土木学会誌12月号モニター回答
特集 新世紀の交通と都市

 転勤族の一人である私は、これまで幾つかの地方と都市で生活する機会を得た。現在は東京に住んでいるが、自家用車がなければ生活できない地方にも住んでいた。移動に関しては、交通渋滞のない地方が圧倒的に快適であると思う。東京では記事に記されているように、意外と乗り換えに要する時間を無駄に費やしている。特に、雨が降ると渋滞するために、いつ来るかわからないバスを待つ時間や駅までに要する時間が余計にかかってしまい乗る前から憂鬱になってしまう。
 ところで、最近利用しはじめた駐輪場では人の流れが2つあることに気付いた。駅へ向かう人々と駅から出てきて別の場所へ移動する人々である。駅前ではかなりの自転車を収容できる多数の駐輪場があるにも関わらず、放置自転車が絶えない状況となっている。また、空港などの駐車場でも数日間置かれている自家用車が多数ある。このような自転車や自動車を不特定多数の人で共有することができないだろうか。実現に向けての課題は膨大にあると思うが、適切に運用されれば駐輪場や駐車場をかなり縮小できるのではないかと考える。
(五洋建設(株)水流正人)

 「物」の低温輸送と「人」の暑い車内のギュウギュウ詰め輸送の例えにもあるように、わが国の交通は利用者主体、利用者保護が守られていないのが残念である。

 IT推進が声高に叫ばれ、光ファイバー施設の整備により多大な情報通信量への対応は期待されるが、新世紀にはこれと同様に、「人」の輸送にも利用者の立場に立ったシステムや社会資本の整備が必要不可欠である。(民)の役割の一端を担う私もそのことを常に念頭に置き、日々の業務に従事していかなければならないと感じた。
(住友建設(株) 高橋直樹)

 ”東京の人は,なんでも自転車に乗せて持って帰るって本当だね。”4月に東京へ転勤して四国出身の家内がいった言葉である。確かに駅から自宅までの帰り道ですれ違う自転車は多い。しかし,歩道は歩行者同士が傘を差してすれ違うのさえ気を遣う狭さである。さらにベビーカーを押して外出時には”本当にバリアフリーに,ちっともなって無い。”バリアフリーで快適な今ベビーカーに乗っている我が娘がベビーカーを押して通る21世紀にバリアフリーで快適な歩道になっているとは,今回の記事を読んだ後でもとても考えられません。
(本州四国連絡橋公団 高木 久)

 我々土木技術者にとって、道路や鉄道等の交通施設は言うまでもなく2つの面を併せ持っている。一つは、その交通施設を計画、設計、建設する面であり、もう一つはそれを使用することである。私もこの業界に入ってからは国内では交通施設を作る立場になったことはないが、使う立場では平日は通勤、出張等で、休日は行楽、買い物等の外出でとてもお世話になっている。人間という生き物のせいなのか私の個人的性格からかはわからないが(人間であるからだと思いたいのだが、、)、交通施設を使っている間はやはりわがままになる。道路が空いているとほっとし、渋滞に巻き込まれると不愉快になる。また、走りやすい道路だと気持ちが良く、走りにくい道路ではストレスがたまる。今回の記事は最近取り入れられつつある(または取り入れられている)ITS技術の将来像や環境負荷軽減のための交通施設等、近未来の交通施設像がわかりやすく説明されていた。どこかの通信会社のコマーシャルは、現在の通信技術は昔のアニメにあったような画期的な無線通信が現実のものになったというコンセプトになっている。21世紀の交通施設に関しても、現在はアニメでしか表現できない技術、施設が出現することを期待したいと思います。そのためには、作る側、使う側両方になれる我々土木技術者が主役を担っていかなければならないことを再認識しました。
(五洋建設(株)佐々木広輝)

 今回の特集は都市と交通を取り巻く新しいトピックスを要領よくまとめてあり,参考になった.ただ少し,最新トピックスを漏れなく盛りだくさんに入れすぎたあまり,総花的でパンフレットの解説書的な感じがした.我が国における都市と交通政策の歴史的背景と反省をまずそれぞれのコンセプトで提示したほうが読者に対して親切だったように感じる.また,それぞれのコンセプトについても,これから直面する課題や議論が必要な点をあげたうえで,学会誌ならではの賛成派,反対派の意見を掲載するなど,複眼的な原稿の依頼方法もあったように思う.
(大阪大学大学院 松村暢彦)

 青年時代までを大都市の神戸で過ごし,鉄道などの便利さを経験してきた.地方都市の福山へ来て早や23年近くなるが,相変わらずの交通の不便さを感じている.ここ数年海外でのシンポジウムに参加する機会が増え,治安などの問題のある都市もあるが,大都市周辺の田園都市や地方都市の美しさなども見てきた.都市計画や交通工学は全くの専門外であるが,わが町のような地方都市の発展を期待していることから今回の特集を読んで感じたことは,どのような「都市」を対象にしているのかが分からなかった.確かに横浜市に関係する記事が一つだけあったが,素晴らしいアイデアや計画が示されていても具体性がないだけに,われわれ専門外の者にとってはもう一つ新しい夢などを含む将来性のある都市と交通の関係を理解することが出来なかった.
(福山大学 梅田眞三郎)

 この特集は,土木工学が,新たな時代に向かいつつあることを象徴する特集であるように思われる.時代の流れの中で,ハード的側面ばかりでなく,従来では社会科学が取り扱っていたようなソフト的な側面の重要性が,土木工学の中でも必要となってくることになることは,明らかであろう.ただし,時代の流れが必ずしも正しいとも限らないことを注意することも必要である危惧も抱いた.例えば,インフラストラクチャーが,「利用者」や「市民」といった明示的な主体のためだけにあるか否か,慎重に議論することも必要だろうことも感じられた.
(京都大学 藤井 聡)

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