土木学会誌8号モニター回答
平成12年3月31日 有珠山噴火緊急調査団報告

 火山噴火のように一度起きてしまうと被害が甚大となる自然災害の予測は、莫大な損害の回避・最小化を可能とする極めて有益な技術である。記事に示された有珠山噴火のみならず、最近の三宅島においても災害情報が適切に公表された。関係者の地道な観測・研究と避難の呼びかけに踏み切った勇気・判断に頭が下がる思いである。  私が子供の頃はあまり当たらないと言われていた天気予報も、今では高い確率で的中し、誰もが日々頼りにしている。この予測技術がなければ、台風の来襲に伴う被害などは膨大なものとなっていただろう。
 建設事業と関係深い設計分野や環境アセスなどにおいても、予測技術はとても重要なテーマである。人的・物的被害の回避やコスト縮減など、予測技術の開発と高精度化がもたらす恩恵は計り知れないものがある。火山噴火予知や気象予報を確立してきた関係者のように、弛まぬ努力が我々にも必要である。
(五洋建設(株) 水流正人)

 有珠山噴火の噴火予知の成功、噴火前の住民避難の成功は、研究者の長年にわたる観測・研究、研究者をはじめ、自治体、住民の間に築かれた相互の信頼関係とその下で醸成された自治体の高い危機管理意識、住民の高い防災意識によるものであり、人的被害を最小限に抑えたことは特筆すべきことである。他の災害が予想される箇所においても、この教訓を生かし、災害に対する危機管理体制の拡充を進めることを期待したい。
(日本道路公団 伊藤孝広)

 今回の噴火予知が成功した要因に,北海道大学有珠山観測所が”有珠山の主治医”として長年にわたり観測・研究を続けたという部分に興味を惹かれた。非常に難しい事だとは思いますが,昨年に起こった新幹線トンネルのコンクリート片の落下についても”主治医”的な人がいれば防げたような気がします。多くの人が利用する土木構造物に一つでも多くの主治医が増えることを望みます。
(本州四国連絡橋公団 高木 久)

 防災施設を充実するハード面の整備のみならず,減災の考えに基づいた災害情報を迅速に伝達し住民の早期避難を可能とするソフト面の対策の必要性が高まっている.今回の例では噴火予知が行われ,その情報を迅速に伝達することにより住民非難が適切に行われており,学ぶべき点が多い事例であると感じた.
(住友建設(株) 高橋直樹)

 平成12年3月31日の有珠山の噴火に関する緊急調査団報告。噴火予知が成功したのは長年の研究のたまものであり、またそれが住民避難に適切に活かされたのは、行政、研究者、住民の三者の防災意識の共有化にある。研究の目的をしっかりと考えれば、それが実際に人の役にたつことが最終目的であることはどのような分野でも同じである。それができなければ、研究はただの研究であり、研究者の自己満足で終わってしまう。噴火予知が住民避難につながってこそのものであるという報告を読んで改めてそのような感想を持ちました。
(大成建設 古池章紀 )

 最近、三宅島の噴火などもあり、今月号では一番最初に読んだレポートでした。噴火を予知したことも画期的な出来事でしたが、噴火予知情報(危機管理時)に対して、自治体および住民が迅速かつ冷静に対応していたことに感銘を受けました。被災施設に対する復旧作業状況(体制)や避難した住民に対するケアなどの情報も網羅していただいて、その後の状況を再度掲載いただけたらと思います。
(水資源開発公団 大島伸介)

 非常にタイムリーな話題で噴火・地震を観測した状況が良くまとめてある。できれば、もっと詳細に記述してほしかった。
(建設省土木研究所 中野清人)

 火山噴火による被害状況をもっと詳しく、さまざまな地点での状況を載せてほしかった。
 この噴火の被害の1つに温泉街の経済的な打撃が非常に大きかったと思います。温泉街が噴火前の状態に戻るにはどれほどの時間がかかるのか解らないのにこれに関しては全く触れておらず、文章が終わっている。その点も議論してほしかったと思います。
(北海道大学大学院 修士2年 山口隆一)

 新聞やテレビで,有珠山噴火の様子を目の当たりにしていて,これだけの大きな噴火で,どうして人的被害が一つも無いのかと不思議に思っていたところ,この記事を手にしました。
 記事から,初めて噴火の予知に成功したこと,それは研究者,自治体,住民の間に築かれた相互の信頼関係の賜物であることを知り,技術者が活躍する場所は,何か新しいものを作ることだけでないことを思いしらされました。  土木技術者は,ともすれば,新しいものを作りたがるけれど,人が安全で快適な生活を営むための「社会資本」には,このような災害の予測や避難のシステムも含まれます。最近,土木技術者の過剰が指摘されていますが,まだまだ我々の活躍する領域は広く,やらなければいけないことは,たくさんあると感じました。
(鹿島建設  藤澤 理)

 8月中旬現在、有珠山噴火が収束に向かっており、本格的な復興作業が開始されつつある。本災害報告を一通り読んで、この調査の目的は、はて?何だろうと思った。通り一遍の状況報告に終始した内容だったので・・・。調査を行ったのは、「火山工学研究小委員会」とある。土木学会の一組織なのだろうか。土木学会のHPを探して、それが「地盤工学委員会」内に平成7年に設置された小委員会だと分かる。HP上にも本調査の速報版が載っており、そこには、 調査目的について、次のように記されていた。「火山活動により引き起こされた災害の実体を把握するとともに、火山噴火から住民避難や復旧に至るまでの状況を科学的に調査することにより、災害時の情報伝達や住民心理等の社会現象を解明し、今後の火山噴火時の物的・人的被害を最小限少なくする手法の基礎資料とする。」  一方、本小委員会の設立目的には、「火山工学を総合的な工学として確立させるために、工学のほかに理学・農学・医学・社会学・法学、経済学等とも連携させ・・・」とあり、火山地域における防災・観光等を切り口とした総合的な街づくりについて2つの分科会を設けて検討を進めている。
 背景の説明が長くなったが、これだけのバックグラウンドと人的バックアップがある組織ならば、単に外から眺めるというのではなく、施設の移転や再配置を伴うことが必要といわれている有珠山周辺地域の復興計画策定にあたって、積極的に地元自治体等に参考となる助言や資料提供を行えるのではと思うし、そういった視点で調査活動を行ってほしい。
(開発土木研究所  梅沢信敏 )
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