であろうが,安全な環境を維持していくことが責務である場合には個として確立することが難しい場合が多いと思う。安全担当者・設備の維持者・管理者というディフェンス側の立場では安定した動作をすることが求められ,これは他の担当者に引き継がれた後でも同様の動作が求められるため,職務担当者には、個というよりも“安定したプラント”であることが求められるだろう。
組織の倫理維持の為には組織との密結合状況下においても機能指向(not組織指向)で嫌気性の腐敗を産まないようにすることが必要である。それには白血球の健全な活動がありさえすれば組織倫理を正常な状態に保つことが可能なのではないか。
その白血球を組織指向にさせないための情報開示・オンブズマン制度なども個の確立による浄化作用と併せ重要ではないかと考える。
(JFE技研 田近久和)

技術者倫理と実務
受注業務に対して,技術者として「専門的知識・技術・経験を踏まえ,総合的見地から土木事業を遂行する」ことが求められますが,実際の業務遂行にあたっては,それ以上に基準・法律をクリアしているか否かが問われ,現在運用されている基準・法律が金科玉条となっていることが多く,記事に示された「倫理的ではあるが法律違反の事例」へのジレンマを感じることがままあります。
それに対して,記事では技術者倫理をもう一歩進めて,組織の責任体制に踏み込んだ考え方を示してくれています。
もちろん,技術者は「自己の属する組織にとらわることなく」,自らの倫理観に則った行動をすべきであると考えますが,その責を単に個人に負わせるべきではなく,組織が科学的,システム的に取り組むべき課題であると位置づけていることに共感を覚えました。
倫理が画に描いた餅でなく,実際の行動規範となるためにも,今後ともこうした科学的アプローチを進めて頂きたいと感じています。
(日本技術開発 今野 剛)

技術は人なり 先人に学ぶ技術者倫理―広井勇と門下生たちの精神―
札幌農学校の青年教授ホィーラーさんや第23代土木学会会長の青山 士さんについて取り上げられた記事を最近よく目にします。これらは決して懐古主義によるものでもなく,また,単なるブームでもないと思います。この特集内に幾度となく紹介されている様々な倫理の崩壊事案に加え,美浜原発の配管破裂事故が発生するなど,今,技術者倫理が強く求められています。そのような時代の要請に応えるためには何をなすべきか?それらを模索した結果,優れた「先人に学ぶ」ところに行き当たったことは自然な流れであり,また,優れた先人を多く持つ我々は幸運であるといえるでしょう。
本文の末尾にあるように,私も含め土木技術者みんなが「自己を磨き,教養を高め,人々を愛すること」を実践するべきだと思います。
(中央復建コンサルタンツ 澤田幸治)

今回の特集のような記事とマスコミ報道を比べて,日常生活においては土木への否定的な情報にさらされやすいと感じました。信念を持った先人の話を読み,テレビ等の情報に流されがちな日頃の態度を振り返られずにいられませんでした。
(匿名希望)

プロジェクトリポート わが国最大のプレキャスト逆T式擁壁の施工 30tの擁壁を施工誤差1mmで据え付ける−富津館山道路
最大高さ8.2m,1ブロックの重量480tという巨大なプレキャスト堅壁を施工誤差わずか1mmで施工する厳しさ,またそれが計算通りにきちんと据え置かれたときの技術者達の安堵感が伝わってくる記事でした。一見簡単に建っているように見える構造物も,こうした苦労の結晶であるという事実を再認識することができました。
(京都大学 三津田祐基)

「施工誤差1mm」というタイトルが目に飛び込んできた。一体,何が「1mm」なのか?「現場で,そんな許容値で果たしてできるのだろうか?」というのが私の“第一印象”でした。しかし,本文を読むにつれ,土木技術者としてのプライドを見る想いがしました。現場は「不安」との戦いかも知れませんが,その不安を努力や技術によって拭い去ろうという「プライド」。
私も土木従事者として,とても参考となるリポートでした。
(大林組 中村 泰)

土木技術者が,最も身近に感じる構造物の1つに「擁壁」があります。この擁壁の竪壁高さが,8.0mのプレキャスト部材ということに加えて,竪壁設置誤差を1mmに設定したことに驚愕しました。許容値5mmのところを1mmに設定したことは,土木技術者根性といいますか,土木構造物に魂を注ぎ込む姿を垣間見ました。型枠を使用した鉄筋位置の管理は,すばらしいの一言です。最後に環境保護についても記述されていたことは,自然環境の良い場所で育った私にとって共感するものでした。
(復建エンジニヤリング 大嶋 誠)

施工誤差1mmという極限とも思える施工目標を掲げ,それをみごとに成し遂げた施工者の方々の努力に感服した。しかし現場施工に,ここまでの施工精度を要求しなければならいない工法というのもいかがなものか。詳細の事情を知らないため無責任なことは言えないものの,逆に誤差を許容できる方法を模索するべきではなかったかと考えさせられるものがあった。
(JFEスチール 芥川博昭)

大変興味を持って拝読した。大規模構造物に係る省力化施工については,Pca工法に代表される残存型枠工法の採用が本誌や他誌で紹介されているが,躯体の本体構造を一体として施工している事例は見たことがない。継手位置の設定に疑問の点があるが,工期短縮の目的だけでなく,安全施工の面から言っても効果のある事例だと思う。
また,施工誤差を確保するべく施工会社が真摯に対応しているのが感じられた。恐らく,記事にある型枠材の膨張・収縮の問題だけではなく,型枠材の加工・設置(レベル維持等)の問題もあったであろう。新工法の普及には,設計・製作における努力だけでなく,施工者の創意工夫が不可欠であることを改めて認識した。
(東京都都市整備局 草深玲安)

文章のリズムの良さにいつの間には最後まで読んでしまった。プレキャスト擁壁が大型になればなるほど継手用鉄筋の施工精度の確保は容易でないことは経験で想像がつく。
しかし,小雨程度で型枠の転用ができなくなるほど施工の精度を確保するシビヤさには驚いた。今後,工期短縮や現場環境保全の観点から大型プレキャスト化に進むことに必然性を感じている。そのような中,今回のような山岳部において大型のプレキャスト部材の運搬をどのようにしたのかについても知りたいところである。
(東急建設 高倉 望)

逆T型擁壁の設計は大学の設計に関する授業で課題となる事から,比較的単純な構造物の印象がある。しかし,設計の容易さのイメージとはかけ離れて,現場作業は非常に神経を尖らせるものであるようだ。富津館山道路の現場ではプレキャスト擁壁の設置に「モルタル充填式鉄筋継手」を採用したため,継手となる下側の鉄筋の配置誤差は5mm以下と設定する必要が生じた。さらにこの現場では,1mm以下に設定しなおすことでより精度を高めることにチャレンジした。誤差の許容範囲を自ら厳しく設定しなおすことが,結果的にはトラブル発生の回避につながり,作業工程をスムーズに消化するにいたったようだ。昨今,企業による不祥事が相次ぐ中,土木工事に関してもコンクリートの水増しや鉄筋量の不足などの問題が浮き彫りになっている。土木現場の作業は一般の市民の目に触れられない事が多分にあるため、現場を管理する人間の技術者倫理が問われることとなる。今回のこの現場のように,妥協を一切許さないような技術者の精神が必要だと感じた。
(東京都立大学 藤原多聞)

忙中ペンあり 第八回 マスコミ嫌いと御用学者
今号の特集でも取り上げられているような倫理の正確な概念の欠如からこのようなメディアの現状となっているのであろうと思います。人間社会の根本ともいえるであろう正しい倫理の概念を,人間社会を影から支える土木がまず率先して再確認していくべきであると感じました。
(京都大学 三津田祐基)

マスコミの偏重報道も多いと思うが,誤報の是正や,正確な情報提供が可能な広報体制の確立は不可欠だと思う。まだまだ閉鎖的なところがあり,もっと積極的に業界を広報できるようにしていく必要があると思う。
御用学者という表現がいいかどうかはあるが,文中のとおりあまりにもバランス感覚に乏しい者が多い。そのことからも正当にマスコミに対処出来るよう在りたいものだ。
(JH 高橋俊長)

建設関係の会社で働く私自身もマスコミ嫌いであるかもしれません。誰でも自分の会社のことについて悪意を持って書かれるのは嫌でしょうし,まして,正しい情報を提供し,真摯な対応をしたのに,当方の意図とは180度違うことを書かれたときにはますますマスコミ嫌いになってしまいます。
マスコミは憲法の「表現の自由」を楯に権利の濫用を続けている感が個人的にはします。それを抑制するには本文中にもありましたとおり,誤報については反論し,訂正させることが必要だと思います。そのためにはマスコミ側に適切な資料提供や説明など,その場でしっかりと対応できる広報活動も重要ですが,提出資料のコピーの保存や説明内容の議事録の記録を残してしっかりと反論できるようにするなど,後で問題が起こったときに対応できるような広報体制も重視することが大事だと思います。
(鉄道建設・運輸施設整備支援機構 石橋英介)

土木学会誌で御用学者の批判とはなんと大胆なエッセイと期待して読ませていただきましたが,エッセイの字数より仕方がないと思いますが,もっと大胆に,例えば・・・と事象を交えて痛快に切り込んでいただきたかったと思います。「マスコミ嫌い」は次回ということにして,「御用学者に物申す!」で一本勝ちを狙ってよかったのではと思います。
(東洋コンサルタント 小林幸男)

日頃,土木関係者が憤っている内容について,メディアに詳しい方からの鋭くも冷めた意見を伺うことができて興味深い記事でした。
メディアがなぜ公共事業を批判するのでしょうか。文中にあるように,もちろん我々には襟を正さないといけない場面が多々あるでしょう。しかし,それだけでは根拠無き批判は収まらないでしょう。
経済の分野では,経済学の分野からマスコミや「経済評論家(経済学者ではない)」の誤解を徹底的に批判する本も登場しています。そうした取り組みが必ずしも最適解だとは考えませんが,我々土木技術者も,誤報の指摘だけではなく,「国の借金は土木のせいだ」などの根拠の無い指摘に対しては,根拠を示して誠実に反証する必要があるのではないかと思いました。そしてその行動が単なる反証ではなく,土木の「ポジティブキャンペーン」になるよう努力する必要を感じました。
(日本技術開発 中野雅規)

体感できる土木ミュージアム17 風の岬で地底散歩 青函トンネル記念館(青森県東津軽郡三厩村)
20世紀最大の青函トンネル。電車では僅かな時間で通り抜けてしまうトンネルも各種の文献等にて,その偉大さを感じていたが,このような施設が存在するのを初めて知りました。機会があれば是非行って,先人の偉大な功績に直に触れてみたいと思います。
(JH 高橋俊長)

大型プロジェクトは,一般の人たちに積極的にその内容が分かりやすく公開されることが多い。しかし,ほとんどの人たちは,家の前の道路工事が何の為に,やっているかを知りたがっていると思う。しかし,数百万程度の請負工事では,一般の人たちに親切に説明したり,工事内容を公開はしていない。看板に「電話工事」「下水工事」と掲げるだけでは,理解を得る事は難しいのではないか。何をしているかよりも,何のためにしているのか?どういった不都合を改善しているのか明記したほうがより良い理解を得られる思う。
(匿名希望)

真夜中の技術者たち 第4回 下水処理場の維持管理
私事だが,高校までは,京都に暮らしていた。この記事に登場する鳥羽下水処理場も15年ほど前に訪問したことがあり,懐かしく読んだ。正確には,鳥羽下水処理場ではなく,記事によれば,鳥羽水環境保全センターという名称になっているようだが,こういう実態を隠すかのような名称変更が本当にいいことなのかどうか,考えさせられるところではある。ちょうど,土木工学科を都市環境工学科などに改称するのと同じように。
(東京工業大学 浦瀬太郎)

インタビューにおいて,「浄化水を河川に放流するだけでなく,下流では飲料用として取水され,大阪湾の富栄養化防止を念頭に置き,仕事に取り組んでいる」というコメントが大変印象に残りました。自分の生活を振り返ると,当たり前のように出す生活排水のその後について,特に考えることもありませんでした。こうした働きを様々な媒体を通じ,多くの方に知ってもらうことが大切と思います。
(鉄道建設・運輸施設整備支援機構 佐藤貴史)

地中化に埋設されているライフラインは目にすることが出来ないため,市民の多くから理解されていない点も多い。是非,土木学会誌や土木関連雑誌の掲載にとどまらず,多くの市民が目にする雑誌でPRしていただければ,と関係者として切に願うところです。
(匿名希望)

普段は目にすることのない下水道のメンテナンスを紹介する良い企画だと思います。連載のこれまでの緊迫した工事に比べると地味な作業ですが,大雨のときの下水処理場は大変なものと想像できます。そのような洪水発生時の下水処理場やダムなど治水現場のドキュメントのような企画ができればより現場の緊迫感が伝えられるのではないかと思いました。
(中央大学 田中聖三)

下水道管きょ内の点検が8〜10年に一度という記事を読み驚きました。実際に費用や管きょ総延長を考慮にいれた上での最善策なのでしょうが,素人としては不安を抱いてしまいます。記事にもあるとおり,下水道にたいする市民の意識が薄れてしまっていること起因する下水道整備の難しさなのかもしれません。一層のPRにより下水道の重要性について市民にアピールしていくことの重要性を認識させられました。
(九州大学 浜田康治)

話の広場 「投稿」今,長崎市の斜面地交通が面白い 様々な斜面移送手段とこれから
特に幅が広いわけでもないごく普通の坂道に斜面移送機器を設置して歩行者とすれ違えるようにしているのは面白いと思いました。ただ,住宅地に設置することにより便利になる反面,騒音などの被害がどの程度発生しているのかが気になりました。
(京都大学 三津田祐基)

日本中,斜面地に住宅を構えているところは多い。私の住む広島もそうである。ただ,長崎は狭い道路しかないところが多く,日本の中でもかなり特殊な事情のある斜面の町だと思う。今でも荷物の運搬に馬が使われているという。今回の話の中では斜面移送機器が現状では最も良い手段ということであるが,将来のことを考えると長崎のような町はもっと根本的な都市開発が必要だと思われる。ただ,これはかなり難しいことで長い時間と地域住民主導の開発にならなければ円滑な遂行は困難であると思われる。
(明代環境地盤研究所 明代達也)

高齢者の外出する機会を増やすためにも階段などに斜面移送機器を設けるというのは非常にいいことだと思います。ただ,紹介されていたように自治会の方の協力に多くを頼るシステムだけでは,これから数量が増えていった場合,対応しきれなくなる面があるのではないでしょうか。また,写真を見ると階段沿いに存在感の感じられるポールやレールが設置されるようなので,景観上の配慮も必要かと思います.利用者数や人々の利用形態,動線などを考慮した設置箇所の選定,絞込みが重要だと感じました。
(東電設計 白濱美香)

これまで何度か長崎を訪れたが,斜面地の生活道路にはその度に圧倒される。今夏,長崎を訪れ,グラバースカイロード(斜行エレベーター)に乗る機会を得た。我々観光客にも使い勝手がよく,山側終点には休憩所(資料館:無料)が整備され,満足度の高いものであった。一方で付近を見渡すと,密集した家屋,生活道路の状況から,他の地区への整備には相当の時間・費用がかかると推測される。今回のレポートを拝見して設置された斜面地交通が斜面地に住む人口をどの程度カバーしているのか,輸送能力は足りているのか,また今後の整備計画について記載されていなかったのが残念でした。
(鉄道建設・運輸施設整備支援機構 佐藤貴史)

長崎斜面地交通は日本のもつ地形的特徴をよく表した交通手段である。たしかに都市部では,構造物や道路にバリアフリー,ユニバーサルデザインといった観点を盛り込んだインフラが構築されている。しかし,よく考えてみれば,日本という国自体,身障者,高齢者には“厳しい”国なのだと感じさせる記事であった。普及には課題も多いと考えられるが,喜ばれる整備であることは間違いなく,他の都市でも導入を検討することを望む。
(オリエンタルコンサルタンツ 岡本俊哉)

斜面に形作られた都市は,常に町を一望でき,また町の雰囲気が肌で感じられ,都市との一体感が得られます。その反面,多くの斜面都市がスプロール状の交通網で,高齢者や障害者にとっては,とても不便な状況だと思います。長崎でのこの取り組みは,都市の景観や住環境を阻害せず,地域住民や観光客に優しい斜面移送手段を整備しているということで,将来の高齢化社会を見据えた観光都市づくりを目指していることに共感いたしました。
(東洋建設 北出圭介)

長崎市に坂が多く交通手段に自転車を使用しない人もいる一方で,この地形のために本文のように多様な斜面移送手段が発達していることは初めて知りました。
地形的不利な条件がかえってタイトルのように「面白い」交通機関,地域社会を作ることに寄与しています。課題も存在し,その解決や設置後の評価が求められるものですが,これらの交通施設が住民のみだけでなく,観光地としての魅力にどの様に貢献していくか気になります。
(匿名希望)

ここでは,長崎県の斜面移送機器・移送手段が紹介されている。一般に知られている名称を使えば,ロープウェイ,ケーブルカー,エスカレーターということになるが,それらはほとんどが観光地で見かけるものである。しかし,ここでは,それら観光地のもの以外にも,急で狭い生活道路の坂道に設置され,自治会が運行・管理するものが紹介され,今後の展開に向けては課題はあるものの,有効性が確かめられている。
日本にあっては,少子高齢化が押し寄せ,今後は人口減少も加わり,100年後には老齢人口が大幅に増え,かつ現在の半分程度の人口となるとの予測もある。現状の都市部の渋滞や通勤電車の混雑などからは,容易には想像できないが,小学校の統廃合や地方の過疎化減少など,確かに100年後の予兆は観察されている。
100年後の日本では,ここで紹介された斜面交通が多くの人に身近なものとなっているように感じられて,興味深く読ませてもらった.
(前田建設工業 赤坂雄司)

三方を山に囲まれ,南には港がある。山間部を中心に住宅地が建てられ,その間に,商業地が建ち並ぶ。北部から長崎港に流れる浦上川流域には,住宅地や,公共施設などが建っている。斜面に多くの住宅地が建っているため,階段・坂の街としても有名である。その一方で平和公園,グラバー園そしてオランダ坂など非常に多くの観光名所がある街としても有名である。長崎市はこれらの問題を打開すべく,様々な斜面交通手段を模索しているようだ。趣のある長崎の坂道を汗を拭いながら登っていくのもいいものだが,新たに設置された斜面交通が新たなアメニティーとして長崎市のシンボルになる姿も見てみたいと思う。
(東京都立大学 藤原多聞)

日本の都市部では,住宅地の供給が平坦地だけでは間に合わず,傾斜地にまで至っている。都市部は,長崎市と比べると高齢者の割合が少ないためか,長崎市のような問題がそこまで健全化していないが,今後の高齢化時代を考えると,国策として全国的にもっとバリアフリー対策に力を入れる必要があると思った。今回の記事は,交通弱者対策の重要性を再認識させる意味で良い内容であった。またさまざまの「斜面移送手段」が紹介されていて参考になった。
(JR東海 高橋和也)

市街地に多くの斜面を有する長崎市の交通事情について着目したユニークな記事で,興味深かった。観光地のロープウェイや動く歩道などはよく見かける施設であるが,生活道路にまで移送機器の設置が進んでいることははじめて知ったので驚いた。生活道路の移送機器は維持管理を自治会が行っているとのことで,人員を常駐させるなどの協力が現在では必要であるが,さらに多くの地域に導入するためには,無人化のための安全性の向上などが必要になるのではないかと考えられる。
(中央大学 田中聖三)

個人的に坂のあるまちの景色が好きなこともあり,興味深く拝読した。実際に生活するには,やはり起伏のあるまちは大変であることは想像に難くないが,観光客だけではなく地域住民の足となるモーダルを整備した点,運行・維持管理を自治会が行っているという点など興味をもった。斜面移送機器導入後,高齢者の外出頻度が高くなったとのアンケート結果も得られているとのことで,現時点での課題も整理されているが,今後,高齢社会が進行していく中で,興味深い取組みとなっていくのではないかと思う。
(八千代エンジニヤリング 高森秀司)

長崎市には何度か行ったことありますが,このように様々な斜面交通が実運用されていることは知りませんでした。私も以前,坂の多いことで有名な尾道市に住んでおりましたが,狭い階段を高齢者が上り下りしている姿を思い出しました。多くの斜面市街地で長崎市と同様な課題がありながら,長崎市で斜面交通の導入が実現しているのは,地域特性や財政事情等によるものと考えられますが,記事にも書かれている通り,住民の理解と協力が大きな要因かと思います。自治会が機器の運行・維持管理を行っていることには,感心させられました。
(本州四国連絡橋公団 鳥羽保行)

私は,10年ほど前に,一日だけ長崎に行ったことがあります。高齢者・障害者の方々,さらには観光客の配慮として,こうした取り組みや書かれているようなご苦労はよく理解できます。しかしながら,一部外者の勝手な希望を言わせてもらえば,できるだけ,こうした搬送機械の導入は必要最小限とし,坂の街・長崎らしい風情・景観を少しでも多く残していただきたいと思います。
(日揮 宮岡秀一)

話の広場 「投稿」土木技術者の気概の起源
偶然か,意図したものかはわからないが(おそらく偶然だろう),この記事の数ページ手前には,広井勇の記事,少し後をめくると,八田與一の記事と昔の技術者の気概を感じさせる記事にこの記事は挟まっていた。広井勇にしても,八田與一にしても,土木の偉人の話には,それこそ技術者の気概を感じさせるものが多い。ただ,「気概」という言葉は,何となく古い言葉で,しかも,客観的ではない響きが難点だと思う。気概を熱意と言い換えて,「熱意が大切」と言われるとほとんどの人が納得できる。熱意は本当に大切だと思う。
(東京工業大学 浦瀬太郎)

土木技術者の心理的なモティベーション(気概)について,プラトンや三島由紀夫との対比など,哲学的,文化論的,歴史的に解説した部分は,大変愉しく,かつ,実社会とのかかわりを重視する技術に従事する方の使命感に関し大変示唆に富む解説であった。また,批判がまだまだ厳しいなか,社会基盤を支える土木技術と土木技術者に対する理論的で,かつ,相当熱い叱咤激励のメッセージであり,直接土木技術に携わらない者にも,土木技術の重要性と気概という技術者に求められる心理的な使命感の重要性について,認識を新たにすることができた。
(匿名希望)

たいへん興味のある記事で,「気概」が重要であるといったことには賛成なのですが,きれいごとではなく,今,土木技術者の置かれている状況で問題なのは,「処遇・待遇」ではないかと思います。
高い能力と倫理観を持った技術者の得る報酬が,例えば医師や弁護士といった技術者と比べてあまりにも低いことが,土木技術者自らの評価と世間の評価を低くならしめている悪因であると思います。これは,毎年技術者単価を減額しつづけている国の責任が大きいと思います。今後は,例えば技術士の従事を義務付ける業務であるならば,技術士に相応しい報酬の積算を望みます。
(中央復建コンサルタンツ 澤田幸治)

土木技術者の気概とは?今の自分の気概はどうだろう?土木技術者の気概が低下しつつある要因は,何をするにも世論から批判され,社会から期待されていないといった思いこみや,危機感の希薄化だけなのだろうか?土木技術者に限定せず,若手技術者全体の気概は低下していないのだろうか?
様々なことを自問自答しながら,本文を読みすすめました。今回のミニ特集の「技術者倫理」と同様に,技術者たるものどうあるべきかと自分に問いただす,よい機会となりました。
(東京都 石川幸裕)

近年の公共工事バッシングは年々厳しさを増すばかりであり,土木技術者としての気概を持続しにくい状況にあるのは確かなようです。しかし国民と安全性・利便性との架け橋の役割を担うという意味では,土木技術ほどその役割が大きな技術分野もないのも事実だと思われます。もう一度Civil Engineeringという言葉の示す意味を考えてそれに応えることのできる気概を持ち続けていたいなと再認識させられる記事でした。
(JFEスチール 芥川博昭)

公共工事の縮減,国際化,さらには作業員の高齢化など,土木事業に対して逆風の時代が続いている。このような困難な時代を土木技術者が乗り切るためには,なにが必要なのか・・・。この論文は,そのヒントを与えてくれた点で興味が持てた。
たしかに自分自身の気概の低下も否めない。この原因は,土木事業をとりまく厳しい環境の影響もあるが,土木技術者としての行き先に迷いが生じている点にもある。このような迷いを払拭するためには,土木技術者としての確固たる信念を持続することが大切であると考えている。我々中堅技術者(今年で40歳)が生き生きと仕事に励むことが,若手技術者の気概の向上につながることは言うまでもない。
(東急建設 高倉 望)

「気概」については土木世界に他ならず色々なところで削がれているように思う。仄暗い部屋にひきこもるのも,意思を世論やらマスコミやらに仮託するのも,社会的に蔓延する無気力のひとつのかたちであろう。完成されてしまった(ように見える)社会は,気概を削ぐのだと思う。
そんな中で気概を保ちえるのは哲人であり,記事は,世に「土木工学」に対する不理解が席捲していても我々はそれを意に介さずに信念を持つべしという要旨と読んだ。
知識のある者が理想を持ち寡黙に進むべしという考え方は大変にストイックであるが,万人のものではないと脆弱な私は考えてしまう。
船を漕ぐのに天上の星を当てにするのもひとつの手だが,陸につけるためには灯台の光を頼りにする方が確実だろう。
文中の後半に出てきていた「京の町家」などは“人々によって長く受け継がれたスキーム”なのであるからプラトンの曰くイデアに基づいて発生したものというよりはアリストテレスのいう「有用なもの」なのではないだろうか。哲人の理想ではなく、市井の意思により発生・維持されてきたものと思えるのである。
“地上の光”たるサービス受容者とのコンセンサスはやはり必要なものであると思う。医療でいうところのインフォームド・コンセントに相当する仕組が必要なのではないだろうか。
(JFE技研 田近久和)

現在,土木技術者の気概が低下していると考えられることについて,その本質的な原因を「護るべきものが危機にさらされている」という危機感の希薄化が示されていた。しかし,文章中にも記されているように,中心市街地の衰退や,風土・伝統等の喪失は進行中であり,そこを問題としていく取組みや教育が進められなければならないのではないかと感じる。
もう一つ大事な解決策として,やはりよいモノをどのようにつくっていけるかにかかっていると考える。
(八千代エンジニヤリング 高森秀司)

この本 中村英夫・家田 仁・編著『東京大学社会基盤学教室・著『東京のインフラストラクチャー』
わかりやすい原著の解説を通じて,土木工学がいかに現実の社会と密接に関係しているか,いかに社会に大きな影響力を持っているかについて,改めて実感させられるとともに,後進の技術者の卵である学生にいかにして関心を持たせるかの工夫が述べられるなかで,土木工学の意義と魅力,そして後進の育成という面で直面する課題を理解するのに大変有益であった。
(匿名希望)

この本 シリーズ 環境と地質[全5巻]
「環境と地質」これは私のこれからの仕事のキーワード,主要テーマです。近いうちに読んでみたいと思っています。ただ少し高い本だと思いました。
(明代環境地盤研究所 明代達也)

委員会報告 土木デザイン賞について
私は,会社に“友人”がいる。
その友人との出会いは約7年前に遡り,彼は,私の土木屋のイメージとは全く異なった「シビックデザイン」なるものを一人で担い,孤軍奮闘していた。
シビックデザインとは何なのか?を彼に教えてもらい,彼のセンスに驚いた。その友人の彼が,今回土木学会デザイン賞「最優秀賞」を受賞した。彼の名は「後藤嘉夫」。
私は彼の友人として,彼のますますの活躍を願ってやまない。
(大林組 中村 泰)

これは個人的な趣味ですが「建築マップ東京」とか「建築マップ京都」とかを買って,記載されている建物を眺めてみると大変に感銘を受けます。
土木構造物についてはこのような書籍を見ることがあまりないのですが先日実施された東京ジオサイトプロジェクトが盛況であったことや著名な浮世絵のテーマが「道路とそれを取り巻く人たち」であったことを考えると実は土木構造物は意外にフォトジェニックなのかもしれません。
時計・眼鏡・カメラなど機能があればそれでよかったはずの身近なものにデザインが求められるようになっていったことを考えると,足下にある土木構造物にもデザインがあることで,それに対する親しみも変わってくるのだろうと思います。
(JFE技研 田近久和)

学会誌全般へのご意見,編集委員会への要望等
これまでは時間がなくて学会誌を読む機会がありませんでしたがモニターになったこと,独立開業したこと,技術士試験が終わったことなどからじっくり読むことができるようになりました。幅広い内容にしていただければと思います。総合工学の土木学会であって欲しいです。
(明代環境地盤研究所 明代達也)

学会誌の紙面のサイズについて:学会誌の紙面はカラー部分が多く見やすいのですが,さらに一回り小さくなれば持ち運びも快適なのですがいかがでしょうか?
(日揮 飯塚浩晃)

学会誌では様々な分野の学者による学術的内容が主となっていますが,例えば地盤工学会,コンクリート工学会のような専門的内容があるわけではなく,総論的な内容が多く,なかなか興味ある分野が見当たらない場合があります。個人的には日経コンストラクションのような現実的で,実務者にも興味の持てる内容を望みます。学者の視点外での記事が少ないような気がします。学会の性格上,仕方ない気がしますが。おそらく学会誌を配布されても読まないという方が多いのは,その辺に原因があると思います。
(匿名希望)

適切な技術者報酬のあり方みたいな特集はいかがでしょうか。毎年,単価が下がっていることに納得できません。市場調査等を反映していると思うのですが,そんなことをすればマイナスのスパイラルに入っていて必ず下がってしまうのではないでしょうか。技術士があまりにも軽んじられているようにも思えますし,また,コスト縮減の意味を国が取り違えているようにも思えます。国の責任として技術者を育成することも必要ですし,適切な報酬を担保する責任もあると思います。諸外国の事情なども踏まえ,また,経済学の立場や国の立場,医師・弁護士等との相違など,多方面からの解説をお願いします。
(中央復建コンサルタンツ 澤田幸治)

巻末に会告として各支部でいろいろな講習会・フォーラム・シンポジウム等が開催されていますが,事後の報告が少ないように思います。非常に有効性があった,なかった等は検証していく必要もあると思います。つまらない会合を責めるのは問題と思いますので,ベストセミナー賞等の授与はどうでしょうか。そうすれば来年はぜひこの会合に出席する予定を立てる等の計画性をもつことができ,会員各位の出席率も向上すると思います。
(東洋コンサルタント 小林幸男)

記事の著者が学者とフェローに偏重しているように感じます。良い意味でも悪い意味でも土木業界の現実に直面しているのは若い企業内技術者なので,そこからの歯に衣着せぬ記事が欲しいと思います。土木学会も公益法人なので「組織の自存化傾向」はきっとあると思います。覆面座談会でもなんでも結構ですので,本音を引き出す妙案を考えてもらえないでしょうか。
(太田ジオリサーチ 太田英将)

特集として取り上げていただきたいものとして,個人的に自転車通勤をしている関係もあり,自転車交通などはどうでしょうか?欧州では,ツール・ド・フランスが有名ですが,自転車は交通手段として,またスポーツ,文化として人気があり,根付いているように思います。アルプスに向かう列車には,自転車用の車両があり,多くの人が自転車をそのまま列車に積み込んで目的地に向かい,そこからサイクリングを楽しむのを見たことがあります。また,街中にもサイクリングロードを備えたところもあります。(日本では河川敷きだけです)
3年前に自転車通勤を始めましたが,そのころから比べれば,通勤途中で出会う自転車もずいぶん数が多くなりました。自転車の死亡事故や自転車の通行場所など,問題も多く出てきています。欧州と日本の自転車交通の違いや政府の取り組みかた,立場の違いなど紹介していただき,今後の自転車交通のあり方などを,いろいろな側面から検討していただくというのはいかがでしょうか?
ご検討ください.
(前田建設工業 赤坂雄司)

海外ホットラインの記事の中に,「海外を目指す野心を持った若い土木技術者が大勢出てくることを願っている。」という文章が書かれていた。私は現在大学院に在籍中であるが,大学時代からそのことを強く感じてきた。今後アジアは大きく発展を遂げるでしょう。その一方で多くの環境的犠牲も強いられる事となるでしょう。日本はアジアの中でいち早く発展した国として,これらの国々に環境的な技術支援を踏まえた国土開発を促していく役割があると思うし,それを可能にするのが土木技術者だと思う。私はそんな技術者の一人になることを将来の夢として抱いている。学会誌に掲載される記事の中に海外を題材とした記事が非常に少ないことは残念であり,もっともっと増やすべきではないかと思う。
(東京都立大学 藤原多聞)

実は久しぶりに手に取りました。すいません。昔と比べるといろいろ変わったなぁとおもいます。とりわけ純粋に技術を載せるだけの雑誌ではなくなっているような気がしました。
(JFE技研 田近久和)

(編集委員会からの回答)
編集委員会では,学会誌のデザイン等についても常に検討しております。2005年の4月号から新しいデザインに変わりますのでご期待ください。

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