土木学会誌10月号モニター回答
グローバル時代の建設・エンジニアリング産業

 本特集の企画主旨に一抹の寂しさと、疑問を持った。海外、それも多くは途上国を対象に、各種インフラ整備への要請を建設市場として捉え、他の先進国との受注競争を国際競争力なる曖昧な表現のなかで、論じようとしてはいないだろうか。土木学会の倫理規定に例を借りるまでもなく、「相互の文化を深く理解し、人類の福利高揚と安全を図る」ことを国内はもとより、海外において活動しようというあらゆる我が国の関係者が、根底に持っていなければならないと思う。困っている国や地域に住む人たちの熱い想いや顔が結果としてあまり見えてこないのは、日本国内での建設産業に対する国民の不信と基本のところでは、同じもののように感じるのは私だけだろうか。
(開発土木研究所 梅沢信敏)

 日本を含む世界の社会資本整備の状況を知ることができた。これに加え,各国の建設業界の構造についても情報提供してもらいたいと思う。
(鹿島建設梶@新保裕美)

 建設産業における国内市場は既に成熟化しており、今後は間違いなく縮小に向かうと見込まれる。そのような中、日本の建設産業は国際市場での競争力をつけ、利益を上げていかなければならない。しかし現在のところ、建設産業の海外進出は、「プロジェクトの執行方式の違い」、「マネジメント力(資材、機材、労働力の安価な調達)の弱さ」、「価格競争力のなさ」、「営業力の弱さ」等から、必ずしも順調に展開していない。これに対し、本特集では様々な対策を提言している。これらの提言は、今後の海外展開の参考となるだろう。
 しかし、今回の特集には一つ残念なことがある。それは、相手国の視点に立った提言がなかったことである。確かに、今後の海外展開は国際協力でなく、ビジネスであるのかもしれないが、その根底にある精神は同じであると思う。「相手国のことを考え、真の信頼関係を築いていくこと」が建設産業のグローバル化を考える上で、最も重要なことであると考える。
(電源開発 岩城 紹)

 建設業界の現状や弱みなど丁寧にまとめられて読みやすい特集になっていたと感じました。世界標準の波にどう答えていくのか、また、契約の環境をどう変えていくのかが今後の国際化への方向を決める重要な課題と考えます。
(水資源開発公団 塚本 守)

 なかなか普段の生活から想像のつかないことが多く、理解が追いつかなくて読みこなすのに苦労した。
(大阪大学文学部 岡田保恵)

 わが国は、品質・工期・施工技術など技術の本質的な面では、諸外国と比較して優れている。価格も最終仕上がりのコストで見れば、優れているとのこと。ただし、一般競争入札では仕事の質に関わらず、受注チャンスは同じどころか、日本固有の発注・建設マネジメントでは分が悪いとのこと。なんとか、日本流の良さをアピールし、スタンダード化できないものかと思う。しかし「標準化」に遅れる、あるいは負けると消えていく商品などを間近で見ていると、まず現状のままでは努力してもどうにもなりそうもない「しくみ」のところから国際標準化していかなければならないということでしょうか。
(長野工業高等専門学校 柳沢吉保)

 時代に即した内容。
(アジア航測梶@天野 篤)

 巻頭論説での西野先生の御指摘のように,建設業の世界展開を建設業界に期待されている。既に建設産業における国内市場は成熟化し,600万人の雇用を支える建設産業も5年から10年の間にその数が半減するのではないかと私は考えている。ITなどの新しい情報技術に関連した建設市場に目を向けるのも大切であるが,世界的な競争に打ち勝てる新しいあるいは価値があり,コスト的にも問題のない基礎的な技術を次々と確立することが重要と思われる。何ら大きな市場ばかりを求めるだけでなく,ニッチ的な市場でもよいから効率と生産性を向上させ,世界の隅々へその技術を普及させるのも一つではないかと考えている。
(福山大学 梅田眞三郎)

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