土木学会誌10月号モニター回答
日本の建設・エンジニアリング企業の強みと弱み

 現在の環境問題の深刻さの度合いを見ると,メキシコシティやジャカルタの大気汚染などからもわかるように先進国より発展途上国の方が抜きんでている.これらの問題の対策は,先進国のこれまでの環境対策技術の蓄積が必ず生かされる分野であろう.そのなかでも,自動車交通問題に起因する大気汚染の場合は,そこに住まう人の文化,風土を反映している交通を取り扱うため,日本の強みとしてあげられた「アジア独特の文化,風土の理解」を最大限に生かすことができるのではなかろうか.特に最近では,鉄道や道路などのインフラだけではなく,交通需要の面からのアプローチの必要性が高まっていることを考えると,この日本のコンサルティングが培ってきた特性は,大きなインセンティブを持つと考えられる.今後,先進国おしきせの交通計画ではなく,発展途上国の文化を尊重した交通計画の分野で,日本のコンサルティング技術が生かされることを期待する.
(大阪大学大学院工学研究科 松村暢彦)

 国内の建設市場がこれ以上拡大しないことが明白な現状では、海外進出に活路を見出すことは妥当な選択であろう。現在、学会誌上で日本土木のオリジナリティについての連載がある。個々の技術については世界に誇れる独自性を有するが、市場システム自体にもオリジナリティがあることは国際化への大きな足かせとなる。いつの時代でも「これから10年がこの業界にとっての大きな山場だろう」と言われ続けてきたが、今まさに業界の存亡を賭けた岐路に立たされていると言っても過言ではないだろう。
(大学院学生 糸山 豊)

 国際的な建設プロジェクトへの日本建設界の参加を難しくしている大きな理由として、マネジメントの相違があげられ、その中で工事執行マネジメントの重要性が述べられていますが、それと同時に、受注までのプレゼンテ−ションや、契約書作成時のリスクマネジメント能力が海外プロジェクトにおいては重要となると思います。
 また、筆者は日本製造業の国際競争力の強さと建設・エンジニアリング業の国際競争力のその違いは、分裂型イノベ−ションの有無であり、これが製造業のコア・コンピ−テンスを形成していると述べていますが、この辺の説明が難解に感じられ、紙面の制約もあったかと思いますが、言葉の説明を含めわかりやすく解説いただければと感じました。
(千代田化工建設 工藤正一)

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